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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第四章 建国編
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#58 イェーガーの苦悩

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・いくら消しても・・・うじゃうじゃ出てくる!!」

何度も何度も繰り返し大規模な攻撃を繰り返すイリーナ。

しかし、敵は散開して一回攻撃しても固まっていないから次々にわき出てくる。

「METが足りない・・・このままだと・・・」


「伝説のヴァルキューレ・・・サラ川要塞ではお世話になりました」


「あんた誰よ・・・」

立つのも精一杯になっているイリーナ。大和皇国での由利菜との戦争以上の力を出している。

「あなたが知らなくても私は知っていますよ。サラ川要塞侵攻軍の第二師団を率いていたんですから。まあ、生き残ったの私だけですけど」

指揮官らしき人物と同時に集まってくる大量の兵士。

「まだこんなに残ってたの?」


「ええ。茂みに隠れて動いていませんから。あなたみたいな攻撃魔法は散開して集まらない事がモットーですから。集まっていたらそれこそいい餌食になりますし」


「よく、考えているわね・・・・私が動けなくなりそうなタイミングまで」


「それは計算してませんよ。ただ、散開しつつ包囲していただけですから」


「・・・そう。でもそれが間違いよ・・・」


「はい?」

指揮官は意味も解らず聞き返す。言葉通りよ!!

「はぁ!!」

イリーナの周りを白銀化したMETが包む。

「まだ、これだけの力が残っていたのか!!」


「甘く見んじゃないわよ!!」

溜まったMETを一気に全方位に開放する。それは半径50M程度にクレーターを作る規模の攻撃魔法。

白銀のMETともに兵士たちは無残にも霧となって散って逝った・・・

「はぁ、はぁ、もう・・・・ダメ・・・」

たくさんの兵士が塵と化した場所にイリーナは倒れた。




「何なんだあの光景は・・・」

岩に座って落ち込んでいた龍斗が見た光景は隕石衝突でも見ているような光景だった。

「・・・たぶんイリーナだろう。いつまでも落ち込んではいられないか・・・」

重い腰を上げ俺は爆心地へと行く。




「イ、イリーナ様!!」

イェーガーは謎の爆発があった方向へすぐさま駆けつけるとそこには倒れたイリーナの姿。

「ご、ご無事ですか!!」


「・・・・・」

反応なし。取りあえず細い手首で脈を確認

トクン・・・トクン・・・・

「生きていましたか・・・・てっきり俺は生きていないと・・・」

感動の再会とでもいう場面なのだろうが神という物がいるのだとしたらひどいものだ。

“パァン”と乾いた音が鳴り響く。

「・・・・マクシミリアンか・・・」


「ああ。ギルバート・イェーガー・・・・貴様裏切るつもりか?」


「裏切るも何もそのつもりだ。俺がお前の話に乗ったわけ知らないとか言う訳でもあるまい」

心臓部から垂れ流れる血液。だが、そんなこと諸共しない口調と堂々とした軍人らしい姿勢。

「祖国再興しないか・・・だったか。あんなものまだ覚えていたのか」


「いや、貴様の話に乗るつもりはなかった。ただ、貴様といれば様々な戦場を駆け巡れる。それが、帝国が殺し損ねたキエフ=ソフィア王国第一皇女イリーナ=ソフィア殿下を探し出す近道だと思ってな。案外貴様について行ったのは間違いではない」


「ほう・・・」


「だが、それも今日までだ!!俺は再び皇女殿下のために尽くし、ポートランド=ソフィア王国という名の国で祖国を再興する。ソフィアの有志達を集めてな!!」

“パァン”という音が再び駆け巡る。だが、その音の発信源はマクシミリアンではない。

ギルバート・イェーガ―だ。

「・・・・くくく・・・・こんなものか。古代兵器というのは」


「うそ・・・だろ・・・」

イェーガーの放った銃弾はマクシミリアンの10cm手前で落ちた。

「イージス・・・最強の防御魔法だ。・・・・最後は私が葬ってやろう。それにその女が寝ているのがチャンスだ」


「何をするつもりだ!!」


「研究だ。この女・・・ヴァルキューレが強い秘密を知るための」


「そんなことはさせない!!」


「黙れ!!」

右手から取り出した小型の機関銃。サブマシンガンを連射。イリーナは今だヴァルキューレ状態のため全く効かなかったがイェーガーの身体はハチの巣になっている。

「ぐぐぐ・・・マクシミリアン!!」

振り絞るような声で呼びとめたがむなしく・・・

「この小娘は貰って行く」

イリーナ様!!心の中の叫びは伝わらなかった。だが、

「おいおい、誰に許可取ってイリーナを持っていく気だ?」


「・・・・誰だ?」


「おいおい、誰だとは失礼な奴だな。てめえらのにっく気スルト様だ」


「貴様がポートランドのスルトか・・・こちらにもスルトがいたが・・・」


「マクシミリアン様」

マクシミリアンが何かいおうとした瞬間、すぐそばに現れたのはM134 ミニガンらしき電動式大型回転機関銃を持つ女。顔はそこそこだが鍛え抜かれた身体が目立つ。まるでどこかの兵士だ。

「貴様どこの国の出身だ?ただの民間人だとは思えぬ」

ていうよりも今の俺の状態を見て人間だと思う方も無理があるが、このとんでも世界に何年かいればなれるだろう。

「日本国航空自衛隊千歳基地F-35パイロットリュート・クキだ」


「成程。私はロシア軍極東軍管区 第14独立特殊任務旅団:ウスリースク所属リディア・ブレス」


「どこかで聞いたことがあるな・・・第二次朝鮮戦争のロシアの先遣隊・・・スペツナズか!?」


「その通りだ腰抜け国家の兵士よ・・・・あの国に一度でも負けたというのは国辱に等しい」


「あんな赤の奴らと一度でも中立条約を結んでいたかというと寒気がするな」


「なんだと!!」


「それはこっちのセリフだ!!」


「き、貴様!!母国の侮辱は許さぬ!!」


「最初にしてきたのはお前だろ!!」

ごもっともな意見の前に反抗できなくなったのかリディア・ブレス大佐はミニガンを乱射する。

「貴様許さぬ!!」

“ドゥルドゥルドゥル”次々に発射される弾丸。

だが、悪魔化している龍斗にそんなもの効かずあっさりと気絶させられた。

「で、貴様だ。イリーナを返してもらおう」


「それは無理なご相談だ」


「だったら力ずくで!!」

もう一人のスルトから奪い取ったミニガンをそいつに乱射する。だが、すべての弾丸が10cm手前で防がれた。

「防御魔法か?」


「ああ。貴様は我に触れることは出来ぬ」


「成程・・・なら貴様ごとつぶしてイリーナを持ちかえるだけだ!!」


「効かぬと言ったら・・・・かはっ!!」


「効かない?この俺が?バカか!!」


「なんだと!!」

龍斗の悪魔化した右手はマクシミリアンの腹から背中を貫いている。

「何なんだ貴様は!!」


「俺か?俺の今の姿はサラ川要塞の再来をもたらした人間だ。・・・イリーナは返してもらうぞ!!」


「ぐ、かっは・・・」

マクシミリアンの声はもう聞こえず目標は完全に沈黙しましたというところだ。

そして俺はマクシミリアンからイリーナを取り返すと歩いている途中誰かに話しかけられた

「おい・・・お前さんの名前なんて言う?」


「リュート・クキだ。寝転がってハチの巣になっているようだが治してやろうか?」


「どうせ無理だろう。それに、帝国の悪事に染まった俺を見てもイリーナ様は悲しむだけだ」


「イリーナ様?お前キエフ=ソフィア王国の側近か?」

イリーナに様をつけるところ側近なのだろう

「側近も何もイリーナ様の教育係だ。もう、あの頃の彼女の笑顔は戻らないと思っていたがこうして成長した姿を見れただけで俺はもういい。それに、イリーナを任せられる奴がいるし」


「誰の事だ?知り合いでもいるのか?」


「・・・・・」

なんてやつだ・・・気がつけそれぐらい。

「ふっ鈍感な野郎だ・・・じきに解るだろ。それと一つお願いだ」


「なんだ?」


「彼女の・・・・イリーナ様の笑顔がいつも絶えない戦争の無い・・・いや、それは無理だろうけど・・・それでも彼女の周りの世界だけでも平和な世界を作ってくれないだろうか?」


「・・・・さっきも似たようなこと言われたよ。死んじまったけどよ・・・それぐらい任せろ」

俺はそう言うと近くに倒れているもう一人のスルトを捕虜として抱え上げて要塞へと帰る。

後ろを見ず。

「少年・・・・ありがとう・・・」




プシェムィシル侵攻戦争

帝国軍15万人動員。そのうち陸軍9万人。海軍3万人。上空軍3万人。

対するポートランド=ソフィア王国軍7万人動員。そのうち海軍6万3千人。陸軍7千人。


戦闘結果

帝国軍死者12万人。そのうち上空軍は3万人全軍死亡。負傷者1万9千人。捕虜1万人。

対するポートランド=ソフィア王個置く死者3千人。負傷者8千人。捕虜ゼロ。

帝国軍の過去に例のない・・・コレリア半島戦争よりも悲惨な大敗北だった・・・




「いぇーい!!帝国撤退!!」

再び行われる大衆酒場での宴会。だが、そこにはリュートの姿がなかった。





俺は彼の名を知らない。イリーナに聞こうともしない。

だが、彼の言葉と意志だけは受け継ごう。イリーナの笑顔が絶えない世界か・・・・

「俺があんたの願いかなえてやるよ。だから、今までお疲れ様」

プシェムィシル要塞の横にひっそりとたたずむ岩。

その前で九鬼龍斗は手を合わせる。



その下にかつてキエフ=ソフィア王国王家養育係のギルバート・イェーガーが眠ることは誰も知らない。そして彼が死ぬ間際に言ったことも・・・




「イリーナ様・・・・俺は・・・祖国を再興させるため・・・たくさんの帝国の悪事に手を染めました。こんな姿あなた様に見られとうないです。でも、それでも俺は・・・満足です。死ぬ間際に・・・あなた様の・・・成長した姿を見られたのだから・・・」

その言葉はイリーナにも他の人にも伝わらないだろう。

でも、その意志は龍斗が継いだ。




「くそ!!なんてざまだ!!」

最終的に帝国侵攻軍の司令官となっていたフェリクスは激怒していた。

最高司令官マクシミリアン戦死。バルクホルン討死。ギルバート・イェーガー行方不明。同じくリディア・ブレス行方不明。そして陸軍だけでも推定7万人死亡。

「何なんだ!!あいつらの力は!!」

一人葛藤に堪えるフェリクスの帰路だった。




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