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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第二章 日常編
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#38 皇帝陛下暗殺

――――――東オーレリシア帝国 首都ルーシアグラード グラード城

ここは東オーレリシア帝国の中心の場所でありここが無くなれば国内の政治と経済は崩壊する。軍事だけは地方の司令官が何とかするだろう。皇帝陛下そのような場所に俺を呼び出して何をするつもりか。とジークフリートは心の中で疑問を抱いている。

「ここが皇帝陛下の部屋・・・」

“コンコン”と手でたたく音が聞こえる。

「誰だ?」

鋭く野太い威厳のある声に少し足をひいてしまったジークフリートだが、本人は今日皇帝陛下に会わないといけないため逃げ出す必要はなかった。

「ルーシア征教教祖直属のルーシア護衛騎士団団長ジークフリート・アルジェントです。」


「ジークフリートか。入りたまえ」


「はっ」

俺は言われるがままに彼の言葉に従う。俺の目の前にいる人間。世界最大の軍事大国で、世界最大の国土を誇り、どのような国家にもひれ伏すことのない、むしろ数ある国をひれ伏してきた強国。東オーレリシア帝国皇帝。

「取りあえず座りたまえ」


「はっ!!」


「大和皇国での古代兵器の情報、ご苦労だった。貴殿のもたらした情報は我が国に多大な貢献をしている」


「もったいないお言葉。で、本日の要件とは?」


「うむ。我々は貴殿の情報により次々に古代兵器の採掘と我々の技術で可能な古代兵器の量産を開始している。我々の軍事力は周辺国を凌駕し始めているのだ」


「・・・戦争の準備ですか?」


「ああ。その通りだ。もう既に古代兵器の訓練になれた者はポートランド皇国、プトレマイオス共和国、ムガル連邦、大和皇国国境に配備し始めている。」


「その4カ国と同時に戦争ですか?」


「大和皇国とムガル連邦は予備だ。この二カ国とは不可侵条約を結んでおる。本筋はポートランド皇国とプトレマイオス共和国だ。貴殿が手に入れた情報のうち戦車と呼ばれるものは我が軍は既に160両、爆撃機と呼ばれるものは28機、戦闘機と呼ばれるものは43機発見し小銃と呼ばれるスルトが使っていた小銃と呼ばれる銃は約1000挺ほど前線配備されている。そこでだ、ポートランド皇国、プトレマイオス共和国、サルデーニャ帝国との三か国との開戦の準備を貴殿に手伝ってほしい」


「となると?」


「この三か国で同盟の中心はポートランド皇国だ。この国が開戦を宣言すれば三か国は開戦に移るだろう。つまり、ポートランド皇国を開戦させるのだ」


「でもどうやって・・・」


「貴殿がポートランド皇国皇帝を国民の前で殺す。そして、東オーレリシア帝国製の銃と国旗が描かれたマントを捨ててこい。そうすればあのアルバート皇子とやらは新たな皇帝となりこの事実をもとに開戦をするだろう」


「成程」


「あの大和皇国の軍事力から逃げてきたのだ。貴殿にとって難しいことではなかろう」


「お任せください。このジークフリート・アルジェント。ご期待にこたえてきます」


「うむ期待しているぞ」


「はっ!!」

俺は皇帝陛下に敬礼をすると、皇帝陛下に背を向けて外へ出た。そう、この行動は俺の自信から来ている。俺に人一人殺す任務などたやすい。ましてやただの老いぼれ。ふっ、見ていろ、ポートランド皇国。

「いまから貴様らを血祭りにあげる。待ってろよ!!スルト」

一人首都で恐ろしいことを叫ぶジークフリートだった。





・・・・・数日後

―――――ポートランド共和国 首都ウィーンペスト ポートランド城

「ようやく指名手配から解除されたか・・・」

俺は指名手配解除の言葉を聞いて肩の力が抜けその場に崩れる。

多分皇帝陛下、もしくは皇族の人たちが裏で手をまわしてくれたのだろう。いくら位の高い侯爵家であろうとポートランド皇国でポートランド家・・・皇族の言うことは絶対である。皇帝陛下が兵士に腹を切れと言えばもったいなきお言葉などと言って腹を切る位だ。

・・・・まあ大分昔の話らしいが。ただ、この指名手配解除のことでわかったこと。皇帝陛下はポートランド皇国で絶対の存在であり、また、皇族の地位が揺らいでいないということの証拠だった。

「無理もないよ。あれだけ外に出ることが禁じられていたしね」


「これで古代兵器の採掘の開始よ」


「あんな危険なことはしたくないぜ」

俺とイリーナとエアリィの3人は久しぶりに気が抜けた状態で他愛ない話を繰り返していた。そんな時に威圧感MAXの人が訪ねてきたのだ。

「リュート君。もう外へは出てもいいのだぞ。」


「こ、皇帝陛下」


「そんなに堅くなる必要はない。わしには君にお礼を言ってもしきれんのじゃからな」


「そんな、俺はそこまで立派なことはしていないです。」


「はて?」

皇帝陛下は俺の顔を見ながら首をかしげる。たしかに、戦争を起こさないために遠い東の国まで渡り、同盟を結んで、いつ開戦してもおかしくない関係を均衡状態へと変えた。なんて話は話の中では十分立派だ。だけど、俺はそんな立派なことはしていない。

「俺がしてきた行動が立派だと思えるのは結果だけを見たことです。結果的に俺は立派なことをしましたが、本当に立派なのはその裏で戦ってきた人がいるからです。」


「ふむ」


「大和皇国へ行き、装甲艦ローレライがジークフリート、そしてヴィクトルとよばれる東オーレリシア帝国陸軍の特殊部隊の人間に占拠された際、ただ沈黙し無言で戦い続けた捕虜となった将校、大和皇国の皇太子妃。五稜郭戦の時俺達を守るため必死に戦ったイリーナ、俺を助けるために動いてくれたみんな・・・彼らがいなければこの同盟は成り立たなかったでしょう」


「・・・ふむふむ。成程。そうだな。その通りだ。これまでオーレリシア大陸で戦争が起きないように戦ってきた者たちのためにも戦争は回避せんとな」


「はい」

俺達は戦争をするものか!!と誓うはずだった。

“ズドォン”となにか重い音が聞こえた矢先だった。

“パシュウン”と続いて聞こえたのは。

「あ・・・・あ・・・・あ・・・」

俺が目の前で見た光景は皇帝陛下の頭が粉砕された姿だった。





「ふぅ~・・・スルトとあの魔導士を殺せなかったのは残念だが、これを置いていけば俺の任務は終わり。帰りますか」

黒いフードをかぶっていたジークフリートは背中から翼を広げて空へ飛び立っていく。彼のいた場所には大きな銃が置かれていた




「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・」

言葉が出ない。いくつも死体を見てきたつもりだが・・・こんな衝撃的な死体は初めてだ。

「な、何してんのよ・・・リュート・・・?」


「いやっ・・・・ひっ・・・」


「リュート君。なにがあっ・・・・た・・・」

無理もない。音が聞こえた方向に次々に集まってくる人々。彼らはみんなその姿を絶句する。頭が砕けた死体。そこらじゅうに飛び散る脳みそ。所々に落ちている歯。目。耳。髪の毛。そして、俺の体中を覆う真っ赤な、紅蓮の焔ではなく血。まさしく本物の血。

「うげええええええ」

何人かの召使たちは嘔吐する。仕方がない。こんな死体軍人である俺ですら見たことがない。イラクやアフガニスタン、第二次朝鮮戦争に従軍したアメリカ兵は何度か経験があるらしいが・・・

「何がありましたの?」

急いで駆け寄ってくる第一皇女ローラ。

「見るな!!みるんじゃない!!」

駆けつけたローラ皇女に実の父親である皇帝陛下の死体を見せないために抱きしめるアルバート皇子。

「お、お兄様・・・みんな見ていますよ」

少し赤い顔をするローラ皇女。いや、あんた・・・それどころじゃないだろう。

「ローラ・・・目をつぶって後ろを向くんだ。そうだ。いい子。そのまま俺と一緒にあの部屋へ行こう。話がある」


「はぁ・・・。変なお兄様」

ローラ皇女がそう思うのも仕方がない。ローラ皇女は血を見る前にアルバート皇子に止められたのだから。きっと妹には見せたくなかったのだろう。実の父親の頭が粉砕になった死体など。




「これが・・・弾薬か。」

俺は皇帝陛下が撃たれた銃弾を確認する。

「大きいし、重い。これは・・・」

俺は確信した。C-2輸送機に入っていた対物ライフルM82バレット。あれですら12.7mm。人間など真っ二つに分かれるという。しかし、この弾丸はそれ以上。多分第二次大戦中に作られた対戦車ライフルレベルの弾丸。

「しっかし・・・どこで製造されているんだ?」

俺は無駄かもしれないが弾丸を見る。そして、そこに刻まれているマークに絶句した。

「な、なんで・・・・!!」

東オーレリシア帝国の戦車の時と同様、弾丸のマークは卍の斜め。ナチスのマークだった。


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