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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第二章 日常編
36/70

#33 宴会

――――――東京 軍港

俺達が大和皇国に来てからもう既に1ヵ月半以上がたっていた。そして今俺達は俺とジークフリートの激戦が行われたローレライのあった場所。東京の軍港にいる。しかも、ローレライの艦に付けられた国旗と金でできたポートランド家の家紋が取り付けられた2代目ローレライに乗っている。元は日本国海上自衛隊あきづき型護衛艦なんだが・・・

「世話になったな。高須」


「ああ。この1ヵ月半色々なことがあった。今でも昨日のように覚えている」


「ちゃんとお前からの親書ももらった」


「それについては僕からもお礼させてもらおう。ありがたい。うまく行けば僕達は戦争を回避できる」

ポートランド皇国次期皇帝アルバート皇子は高須に礼をする。この礼はアルバート皇子の私的な理由での例と国の代表としての感謝の二つが入っていただろう。

「勿論。そのために俺は協力したんだ」


「そろそろ出港します」


「おっと、出港のようだ。九鬼龍斗。達者でな」


「ああ。お前こそ身体壊すなよ」

俺と高須は右手を差し出し握手をする。それは、俺と高須の同期の桜を現しており、そして、もう一度会おうという無言の約束だった。

「・・・・・・遠くなっていくね」


「仕方がない。俺達はポートランド皇国に戻って高須からの親書を届けるんだ」

俺はそう言うと離れていく大和皇国の地に背を向けてポートランド皇国に着くまで二度と見なかった。そして、みんなも1ヵ月半過ごした大地を少しさびしげに見ていた。1名を除いて・・・・




――――――ローレライ船内 医務室

「うええええぇぇぇぇぇ」


「だ、大丈夫ですか?」

捕虜として捕まっていた将校の一人。この将校は獣人族の女兵士。と言っても、船内の医務室で医者として働いていたにすぎないが・・・・

彼女は今同じ獣人族の少女一名の面倒を見ている。その獣人族の少女の名前は“エアリィ”

「こ、これが、大丈、ぶに見える、のか!!!!」


「いえ、全く。それよりもそんなに大声出すと余計気持ち悪くなりますよ。ベットで休んでいてください」


「うええぇぇぇ。そうさせてもらうわ」





――――――――1週間後

「いやぁ~なつかしいな・・・ここ」

俺が今見ている光景は2代目ローレライから見る南プシェムィシル村。前方に見える山、その下の鍾乳洞に食い込まれている物体は俺とイリーナが住んでいるC-2輸送機。左手に見えるギルド公社南プシェムィシル村支部。もっと奥には川があり更に奥にはプシェムィシル要塞。右手には港が見える。別にここに寄るわけではない。

「もう少しだな。首都ウィーンペスト」





――――――首都ウィーンペスト ポートランド城

「良くやってくれた。感謝するリュート君!!」

俺の右手と握手をしているのはポートランド皇国皇帝陛下、そしてアルバート皇子とローラ皇女の父親。

「いえ、俺としてもこの異世界に来てまでも戦争をしたくはありませんからね。それに大和皇国の皇帝が俺の知り合いでしたのでとても助かりました。」


「そうか。・・・・・それとな、お礼というと変なのだが、ムスペル人はオーレリシア大陸では戸籍を貰えないんじゃ。」


「はい。」

勿論それぐらいは知っている。しかし、何故そんな話を俺に?

「だが・・・・この紙に君のサインさえあれば、君に戸籍を与えよう」


「まじっすか!!」

“ゴス”

俺はいきなりの提案で口調が完全におかしくなっていた。皇帝陛下に対するその俺の態度が気に食わなかったのか、近くにいたエーリッヒに殴られた。

「皇帝陛下にふざけた口に利き方をするな!!」


「す、すいません。いや、まさか、異世界から来て戦争の原因になろうとした人間に戸籍を与えるということに感激して」

俺がそう言うと素直に俺に皇帝陛下は紙を渡してきた。俺は迷わず速攻で紙にサインした。

「こんな感じで?」


「ふむ、君は我々の言語をしゃべると思っていたが字も書けるのだな。」


「はい。基本的な言語は俺の世界の母国と同じですから」

と言ってもポートランド皇国には漢字がなく平仮名と片仮名だけであるが。

「そうか。・・・・・まあこれにて君もポートランド皇国市民の権利を手に入れたんだ。堂々と胸を張って町を歩いてくれ」





――――――魔導機関車内

ポートランド皇国首都ウィーンペストに用事を終えて俺達は帰路についている。帰る方法は船を待つのも良かったが、時間がかかるため、駅に乗って途中で魔導機関車に乗るのがベストと見て乗ることにした。

「いい景色だな~♪」


「エアリィは何度もウィーンペストに行ったことがあるんだから見慣れているだろ?」

扉を開けて駅弁を食いながら景色を見ているエアリィはとても上機嫌だ。そんなエアリィなど目に入っていないイリーナは口を開いた。

「ねぇリュート・・・南プシェムィシル村に戻ったら何する?」


「そうだな・・・・疲れたから一日休んだ後お金集めでギルドでたまった大尉階級レベルの任務でもやろうかな?そのついでに、エアリィの用事も」


「ホント!?やった!!古代兵器を扱えるスルトが私に着いたから獣人族の独立も近づいているぞ!!」


「いや、それはあまり関係ないが・・・・」

そんな他愛ない話をしていたら車内放送が流れた。

「次は終点、終点、中央プシェムィシル駅。終点、中央プシェムィシル駅。下車する方は・・・」

俺は車内放送が終わる前に口を開いた。

「次は終点だそうだ。降りよう」

俺は二人に言う。そして、とりあえず俺はC-2輸送機に戻って眠りに就きたい。そんな疲れている俺に向けられる二人の顔は

「うん」

元気いっぱいだった・・・





――――――南プシェムィシル村

中央プシェムィシル村駅を降りてから徒歩2時間。例え徒歩でも2時間は疲れていて怪我が治ったばかりの俺にとってはかなりの苦痛であった。そしてさすがにもう辺り一面暗闇。しかし二人は元気元気で・・・・お出迎えに来てくれた人達も俺の寝かせてくれという希望は知らずに

「さぁ、飲め飲め飲め!!今日はわしのおごりじゃぁ!!」

一人盛大に騒いでいるのはギルド公社南プシェムィシル村支部傭兵部門最強のソルジャーアーノルド大佐である。勿論彼だけが騒いでいるわけではない。南プシェムィシル村支部のギルドメンバー、村人までもが騒いでいる。それは何故か?たかがソルジャー二人と獣人族一人が帰ってきてもこんな騒ぎにはならないだろう。この3人は皇帝陛下直々の任務を終えて帰ってきたからだ。

「ほら、イリーナも飲んで飲んで!!」

イリーナと同僚・・・・つまり少尉階級にあたるユリアは由利菜に酒を進めている。この世界では18歳が成人として扱われるらしいから、イリーナはどう考えても成人ではない。

「ちょっとユリア!!あんたは今年で18になるからまだいいけど私は今年でやっと15だよ?私はジュースで我慢する」

と言ってイリーナはジュースを飲む。紫色の。

「にひひひひ、言っとくけどそれジュースじゃないよ。ブランデーっていうお酒」

“ブウウウ“

と乙女とは思えない行動をしたイリーナは恥ずかしさよりもお酒を飲んだということに焦っていた。

「なんてことしてくれるの!!」


「あんたが勝手に飲んだじゃん・・・」


「うっ・・・」


「全くイリーナはだらしがないねぇ!!」

机の上に樽をドンと置いて「ぷはぁ~」とかオヤジ臭いことをして言う少女はエアリィ

「エ、エアリィ・・・・だよね?」


「当たり前でしょ?あんた大丈夫?」


「いや・・・・顔が火照っているエアリィに言われても・・・」


「エアリィちゃんの言う通りよ。大人ならがばっといきなさいよ。」

口を突っ込んだのはギルドメンバーで、ギルド公社南プシェムィシル村支部の受付係のアイリスさん。

「それに、ほらリュートさんを見なさい。飲み過ぎで机にぼってりくたばっているじゃない。あれぐらい飲みなさいよ」


「いやさすがにあんなにはなりたくないから・・・」

あんなとは・・・失礼な。ついでに言わせてもらうぞ。俺は酒は嫌いではないが好きでもない。更に言わせてもらおう。くたばっている原因は酒ではなく疲れとこの方たちのテンションについていけないからです。以上!!

「リュート・・・・・誰と話してるの?・・・怖い」

イリーナはそんな俺の姿を見て引いていた。だが俺は気にしない。突っ込む元気も怒る元気も俺には残ってないからだ。今は放っておいてくれ・・・・だが、この宴会のメインは俺達である。俺がそれから逃げられるはずなどなく・・・・

「おい、スルト!!なんか一発芸やれえや!!」

語尾が意味不明です!!と突っ込みたかったがそれよりも突っ込みたいのがあったからあえてやめた。そんなこと言う元気があるなら別のことを言うという感じだ。

「何で俺がやらんといけないんだ!!」


「だってお前達がこの宴会のメインだぞ!!当り前ようだ!!」

だから語尾変だっつーの。って言うよりも俺達がメインならむしろ俺は見るほうだろ?勿論反論でそれを言ってみたが、まあその経緯を言うのはやめよう。疲れるから。まあ結果的に、「なんでお前が観客なんだ?メインなんだからやっぱり一発芸だろ」という意味の解らない結末にたどりついた末、俺・・・“だけ”がすることになった。

「おっしゃー!!リュートの一発芸!!イェーイ」

完全にアルコールが脳に回っているようだ。エアリィはもはや別人・・・・というか・・・いつもよりテンションが高くなっている。

いや、そんなことを気にする問題ではない。一発芸・・・・俺にそんな芸が張る筈がなく・・・・いや。マジックなら多少できるぞ。よし。それにしよう。

「おほん。・・・えーと・・・わたくし・・・リュート・クキによる一発芸」


「ええぞ、ええぞ!!」

少しは黙ってられないのか?

「ではここに一枚の1Cu硬貨があります。」

“ピン”と俺はそのコインを指てはじく。そして、“パチン”両手をクロスさせて取る。

「さぁ1Cu硬貨がどこにある?なんて言われたら勿論この両手のどちらかにある筈です。あ、勿論両手にありますよ。ほら」

そう言って俺は両手を広げて観客もとい野次馬どもに説明する。

「そして、両腕を顔を隠すようにクロスさせて、元に戻します。そうすると・・・」

俺は手を広げてコインがないということを証明する。

「コインが消えた?」


「魔法でも使ったのか?」


「でも呪文は唱えてないぞ?」

ざわざわとざわめきが聞こえてくる。よしっ、とりあえずお茶を濁すことには成功したぞ。まあ、ただ単に、両腕をクロスさせた時にコインを握っている手を耳の方に持ってきて硬貨を耳にかけただけなんだが・・・

「では、もう一度両腕をクロスさせます。そして元に戻すと、ほら」

先程まで硬貨がなかった手の中に今はちゃんと1Cu硬貨がある。

「どうやったんだ?」


「おい、教えろ!!」


「では、私の一発芸はこの辺で?」


「もう終わりかよ!!」


「一発芸なので、一発で終わりにしました~では」

と一発芸終了宣言を宣告する俺。まあ、取りあえず恥かかずに済んだな。だが、これだけでは終わらずに旅の話などをみんなの前でさせられ、実は妹萌えだとか、変な性癖を持っているとかあらぬ疑いをかけられ、そして、このうるさい宴会は朝まで続いた・・・・


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