#36 指名手配
「貴様ら!!待たんか!!今投降するなら弁護人をつけることが可能だ!!」
「待てと言われて待つ奴なんかいない!!」
「なんでこうなったのよ?まったく・・・」
「「お前の所為だ!!」」
俺とイリーナの息がぴったり合う。と言いたいとこであるが、今はそれどころではない。なんでかって?それは今ロンツァート家の警備兵たちに追われているからだ。え、追われた理由は?それはだなぁ・・・・
――――――――今から遡ること1時間前位
「うわ~・・・さすが貴族の家。そこらの建物とは作りが違う」
俺達はいまロンツァート侯爵家の城ロンツァート城の無用の長物を見るために地下の廊下を歩いている。側近に人の話では普通は見せてくれないらしい。ではなぜ見せてくれたか?それはエアリィが無用の長物と呼ばれている物を見たいって腰を振りながら肩を寄せて胸を強調しながらネイハムに言ったからである。
「着いたぞい」
「でかい扉だな・・・」
俺達の目の前にある扉は5m以上はあると思われる大きな扉。
「なんせあれだけの大きさだからな。我がロンツァート家に伝わる家宝らしいんだが・・・使い方が分からず何なのかすらわからない。一部の人間は古代兵器なのではと叫ぶが・・・真相は解らない。こんなものに興味を持つなんて君も変わっているな」
「へへへ・・・」
(うむ、わしの理想のネコちゃんだ)
ネイハムは汚い目でエアリィを見る。しかしエアリィの頭は“あれだけの大きさ”と“古代兵器”という言葉でつまっておりそれどころではなかった。しかし
(あいつ・・・何考えているんだ?)
龍斗だけは違った。常にネイハム・ロンツァートの警戒を怠らず。すぐさまにでも左腰の日本刀を抜刀できるよう準備していた。
(もう我慢ならん!!)
ついにネイハム・ロンツァートは動き出した。
「ぐへええええええ」
「!!」
“バッ”と突如後ろから襲われたエアリィはとっさの行動に反応できずそのままネイハムの重さに抑え込まれてしまった。
「な、なにすんのよ!!どきなさい!!」
「わしに逆らうとどうなるか解っているのか?死刑だぞ死刑!!貴様・・・わしの正妻になれ。そうすればお前は好きなことができるぞ。ぐへへへへへ」
ネイハムはエアリィが抵抗するのにもかかわらず、身体をいやらしくべたべた触り、乳房をつまんだりする。
「んんんん!!」
「ぐへへへへっぐお!!」
「汚い手で触るな!!」
突如エアリィの身体の上から消えたネイハムは廊下の隅に置いてあったオブジェクトに衝突。オブジェクトは見事崩れ去りネイハムもオブジェクトと化した。
「リュ、リュート・・・」
「このために俺を呼んだんだろ?」
「き、貴様・・・わしをとび蹴りじゃと?何事だ!!」
「すいません。エアリィ様のお背中にどぶ鼠が付いておりまして。弾き飛ばそうとしたら急に逃げ出したものですから・・・」
「ぬぬぬぬぬ・・・貴様・・・言わしておけば!!」
あーあ・・・怒っちゃって・・・傍ではイリーナが口を押さえながらププププと笑っている。
「貴様らに命じる。こ奴らを捕えろ!!」
「へっ?」
俺達三人の空気が凍る。マジで?
「はっ!!了解しました。」
周りの警備兵たちは一斉に俺達に襲い掛かってくる。
「エ、エアリィ!!何ボケっとしてるんだ!!逃げるぞ」
「う、うん」
という訳なんだ。まったく・・・困った領主の子供だ。
「はぁ、はぁ、はぁ。どうする、のよ。とりあえず隠れることができたけど、このままじゃジリ貧よ。警備兵を殺せば別だけど、忍びないわよ?」
「ああ。元々殺す気はない。しかし・・・」
どうするか・・・このままではいずれつかまって殺されるのが落ちだし・・・皇帝陛下の力を使って助けてもらうのもあれだし・・・やっぱり逃げるしかないよな。
「イリーナ・・・悪いけど、大和皇国の時みたいにヴァルキューレになること出来るか?」
「うーん・・・あの時は良くわからないけど出来たから・・・うん。がんばる」
「がんばってくれ。といっても外が見えるところまで移動しないといけないんだけど、ここはまだ地下だしな」
「そうよね。それが困った話なのよね」
「今回の元凶であるあんたが何もなかったかのようにしゃべるな・・・」
俺は取りあえずエアリィに視線を送る。これに便乗してイリーナも視線を送るが反応なし。
「・・・・・いや、イリーナ。どうせあたしら脱獄人なんだし、ここで暴れても問題ないんじゃない?」
・・・脱獄人って、意味違うぞ。
「それもそうね」
「だからここから斜めに攻撃ぶっ放して、そこからイリーナがあたしとリュートを背負って逃げればOK」
「大雑把な作戦だが、確実性があるな。まあ、イリーナが無理しない程度だが」
「うん。やってみる」
イリーナの目つきが急に変わり身体がだんだんと緑色に発光し始め緑色はだんだんと白銀に変わっていく。
“バサッ”
と、イリーナの背中からは翼が生え、頭には羽根のついた兜に鎧。白鳥の羽衣。そして盾と槍。その姿はまさしく戦乙女、もしくは戦の女神とでも言うべき姿だった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
イリーナはヴァルキューレになった途端いきなり息切れをし始めた。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん。じゃあいくよ」
槍の刃先にイリーナはエネルギーを集めて放射させる。大和皇国での由利菜戦の時よりは威力がいく分落ちているが、それでも地面を貫通させるには十分だった。
「よし、開いたぞ。イリーナ頼む。」
「うん」
イリーナは女の子とは思えないほどのパワーを発揮し俺とエアリを両腕に抱え空へと羽ばたいて言った。
「ネイハム様!!やつらは翼をはやして飛んで行きました」
「は?意味のわからんことを言うな。素直に取り逃がしたと言え。もういい。プシェムィシル地区中に指名、いや、ポートランド皇国中に指名手配させてやる。警軍を呼び出せ」
「はっ!!」
「あのムスペル人め・・・こっちがした手に出りゃいい気になりおって・・・覚えておけ」
「やっほーい。イリーナ最高!!」
現在俺達は上空・・・多分数百メートルにいる。
「でもあまり無理はすんなよ?無理だったら休め」
「う、うん。でも、大丈夫・・・だ・・か・・ら・・・。」
「お、おい・・・・」
イリーナからは光が消え身体が元に戻ってしまった。
「ま、さ、か・・・・」
「ごめん。もう限界」
「この高さ・・・・」
「うわああああああ!!」
俺は多分いくら絶叫マシン好きでも味わえないほどの絶叫を味わった。あと後俺は語る。
「悶絶するかと思った・・・」
と。
「うぎゃあああああああああ!!」
「うをおおおおおおおお!!」
「もう動けない・・・」
先ほどに引き続いて俺達三人は全力で地面向けて落下中。楽しいな~。ははは、ははは、ははは・・・
「ははは・・・はぁ・・・楽しいわけないだろ!!」
「誰に突っ込みしてんのよ」
「五月蠅いなぁ・・・考えろ俺・・・よし。ちょっと待ってろ。えーと・・・・It is assumed it is alar in my back and I can fly over the sky.」
あ~この呪文唱えると思いだすなぁ。まだちょくちょく暑かった時、ギルド公社の闘技場でエアリィとの共同戦線。
「懐かしい」
「思い出に浸っている場合じゃないわよ!!」
「解ってるって」
俺の身体はしだいに緑色に発光していき、俺の背中からは翼が生える。
「よっと・・・」
俺は俺を取り残して地面向けてノンストップで突っ込んでいく二人をすぐさま追いかけて掴みあげる。
「うぐっ!!」
「ごほっ!!」
「おっと悪いな。さてと・・・これからどうしますか?」
「どうするって・・・」
二人は龍斗の質問に困惑していた。そんな二人を両手で抱えて“はぁ”という重いため息をつく。
「このままシャンバラ逃走劇でも演じるか?」
「冗談になってないわよそのセリフ」
「現実的だろ?」
「困るわね。その現実。」
「取りあえず・・・」
俺は左腕に抱えているイリーナを見る。相当疲れたと解る位にくたばっている。
「イリーナもなぜかわからないが、この様子だ。今日の計画は中止。南プシェムィシル村に帰るぞ」
「はぁ~もう。仕方ないわね。イリーナの方が大事だし」
結局エアリィの望んでいた現金も、古代兵器という事実すら手に入らずに俺達は退散するのだった。
――――――南プシェムィシル村外れの山の鍾乳洞のC-2輸送機・・・・
場所名長っ!!
長ったらしい場所で悪かったな。By作者
というおふざけはこの辺にして、日が落ち始めた頃、俺達は住処であるC-2輸送機内にいる。
「う、う~ん」
「お、目が覚めたか?」
「リュートに、エアリィ・・・どうしたの?何があったの?」
「お前がヴァルキューレ化して、俺達を抱えて飛んだらすぐに力尽きて倒れた。それを俺が精霊化して、二人をここまで運んだ。OK?」
イリーナは少し上を見て、なっとくという表情をした。たが、しばらくして彼女の顔はゆがんでくる。
「あの侯爵の息子は?」
「知らん。」
「・・・・やばいって!!絶対やばいって!!」
イリーナは俺の胸ぐらをつかんで青ざめた表情で俺に語る。
「「なにが?」」
俺とエアリィ。珍しくはもったぜ!!っとそういうことはどうでもよくて。
「あんな感じの奴はたいてい根に持つから。しかも侯爵家!!侯爵なんて言ったらポートランド皇国でも王族の次に偉い位の貴族の階級。国内でも12人しかいない。彼の権力が振るわれたら、あたし達・・・」
イリーナの言葉にエアリィの背中はゾクゾクと震える。しかし俺には何の事だかさっぱりわからない。
「全国指名手配・・・・」
「きゃあ~~~~」
「まじで・・・」
俺はそれから言葉が出なかった。
・・・数日後
―――――――ポートランド皇国首都 ウィーンペスト ポートランド城
「な、なんだこれは・・・」
一人新聞に記載された写真を見て絶句する皇帝陛下。
“バン”といきなり扉を開けて息を乱す皇子と皇女
「父上!!これはどういうことですか・・・」
「わしにもわからん」
“バシン”床にたたきつけられて新聞の音がする。
「くそっ!!」
叩きつけられた新聞にはリュートの顔とイリーナの顔とエアリィの顔の3人の顔が写っておりその下にはWANTEDの文字が書かれていた。
懸賞金合計120Agと。
――――――南プシェムィシル村
「ど、どういうこと?」
「あの3人何をやらかしたんだ!!」
ギルド公社南プシェムィシル支部の最強ソルジャーのアーノルド大佐は新聞を片手でつかみ小刻みに震えている。
「おい、ギルド公社!!3人をかくまってはいないだろうな?」
「わしは知らん」
「とりあえず、支部を探しまくれ!!」
「はっ!!」
「見つかったら貴様らにも連帯責任で罪をすりつけてやる」
「ご自由に」
(リュート君・・・・君は今無事に逃げきれているのか?)
遠い目をしながらアーノルド大佐は龍斗達の無事をただ祈るだけだった。