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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第四章 建国編
60/70

#57 悪魔

―――――――悪魔

それは人々の恐怖の対象の代名詞。他には鬼などがあげられる。

だが、人々の恐怖の対象といえども、悪魔や鬼は人々に恐怖を与えたりはしない。

人々が恐怖に感じる事


――――――戦争、犯罪、いじめetc...

今あげたことがらの中で悪魔がすることはあるのだろうか?


いや、そんなことはない。どれも“人間”と呼ばれる同じ生命体がすることだ。

もし、人々の恐怖の代名詞“悪魔”がいるとすれば、恐怖と感じる事をしている人間自身なのではないのだろうか?






「はああああああ!!」


「逃げろおおおお!!」

今更そんなこと言っても遅い。すぐそばにいる悪魔はもう彼の命を奪い取るすぐそばにいる。

「逃げろおお?甘ったれたこと言ってんじゃねええ!!」

“グシャアア”

背中から心臓へ、貫いた右手は血まみれになっている。

「俺はてめえらに殺す動作を100万回しても足りねえぞ!!」


「ひっ・・・・撃てえええええ」


「うわあああああ」

帝国兵は目の前の悪魔に対し我を忘れて闇雲に十字砲火を浴びせる。

「や、やったか?」

目の前には横に倒れた悪魔。

「はははは・・・俺達は助かった・・・・」


「ったくおどかせやがって。所詮姿形は違えど人間か。ビビって損したぜ」

そう言うと帝国兵は倒れている悪魔化した龍斗に近付き足で踏みつける。

「・・・・・くっくっく・・・・こんなもので死ぬと思ったか?」


「!!」

すぐさまに帝国兵は足を放そうとするが、

「もう遅い!!」


「ぐぎゃあああああ!!」

ものすごい握力で足を粉砕していく。

「くくくく・・・・ふははははは!!」

“グシャアア”

「ふぎゃあああああ!!」

帝国兵の踏みつけていた右足は既に僅かな繊維だけでつながっており、骨はぐしゃぐしゃ。筋肉はべちょべちょ。血まみれの醜い足になっていた。

「さっきは良くも人の頭を踏んでくれたな」


「す、す、す、すい、すいま・・・せん」


「すいません?そんなもんで許されるんだったら警軍なんていねえよ。戦争だって起きねえよ」


「ぎゃああああ!!」

足を粉砕されて動けない事をいいことに龍斗は帝国兵の顔面を踏みつける。

「痛いだろ?ああ?・・・・でもよ・・・・」


「ひっひっ・・・」


「大切な人を目の前で殺された俺の心はもっと痛い!!」


「うぐ・・・うっ・・・す、すいません」


「てめえが殺したんじゃねえけどよ・・・・同じ帝国兵だ。母国のために尽くしているだけだろうけど俺から見たらそれが罪なんだよ。俺達が・・・ポートランド皇国が貴様らに何した?何もしていない。なのに意味解らず皇帝陛下を暗殺?冗談もいい加減にしろよ?」


「う、動くな!!」


「ああ?」

ふと聞こえた声に振り向く龍斗。すぐそばで拳銃を構えた帝国兵。

「それ以上動いたら撃ちますよ・・・」


「声が震えているぜ。それで俺を殺す?くっくっく・・・・冗談もいい加減にしろよ?」


「かはっ!!」

襟元を一気に掴み首を絞める龍斗。

「俺達が独立してからてめえらに何かしたか?」


「う、・・・ううう・・・」


「おい!!俺達が何したって聞いてんだよ!!」


「な、なにもし、してないです」


「そうだよな。なのになぜお前らは俺達を何度も攻撃する?俺達はただ平和に暮らしていたいのに。あの子だってそう望んでいたのに・・・もし生きていたら戦争が終わって仲良くもっとギルドのみんなで依頼ついでに行けたのに・・・」


「・・・・・」


「そ、それを・・・・あの子が・・・・あいつが・・・・エアリィがお前らに何したって言うんだ!!」


「・・・・・」

俺の周りを囲み銃を構える帝国兵達の動きが鎮まる。そして黙り込む。

「なんだよ・・・なんか言えよ!!黙ってないで!!」

誰も龍斗の求める答えを知る者はいなかった。





もう片方では・・・

「はあぁぁぁぁ!!」

白い翼に槍と盾。そして白銀の粒子をまとうヴァルキューレ状態のイリーナを止められる者はだれ一人いなかった。

次々に槍から繰り出される衝撃波は放った方向のすべての物を消滅させた。

「こ、これがヴァルキューレの力・・・・」

帝国軍司令官兼神聖東オーレリシア帝国皇帝のマクシミリアンはヴァルキューレであるイリーナの姿を見て感激していた。

「この力の謎を解明し、手に入れれば私は神になれる!!イェーガー・・・素晴らしいとは思わんか?」


「マクシミリアン様・・・イェーガー少将なら外へ出かけて行きましたが・・・」


「・・・・しばらくここを開ける。すべての指揮はフェリクス・・・貴様に託す」


「はっ!!で、何処へ行かれるのでしょうか?」


「イェーガーを探しに行くのだ」







「・・・・やはり・・・この力。ヴァルキューレ。そしてこれを使えるのはイリーナ皇女殿下・・・貴女様だけです。ご無事でしたか」

ヴァルキューレの姿となって暴れまくるイリーナの姿を見て感激するのは帝国軍参謀ギルバート・イェーガー少将。





「もう、貴様らに話すことなどない。何処へでも行け」


「こ、殺さないのか?」

自分達をいとも簡単に・・・それはありを間違えて踏み潰してしまうぐらい簡単。殺すことなど出来たはずだ。なのに今更なぜ?

「飽きた。お前ら何か殺しても俺の気なんか晴れない。お前らを殺してもあの子は帰ってこない。あの子の笑顔を見ることは俺は2度とできない。お前らを見てると余計むしゃくしゃする。俺の目の見えないところまで行け。それと・・・・」


「それと・・・・」


「この戦争。帝国の大敗北で終わる。覚えておけ。もし死にたくなかったら帝国兵やめてどこかへ亡命するんだな」


「・・・・肝に銘じておく。お前ら撤退するぞ」

そう言うと指揮官がぼろぼろの部下を連れて逃げて行った。





「・・・・くそっ。なんで、俺殺さなかったのか?今更になって善人ぶる気なんてねえのに」

そういう龍斗は自分が歩いてきた道のりを振り返る。

プシェムィシル要塞からジグザグに。人間の死体がいいように道跡を作っている。

殺した人数は多分4ケタは超えただろう。下手したら5ケタに近い。

一つのベースキャンプを10秒で抹消したんだ。まだ兵士はたいてい寝ていた。

俺がこの姿になってからそうとう動いた。1分に平均100人以上は殺した計算になるだろう。

もう1時間は経過しただろうか?

「・・・・エアリィ」

そこら辺に転がっている岩に腰を下ろす。

このシャンバラにきて早9ヶ月・・・色々なことがあった。

どれもこれも平和ではなかったけど・・・でも、毎日が充実していて。

「・・・うぐ、ひっく、ひっく」

溢れだす涙を止められない。

俺は2度と会えない笑顔を思い出しては泣いていた。もう何もかも捨てたい。



戦争なんてどうでもいい。もう人が目の前で死ぬのは嫌だ。



俺を英雄と言って死んでいったばあさんには悪いが、なに一ついいことしていない。



俺なんか英雄じゃない。



俺はスルト・・・本当に悪魔なんじゃないだろうか?



だって・・・・オーレリシア大戦の原因は俺なのだから・・・・




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