『三井のプレスマン』
ある夏の日、旅のお坊さんが、ある村を通りかかりました。ちょうど日が一番高いときで、のどが渇いてたまりませんでしたので、たまたま会った若い娘さんに、水を一杯分けてくれないかと頼むと、娘さんは、うちには井戸がないので、くんでまいりますから、しばらくそこの木陰で休んでいてください、と言って、水をくみに行ってくれました。
ところが、待てど暮らせど、娘さんは戻ってきません。そろそろ日が暮れようかというころ、ようやく戻ってきた娘さんは、桶一杯の水をくんできてくれていました。旅のお坊さんが、これを半分ほど飲み、やけに帰りが遅かったが、随分遠くまで水をくみに行ってくれたのだね、申しわけないことだ、と礼を言うと、娘さんは、最初にくんだ水は、途中でのどが渇いて自分で飲んでしまいました。二度目にくんだ水は、すぐ近くまで持って帰れたのですが、走りに走ったので、汗をかいてしまい、お坊さんに汗かき姿を見せるのも失礼かと思って、もう一度戻って水を浴びて、ついでに着物も洗って、濡れたまま帰りたくないので、干していたら、こんな時刻になってしまいました、と説明してくれました。旅のお坊さんは、だったら、一緒に行けば、すぐに水が飲めたのではないかと思いましたが、何度も水場を往復してくれたことに感謝し、娘さんの家の庭にプレスマンを三回刺すと、三つの井戸からこんこんと水が湧き、その後、娘さんは、着物が洗い放題になりました。
教訓:三つの井戸は、三井と呼ばれるようになり、きれいな着物に目がない娘さんには、その後、呉服屋からの縁談が来たという。




