#49 建国計画
―――――――ロンツァート城
「突き破れ!!」
「うぉぉぉぉぉ」
俺が指揮する300人の部隊。俺の指示により一斉にロンツァート城へと突入する。
「出来るだけ兵士は殺すな!!痛めつけるだけにしておけ」
今俺が欲しい者はここを守る者。戦士。兵士。ソルジャー。だから殺したくない。
そしてもう一方では
―――――――プシェムィシル要塞
プシェムィシル要塞はジェシェフ地区とプシェムィシル地区との境界から約40km南にあり長さが数十km幅約50m高さ48mある巨大な要塞。その長大な長さから北から敵が侵攻してもほとんど要塞のおかげで守られるため龍斗が帝国軍の南プシェムィシル侵攻前の安心感はこれが原因の一つでもある。
“ドォン”
長大の長さの要塞のひとつの扉が破られる。
「な、なんだ貴様らは!!」
要塞内のポートランド皇国兵士は扉をぶち破ったエーリッヒに激怒する。
だが、すぐさまにその熱は冷やされるのであった。
「俺は特殊作戦情報部隊隊長のエーリッヒ・フォン・ザクセンだ。貴様ら・・・この方を見てなんだとはなんだ?」
「あ、あなた様は・・・ロ、ローラ皇女殿下」
「そう言うことだ。この要塞は南プシェムィシル村自警軍の隷下に入ってもらう。異論はないな?」
エーリッヒは一度ローラ皇女を見てから再び要塞の兵士を睨みつける。
兵士は一言も逆らわず、首を縦に振る。
「よし。次は国境警備軍だ!!」
急いで部下とローラ皇女を連れて、ジェシェフ地区との境界線へ急ぐエーリッヒ。
一日では着かないが多分明日までには着くだろう。
―――――――翌日 ロンツァート城
「皇族の命令でしたか・・・・」
深々と頭を下げるロンツァート侯爵。
「わかったならそれでいい。貴様らは俺達の隷下に入ってもらう。反論は許さない」
「ははぁ・・・・」
「全く俺達が来なかったら戦争に発展していたな」
後ろで皮肉っているのはエーリッヒ。実際のところ交渉決裂で武力解決へと進もうとしていたところを国境警備軍とプシェムィシル村要塞より北の住民の避難をさせるため戻ってきていたローラ皇女とエーリッヒに助けられた。
「ああ。とりあえず感謝だけはしておこう」
「で、目標のすべて俺達の隷下に入れることはできた。これからどうすれば?」
「取りあえず俺達の守備領域を下げることだな。北の防衛ラインはプシェムィシル要塞。東の防衛ラインは山。南と西の防衛ラインは海。そうすれば陸上部隊をプシェムィシル要塞と西の山の小道の警備に力を注げる。わざわざ広大な国境警備をするより安全でより効率的に防衛できる方が人員を削減できる」
「成程」
「取りあえず村へ戻るぞ」
「ああ」
―――――――南プシェムィシル村の治療院
「ただいま」
「お帰り。どうだった?」
変えてきた途端に質問とは・・・イリーナは容赦ない。
まだ治っていないエアリィは安静と言われ寝ている。
「とりあえず成功と言っておこう。ただ、まだまだかなりの問題があるけどな」
「なに?」
「お前に言って解るか知らないが、人材不足だ。とりあえず軍人、民間人合わせて俺達が定めた領域にいる人間は獣人族合わせて約10万人と言ったところだ。しかも大半が軍人。軍人もほとんどが海軍。これからは武器弾薬も食料もすべて自分達で手に入れなければならない。いまは皇帝陛下が送ってくれた艦隊の輸送船に大量の弾薬と大量の食糧があるからいいが、これからどうするか。俺的にはシーレーンを確保しつつ、サルデーニャ帝国やプトレマイオス共和国との友好関係を結び食糧援助や機械製品の購入。代わりにこちら側としては、大和皇国で得た資料や技術が皇帝陛下の計らいかわからないがあったから、それを武器に他国に売りつけて・・・(以下略)ただ、どうやってレーバテインを防ぐかがそれが悩みなんだよな」
そう、陛下が送った艦隊には大量の弾薬と食料を積んだ輸送船が何隻かあった。
別に俺達に送るつもりではなく北ユートランド海軍基地に配属されていたバルト海艦隊、南ユートランド海軍基地に配属されていたザクセン海艦隊が陸軍と共同作業でスカンディナヴィア連合王国と連邦のウェールズ王国征伐のための準備中だったそうだ。
地中海艦隊にも輸送船はあったものの中身は弾薬だけで、主にバルト・ザクセン海艦隊の輸送船である。
「すぅすぅ」
「・・・・・・」
俺が一生懸命に説明しているのにもかかわらず、ためらいもなく寝ている。
どういう神経しているんだ?
「まあいいか・・・とりあえず俺は司令部へ戻ろう」
―――――――――司令部
「おお、お帰り。話はエーリッヒから聞いているよ。で、これからどうするんだ?」
元第1師団長(近衛師団長)は部下であるエーリッヒから事情は聞いているようで、俺が話しておきたいことの前話はしなくていいようだ。
「取りあえず兵力と軍事力は手に入りました。オーレリシア最強の艦隊を手にしている。が、維持費がかかる。そして、我々にはまだ人材不足です。この領域内にいるのは獣人族合わせて10万人。足りなさすぎです。せめて20万はほしいところです。後は財源不足。ここら辺は大和皇国から経た知識と技術を武器にして他国に軍事製品を売りつけて財源確保。」
「成程。ただ、相手がサルデーニャ帝国やプトレマイオス共和国だからと言って一筋縄ではいかないぞ」
「大丈夫です。ローラ皇女は外交経験が豊富です。彼女の経験と顔は新たな国家づくりのためには必要です」
確かサルデーニャ帝国とプトレマイオス共和国との同盟は彼女の影響力が強かった。
「確かに。成程。詳しい話は夜。みんなが集まってからだ」
――――――――その頃 ウィーンペスト
国境警備軍が次々にやられていき、次々とポートランド皇国へと進行していく帝国軍はレーバテインの炎によって崩壊したウィーンペストにたどりついていた。
“ザクリ”と元ウィーンペスト城跡地に掲げられた国旗。
まぎれもなく東オーレリシア帝国の国旗。
それはポートランド皇国が帝国に敗れたというのを現していた。
「我々はポートランド皇国を占領した!!」
一人の兵士の声が大きくウィーンペストに響いた。