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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第三章 オーレリシア大戦編
42/70

#39 開戦

「そろそろですよ。アルバート皇子」


「お兄様。頑張ってください」


「僕・・・いや、俺はもう皇子ではない。・・・・皇帝だ」

ちょっと前までは考えられない顔つきになっている。前の少年が残りさわやかな顔ではなくりりしく、鋭く、そして頼りがいのある顔つきになっていた。

「そうでしたな。皇帝陛下。」

俺の方を一回振り向いてまた身体を元に戻してアルバート皇子・・・いや、アルバート皇帝陛下は前へと一歩振り出す。

「皇帝陛下バンザーイ!!バンザーイ!!」

ポートランド城の5階のところから身体を出すアルバート皇帝。その姿を見て一斉に称えるポートランド城周辺に集まってきた国民。

「おほん。では皇帝陛下。ご挨拶を」


「ああ。これにて第498回国民決議会を開催する」

国民決議会・・・ポートランド皇国が建国されてから何か重要なことがある前に国民に決議させるために行う国家行事である。それが冬の終わり。新年になり3ヶ月目の月[やよい]の初日の今日。国民決議会は開催された。






―――――――1か月前

皇帝陛下が殺されて数日後。ポートランド城内は騒ぎになっていた。政治家と貴族達、皇族達が集まってこれからの国の行方を左右する最中であった。

「開戦すべきでありますぞ!!」


「そうです。陛下を殺した犯人が持っていた武器と置いてあったマントに書かれた国旗。しかもあのような兵器。民間人が簡単に手に入るような代物ではありませぬ。確実に東オーレリシア帝国軍が提供した物。これは帝国からの挑発ですぞ」


「・・・」

ただただ無言で周りの政治家貴族どもの話を聞き続けるアルバート皇子。そして何故かその席に同席させられる俺。

「あの~俺は何をすれば・・・?」


「意見があるなら言ってくれればいい」


「では。今開戦するのは反対かと」


「なんだと!!」

「何を弱腰な!!」

「帝国にひれ伏せというのか」


「いや、別にそんなことは言っていないが」

一斉に集団リンチに遭う俺。確かに場違いな発言だったことは認めるが・・・

今のこの時期に開戦することこそが場違いでは?

「静粛に静粛に。リュート・クキ。そなたの意見を述べよ」


「はっ!!帝国側が俺達に戦争を仕向けるためにこのようなことをしたなら帝国は完全に戦争準備に入っています。しかし、我々はまだ戦争する前の準備などしていません。それに帝国はすでに我々との国境付近に軍を集結させています。何の準備もなしに感情任せに戦争に入るのは無謀だと」

そう。俺が言いたいのはこのこと。国境に帝国軍が終結しているのにもかかわらず準備なしに開戦したら国境に集まっていた帝国軍はそぐさまに進軍するだろう。

「ふむ、成程」


「だがしかし皇帝陛下が暗殺されたのだ!!指を加えてじっとしていることなどできない!!」

まあいいたいことが解らんでもないが・・・軍人としての俺の意見を述べただけだが。それに南プシェムィシル村は東オーレリシア帝国と国境近くにある。もし侵攻されたら真っ先に狙われる。まあ村の前に古代最終戦争で使われたスルトのプシェムィシル要塞が狙われるけど。

「そーだ。皇子!!開戦です。今こそ開戦すべきです」


「・・・・」

ただ無言で聞き続けるアルバート皇子。このような言い争いが何時間も続き解散となった。

・・・・数時間後

「今日はこれにて解散。お疲れさまでした」


「リュート君。ちょっといいかな?」


「いいですけど」

俺はアルバート皇子に連れられ個室に来た。

「率直な質問で悪いと思うんだがいいかな?」


「ええ。別に俺でよければ構いませんが」

だいたいの内容は見当がついている。

「僕は・・・これからどうすればいい?」


「・・・それは俺が見つけるべき答えなのですかね?」


「いや、違う。僕が見つけるべき答えだ。だが、何をすればいいのかわからないんだ!!」

仕方がない・・・20にも満たない年齢で国のトップを任されたのだから。彼には持っている物すべて捨ててもまだ荷が重すぎる。それぐらい俺でもわかる。なのになぜ周りは解ってやらない。

「ただ、答えを導き出すための案内ならできますが・・・」


「・・・」


「これは俺の独り言。俺は軍人。軍人らしい考え方。感情任せで物事を決めない。いつも常に冷静に。冷静でいなければ戦場で戦えない。それは戦争をする側・・・指揮官も一緒。感情的に駒を動かしても負ける。冷静に。皇帝陛下がなぜあれだけ力を尽くして戦争回避をしようとしたか考えて。国民の命を犠牲にしたくない。今ここで感情的になり開戦したら亡き皇帝陛下の御心を踏みにじります。」


「やはりそうか。」

父親の気持ちを分かっていたようで、あっさりと理解したアルバート皇子。やはり長男だけある。父親の背中をしっかり見ている。

「俺の独り言はまだ終わりません。リュート・クキ。そのままの俺の考え。この世界に来て何もない俺に市民権を下さったのは皇帝陛下。指名手配になった俺達をかくまい、手配を解除してくれた皇帝陛下。殺したのはもう見当がついている。帝国。奴らしかあり得ない。今にでも殺してやりたい。戦争をして叩きつぶしてやりたい。煮え湯を飲ませてやりたい。」


「・・・・何を言いたいのだ?」


「この二つ。どのようなバランスで保ち続け、答えを導き出すのが俺。もし、上からの命令で戦えと言われたら俺は命令拒否はしない。帝国とたたかうのなら本望だ」


「・・・わかった。リュート君。一か月の猶予をくれ。僕は君が父上にした対古代兵器対策をここで活かす。」


「答えが出ましたか?」


「まだ解らない。だけど、少し見えた気がする」


「それなら良かった。皇帝陛下は戦いたくはない。ならなぜ俺に対策を求めたのか?それはいずれ戦うと解っていたから。ではこのへんで。失礼しました」





俺はあの時のアルバート皇子の顔を思い出し今の顔と脳内で比較してみる。

「すっかり変っちまったな」

少し笑いそうになったが、失礼なのでこらえた。

「そうですね。」

俺の発言に隣でくすっと笑うローラ皇女。自分の兄の後姿を見て何を考えるのだろうか?

「前皇帝は・・・東オーレリシア帝国のまわし者により殺されたのは事実」


「そーだそーだ!!今亡き皇帝陛下のためにも帝国をたたきつぶせ!!」

国民からはアンチ帝国発言が繰り広げられる。そうとう帝国は恨まれているようだ。まあ俺も恨んでいる一人ですが・・・

「静粛に!!・・・・ここで皇帝陛下が殺されたのにもかかわらず我々は黙っていることしかできないのか?・・・いや、それは違う。この行為明らかに我々に対する帝国からの宣戦布告。皇帝となった我にはもう我慢はできない。国民のみんなにはつらい思いをさせるかもしれない」


「いえ、陛下を殺されて黙って見過ごせるものですか」

「今こそ戦争するべきだ!!」

「そーだそーだ」

国民の意見が一つになっている。そのことを理解したアルバート皇帝はかみしめていた唇を開いた。

「みんな・・・ポートランド皇国は国家国民総動員法を発令させ・・・」


「国家国民総動員法?」

大日本帝国の国家総動員法みたいなものか?

「国家国民が一つの目的のために働くことです」

やはりそうか。そんなことを話している時、今までにないアルバート・ポートランドの怒号が聞こえた。



「我々は東オーレリシア帝国に宣戦布告する!!」


「おおおおおおおお」


「皇帝陛下バンザーイ。バンザーイ」

次々に聞こえる歓喜。そうか、戦争になるんだな。俺は少し帝国に煮え湯をのませることのできるやる気と、皇帝陛下との誓いを守れなかったことに少し悔やむ。

「これにて我がポートランド皇国は戦争状態に突入する。では、これにて解散!!」

その頃。ポートランド皇国の東オーレリシア帝国大使館に正式な宣戦布告、そしてサルデーニャ帝国とプトレマイオス共和国にも同時に東オーレリシア帝国に宣戦布告してくれとの電報が空のMETを伝っていた。


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