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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第四章 建国編
63/70

#60 旅立ち

「しっかし・・・この模様なんだろうな?」

俺の右手のひらに現れた黒の渦巻き模様。

あのよくわからない・・・自分でも無意識に唱えた魔法。

村立図書館にあった古びた文献に書いてあった悪魔化魔法・・・

自分が本当に怒りに震えている時しか使えないとか書いてあったからあの時に唱えて成功したんだろうけど・・・

それを唱える前はこんな模様なかったから、そのせいだろう。

「ローラに見てもらったら?あれでも魔法だけは詳しいから・・・」


「そうだな」

そう言うと俺とイリーナは元ギルド公社南プシェムィシル村支部へと向かった。




「ど、どうですか・・・・」

何か異常でもあったら困るな・・・

「ん~異常ないでしょう。魔法使った時の後遺症でしょうね。これ自体は残るかもしれませんが、身体には影響はありません」

口調はどこも変ではないが、素振りがおかしい。

まあ、それでも、彼女が安心というなら安心だろう。

「よかったね。じゃあ、しばらく帝国軍も攻めてこないだろうし、一緒に帰ろ」


「どうせそんな理由つけなくても一緒に帰るんだから」


「ま、待って。イリーナだけ残って」


「なんで?」


「いいから・・・あ、リュートさんは先帰っていてください」

そう言われると俺はエーリッヒに皇女様のお言葉だぞ?とか言ってつきだされた。

なんなんだ?

「・・・・・あやしい」

盗み聞きするのは良くない。でも明らか怪しすぎる。

「あまり使いたくないが・・・・Sharp ears(地獄耳)」

かなり遠くの音でも効きとれるようになる魔法らしい。まあ、一時的だが・・・




「リュートさんは?」


「外へ突き出しましたよ。玄関もドアを閉めましたし・・・大丈夫です」


「そう、ならいいわ・・・・イリーナ・・・覚悟して聞きなさい」


「う、うん。何の話だかさっぱり読めないんだけど・・・」

いきなり覚悟して聞けなどと言われて何の事だとみんな思うはずである。

そしてまたイリーナも考え方は多分一般大衆と同じ考え方であり今頃頭の中はクエスチョンマークで埋まっているに違いない。

「リュートさんの事です」


「リュート・・・?あいつがどうしたの?」


「先程の模様・・・あれは悪魔化魔法と呼ばれる魔法の後遺症で、悪魔化魔法は時間がたてば元の姿には戻れるんですが、イリーナみたいな感じで慣れればすぐに悪魔状態になることが可能です」


「へぇ~それってすごいじゃん。じゃあ、これからリュート無双でこうバシバシッと決めちゃってくれるって訳だね」


「・・・・それならいいんですが・・・あの魔法を最初に唱えたのが生き残り・・・いわばスルトの残党たちで、アインヘルヤルも倒すのに厄介すぎて手が出せなかったそうです。でも・・・彼らは一年もしないうちにほとんどが亡くなって行き、長くても数年以内に死んだそうよ」


「で、でもリュートに限って・・・」


「いいえ・・・あの黒の縞模様。あれが出たら余命一年・・・ほとんどのスルトに現れ一年後に亡くなっています」


「・・・う、嘘だよね?私を騙そうったって・・・」


「あなただから、リュートさんの一番そばにいるあなただから伝えなくてはいけなかったのです。彼の死を現実に受け止めてください・・・まだ確実に死ぬとは言えませんが・・・今までのその模様が出た人の死亡確率は100%だそうです」


「そ、そんな・・・・」

それからイリーナの声は続かなかった。






「そういう訳か・・・今イリーナに会うとあれだし、先に家に戻っておくか・・・」

リュートはそう言うと一人でC-2輸送機まで戻って行った。







「・・・・はぁ~余命一年か・・・実感わかないな。でも、俺がいなくなったらどうするんだろう・・・この村・・・」

嫌な予感がする。指揮系統がグダグダ・・・イリーナを結局何度も投入。

イリーナ無双・・・イリーナ疲労困憊。

「いやいや・・・あの糞餓鬼にまだこの村を任せるには・・・いや、だれでもいい。俺のこの力で責任を俺が取ればいいんだ」

この世界の戦乱の原因は俺。なら俺自身で取ろうじゃないか。

「でも、その後の村がな・・・紙にでも書いておこう」

そう言うとリュートは机に向かって書き物を始めた。





「た、ただいま」


「よう、お帰り。何話してきたんだ?」

ごめん・・・俺、内容知ってるんだ。

「えっ?あ、え、えっとね、うん、あの・・・私の身体について?」


「身体?お前がいつまでも胸の大きさがAカップのままってのは実はヴァルキューレ特性の事とか?」


「ははーん。リュートクンには今度私がヴァルキューレ状態の時に粉砕されるのがお好みかな?」

ごめん。冗談だって・・・目がマジなんですけど・・・

「うそうそ、別に胸の大きさなんて気にしなくても小さくても綺麗って言うのがあるしね」


「ほ、ホント?」


「ああ。まあ、別に俺にとっちゃどーでもいいけど」


「やっぱ粉砕しようか?」


「そこ切れるところじゃないよ?」


「まったく・・・ん?何書いてるの?」

俺が書き物をしていたのが気になったようだ。俺は素直に答える。

「計画表」


「計画表?」


「ああ。これからのこの村の発展のためのだ」


「ふーん。なんだかんだでいつも考えているんだね」


「俺はいつも大真面目だ」

なんだよ・・・その疑う目は?

「じゃあさ、さっきのは本気?」


「何がだ?」

胸が小さいというのはヴァルキューレの特性ってやつかな?

「胸が小さくても綺麗って・・・」


「ん~・・・人の好みかな」


「リュ、リュートはどっち?」


「考えたこともないかな」


「つまんない奴~」


「悪かったな・・・まったく、頭に浮かんでいたアイデアどっか行ったぜ・・・」

なんだっけかな~・・・えーと・・・

「そうだ、思い出した・・・こうしてこうして・・・よしよし・・・」


「ご苦労なことだね・・・」

結局俺のこの作業は夜まで続いた。というよりも夜まで続かせた。







「ふぁ~あ・・・イリーナそろそろ寝たか?」

ぐっすり寝ているのを確認して、俺はイリーナの机に一つの冊子を置く。

「これ、しっかりアーノルド大佐に渡してくれよ。手紙もちゃんと読んでくれよ・・・俺は一年しか生きられないなら悔いの残らないように」

そう・・・死ぬ前に悔いは残しておきたくない。何の未練も残さず逝きたい。

「帝国を叩きつぶす!!・・・な~んてね。かっこつけすぎだってわかってるけど、俺の選んだ道なんだ。わかってくれとは言わないけど、泣かないでくれないかな?・・・じゃあね」

イリーナの頭を撫でて俺はそう言うと後ろを振り返らずC-2輸送機を出た。


俺を見送るように月が俺を照らす。


そして、俺の戦争終結のための帝国潰しという名目の半ば独り復讐劇が始まった。


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