#31 お目覚め
「う、う~ん」
見たことのない天井を見上げながら目を覚ましたイリーナは取りあえず周りを見渡す。そして気づくことが
「ここはどこ?」
「目が覚めたか?」
「タ、タカスさん?・・・・どうして私はここに?」
高須は彼女のその質問に目を丸くしてしまった。
「き、君は覚えていないのか?」
「所々覚えているんですけど・・・・あの子と戦って勝ったところまでは覚えているんですけど」
「あの後血だらけの龍斗が君を背負って俺達と合流して君は助かった。」
「じゃあ、リュートは?」
焦った感じで高須に尋ねるイリーナだがそんなことよりも自分の体の心配をしろと内心思っている高須であった。
「あいつは昨日の夜中に目が覚めて、用事があるとか言ってすぐ出かけたよ」
「そうですか・・・・良かった」
「何がだ?」
「ベ、別に何でもないです」
♦
「リュート」
かなり上機嫌でリュートの背中に飛びつくエアリィ。彼女の顔は笑顔で満ち溢れていた。
「いて!!俺の怪我はまだ治ってないんだけど・・・」
「大丈夫」
「その根拠はどっから出てくるんだか」
「それよりも、なんでリュートはこいつの墓作ってるの?」
俺が由利菜を土に埋めてお墓を作っている行動に疑問をかけるエアリィ。まあ、普通の人間なら当たり前だろうな。殺そうとした人間のお墓を作っているのだから。
「彼女も戦争の犠牲者の一人なんだよ。戦争さえなければ彼女もこうなることはなかった」
龍斗は由利菜の墓を作り終えて立ちあがってうつむく。
「そりゃ、そうだけど、復讐と虐殺は意味が違うよ」
「まあな。それと、俺の亡くなった妹とそっくりなんだ」
「・・・・」
エアリィは少し悪いことを行った気がして口をかみしめて下を向く。
“ポン”
ふと頭の上に置かれた手にびっくりして身体をビクッとふるわせるエアリィ。
「気にしてくれているのか?」
「・・・ゴメンネ」
「べつにいいさ。もう過ぎ去った事。もう5年以上前のことだ。この世界に来る前、地球にいた頃の話だ。」
九鬼龍斗は龍斗製のお墓に花をささげると手を合わせた。それに合わせてエアリィも手を合わせる。
「由利菜・・・・もし、生まれ変わってくるなら・・・俺の妹の分まで綺麗に生きてほしいな」
「リュ、リュート・・・・」
「さあ戻ろう。イリーナが起きてるかもしれない。」
龍斗はそう言うと立ちあがって膝立ちしているエアリィに手を差し伸べた。
「う、うん!!」
♦
「うぃーす。戻ったぞ」
「リュート!!」
イリーナは久しぶりに見たリュートの姿に感激していた。
「イ、イリーナァァァァ!!」
「ぐへぇ!!」
イリーナが起きているのに感激したエアリィはイリーナに突撃を繰り出した。
「いてててて、私まだ怪我人だよ?・・・・それにエアリィは私のこと怖くないの?あんなことしたのに・・・・」
エアリィが見る私はあれだけのことした後なのだ。普通怖がるだろうと私は思っていた。でも、現実は逆だった。“パシン”と高い音が鳴った後、私の左頬はひりひりと痛んだ、
「バカ!!」
「え?」
「あんたがたとえ化け物になろうとたとえ現時点でも化け物だろうと、あんたはイリーナ。それに変わりはないでしょう」
「エアリィ・・・・」
最後の方は良かったが、最初の方は・・・・失礼な奴だと内心思って怒っているイリーナであった。
「うんうん。良かった。本当に良かった。」
「・・・・・・・」
黙り込むイリーナ。自分がかなりみんなに心配をかけたことを後悔しているようだ。
「でも・・・ああ、この細い体も頼りがいの無い薄っぺらい胸もみんなイリーナだ。やっぱイリーナだ」
「・・・・・頼りがいの無い胸で悪かったわね」
二人の光景を微笑ましく見ている二人。ほほえましい光景である。
「遅かったなリュート。やることは澄ましたか?」
「ああ。だがまだ一つ残っている」
「なんだ?」
「彼女の父親のところへ行く。きっと、親父さんは由利菜が復讐する事を知っていたから俺に由利菜を頼んだぞって言ったんだ。俺・・・謝りに行かないと」
「そうか。なら俺も行こう。俺が内戦の首謀者だからな」
「ああ」
♦
“ブロブロブロブロブロブロ”
俺達はUH-60Jに乗りこんで由利菜の住んでいた天照治療院へと向かった。
――――――1時間後
俺と高須はUH-60Jに大鷹3尉ともう一人のパイロットを残して地面に降りた。俺達の向かう先は天照治療院。
“コンコン”
「・・・・・誰も出ない?」
「開いているぞ」
俺達はこっそり扉を開けて、玄関を進む。
「誰もいませんか?誰かいたら返事してください」
「いないから返事こないんだろ」
俺達は先を進む。何か嫌な予感を感じながら。
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―――――5分後
「ここが最後か・・・・たしかここ、親父さんの自室」
“コンコン”
「誰かいますか?」
“キイイイイィィィ”
扉が開く音が聞こえる。そして俺達は見る。壮絶な光景を。
「うっ!!」
「血・・・・」
俺達が見た光景は血だらけの白衣を着た由利菜の親父さんだった。