#18 友情
――――――五稜郭 監獄
「ここに入れ」
俺は兵士の言うとおりに監獄の牢屋に入った。入った瞬間
「「リュ、リュート!!」」
イリーナとエアリィうまくはもりやがった。こいつら本当に仲がいいな。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
と思ったら二人ともいきなり見つめあって沈黙した。もしかして、レズ?
「何?」
「そっちこそ何?」
「別に」
「ふーん」
と思ったらなんかよくわからずに冷戦中・・・・なにがあったの?
「まあこの二人はほおっておこう。まずは、話しておきたいことがある。もしかしたら皇子様達は聞いていたかもしれませんが・・・」
何の話をしているんだ。エーリッヒは?
「いや、残念ながら僕達でも今起こっていることは知らない。」
「そうですか。では、ローレライの人事異動。それは解りますね?」
「ああ。新鋭艦の運転のためにいろんな艦や、新米の海兵たちを急きょローレライに回したという」
「それです。軍艦の艦長や将校は海軍大臣や海軍本部が決めますが、士官から下士官は人事部長が決めます。ローレライの士官から下士官を決める人事部長はアルフォート・フォン・ティルピッツと言いますが、彼はルーシア征教教徒だったらしいのです。確信はありませんが調査結果によると、ちょくちょく護衛騎士団団長であるジークフリートとの接触があったそうです。そして、人事異動の際の海兵を調べると士官・下士官のすべてがルーシア征教教徒の疑いを警軍公安部にかけられていました。」
「となると、ジークフリートがルーシア征教教徒を率いてローレライを強奪し攻撃をした。と考えるのがベストか。」
「成程。・・・・俺がさっき高須から聞いた話だが」
「高須?・・・ああ、さっきの皇帝陛下とか呼ばれている人ね。リュートはあの人とどんな関係なの?」
「親友だ。俺の祖国の士官学校の同期だ。まさか、あいつも来ているとは思わなかった。まあ、そこは置いておいて、彼が言うには、興味本意でローレライに乗艦した皇太子妃を乗艦させたままローレライの海兵がいきなり艦砲射撃をして、都市や民間人、兵士に対し攻撃し、皇太子妃を人質にしているらしく、大和皇国軍が包囲しているそうだ」
「それって・・・」
エアリィが青ざめた顔をした。いや、エアリィだけではない。その場にいたすべての人間が青ざめた。
「事実上大和皇国との戦争」
アルバート皇子は声のトーンを下げて、下を見たまま言った。彼は若くしかし、それでも次期ポートランド皇国皇帝陛下。国のトップに立つ男である。国の代表となる者がこのような事態に陥らせたことへの負い目を感じたのだろう。
「そんな・・・・大和皇国との同盟を結ぶはずだったのに・・・・それが・・・何で戦争になっちゃったの?」
「エーリッヒの情報を話せばもしかしたら逆に帝国と戦争になるかも?」
「いや、それはない。事実攻撃を命令したのは帝国軍人だとしても、攻撃をした軍人はポートランド皇国の軍人で攻撃した装甲艦はポートランド皇国の国旗を掲げていた。たとえそれが事実だとしてもそれを言われたら言い訳のしようがない。指示を出したのは帝国軍人だろうが、ローレライに乗っているのは紛れもなくポートランド皇国海軍軍人だ。」
「そうよね・・・」
「下手したら俺達死刑かも・・・」
「ば、たちの悪い冗談は言わないでよ!!」
イリーナがまさかここまで怒るとは言った龍斗本人も思わなかったであろう。
まあ、この状況ではたちが悪いとかよりも完全にブラックジョークである。
「・・・・ごめんなさい」
「なんで素直に謝るのよ!!」
また俺怒られた。なんで?先ほどのはともかく今悪いこと言った?
(素直に謝られると怒れないじゃない)
みんなが絶望しかけた時だった。
“カチャッ”・・・・鍵を開ける音。
“キイィィィ”と牢屋の扉を開ける音。
「え、誰?」
「龍斗。俺だ。高須泰宜だ」
「高須!!なんで?」
「俺を信じろと言ったろ?」
「でもこんなことしたら・・・お前の立場が」
「そんなものよりもお前という友人の方が大事だ」
「た、高須。いいこと言うじゃねえか」
「まあ、立場も大事だから、捕虜が取られないように別の収容所へ連れて行く。ということにしてある」
「抜け目ねえな。まあこれで“リアル・プリズン・ブレイク”だ」
「ちょっと昔のアメリカのドラマの名前出すな」
*この二人は2015年前後の人間な為プリズン・ブレイクは10年も前の作品となる。
「ねえエアリィ?」
「何?」
「プリズン・ブレイクって何?」
「イリーナそんなことも知らないの?・・・・って、私も知らないんだけどね」
「多分この話わかるのこの世界でスルトだけだと思うぞ」
「とりあえず、お前達は俺についてこい」
高須を先頭にして俺達は五稜郭の中央の城を出て、まっ平らな所へ向かった。まるでヘリポートみたいな、いや、ヘリポートだった。
「ヘリポートだよな」
「ああ。地球の技術や情報は俺達の頭と、パソコンに入っている。“東京”では既に蒸気機関による発電所が作られ、電気が回っている。さらに、シャンバラでしか使えない魔法。これをうまく使って、ガソリンや、弾薬がなくならないように錬金術師たちを使って生成させている。それどころか、レベルの高い錬金術師が使う生成術をたくさんの錬金術師に習得させ、戦車や装甲車、通信機器、軍艦、すべての物を生成させている。・・・おっと、話が長すぎたな。これに乗れ」
高須が指をさしたのは、ヘリポートに置かれたUH-60Jだった。
「ブラックホークか。これに乗ってどうさせる気だ?」
「お前達を遠くの港に移して軍艦に乗せて脱出させる。ローレライの件は任せろ。俺達で何とかする。俺の権限だけではどうしようにもない。皇帝陛下と呼ばれているがこの国では政治を行う者が皇帝陛下。国の象徴や、最高権力者は天皇陛下になる。下手したらお前達は死刑だ。そんなことは絶対に俺がさせない。さあ、行くぞ」
ありがたい。だが、そんなことしてもらうのは逆に有難迷惑だ。
「悪いけど辞退する。」
「何?」
「このローレライの件。あれは俺達の不注意であり高須。お前には間接的なだけあって直接ではない。直接関係があるのは俺達だ。この事件解決しなければならないのは俺達だ」
「しかし、お前達は6人。どうやって立ち向かう?」
「別に戦うのは高須たちの軍隊に頼む。俺達がするのは人質の救助だ。人質が助かればこの国の軍隊も戦うのが楽だろう?それに高須・・・俺にもプライドってものがある。何でもお前に頼みっぱなしじゃあ性に会わない。悪いけど、お前の気持ちだけは受け取っておこう。だが、お前の誘いには断る。もし、俺達のことを考えてくれるなら、俺達の支援をしてくれ。みんな、俺の我がままに付き合ってもらうけど、いいか?もし嫌なら俺一人でやるけど?」
俺にはこの後の答えがどう来るか解らなかった。まだここに来て1週間程度。親睦を深めたが、固いきずなで結ばれているわけではない。
「僕は賛成だ。ぼくとしても、このまま大和皇国にまかせっきりは次期トップの座につくものとして教養が無さ過ぎる。加勢するよ」
「なら私もです。第二皇位継承者である私もあたりまえです」
「俺は皇族の者がそうするならばそうしよう」
「仕方ないねえ。あんたいなくなったらあたしの計画もおじゃんだからついて行くわよ」
「死ぬのは嫌だけど、リュートがいなくなる方がもっと嫌だからついて行く」
みんな冷たい目をして俺を見ると思っていた。だが、現実は違った。俺はみんなになんだかんだいって信頼されている。信じてくれる人がいる。
「みんな・・・」
「しかたがない。お前にはかなわない。ならば計画を練ろう。ローレライの図面は無いか?」
「僕が持っていますが」
「よし、それがあれば十分だ。後は包囲している部隊に警備兵の配置図を記入して。」
「高須・・・・計画が練り終わったら?」
「もちのろんで計画実行だ」
「そうか。レッツロール(報復するぞ)!!」
そう、俺達の反抗は始まったばかりであった。