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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第一章 大和皇国編
30/70

#27 ヴァルキューレ

「彼女は・・・・“ヴァルキューレ”」

“ヴァルキューレ”その言葉が俺が最後の聞いた言葉だった。



ヴァルキューレ―――――

北欧神話に登場する半神。日本ではワルキューレとして定着しているが、Walküre(ワルキューレ)のドイツ語での発音がヴァルキューレであるのが由来である。

戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在である。彼女たちは王侯や勇士を選り分け、ヴァルハラへ迎え入れて彼らをもてなす役割を担った。



「“ヴァルキューレ”?」

不可思議に思った高須はアルバート皇子に尋ねる。

「異界語で“ヴァルキューレ”・・・・・我々の言語ではヴァルキュリアと呼ぶ。」


「あたしも“ヴァルキューレ“なんて知らないわ」

続いてエアリィも首をかしげる。“ヴァルキューレ”という言葉に。

「オーレリシア神話古代最終戦争―ラグナロク―に続きがあることを知っていて?」

こんな状況なのにもかかわらず冷静に話す姿はさすが皇女様と内心感心しているエアリィ。

「知らないわ」


「古代最終戦争で勝ったオーディンとアインヘルヤルは宴をしていた。そのさなかレーバテインの炎によってオーレリシア大陸は火の海に包まれた。それ以降スルトによる攻撃は行われていない。まあ、これがラグナロクの詳細なのよね。で、今から私が言うのはラグナロクの続き。あまり知られていない話だから、国立図書館レベルの大きなところへ行かないと見られない書物に書いてあったんだけど、レーバテインの炎によってオーディンを残しアインヘルヤルはみな死んだ。彼らを天上の宮殿ヴァルハラへ向かいいれたのが、オーディンの娘のスクルドと呼ばれるヴァルキューレだったのよ。その時、空には緑色の光を発する道ができたという・・・」


「天上の宮殿ヴァルハラ?天使とでも言うの?」


「それは神話だから事実ではないのだろうけど、多分それに匹敵する力を持っていた、という裏付けでもあるのよ」


「ローラ・・・・空を見なさい」

アルバート皇子が、未だ暗闇に包まれた空を見上げた。それに続いてローラ皇女。不思議に思った二人を除いた周りの人間も空を見上げる。

「こ、これは・・・」

兄貴に呼ばれて空を見たローラ皇女は唖然としていた。

「METベルト・・・・」


「METベルトじゃない。METそのものがここへ集まってきてるからMETベルトに見えるんだ。」

空に映る五稜郭めがけて流れてくるMETはまさにオーロラだった。

「まるでオーロラだな・・・ってそんなことよりも龍斗をなんとかしないと。魔法使えるやついるか?」


「俺以外全員使える」

暗い声で言ったエーリッヒ。それ以外ということは残りの3人ということだ。

「なら龍斗の応急措置を。・・・・こちら高須泰宜。1.5トン救急車を派遣してくれ「了解」」


「解ったわ」

エアリィ、アルバート皇子、ローラ皇女は龍斗の傷の上に手を浮かべ同じ言葉を唱える。

「「「Heals」」」







「あなたも私の邪魔をするのね。ならいいわ。とっととお兄ちゃんのところへ行きなさい!!」

由利菜は右手をイリーナの方に向けて焔を放つ。その焔は龍斗がアンフェスバエナ戦の時に放った焔の何十倍もの大きさの物だった。だが、イリーナはよけない。

「避けないなんて・・・・相当なおバカさん?・・・・・!!」

そう。イリーナにはそんな物が利かないということが解っていたのだ。イリーナの手に持っている盾により焔は何もなかったかのように消火された。

「今度は私の番でいい?」

“ゾクッ”由利菜の背中は冷たい冷気が走ったような感覚に襲われた。

“目の前の女が怖い”

復讐だけに燃えていた由利菜にとって初めての経験だった。

“バン”

地面をけり、翼を使ってイリーナは空を飛ぶ。

「・・・・あなたにも大切な物があったように、私にも大切な物がある。もう、失いたくない。なくしたくない。二度と手を出さないで!!」

“パシュウン”

イリーナが振った槍からは振った方向すべてに緑色の衝撃波が襲う。

“パキーン”

「ぐうう!!」

由利菜はとっさに盾で防いだがいとも簡単に破壊されてしまった。破壊されただけでは済まずに自分自身も衝撃波に呑まれ落下して落ちて行く重力に身をゆだねた。

“ドガアアアン”“ドーン”

イリーナの放った衝撃波は由利菜だけでは収まらず振った方向すべてに行きわたったため駐車してあった戦闘車両、ヘリ、弾薬庫、オイルなどに次々と引火していき五稜郭では所々で大爆発が起こっていた。

「もう、なんなのよ!!」


「そんなこと言っている暇はない。とりあえずこのスルトを病院まで運ぶのが最優先だ!!」


「そうだ」







「消火班急げ!!」


「このままあの二人の化け物の戦闘を放置しておくと五稜郭が崩壊するぞ」


「それどころか東京まで火の海に」


「高須一尉・・・・高須一尉・・・・くそっ!!」


「どうでした?大鷹3尉?」

AH-64D アパッチ・ロングボウのパイロットである大鷹3尉と話しをしているのは高須の10式戦車の操縦手として搭乗していた藤田1曹。

「ダメだ。連絡がつかない。高須1尉の次に偉い荒木2尉は今ここにいないし・・・仕方がない。緊急のため現場指揮は俺が取る。各員俺の傘下になれ。直これは緊急時だからである」


「はっ!!」


「これ以上暴れられると、五稜郭が崩壊する可能性がある。それだけは何としてでもとめるのだ。二人の戦闘を止めることが最優先だ。最終手段で片方の殺害を命じる」


「はっ!!」


「俺達も乗るぞ」

“ブロブロブロブロブロブロブロブロ”

ヘリポートのAH-64D アパッチ・ロングボウが次々に起動し始める。それと同期するかのように動き出す戦闘車両。そして、二人の真下に並ぶ警備兵たち。

「ねぇ?あなた、どの国から来たか知らないけど、私の祖国で暴れないでくれない?そのせいで正規軍まで来ちゃったよ?」


「あなたがリュートやタカスさんを殺そうとするからでしょう。あなたに何があったかは私は知らないしあなたの気持も解らない。第一に解りたくもない。だけど、解ってるからあなたと戦うの。」


「解ってる?何を言い出すかと思えば、私の気持ちなんかあんたに解るもんですか!!」

“パキーン”

イリーナが由利菜の癪に触ったようで、由利菜は猛突進でイリーナに巨大な剣を振る。しかし、イリーナの持つ盾によっていとも簡単に防がれてしまう。

「解るよ。大切な人を失いたくないって。私も復讐するなんて気持ち・・・解りたくないけどそこだけなら解る。・・・・だから、大切な人を、大切な人たちを失いたくないから、あなたの気持が解るから、あなたと戦う・・・・・・だけど、あなたとは本当は戦いたくない。もう復讐なんてことやめようよ。そんなことしてもあなたの心にもやもやが残るだけで。それ以外何も残らない。誰も救われない」

イリーナは敵であるはずの由利菜に対して微笑む。しかし、復讐に燃える由利菜に対してそんなことは焼け石に水だった。

「黙れ!!所詮あんたの言っていることはきれいごとにすぎないのよ!!・・・・あんたのその言葉でみんなが救われるなら戦争なんて起きないわ。人々は誰かを憎んで報復してまた人を憎んで報復しての繰り返しで歴史を作ってきた。人々は互いに憎みいがみ合わないと生きていけないのよ!!」


「そうだよ。あなたの言っていることは間違ってないわ。でも、私は事実を信じるよりもきれい事を信じたいな」


「まだいうの?(こいつといると調子が変になる)・・・・それとも強い者の極みかしら?」


「あなたがどう思おうとあなたの勝手だけど、あなたがまだ復讐を続けるなら私はあなたの邪魔をし続けるわ」


「そう。なら、私は目の前の障害をたたきつぶすだけ!!」

“パキーン”

再び交わった剣と槍の衝撃波は再び五稜郭を破壊し始めた。

――――――――もう彼女達を止められるのはだれ一人いない



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