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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第一章 大和皇国編
32/70

#29 決別

“もうすぐお兄ちゃんに会えるから”


私・・・頑張ったよね・・・・


“ドガアアアァァァァン”

由利菜を貫通したイリーナの攻撃はそのまま地面に直撃し辺り一面を吹き飛ばした。五稜郭全壊とはいかなくとも半壊以上で、軍事基地としての役割は無に等しく、アメリカ軍の空爆を受けたイラク軍の基地みたいな状態である。

「くぅぅぅぅ!!イリーナも攻撃する時はこっちのこと考えてよね!!」

救急車内にいるエアリィがそんなこと言っても勿論空中で戦闘中のイリーナに届くはずがない。そして、

「うわあああああああ!!」

爆風の衝撃により運転中の救急車は吹き飛ばされた。何トンもある車体が空を浮いている光景を見ればイリーナの攻撃の威力が解る

「リュートオオオオ!!」

吹き飛んだと同時に扉が開き龍斗は勢いのまま今だ空中の救急車の車外に放り出された。

「何しているんだ!!」

龍斗のそばへ行こうとしたエアリィはアルバート皇子に止められる。

「なんで止めるの?」


「今出たら君も地面に衝突するぞ!!」

その時だった。今までにないまぶしい光が視界を包み込み、次の瞬間

“ドガアアアァァァァァァン”

という盛大な爆発音と共に更に吹き飛ばされた救急車。その中からエアリィが見た光景はその爆発に巻き込まれる龍斗の姿だった。





「・・・・・・私は・・・・五稜郭を破壊できたの?」

由利菜は目が覚めて、寝たまま周りを見るとほとんどが平地だった。

「そっか・・・・自爆するために力を振り絞って魔法粒子を集めたんだ。あの女の攻撃で触発されて爆発したのか・・・・・ハハハ・・・・でも、私も終わり」

由利菜は腹に手を押さえて言った。

「もうこの身体は持たないし・・・・」


「そっか・・・・俺から言わせてもらうと君がいなくなるのはショックだ」


「!!」

不意の声に私は振り返る。そこにはお兄ちゃん・・・・・・の姿かたちをした偽物。そして、お兄ちゃんの仇である高須泰宜の親友。

「あんたか・・・・・もう、私には・・・あんたを殺す力なんか・・・残って・・・ない・・・わ」

最後に言いたいことだけは言ってやる。

「元々殺す気なんて、なかったろ?」


「な、何を言って・・・」


「だってさ・・・由利菜は俺の時だけ攻撃を手加減してた。イリーナにはあれだけやって。他の奴を殺すって言っても、俺の時だけ“邪魔をするならあんたも殺す”って、元々俺を殺す気なんてないんだろ」

な、何を言っているんだこいつは?

「何を考えているのか私には解らないよ。・・・・あんたの頭って・・・・ほんと、愉快だね。お気楽そうだよ。・・・・私もあんたみたいになれたなら復讐なんてしなくて良かったのかなぁ」

取りあえずこいつを馬鹿にしてみる。だけど、こいつの頭は本当にお気楽で愉快だ。馬鹿にしたのにもかかわらず笑顔で私に言う。

「たとえ、俺みたいに愉快で気楽じゃなくても由利菜は復讐しなかったよ」


「な、何を言って・・・現に私は・・・」


「何もしてないだろ?復讐するはずだった相手を殺してないんだもんな」


「でも、あんたに対して私は」

俺は出血が止まったお腹を見せる。

「これのこと言ってるのか?悪いけど俺も由利菜と同じ境遇でね。昔妹がいたんだ・・・由利菜って言う名前の」


「わ、私と一緒」


「名前だけじゃなくて声も顔もみんな一緒。唯一一緒じゃないのは性格。ちょっと長いけど、俺の昔話に付き合ってくれないか?」


「うん」


「俺は遠出していて、妹と母さんは実家にいたんだ。そして、帰ってくる当日。巨大な地震に見舞われて、帰ってきたら家がつぶれててさ・・・・俺は必至で妹と母さんを探したよ。」


「それで?」


「妹・・・・由利菜の方は見つかったんだ。お兄ちゃんって。だから、それで俺安心したんだ。由利菜が生きているって」


「・・・・・」


「だから、その後瓦礫を必死にどかして、母さんを探し続けたんだ。」


「見つかったの?」


「ああ。たくさんのがれきに埋もれた死体となってね。・・・・そのあと、由利菜を引きずりだそうと思ったんだ。だけど・・・・・俺の安心が、生きていたって言う安心が悪かったんだ。その時にはもう由利菜は死んでいたんだ・・・・あの時見つけてすぐに助けていれば・・・・・助かっていたのに」


「・・・・・」


「こんな話させてごめんな。」


「じゃあ・・・・今は一人?」


「ここに来る前・・・・ポートランド皇国にいた時はイリーナって娘と一緒に暮らしている。俺が命の恩人だもんで、お礼で宿代タダ。」

あの女か・・・・たしかに、こいつに対してはなぜかしら熱くなってたから・・・そうか。そういうことか。

「だからさ、俺・・・・君を見た時由利菜に似てるって思ったんだよ。なんか懐かしくなって、お兄ちゃんなんて言われた時はもう・・・・俺の感情移入が激しかったんだろうな。だから、君が復讐に燃えて俺を利用しているなんて知った時はショックだったよ。」

少しばかりか心がいたんだ由利菜は、お腹を押さえている手とは逆の手で胸を押さえる。なぜだろう。こんなに胸を締め付ける物は?由利菜は心の中で探していた。

「・・・・・・」

私はなんて言えばいいか解らない。

「でも・・・・例え同じ、名前が由利菜だったとしても君は君なんだよね。世界でたった一人しかいない。死んだ妹と似ているから、同じ由利菜だから・・・こう思うのかもしれないけど・・・・復讐なんてしないで、俺の死んだ妹の分まで綺麗に生きてほしい。まぁ、俺の一方的な感情だから無視してくれていいよ」


「・・・・・・ほんと・・・・お兄ちゃんと似て一方的」


「そこまで似ていたのか・・・・」


「うん。でも似てない」


「そりゃね。全く一緒なら人間じゃない。一人ひとり違うから人間ってのがいる。そこが、また人間のいいところなんじゃないの?・・・・・それと、なんで泣いてるの?」

嘘?私泣いてたの?

「・・・・・・ホントだ・・・・・」


「涙を流すのはいいことだ。・・・・・涙を流せるんだ。君の心の根っこはいい奴なんだ・・・・・立てるか?傷を治してもらおう。」

なんで、殺そうとした相手まで気を使うの?

「なんで、あんたは敵である私にまで手を差し伸べるの?」


「生きててほしいから。妹の分まで・・・・」


「そっか・・・・・でも・・・・あんたの願いかなえられそうにない・・・・」


「なんで?」

私は押さえていた手を放す。

「さっき攻撃を受けて・・・・こんなになっちゃってるの。だからもう無理。立つのも・・・・」

そこにはぽかんと穴のあいたお腹だった。腸もグチャグチャの・・・

「こんなんでむしろ生きている私はすごいよ。喋れてるし。・・・・でも、自分でもわかるの。早く寝かしてほしい。もう・・・苦しいのは嫌だよ。」


「由利菜・・・・」


「あんたも人のこと言えないよ。涙出てるもん」


「う、うるさいな」


「最後にいい?」


「なにを?」


「わたし・・・・九鬼龍斗、いや、お兄ちゃんに会えて良かった。それだけは死んでもずっと誇れそう・・・・・・お・・・兄・・・ちゃん・・・あり・・・が・・・と・・う」


「・・・・・おい、何が・・・どうしたんだよ・・・・おい・・・目を覚ませよ!!」

俺の目の前には目を閉じて血だらけの妹と同じ姿をし、同じ名前の由利菜。顔だけはとてもきれいな寝顔だ。しばらく俺は泣いた。また、救えなかった・・・・・





―――――しばらく死んだ由利菜の顔を見続けて、独り言を言う。誰もいないから聞いてくれる人がいないから言ったのかもしれない。

「・・・・・・・お前の兄さんも・・・・ここで亡くなったのか・・・・・せめて、俺も妹の償いで、連れてっても良かったんだぞ」

“ドス”

もたれかかった瓦礫の音が耳に入り、その振動が体中に響く。その振動は腹に響いた時、俺の神経が反応し脳みそに痛いという信号を送る。

「・・・・そっか・・・・由利菜にやられた傷・・・・良くなってる。血がほとんど出ていない」

龍斗は少しばかりか首をかしげて不思議になるが、しばらく頭を伏せて、思い出す。

「そっか・・・・エアリィ達に助けられたんだ・・・・」

再びリュートは由利菜を見る。

「こんなところで死んでいられるか。俺を必要としている人たちがいる。・・・・・死んだ二人の由利菜の分も俺も生きないと」

龍斗は心の奥深くに“生きる”という言葉を染みつけた。





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