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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第一章 大和皇国編
29/70

#26 覚醒

「さっきはごめんねリュート。もうあんなこと二度と言わないから。本当は生きていて嬉しかったんだよ。ジークフリートに殺されたかと思ってたんだから・・・」


「あんなこと言ったけどあたしはあんたに死んでほしくなんかない。生きていてほしいよ。もう無茶だけはやめてね」


「・・・・・私の場所が取られた・・・」





俺は今ものすごい窮地に立たされている。女性にもてたことがない人間には嬉しいかもしれないが・・・・女性に興味もなく・・・というと変だがそれほど熱烈になるほど興味を持ったことがなく、もてたこともない俺は、女性免疫がない。つまりこの場はものすごく危険なのだ・・・いや、別に普通に接するだけなら問題ないのだがこんなに・・・・話は数分前に戻る





なぜか怒りをぶちまけて、俺に死ねといった二人は何処かへ消え、高須は俺を憐れんだ。唯一俺のそばに入てくれた由利菜に励まされ立ち直った俺は取りあえず寝室に行くことにしたんだ。夜だったしね。

「なんか良く解らない一日だった・・・」


「元気だしなよ。お兄ちゃん」


「はぁ~・・・・ため息ついてもしょうがないし寝ますか・・・」

そう言った時だった。

“ビリビリ”

と倒れてきたふすまが俺の頭によって貫通した音が聞こえたのは。

「リュート何処にいるの?」


「さっきはあたしたちが悪かったから・・・・・その、機嫌直して」


「お前らが踏んでいるふすまの下にいる・・・・・」


「こんなところにいたのね」


「まったく。あたしのスルト様であるリュートを誰がこんなにしたのよ。」


「お前達だ!!」


「「てへっ♥」」

何がてへっ♥だ!!

「それよりもリュート・・・・さっきはごめんね」


「仲直りのしるしで一緒に寝よ」


「はぁ?」




ということである。俺は今布団で寝ているのだが、右手にエアリィ、左手にイリーナが超密着状態。イリーナは小さいからそうでもないがそこそこ大きいエアリィの胸は俺にとっては衝撃過ぎる。失神しそうなぐらい・・・・そして、由利菜が異常なほど空気。

「リュートのご飯おいしかったよ・・・・すぅすぅ」


「もうリュートの馬鹿・・・・すぅすぅ」

俺を置いて寝やがって・・・・まあこれで俺も寝れる・・・・・・






「一睡もできない・・・」

完全にこいつらが密着しているせいで俺はまともに寝ることができなかったのだ。

「くそ・・・」

俺は一睡もできなかったのに未だに寝てやがる二人をどかして、気分転換することにした。






「なんか・・・・安心した」

空はまだ夜のようで暗闇に覆われていた。

「ほう。なにが?」

五稜郭の一番高いところ・・・・風が当たり月の光ですらまぶしく感じていた時不意の声に振り向く。

「高須か・・・・そうだな。とりあえずお前が生きていたことに」


「はぁ?・・・・そろそろお前いい感じにネジ外れてきたんじゃないか?」


「ふっ・・・・そうかもな」


「・・・・後で話がある。この話はお前とじゃないと出来ない。・・・・というよりもお前以外理解できないから」


「ふーん。」






「というわけなんだ」


「なるほど。」


「アルバート皇子と話し合った結果技術支援をしてくれと。でどうするかというわけなんだが・・・で、なんで妹さんがいる?」

なんか起きていた由利菜に高須と話しがあると言ったらなぜかしらついてきたのだ。

「そこは置いておいてくれ・・・・成程ね。しかし、ローレライを解体する代わりにあきづき型護衛艦コピーを渡すのは・・・・使い方わからないだろう」

俺の言いたいことはつまり機能性抜群の自動車を持っていても免許がなきゃ扱えないということだ。

「そこら辺をついてくると思ってな・・・もうすでに、人質となっていたローレライの将校達をあきづき型護衛艦に乗せて訓練させている。」


「成程。なら、この時代でも作れそうな銃とか、そこらへんの資料とかは?」


「取りあえずボルトアクション式の銃とかならあるが?」


「その辺も」

あからさま地球にいた人しか解らない話をずっとしていた。その時気付いたのが普通こんな話を聞かされていたならば知らない人は眠くなるだろう。しかし、由利菜は違った。うとうとするどころか目は常に鋭く、高須をずっと見ていた。

(やはりあの寝言は・・・・本当なのか?)

俺の由利菜に対する警戒感は再び戻っていた。

「龍斗。これを受け取れ」

そう言って高須が俺に見せてきたのは日本刀だった。

「俺剣術なんて習ってないからわかんねえぞ」


「いいから。餞別だ。それにそう簡単には壊れはしない。10式戦車に使われている複合装甲を転用した物だ。」


「ふーん・・・・なら、ありがたく貰っておくぜ」

そう言って俺が高須から日本刀を貰おうとした時、高須が由利菜に背を向けた時だった。

「高須泰宜・・・・お兄ちゃんの仇。貴様は・・・・死ねぇぇぇ!!」


「何!?」

由利菜の腕が巨大な剣になり高須を襲う。

「させるか!!」

先程高須からもらった日本刀を鞘から抜いてその攻撃を間一髪で防ぐ。少しタイミングがずれていたら高須は死んでいただろう。

「やはりそうだったか!!由利菜が俺に近付いたのも、高須を殺すために懐に入り込むためだったか」


「何で知ってるのかなぁ?私そんなことあんたなんかに言った覚えないけどなぁ」


「寝言で聞いたんだ。内戦の首謀者である高須泰宜を殺すこともって」


「ふーん。あんた、こそこそと寝言聞くような趣味あったんだ。あんたも邪魔をするなら容赦しないよ?」

もう俺の知っている由利菜ではない。別人だ。後あえて心の中で文句を言わせてもらおう。俺には寝言を聞くような趣味はない!!

作者から言わせてもらおう!!龍斗さん・・・・充分人の寝言聞いてますよ・・・

「やっぱり猫かぶっていたのか・・・」


「当たり前じゃん。お兄ちゃんとお父さん以外に私は甘えないわよ」


「見習い魔導士に俺がやられるとでも?」


「あんたそんなこと信じていたんだ。でもそれ大間違いよ」


「そうか・・・天照由利菜・・・どこかで聞いたことがあると思ったら・・・・大和皇国屈指の最強魔導士・・・天照大神の子孫と呼ばれた・・・・」


「へぇ・・・内戦を起こした張本人高須皇帝も知っていたんだ・・・なら解るわよね?私に勝てるやつなんていないんだよ・・・・」


「うぐっ!!」


「もがけもがけ!!」

空を浮かび体中から火や、氷、暗黒物質らしき物等物理的にあり得ない攻撃を繰り出す由利菜に対し俺は常に防戦の一方だった。さらに続けて両手を巨大な剣にし、俺に次々と攻撃を繰り出す姿と、復讐に笑う顔は魔導士ではなく鬼女であった。

「見習いなのは治療院の先生だけか」

俺は低姿勢で高須を守っている。

「なかなかやるね・・・・だけどそろそろ終わりにしようかな」


「そうはさせるか!!」

俺は死んでたまるかとの思いで右手を空に浮かんでいる由利菜に標準を合わせる。そして、この前由利菜を守った時の魔法を・・・

「Charged particle gun!!(荷電粒子砲)」

シーン・・・・・・

「・・・・・あれ?」

この前は成功したのに!!何故だ?」


「体内の魔法粒子が足りないんじゃないの?」

由利菜の言葉を聞いて、周りを見渡すと由利菜の身体が緑色に発光しているだけでなく、体中に緑色の粒子が集まってきている。まるでGN粒子に包まれたGUN○AM。

「もしかして・・・」


「?・・・あんたの考えていることは解らないけど、周辺の魔法粒子は私の身体に集まるようにしてあるの。あんたに集まる魔法粒子はないわ」

まじかよ・・・・でもこれだけの力があるのに・・・どうして?

「なんで・・・」


「???」


「なんで・・・何でこれだけの力があったのに・・・お兄さんを修二さんを救えなかったんだ!!」


「だまれ!!」

一瞬由利菜の目が今までに見たことがないほど恐ろしい目になり、俺は力負けして吹き飛ばされてしまった。まずい・・・・地雷踏んだぞ俺。

「お前ごと気が・・・・お兄ちゃんの名前を気安く言わないで!!」


「かっは!!」


「救えなかった?ちがう。救わなかったんだよ!!・・・・あの日私はお兄ちゃんと一緒に東京にいた・・・・旧皇帝派の正規軍と共に。そして、東京を囲むクーデター軍は正規軍の8割を占め、謎の兵器を使っていた。いくら私とて、その兵器を破壊することは困難だった。私が無力だったばかりにお兄ちゃんは死んだ。私の目の前で・・・・私は家まで逃げ延びた。お兄ちゃんはまだ生きていたかもしれない。だけど、私はショックでそのまま逃げた。今となってはそれが後悔となっている。私の所為・・・・だけど・・・元の元凶はこの男だ!!こいつさえいなければ私たち家族は幸せに暮らせたんだ!!」

そう言って人差し指と鋭いまなざしを高須に向ける。無理もない。彼女の言っていることは本当なのだから。クーデターを起こした張本人は高須泰宜なのだから。

「成程。つまり君にとって俺はお兄さんの仇というわけか・・・・ならば殺すがいい。君には俺を殺す権利がある。ただし、そのかわり俺にも君と全力で戦う権利もある」


「言ったね?なら、私も全力で行くよ」

由利菜はそう言うと両手を広げて深呼吸した。

「はぁ!!」

さらに続けて叫び声を上げた瞬間背中から黒い翼が生え五稜郭の建物を風で吹き飛ばした。

「せ、精霊化魔法・・・」

俺は日本刀を地面にさし、突風に耐えていた。

「精霊化なんて生易しい物じゃない。・・・・これは・・・悪魔契約魔法」


「良く知っているね・・・・そう、この黒き翼こそがその証。わたしは復讐のためなら何でもする。例え悪魔と契約したとしても」

そんな時だった。吹き飛んだ屋根の音や、爆音、雑音によって目が覚めた人たちがまるでゾンビのようにぞろぞろと・・・

「なにごと~」


「二度とリュートを離さない・・・・・ん?」


「何事だ?ってお前スルト!!生きてやがったか」


「あらあら・・・わたしったらリュートさんの幽霊でも見ているのかしら?」


「ローラ・・・・多分本物だと思うのだが?」

寝室からぞろぞろと出てくる使節団一行。その光景を見てびっくり。まずはじめに俺を見てびっくり。次に屋根が吹き飛んで五稜郭の建物の所々から火が上がり、警備兵が警戒の鐘を鳴らしている姿にびっくり。

「俺が生きていたことは後で説明するから、今は置いておいてくれ」


「なにがどうなって・・・」


「ちっ・・・邪魔もの達が出てきたか・・・・まずはお前らからお兄ちゃんと同じ所へ連れて行ってやる。はあ!!」

全く無関係な人たちに由利菜は無数の剣を投げつける。たぶんMETによって精製された物だろう。

「あ、危ないわよ!!それにあんた何者?」

さすがエアリィ。危険察知は良くできている。

「良くよけたわね。褒めてあげるよ。!!」

何が起きているかよくわかっていないイリーナはいまだに寝ぼけていた。それを由利菜は見逃さなかった。

「次は貴様だ!!」


「さ、させるか!!」

俺は身を呈してイリーナの前に出る。

「かは!!」

無数の剣は俺に突き刺さっていく。

「へぇ、やるじゃん。見なおしちゃった・・・」


「・・・ないだろ」


「ん?」


「こいつらは・・お前の、由利菜の復讐とは全く無関係だろ!!」


「そんなことないわ。高須泰宜を殺すことも復讐の一つだし、彼にかかわった者を殺すのも一つ。」

龍斗は苦しみながらイリーナの前に立ち由利菜に対して言い続ける。

「そ、そんなのは、ただの虐殺でしかない。例え修二さんが復讐を望んだとしても、きっと虐殺は望まないはずだ。俺はそう思っている」


「お前なんかにお兄ちゃんの気持ちが解るか!!解らないくせに語るな。・・・・お前がお兄ちゃんの姿かたちをしているだけで罪に等しいんだよ!!」

先程とは比べ物にならないほどの大きさの剣を何本も生成してイリーナに向けて投げつけてくる。勿論何本かは高須からもらった日本刀で防ぐが、防ぎ損ねた1本が俺の腹を貫いた。

「かっはぁぁぁぁ」


「ははは、どう?苦しいでしょ?お兄ちゃんの気持ちが解ったよね?ならもう手を出さないで。姿形が同じ人を殺したくないの」


血だらけになって動かなくなったリュートを見て茫然とするイリーナ


「リュート・・・だよね?何で血だらけなの?どうして・・・・」






「ねえどうして!!」


「次はお前か?・・・私の前に立つということは死を望むということだね?いいよ。お望み通りお兄ちゃんと同じ所へ行け!!」

巨大な火の玉を作り上げた由利菜はそれをイリーナに投げつける。

“ゴオオオオォォォォ”

イリーナを中心にして激しく燃え広がる炎。だれもがイリーナが終わったと思っていた。だが、その結末は誰もが予想だにしない結果だった。

「あらら、弱った草食動物よりもあっという間だったわね。」


「誰が?」


「???」


「誰が弱った草食動物ですって?」

“パシュウウゥゥン”

由利菜の放った火の球はイリーナにあたったが、突然緑色に発光し始め何事もなかったように火が消えイリーナはそこにいる。

「・・・・傷一つない・・・・あんた何者?」


「私はイリーナ・ソフィア・・・・キエフ=ソフィア王国第二王位継承者兼第一王女。そして、キエフ=ソフィア王国最強の魔導士。これ以上リュートに・・・・みんなに手を出すなら容赦しない」

そこに立っていたイリーナの姿は緑色に発光し、その姿はまさしく“ネ申”・・・・ではなく“神”であった。

「鎧に羽根の生えた兜、白鳥の白衣に槍と盾・・・・白き翼・・・・・まさか・・・」

俺は僅かな意識の中アルバート皇子の声が聞こえた方向を向く。そこには見たこともないアルバート皇子の驚愕の顔と震えた足・・・





「彼女は・・・・“ヴァルキューレ”」




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