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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第三章 オーレリシア大戦編
47/70

#44 南プシェムィシル戦

「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

甲高い金属音が焔の朱に染まる村に響き渡る。細く、軽く、そして叩く、切る、刺すの3つが可能な剣と、その重さでたたき切る剣のぶつかり合う音。

「うおぉぉぉぉ」

パキィィィィンと巨大な剣は真っ二つに折れる。

俺の持っている細い剣。日本刀がまた勝った。

「6回目」


「無駄だ。METがこの世界にある限り、この剣は永遠に復活する。この剣を再生させたくないのならまずは俺を切れ!!」


「くそっ!!」

第三次龍斗VSジークフリート戦は戦闘開始してからもう10分近くは経っている。

あれだけ巨大な剣なのだ。30kgはゆうにあるだろう。

30kgをゆうに超える巨大な剣を10分間もの間振り回し、息切れ一つしていないジークフリートの筋力とスタミナにはさすがの龍斗も感心を隠せない。

「どうした?いい筋は持っているが初心者だとすぐわかる」


「くそっ・・・」

何かいい手はないか?考えろ。この短期間で。こいつを殺すいい方法を。

「・・・・どうした?かかって来い」

・・・日本刀を使うふりをして魔法を使うしかない。だが、魔導士ではない俺は呪文を・・・英語を唱えないと魔法が使えない。どうするか・・・・

一発で決めればいい。

「はぁぁぁぁ」

俺はジークフリート向かって剣をふるう。開いている左手の人差指の先に意識を集中させる。勿論魔法を使うためだ。俺の最強の魔法。

「Charged particle gun」

俺の左手の人差指先からは荷電粒子砲が放たれる。荷電粒子砲を直で食らって耐えれる刀などあるわけがない。ましてや人の体など。

“パシュウウウウウウゥゥゥン”

一筋の光線が、ジークフリートの手にしているバスターソードごと吹き飛ばした。

「や、やったか?」

前の時よりは威力の調整ができるようだ。そして、勝ったと俺は確信していた。

だが、俺の期待はことごとく裏切られる。

「ふふふ、ふはははははは!!」


「何?」

目の前には右手のひじから下が血まみれのジークフリートが立っていた。

「クックック。それで勝ったつもりか?」


「なんだと?何が言いたい?」


「俺の錬金術は治癒魔法も超えた」

シュウウウウウウ。奴の右手のひじから下。吹き飛んだ部分からは緑色に発行した煙が出始め、しだいに形作られていく。しばらくして完全に再生した腕を見ると、もはやジークフリートは人間の領域でないことが分かった。

「俺を倒すなら脳みそを狙え」


「そ、そんな・・・・」


「死ね。リュート・クキ」

再び生成したバスターソードで俺にとどめを刺そうとするジークフリート。だが、奴はある人に止められる。

「そこまでだ。ジークフリート・アルジェント」


「!!」


「あ、あんたは・・・」

俺はその姿を見たことがある。ジークフリートに匹敵する長身の大男。

そして南プシェムィシル村ギルド公社支部傭兵部門の最強ソルジャー

「アーノルド大佐!!そしてその他もろもろ」


「その他でまとめるな!!」

良くわからないところで突っ込みを入れたエーリッヒ。エーリッヒとアーノルド大佐を入れて5人。残りの3人はギルドの同僚だ。

「俺達は村の北側のギルド公社支部と闘技場に村人達を避難させているところだ。お前が放った照明弾とか言うので何かが来たと解ったが、まさか古代兵器が来るとは。自警軍も何名か死者が出ている。お前は古代兵器に乗ってあいつらを殲滅しろ。村人の保護とこいつの相手は俺達に任せろ」

さすがに素人同然の自警軍が民間人保護に行くのはまずいと感じたか、俺の見たところ5人全員手練れのようだ。

「リュート君。こいつはわしらに任せるんじゃ。君は古代兵器に戻って村の闘技場へ向かっている古代兵器をせん滅してくれ。事情はイリーナ君から聞いた」


「アーノルド大佐・・・・」

考えている暇はない。一刻を争う時だ。

「恩にきる」


「ああ。・・・・ジークフリートやら。さすがの貴様でも同じ身長ぐらいの奴との勝負などしたことがなかろう」


「おっとおっと。燃えてるね。年配ソルジャーさん。そろそろ引退時では!!」

“ブン”とバスターソードをふるうジークフリート。だが、彼の剣はアーノルド大佐の巨大な盾に防がれてしまった。

「ふん。たいしたことのない剣だ。こんな剣でこの盾を破壊しようとは。その考えはこのランスを喰らってくらにしろ!!」

ランス・・・・普通突撃用の騎兵とかが持って歩兵に突っ込むような近接武器である。そして、使い方は突き刺す。

だが、この光景はあからさまにおかしい。1mは楽に超えているランスを突撃用ではなく日本刀のように振り回しているのだ。30kgをオーバーしていると思われるバスターソードを振り回しているジークフリートもなかなかだが、左手にそれに匹敵するぐらいの盾に、右手にそれ以上の重さと思われるランスを振り回す彼もまた人間の領域を超えていると思われる。

「うぐぐぐぐぅぅぅぅ」

“バギン”と先程の甲高い音とは別の鈍い音が響いた。ランスとバスターソードが衝突しあう音。身長2mクラスの超重量級VS超重量級の壮絶な戦い。二人の衝突に地面は割れ、足がめり込んだ。

「な、なんなんだこの戦いは!!リュート・クキなんかが割り込む隙なんてない!!」


「なんかって言うな!!」

俺は走りながら後ろの人間どもに文句を言う。そして心の中で言う。

アーノルド大佐。そいつは任せました。





「はぁ、はぁ、はぁ」


「どうしたご老人?もう現役時代には戻れないってか?」


「黙れ!!」

もうあれから数十分経過していた。

他の4人は助太刀どころではなく二人の死闘に見込んでしまった。

「はああああ!!」


「フン」

“パギイイイン”

アーノルド大佐はジークフリートのバスターソードに向けてランスを突き刺す。完全に防いだジークフリートはニタニタ笑っていた。

「ご老人はさっさと老人ホームへ帰んな!!」


「ぐううぅぅぅ」

あれだけの巨体が数メートルも先に飛ばされてしまった。アーノルド大佐は何とか地面にランスを食い込ませることで身体を制御しているが、なんせ両手にジークフリートの持っている武器の2倍以上の装備を持っている彼の体力と筋力は年というのも重なって限界に近付いていた。

「しっかし年もあるからなぁ。あんたが現役時代のルーシア征教の護衛騎士団団長だった頃だったら俺は負けていたな。だが安心しろ。あんたの命は以前のあんたの職についた俺がもらってやるよ。死ね」


「!!」

アーノルド大佐は自分の死という物に覚悟した。わしの人生ここまでか。

だが残念。ここで終わることはなかったのだ。

「何処に目をつけている」

“シャキイイイイン”と剣を抜く綺麗な音が聞こえた後、アーノルド大佐の目の前で剣は止まった。彼の目の前で停まったバスターソードはエーリッヒの抜いた剣に刺さっていた。

「ほう、やるな。ポートランド皇国の狗が!!」


「高須殿。この大太刀と呼ばれる物、使わせていただきます。」


「なかなかおもしれえ物持ってるな。だが俺には勝てん」


「そうかな?」

エーリッヒの言葉でジークフリートを囲むようにして次々に出てきた元ソルジャーの自警軍3人。

「相手が一人だけだと思うなよ?」

丸坊主の髪型に左目の眼帯がチャームポイントの元ソルジャー、ガルバン・ウォーライト。階級は大尉。

「ガルバン・・・お前だけいい格好するなよ?」

舌をなめずりしてジークフリートを見るのは長い髪と細身で長身のカザード・ローレンス大尉。

「私を忘れないでね。エーリッヒさん」


「・・・そんなことを言っている場合か?ユリア殿」


「わし一人で苦戦していたようだが、これだけの手練れ。覚悟しろ。ジークフリート・アルジェント!!」


「おおっと・・・確かにこれだけの数。厳しいな・・・・なぁーんてな!!」

ジークフリートは自分に向けられていた4人の剣を一気に振りほどく。

その振りほどく力は強力で大の大人4人全員が後ろへ下がった。

「この戦い長くなりそうだ」

エーリッヒは一人つぶやくのであった。




―――――その頃 村南部

「い、命だけは御助けを・・・・」

ブスと一人の男を何かが貫く音がする。その音と同時に男を刺した槍から血が垂れる。

そして、その槍を持つのは東オーレリシア帝国陸軍軍人だ。

「ポートランド皇国の民間人は女子供老人関係なく手あたり次第殺せ。奴らは武器を持って自警団を組織している。戦争に同情などいらぬ。私情もいらぬ。感情を捨て心を鬼にしろ。必要なのは力だけだ!!」


「はっ!!」

将校だと思われる帝国兵は槍を持ち部下に命じる。心を鬼にしろと。

そしてその言葉に従い敬礼を一斉にする部下達。なるほど。俺の世界では拳銃。この世界では槍。将校は部下の見せしめのために戦術的に役に立たない物を持つという訳か。

「成程。ならば俺も心を鬼にして貴様たちに私情を出さない。同情すらくれてやらん」


「誰だ!!」


「名前を言う必要はない。なぜなら貴様らは一人残らず死ぬからだ!!」

いわゆる戦術的に役に立たない見せしめの物。より少し戦術的に役に立つ9mm機関拳銃を右手に持ち一個分隊程度の兵たちに反撃する間を与えず撃ち殺していく。

銃声と木がパチパチ言う音。破壊音の所為で帝国兵たちのもがく声は何も聞こえなかった。

そして敵が死んでいく姿を見ても動じない自分。

人殺しになれたな。俺。と少し安心とあきれた感情を抱く。





「イリーナ。いるか?」


「リュ、リュート。何処に行ってたの?」

イリーナの声は少し怒り気味と不安で震えた声だった。悪い事をしたと少なからず俺は反省する。

「悪かったな。心配させて。でも俺の言うことを聞いていてくれてありがとう。」


「ここで待ってなきゃ行き違いにでもなったらどうするの?」


「少しは俺の事を信頼しているようだな。その信頼を崩さないようひと頑張りするか」


「何する気?」


「帝国に蹂躙された村の仕返し。蹂躙した古代兵器を蹂躙し返す!!」


「これでできるの?」

俺の顔を疑い混じりの顔で凝視するイリーナ。

安心しろ。世界の警察ぶった自称超大国の世界最大の軍事国家アメリカさんの装甲車だ。

とか言ってもイリーナには多分意味が解らず余計不安にさせそうなので言うのはやめた。

「俺が今まで嘘をついた事があったか?」


「う~ん」

・・・・初めて出会った頃のバルバロッサ海賊団の時は「策はある。俺に任せろ」とか言って余計なハイレディン・バルバロッサを連れてきかえってきたし。

大和皇国でローレライの時は・・・絶対帰ってくるって言って死んだと思い葬式までした挙句、幼い少女を連れて帰ってきた。そのせいで大和皇国の中心五稜郭が半壊したけど・・・

ロンツァート侯爵家の時は精霊化魔法で何とか帰れた。

「まあたしかに・・・嘘はついていないけど・・・」


「なら大丈夫だろ?じゃあいくぜ?」


「う、うん」

俺は高須の部下たちに教えてもらった知識を思い出してアメリカ製だから操作の仕方は違うがある程度共通点がある筈だからそれを頼りにして動かす。

「う、動いてる・・・?」


「さっきも動かしていただろう?」


「エアリィの治療でそれどころじゃなかった。」


「そうだエアリィは?」


「アーノルド大佐達が闘技場まで運んでくれた。村の治癒魔法の得意な年輩の方たちが見てくれている。急所は外れていないから大丈夫とか言っていたけど」


「なら大丈夫だな。衝撃に備えてどこかにつかまれよ」

俺はそう言うと手前の機会を弄って、装甲車動かす。

そして、俺達ごと装甲車を村の南側まで走らせる。

「うわあああ」


「言ってるそばから・・・気をつけな」

それどころではないイリーナにとって俺の話など上の空だった。

「・・・ターゲット確認・・・・古代兵器発見。砲塔はない。ただの装甲車か。ならば朽ち果てろ!!」

“ドオォォン”とストライカー装甲車MGSのロイヤル・オードナンス L7と呼ばれる105mm戦車砲が咆哮する。放たれた砲弾はそのまま直進し俺が狙った装甲車へと直撃する。

「まずは一体撃破!!次に俺のえさになりたい奴は誰だ?」


「リュート大丈夫?」


「・・・・ターゲット確認。装甲車2戦車1。村を蹂躙したつけは払ってもらうぞ!!」

俺は新たに確認したターゲットを破壊するためそちらへ向かう。




「リ、リディア大佐!!」


「どうした?」

無線通信でナチスの描かれた謎の戦車に乗るマクシミリアンの部下で古代兵器担当のリディア大佐は他の古代兵器に乗る部下からの無線通信に嫌悪感を抱いている。

「この村にも古代兵器が・・・装甲車がいて、やられた模様。こ、こっちに来る。く、来るな!!」


「どうした?状況説明をしろ!!」


「ボガァァァァン・・・・ツ――――」

爆発音の後に聞こえてくるのは何もない機械音だった。

「ロストしたか」





「4台撃破。全部駆逐してやる!!」

次々に古代兵器を掃討していく龍斗の顔は神話のスルトと同じ悪魔と呼ばれても致し方ない顔をしていた。復讐に燃える怒りの顔から、自分のしている破壊に多少の笑みがこぼれているから。




「7台撃破・・・後一台はどこだ?」

バットから教えられた8という数。俺が倒したのは7台。後1台がどこかにいるはず。

俺は車内の液晶画面で車外カメラを確認する。一通り確認したが何処にも見当たらない。だからとりあえず、

「帝国兵をぶちのめす」

ここに来てターゲット変更。

電子機器によって隠れている帝国兵を見つけ出すことに集中する。

「発見」

1個小隊程度の部隊を見つけたため車外に搭載されている7.62mm機関銃で歩兵掃討作戦を開始させる。

「ふははははは!!全員くたばれ!!帝国」

次々に目にも止まらぬ速さで発射される銃弾が帝国兵の身体を撃ち抜いていく。

俺はその行動に快感を覚えていた。

「ぐええええ」「かはぁ!!」「うぐぅ」


「ざまあみろ!!俺の俺の住んでいた村を土足で汚したからだ!!」

“ドゴォオン”と近くの地面が盛り上がった。

俺はそれですぐさまに車内に戻り運転再開する。何が起こったかすぐに理解できた。

「貴様が残りの一台か・・・あとかたもなく散りにしてやる」


「リュート・・・あんたマジでビョーキだよ?これ終わったら異常ないか見てあげる」


「安心しろ!!俺はいつも正気だ」

イリーナのいらぬ心配に無駄な突っ込みをする。

それに対してあちら側も

「ふふふ、あれがポートランドの古代兵器。ずいぶんと貧相な装甲だ。その薄っぺらい装甲、貫いてあげるわ!!マクシミリアン様の名にかけて」

どこかで聞いた事のあるようなくさいセリフを吐いて「おほほほほほ」と高笑いするリディア大佐を横目で見る一緒に搭乗している部下は「ヒィィィ」とリディア大佐に怯えていた。そして部下達は思う。「この人びょーキだ」と。




イリーナ、そしてリディアの下僕もとい部下達は上司を心配しつつ、この戦いにいやいや参加する事になる

そう。狂人VS狂人の逝かれた・・・ではなくイカレタ戦いが始まるのであった・・・





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