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#12 テン・ミニッツ

“長い10分になりそうだ”

そう言ってからどのくらいの時間がたったのだろう・・・イリーナとエアリィにハンドガンの使い方を教え、俺はH&K HK416で応戦している。しかし、奴らは盾を持って徐々に近づいてきている。

「なんで?小銃弾が利かないんだ!!」

“バババババババ”“バン バン バン”口を動かしながら手も動かす。

「あの盾には強化魔法がかけられているのよ。見なさい。銃弾をはじき返す時に盾の周辺に出てくる緑色の光。METよ。いくら古代兵器でも携帯用の武器じゃ役に立たないわ」


「・・・・まじかよ・・・ちょっと待て。イリーナでもエアリィでも、その魔法の掛け方わかるか?」


「「うん。」」

うまくはもったなこいつら。

「だったら、この銃弾にその魔法掛けてくれ。俺はその間応戦してるから。その魔法掛ければ銃弾も強化されるだろう」


「・・・・・・成程。その手があったわ。頭いいね。さすがスルト!!もっと馬鹿だと思っていた。見なおしちゃった」

エアリィ・・・・俺を馬鹿にし過ぎだろ!!

「リュートは顔の割には頭が切れるわよ。ちょっと軽そうな顔してるのにね。警軍もギルドも何もできなかったバルバロッサ海賊団人質事件の時、自分を売り込んで人質解放してからの、バルバロッサ海賊団を壊滅させた。あれはすごかったよ」

褒めてくれるのはありがたいが、さっさと作業してくれ。敵がじわじわと近付いている。あんなに堅い盾じゃあ、この扉いつまでもつか解らない。

「イリーナ・・・ほめてくれるのはありがたいが、口を動かしている暇があるなら手を動かしてくれ」


「わ、わかったわ」

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

「敵の攻撃が沈静化してきた。弾切れか?」

包囲をしていた海賊の一人が周囲を見渡す。しかし、リーダーは警戒を怠らなかった。

「いや、解らん。油断を見せておいての攻撃に転じるかもしれない。ひとまず様子を見よう」

     ・

     ・

     ・

     ・

「・・・・敵さんも様子見で来たか・・・・あとどれくらいで終わりそう?」


「あんたが“マガジン”とか呼んでいる物10個ぐらいにかけているけど、かなり時間がかかりそうだわ。速く見積もって5分」

先ほども思ったがシャンバラでも時間の単位は分なのか?言葉だけが一緒かもしれないが、俺の思い込みで考えよう。シャンバラの5分は地球でも5分だ。

「そうか・・・・5分。きびしいな・・・別の手段で行こう。」

俺はそう独り言を言うと、H&K HK416に取り付けられているM320グレネードランチャーにグレネード弾を装填する。

「効くか知らないが、吹っ飛べ!!」

俺はうまく弧を描くような角度で発射した。今のグレネード弾は射程距離が20M以下だと安全装置が働いて爆発しないようになっているから、射程距離を稼ぐために上を向けて撃った。

「なんだ?」

盾を構えながら立ち止まっている海賊団残党はグレネード弾を見る。

「・・・・お前ら伏せろ!!」

リーダー的な奴は言う。くそっ、感ずかれたか。そんなことを思っている間に、低く鈍い音が響き渡る。

「うわあああ!!目が、目が、目が見えねええ!!」


「貴様騒ぐな!!士気が乱れる!!」

どうやら爆発地点のすぐそばにいた海賊が爆風で目をやられたようだ。ただ、殺すほどの威力は盾の所為であまりない。しかし、現在進行形銃弾よりは効果がある。でも、これに魔法をかけても意味はないだろう。爆風は中の火薬によって起きるのだから爆発の威力は変わらないだろう。

「盾を前に突き出し、爆風に巻き込まれないようにしろ!!」


「了解」


「魔法掛けているのにもかかわらず、これだけの威力・・・・古代兵器・・・侮れん」




「イリーナ、エアリィ。まだか?」


「あともう少し・・・・OK。出来たわよ」

イリーナは強化魔法をかけられたマガジンを投げてきた。俺はそれを手に取り、H&K HK416からマガジンを外し、魔法の掛けられたマガジンを装着する。

「俺の戦闘不能まで残り3分20秒・・・・それまでに方をつける!!」

左手に付けたG-shockのストップウォッチでタイムリミットを確認して、俺は銃庄を肩にあて、トリガーを引く。盾にあたった時に響く甲高い音が耳から離れない。

(やはり・・・・だめか?)

半分あきらめかけた時だった。

「ぐわああああ!!」


「ぐううっ!!」


「どういうことだ?」

リーダー的な存在の奴が不可思議に首を傾けている。ゲームの中だったら頭の上にクエスチョンマークが出ているだろう。

「・・・・・効いている。効いているぞ!!」

H&K HK416から放たれる強化魔法をかけられた5.56mm弾は先程何も効かなかった盾を次々と貫いて行く。

「くそっ!!やつらも強化魔法をかけやがったな。一時撤退だ。本国へ戻るぞ!!」


「誰と本国へ戻るって?・・・・俺とでも本国へ戻るか?」


「そうね。あんた以外誰ひとり生き残っていないのに・・・」


「誰と戻るの?」

先程は良く解らなかったが、今は目の前で見たからわかる。リーダー的な奴は髪の毛が銀色で顎がシャープで背が高い。リーダー的な奴以外既に全滅していた。俺の戦闘不能まであと2分。

「くっ!!貴様ら・・・我々バルバロッサ海賊団だけでは飽き足らず、我が部隊までも・・・」


「飽き足らずって・・・・バルバロッサ海賊団こそ飽き足らず卑怯な奇襲攻撃しやがって・・・良く言うな」


「喰らえ!!」

リーダー的な奴は俺に向かってきてレイピアみたいな剣を振りかざしてきた。

「はっ!!」

とっさにH&K HK416の銃身で受け止める。・・・まあ予想通りレイピアの方が折れた。

「・・・・お前の負けだ。誰だか知らないけど・・・おとなしくお縄につかまれ」


「く、くくくく、これで終わり?勘違いにも甚だしい!!」

奴は自分の手を合わせ、両手を横へと広げていく。そして、手には緑色の光が満ち溢れた。何かの形が見えてきた途端光は消えて、奴の右手にはバスターソードが握られていた。

「俺の名前はジークフリート・アルジェント」


「生成術!!」

またもや俺の知らないワードが出てきた・・・なんだよ生成術って

「生成術って何?」

俺はいつもの通りイリーナに聞く。

「生成術とは錬金術師の中でもトップクラスを誇る物しか使えない術よ。錬金術師が最低限使えないといけない精錬術はMETを練って、鉱石を作り出すこと。それは単体の物質を作ることで、生成術は複数の物質が混ざった武器や、雑貨品などを作り出すこと。まさか・・出来る人がいるとは・・・・」


「まあ、どちらにしろ折れることは変わらない」

俺はそう宣言する。しかし、これは完全なら間違いだった。ジークフリートが再び俺に剣を振りかざし、俺も再び銃身で受け止める。だが

「なに?」

まさかの予想にしない事が起きた。折れたのだ。ジークフリートのではなく、俺の方が

「まさか・・・・」


「よそ見をするな!!」


「しまった!!」

俺は銃に取り付けてあった銃剣を外し受け止める。

「ほう、なかなかやるな・・・・スルト!!」


「知っているのか?」


「知っているも何も・・・もうお前はオーレリシア各国では有名だ。既に俺が直々に東オーレリシア帝国皇帝陛下に言ってある。古代兵器が扱えると・・・帝国の外交官が敵国である西オーレリシア連邦機構とも話をつけ始めた。」


「お前は何者だ?」


「バルバロッサ海賊団副船長。・・・・は副職。本職はルーシア征教教祖直属のルーシア護衛騎士団の団長だ。」


「何が目的だ?」


「お前を餌にして、ポートランド皇国以外のオーレリシア大陸諸国とプトレマイオス共和国でポートランド皇国包囲網を完成させ、戦争に陥れる。そして、各国が疲弊した時、お前の古代兵器の情報を聞き出し、古代兵器を使い疲弊したオーレリシアを取る。だからここで俺はお前を皇帝陛下に差し出すために捕獲する」

糞野郎だな・・・こいつ。

「俺を捕まえるなんてお前にはまだ早い!!」

銃剣でバスターソードめがけて思いっきり突き刺す。銃剣はバスターソードの平べったい面に刺さり、見事に折れた。だが、こちらとて無事ではなくひびが入ってしまった。

「だが、これでお前ももう終わりだ」


「いや、そうでもないわ。METで生成した物よ・・・再びMETを使えば・・・」

ジークフリートは目の前でバスターソードを再びつなぎ合わせた。

「まじかよ・・・」


「終わりだ!!」

“パキーン“・・・・銃剣は完全に折れ、終わったのは俺だった。

「しばらく眠っていてもらう。はあ!!」

まじかよ・・・そう思っていた。

「そうはさせるか!!」

“パキーン”と甲高い声が聞こえる前に何処かで聞いたことのあるような声だった。俺の前に立ち俺に背を向けているのは特戦部の

「エーリッヒ・フォン・ザクセン!!」

エーリッヒはジークフリートのバスターソードをサーベルで受け止めていた。銃身や銃剣がすぐに壊れたというのに、何で?

「ふっ・・・良く名前を覚えていたな。・・・・お前らこいつを捕えろ」


「了解」

そう言って出てきたのは緑と黒の夜間迷彩色の服を着た特戦部の兵士だった。

「ちっ・・・引き上げるとするか」

ジークフリートはそう言うと暗い森の中へ逃げだした。

「貴様らは追え!!」


「はっ!!」


「危なかったな・・・貸一つだぞ」


「・・・どうしてここに?」


「・・・皇帝陛下からの命令だ。監視対象者であるお前らを監視する。しかし、その必要がなくなった。先程の話によると、もうすでにオーレリシア大陸諸国にポートランド皇国にスルトがいて皇帝陛下がかくまっているという話が広まっているそうだな。」


「・・・開戦も時間の問題か・・・まあ、なんだ。助けてくれてありがとう。助かった」

俺が握手をしようと手を出した時

「触るな!!」


「いった・・・」


「俺はスルトとその末裔であるムスペル人が大嫌いなんだ。お前を助けたのも皇帝陛下からの命令だからだ。勘違いするな。」

エーリッヒのその時の眼は異常なくらいきつい目をしていた。彼に何があったのだろうか?生理的に無理というわけではなさそうだ。何か事情があるのだろう。・・・まあ俺には関係ないが。

「・・・・」


「多分、明日かどうかわからないが、しばらくしたらまた皇帝陛下から呼ばれるだろう。必ず来い」

エーリッヒはそう俺に伝えて、俺に背を向けて歩きだした。俺は無言のまま何処かへ行くエーリッヒの背中を見ていた。

「こちら警軍プシェムィシル地方南プシェムィシル支部中隊長ジン・エンフィールドです。お久しぶりですリュートさん。彼らの処理は我々警軍が後始末をします。お疲れさまでした」


「・・・ああ」

彼の話は俺の中では上の空だった・・・・


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