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スルト  作者: オーレリア解放同盟
第一章 大和皇国編
23/70

#20 CODE:LORELEI

「おらおらおら!!どうした?動きが鈍いぞ?」


「くっ・・・」

俺は今ジークフリートと久しぶりの差しの勝負をしている。しかし、勝負どころではなかった。俺の持っている武器は高須から渡されたハンドガンとナイフ。それだけだ。それに比べてジークフリートは長さが1m50はあるかと思えるほど大きなバスターソード。





・・・・・・・・何時間たったか解らない。いや、多分10分もたってないだろう。しかし、その10分はとても長く感じられた。なぜか?俺がここで足止めしなければ彼女らは、人質諸共殺されるだろう。奴は殺すとは言っていないが、俺の本能的にそう感じられた。しかし、俺はそんなことをしておいて奴とまともに戦えているわけではない。攻勢は無論守勢を強いられている。むしろ守勢すらできていない。そんな中右耳から聞こえる機械音。インカムのコール音だ。

「なんだこんな時に!!」

俺はよけながら多分高須だと思い通信している。

「なんだとはなんだ。お前今どこにいる」


「艦橋戦闘指揮所前だ。」


「何しているんだ!!」


「いま、お取り込み中で、うわっと・・・・簡単に言うと戦闘中だ。この事件の首謀者とな。だから話しかけるな。人質をとっとと逃がしてローレライを攻撃しろ!!」


「そしたらお前も巻き込むだろう」

龍斗は高須の言葉を聞いてジークフリートの攻撃をよけながら左手のG-shockを見ていた。

「攻撃開始は何時だ?」


「とりあえず攻撃部隊の準備は整っている。俺達の脱出の準備もできている。後はお前しだい」


「なら先に脱出してろ。攻撃開始は今から5分後にしてくれ。こちらも5分後にギリギリで脱出する」


「そんなアクションスターみたいなこと出来るか!!」


「そんなアクションスターみたいなことをシャンバラに来て俺はやってきたんだ。大丈夫。10分たったらもう、陸についている予定だ。安心しろ。首謀者はそんな強くない。すぐ片がつく」


「・・・・・わかった。とりあえず・・・・」


「とりあえず?」


「死ぬな」


「OK」

こうして俺と高須との通信は途絶えた。それと同時にジークフリートは攻撃をよけてばかりいる俺に対して挑発と侮辱を兼ね備えた言葉を言ってきた。

「避けることだけが貴様の能力か?」


「言わせておけば!!」

右の腰に隠しておいたハンドガンを右手で引き抜き俺はジークフリートめがけて引き金を引く。それと同時にジークフリートはバスターソードで防御態勢を取る。

「やったか・・・」


「これが古代兵器か・・・・われらの先祖はこんなものに負けたのか・・・」


「!!」

ジークフリートのバスターソードには何一つ傷がついてなかった。

「・・・・もういい。吐き出させようと思ったけど強制的にする。」


「?」

意味不明なことを言い出したジークフリートに理解ができず困っていた時に、猛スピードで俺に接近してきた。

「!!」

腰につけておいたナイフをすぐに抜き取り防御態勢を取ったが・・・

「そんなもので防げるか!!」


「ぐっ!!」

勿論30cmほどのナイフで1m50cm位のバスターソードを防げるはずがなく、あっけなく吹き飛ばされてしまい、さらに続けて後ろの壁に叩きつけられた。

「かはっ!!・・・ウグッ!!」

それとほぼ同時にジークフリートは俺の首を掴み壁に叩きつけながら持ち上げる。俺の脚は既に地面についていない。

「捕まえた♥」


(キモイ!!)


「さーてと、俺の欲しいのはこれだ!!」





―――――――五稜郭 ヘリポート

“ブロブロブロブロブロブロブロブロブロブロ”とヘリコプターが離陸していく。離陸していくヘリはAH-64D アパッチ・ロングボウが2機。UH-60Jが4機。UH-60Jには特殊部隊が搭乗している。

「こちら、大鷹3等陸尉。攻撃部隊は指定の位置についた。」


「そうか。・・・・あと30秒・・・・・15秒・・・・10秒・・・・5・・・・4・・・・3・・2・・・1・・・・。これより、装甲艦ローレライ攻撃命令コード:ローレライを発動する」


「コード:ローレライ発動確認・・・・了解。こちら大鷹3等陸尉。各機通達する。エンペラー直々の命令。コード:ローレライ発動。これにて、装甲艦ローレライを大破着底・・・場合によっては占拠する。」


「はっ!!」

それと同時にAH-64D アパッチ・ロングボウ2機を先頭に、後ろにはUH-60J4機が続く形でローレライに接近していく。

Target(ローレライCheck・・・・・AGM-114N ヘルファイアII Fire!!」

大鷹3尉の一言により3機のAH-64D アパッチ・ロングボウは対艦用ヘルファイアミサイルをローレライに向けて放った。






「お前のその脳みその情報・・・いただくぜ」

ジークフリートは俺の頭のてっぺんに掌を置き、おもいっきり握る。俺の頭はものすごい痛みにさらされた。

「さあ、こいつの情報を俺の脳みそに移せ!!」

ジークフリートの掌は緑色に発光している。

「こ、これが・・・・スルトの・・・・・・戦車、戦闘機・・・・成程。古代兵器が動かなかった理由はガソリンと呼ばれるものを入れてなかったからか・・・・蒸気機関・・・ふ、ふはははははは!!素晴らしい」


「くっ!!」


「必要なものは手に入った。もうお前は用済みだ。・・・死ね!!」

ジークフリートは右手に再び構えたバスターソードを俺に向ける。俺の人生短かったなとか思いそうになった時。

“ドガアアアアアアアン”と大きな音と共に艦橋が爆発した。いや、爆発したではなく爆発された。爆発と共にジークフリートは吹っ飛び、俺はやつから解放された。







どれくらいの時間がたったのだろうかは俺には解らない。ただ解ったのは“生きている”ということだけ。目を開けてみるとそこは暗く静寂な艦橋ではなく、熱く、焔の海に囲まれた地獄のような艦橋であった。

「何が起こったんだ!!くそっ・・・火の海じゃねえか。ちくしょう。」

“ドガアアアアン”次々に色々なところから聞こえる爆発音と衝撃、揺れ。パチパチと燃え広がる火。突然の事態により対応ができずにジークフリートはパニックになっている。

「・・・特殊部隊の攻撃ってこれのことか・・・・・」

そう独りで呟いた俺は落ちていたジークフリートのバスターソードを手に持ち、パニックになっているジークフリートめがけて突っ込むために立ち上がる。今の俺には魔法を使って火を消すほどの気力もなく、ジンジン響く頭の痛み、少しでも気を抜いたら意識が遠のいて行きそうな状態の中、俺の頭には生き抜くという言葉ではなく、“殺す”という言葉しか浮かんでこなかった。古代兵器の使用方法や俺の知っている技術の情報などが帝国内に伝わったらまずいことになるからな。せめてジークフリートを道ずれに・・・

「・・・はぁ、はぁ、はぁ」

俺はバスターソードを持ったまま立つだけでめまいが激しかった。

(やばいな・・・・やはり、あいつが俺の記憶をコピーしたのが原因か?)

しかし、それでも龍斗のすることに変わりはなかった。





――――――ローレライ甲板

“バババババ”“ドガアアアン”この二つの鈍い音がポートランド皇国海軍新鋭装甲ローレライ甲板で交差していた。

「うわあああ!!」

「グフッ!!」

「ここは捨てるぞ。艦内部に逃げっウグ!!」


「こちらローレライ制圧部隊アルファーチーム。艦首制圧完了」


「こちらブラボーチーム。艦尾制圧」


「こちらデルタチーム。右舷制圧」


「こちらガンマチーム。左舷制圧。」


「となると残りは船内に立てこもった奴らだけだな。」

高須は人質を陸に連れた後包囲していた軍のテント内の無線機で“特殊部隊”と話している。

「立てこもっただけに厄介です。どうします?降伏勧告をして、従わなかったら撃沈するとか・・・」


「ちょっと待ってろ・・・・アルバート皇子。お話が」

高須は近くにいたリュートを除くポートランド皇国からの使節団の中からアルバート皇子を選んだ。

「誠に勝手な話なのですがいいでしょうかな?」


「・・・」


「現在ローレライにいた兵士たちは半分は艦内に立てこもり反抗をつづけています。降伏勧告に従わなかった時に、撃沈するという形になりますが、よろしいでしょうか?」

アルバート皇子は難しい顔をしながらも、堅い口を開き、重たい腰を上げた。

「仕方がない。それしか方法がないならそれで構わない」


「そうですか。では、無礼ながらも・・・・・こちら高須。降伏勧告に従わない場合のみ、AH-64D アパッチ・ロングボウ2機による総攻撃を開始し、ローレライを轟沈しろ」


「はっ!!・・・・我々はポートランド皇国軍。貴様らは完全に包囲されている。今降伏するなら名誉ある扱いをする。制限時間は1分。降伏するなら手を上げて外へ出てこい。」





「出てきませんね」


「仕方がないな」

制圧部隊の指揮官はしぶしぶ最終命令を出した。

「大鷹3尉。我々は今からローレライを降りる。我々が避難し終わったら総攻撃を開始してくれ。」


「了解」

そのやり取りが終わった後ローレライの甲板から60名の黒い物体は一斉にローレライを降りて行く。そして、全員が下りるのを確認して

「ローレライに対し攻撃開始!!」

“パシューンパシューン”“ドゥゥゥゥゥ”とヘルファイアミサイル、70mmロケット弾、30mm多目的榴弾が同時にローレライ向けて放たれる。



――――――ローレライ艦橋

外が騒がしくなってきたな。それに続きジークフリートの叫び声も激しくなってきた。

(こいつ・・・気が動転してるのか?)

いける!!龍斗は確信した。握るだけで精一杯の中残っている力を振り絞り、バスターソードの刃をジークフリートに向け走る。ただ走る。

「!!」

今頃気がついたか?もう遅いぜ。

「死ネエェェェ!!」




――――テント

「黒い服の部隊が撤退し始めた?」

ローレライ甲板で起こっているあからさまおかしな現象をみて、クエスチョンマークを発しているのはエーリッヒ。

「戦略的撤退とでも言うべきか。これですべて終わったな」


「は?」


「これからあの艦向けて攻撃が始まる」


「あの?高須さんですよね?」

高須は後ろから不意に声をかけられた。後ろを振り返ると声をかけてきたのは金髪碧眼の少女。

「えーと君はイリーナさん?」


「はい。あのリュートどうしたんですか?私達に人質を避難させろって言ってそれからあってないんですけど。」


「・・・この事件の首謀者とでも言うべき奴と対峙している。」


「え・・・・首謀者って・・・ジークフリートってやつだよね・・・」


「名前は知らんが5分で片付けるとか言ってたぞ。よほど弱い相手なんだろうけど。それにハンドガンも持たせてあるし。大丈夫だろう。もうとっくに艦を脱出しているはずさ」

使節団の人間のほとんどが血の気が引いた。

「それ、なんで早く言わなかったんですか?」


「ん?すぐ帰ってくると思ってたからさ。だから攻撃命令を出したんだ」


「首謀者は・・・ジークフリートは、古代兵器をいとも簡単に防ぎ、リュートを一分もかからずに倒したんですよ。しかも、今持っている武器なんてその時よりもはるかに頼りない・・・・リュートが倒せる可能性なんて少ないんですよ」


「・・・・う、うそだろ・・・・じゃあまさか・・・まだ艦内に!!」

全員が一斉にローレライを見た。青ざめた顔をしながら、彼らが見た光景は、数々の重火器が、ローレライの色々なところにあたり火に包まれ爆発して、沈没していく景色だった。

「そ、そんな・・・・リュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウトオオオオオオオオオオオオオオ!!」

イリーナは泣きながら叫んだ。しかし、いつもなら帰ってくる皮肉な返答は帰ってこなかった・・・


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