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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第三章 オーレリシア大戦編
43/70

#40 人は二度死ぬ

人間は二度死ぬ

一度目は肉体が滅んだ時。

二度目は人に忘れ去られた時。




―――――戦争開戦から1カ月後の[うづき]

「ついに連邦と連合が武力介入・・・・」

九鬼龍斗は今ギルド公社南プシェムィシル村支部のロビーで、椅子に座って机に足を置きながら新聞を読んでいる。

「だらしないよ」


「あ?イリーナか。よう」


「ようじゃないわよ。まったく。この戦時にホント気楽な人ね」


「よく言われる」


「で、何読んでるの?」

イリーナは俺が今読んでいる新聞に興味を持ったようだ。

「ウィーンペストタイムズ。見ろよ。新聞の一面を飾るニュース。ついに連邦と連合がこの戦争に武力介入だそうだ」


「・・・ってことは・・・」


「ああ。オーレリシア大陸全土を巻き込む大戦争だ。古代最終戦争以来じゃないのか?」


「そうね。だからこんなことになったんだわ」

イリーナが言うこんなこと。

「はあ~い。リュート。お元気にしてた?あたしは元気だよ」

元気か?なんて俺は聞いてないが・・・・まあそこは置いておいて、イリーナが言ったこと。そう。それは俺の目の前にエアリィがいることだ。

「昨日会ったばかりだろう。同じ村出身の自警軍として」

この戦争でポートランド皇国は国家国民総動員法を発令させた。

その内容は・・・

・市民の女性は15歳以上30歳未満、男性は13歳以上50歳未満。何か重い病がない限りは全員自警軍へ強制参加。


・市民の女性10歳以上14歳未満、30歳以上は軍事、食糧、必需品、日用品工場へ強制労働。男性10歳以上13歳未満、50歳以上は農業、鉱業等。


・食糧、必需品、日用品はすべて配給制。


・ギルド公社のソルジャー、警軍は年齢に関係なく強制自警軍。


・ギルド公社はポートランド皇国に全面戦争協力を強制する。


などなど。言いあげたらきりがない。

とは言え、強制労働とか言っても別に長時間無理に働かせるというわけではない。まあ、この法律の所為で俺達は南プシェムィシル村駐屯の自警軍。駐屯地というか兵舎的なのはギルド公社南プシェムィシル村支部と警軍南プシェムィシル村支部となる。

イリーナはつい最近15歳になったので自警軍送りに。エアリィは元々15歳だったので自警軍送り。

「で、戦況はどうなの?それだけ書いてあって内容がそれだけじゃないでしょ?」


「ああ。えーと・・・・アーフカリア大陸ではプトレマイオス共和国と連邦加入国のカルタゴとの武力衝突。アシーリス大陸ではプトレマイオス共和国と帝国が。ポートランド皇国は帝国と連邦加入国ネーデルラントと武力衝突。帝国とは1カ月間国境付近で戦線が膠着状態。連合とはザクセン海やバルト海で小規模な海戦が起きているとか・・・サルデーニャ帝国はフランク第4共和国と武力衝突。そしてムガル連邦と大和皇国はこの戦争の介入の意思表示なし・・・はぁ。頼みのつての大和皇国が意思表示なしとは・・・」

おい!!高須ぅぅぅぅぅぅぅ・・・・俺の心の叫びなど大和皇国皇帝の高須泰宜に届くわけがなかった。

そしてその頃――――――――大和皇国

「へっくしょん・・・ズズズズ。誰か俺の噂してるのか?」

異常に何回もくしゃみが出るため高須は一人で何か言っているようだ。



場所は元に戻ってポートランド皇国。

「仕方があるまい。リュート君の話では首都が壊滅状態なんじゃろ?ならなおさら。」


「そうですね」

俺の肩を叩いて逆の手はグーにして握り締めるのはアーノルド大佐。彼もギルド公社のソルジャーの為勿論自警軍送りである。

「それにしてもエアリィとか言う娘の言うとおりどうしてそこまで落ち着いていられるのか?南プシェムィシル村は帝国との国境に目と鼻の先の村じゃぞ?」


「まあ、対策されているので」


「はあ?」

そう。なぜ俺がこれだけ落ち着いていられるのか・・・

考えて見よう。戦車類の古代兵器を持たないポートランド皇国がなぜ一か月も国境で戦線が膠着状態でいられるのか?

それは前皇帝が殺されてから開戦までの1カ月。帝国に唯一激しく劣っているのは上空軍。

この1カ月・・・上空軍の隊員を2万人から8万人に増強。飛行船・飛行艇は今までの保有機数の10倍以上。


そして飛行船・飛行艇の武器に2代目ローレライ(海上自衛隊あきづき型護衛艦コピー)のMk.45 62口径5インチ単装砲の砲弾を投下用の爆弾に変えたものと、高須から渡されたこの時代でも作れそうな武器集のアメリカの南北戦争に使われたガトリングガンがモデルのガトリングガンを装備しているのが戦線膠着に大きく貢献した。


開戦の一週間程度前にすべての上空軍を帝国との戦争のために東部へまわし、開戦と同時に国境周辺を無差別爆撃した。これにより戦車を保有しているとはいえ、127mmの砲弾もとい爆弾が毎日雨のようにばらまかれ、国境周辺の帝国軍を一掃した。開戦と同時の奇襲攻撃は功をなし軍上層部では立て直すのに半年いるだろうと見積もっている。


そして今回の戦争でポートランド皇国は連邦と連合を屈服させた後帝国と全面戦争すると決めており帝国とはしばらく防戦のみ。国境守備軍は塹壕を掘り量産されたガトリングガンを配備しており主に古代兵器を大和皇国に配備していた帝国軍は今回失った古代兵器は戦況に大きな影響を与えるだろう。しばらく国境を押し返すことはできないだろう。

「ふっ」


「何笑っているんだか・・・まったく。スルトの考えていることは1万年たっても理解できないわ」


「エアリィ・・・この戦争。勝てる。」


「・・・もうここまで来るとビョーキね」

失礼な。俺は常に正常だ。まあそのことを知らない人から見れば俺は痛い人・・・地球で言うなら電波人間なんだろうな。それに俺の勝てるという自信はこれだけではない。まだ秘策があるんだよ。まあ、言わないけど・・・

「いや、でもそれぐらいの意気込みでいかんとな。この戦争は勝てんぞ。なんせ相手は帝国に連邦。そして連合。ポートランド皇国は東西を挟まれ北からも攻撃を受ける。これだけ戦線を保てるのは国家国民総動員法のおかげじゃな。国民一人一人がこの戦争のために協力しつつある。しかし誰一人異議を唱えない。わしも君達も・・・」


「そう言えば・・・本気で言ったことはないね」


「そうだな・・・」


「それはこの戦争が国民が望んだ戦争じゃからな」


「あの決議会のこと?」


「それじゃ。前皇帝陛下は5年前の戦争で敗北して以来国内を魔導機による工業化を推し進め国内の経済を活発化させ国民の所得も増えた。そしてポートランド皇国のため外交を重視し戦争を回避してきた。これらの行動が国民を動かしたのだろう」


「人は二度死ぬ・・・一度目は肉体が滅んだ時。二度目は人に忘れ去られた時。」


「何その言葉?」

一人でブツブツと喋っていた俺の顔をのぞきこむイリーナ。

「俺の世界での言葉さ」

まあイスラームの死生観なんて言ってもわからないだろう。

「ふーん」


「皇帝陛下・・・・この戦争はあんたの仇打ちだ。そのために国民は動いている。」


「何独り言呟いているんだか」

一人ブツブツ喋っている龍斗をみてイリーナは半ばあきれている。

というよりも周りのみんなが別の物体を見るようにしてみている。

「あんたの二度目の死はまだまだかかるようだな」

一人空を見る九鬼龍斗の目は何処か遠くを見ていた。


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