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婚約破棄より採取が先です。元婚約者の頭に、絶滅したはずの花が咲いています

掲載日:2026/09/07

「僕はメリルを心から愛している。君との婚約は破棄する!」



 婚約者の頭から、花が咲いた。


 金色の花びらが、ぱん、と開く。


 中央には真珠のような白い粒が三つ。


 間違いない。


 私は母の形見の植物図鑑で、何度もその絵を見ていた。



「動かないでください」


「……何?」


「お願いですから、そのまま。できれば、もう少しこちらへ顔を」


「聞いているのか、コレット。婚約を破棄すると言ったんだぞ!」


「そちらは聞こえました。花が揺れますので、大きな声はお控えください」



 侯爵令息セドリック様が、ぽかんと口を開けた。


 その隣で腕を組んでいた子爵令嬢メリル様も、彼の頭を見上げている。


 周囲の招待客は、誰一人として喋らなかった。


 春の花を楽しむために集まった人々が、いま、とんでもないところで開花を目撃していた。



「金冠百合……」



 私は呟いた。


 最後に野生の株が見つかってから、百年以上経っている。


 温室での栽培にも成功せず、絶滅したと考えられていた花だ。


 それが、元婚約者になりたての男性の頭に咲いている。



「なぜ、そこなの……」



 泣きそうだった。


 よりによって、そんな土壌を選ばなくても。



「コレット嬢。いったん、鋏をしまおうか」



 横から、私の手首がそっと押さえられた。


 アーヴィン・ローヴェル公爵。


 本日の園遊会の主催者で、私がいま立っている温室の持ち主である。


 濃紺の上着を着た彼は、私の手と、セドリック様の頭を交互に眺めた。



「なぜ園遊会へ剪定鋏を持ってきたのかは、あとで聞く」


「挿し木を分けていただくお約束でしたので」


「ああ、そうだった。それでも、人から採るなら、まず本人の許可が要る」


「失礼いたしました」



 私はセドリック様へ向き直った。



「婚約破棄はお受けしますので、お花をいただけませんか」


「何を言っているんだ、君は!」



 叫んだ拍子に、金冠百合が大きく揺れた。


 ああ、花粉が。


 ハンカチで受け止めるべきか迷っていると、アーヴィン様が私の鋏を預かった。



「少し落ち着こう。珍しい花なのは分かった」


「ご存じなのですか?」


「君が以前、図鑑を見せてくれただろう」



 覚えていてくれた。


 そう思った瞬間だけ、私は花を見るのをやめた。



 そもそもの始まりは、今朝に遡る。


 自宅の庭で水桶を覗いたら、小さな妖精が溺れていた。


 私は木の葉ですくい上げ、温室の日だまりへ運んだ。


 羽が乾くまで待っていると、妖精は私の髪へ飛び移り、恩返しをすると言った。



『今日、日が沈むまで、あなたの前で恋の嘘をついた人には、頭に花が咲くようにしてあげる』


「どうして、そのようなお礼なのですか」


『あなた、植物には詳しいのに、男を見る目がないもの』



 初対面なのに手厳しかった。


 ただし、妖精の返事にも心当たりはあった。


 私の婚約者は、私が育てた花を、別の女性へ贈ったことがある。


 育てた覚えのある薔薇をメリル様が胸につけていたので尋ねたら、セドリック様は言った。


 君にはいくらでもあるだろう、と。


 あれは初めて咲いた一輪だった。


 私へは一年間、誕生日の花さえ贈ってくれなかったのに。


 妖精は温室の花を一つずつ覗き、それから私の頬を撫でた。



『咲いた花は普通に育てられるわ。せっかくだから、好きなものを出してあげる』


「では、金冠百合を」


『男のほうを心配なさいよ』



 そう言い残して、妖精は飛んでいった。


 私は半信半疑だった。


 午後、ローヴェル公爵邸へ来て、セドリック様に婚約破棄を言い渡されるまでは。



「恋の嘘で花が咲く?」



 事情を聞いたセドリック様は、自分の頭へ手をやった。


 指先が花に触れた途端、顔色が変わる。



「悪趣味な魔法を使って、僕を笑い者にするつもりか!」


「私がかけたものではありません」


「大体、僕は嘘などついていない!」



 金冠百合の隣に、もう一輪。


 私は息を呑んだ。


 今度は花びらが二重だ。


 そんな品種、図鑑にも載っていなかった。



「コレット嬢」


「分かっています。許可をいただくまでは採りません」


「踏み台を探すのも、まだ早い」



 私は目をつけていた椅子から手を離した。


 メリル様がセドリック様の腕へしがみつく。



「妖精なんて、信じられませんわ。わたくしたちは、本当に愛し合っておりますもの」



 彼女の髪に、ふわりと白い花が開いた。


 冬の山奥でしか咲かない、雪絹花だ。


 私は両手で口を押さえた。


 笑ったと思われたら困る。


 喜んでいると思われても困る。


 実際には、ものすごく喜んでいた。



「メリル、君まで?」


「あなたの頭は、わたくしの三倍くらい華やかですけれど!」



 セドリック様が鏡を要求した。


 給仕が差し出した銀の盆に、花盛りの自分が映る。


 彼はしばらく黙ったあと、こちらを睨んだ。



「……仮にだ。愛という言葉が、少々大げさだったとしても」


「はい」


「僕は、彼女と結婚したい」



 今度は何も咲かなかった。


 メリル様が彼の顔と花を見比べる。



「わたくしも、セドリック様との結婚を望んでいますわ」



 そちらも咲かない。


 二人は、ほっとしたように顔を見合わせた。


 私は、アーヴィン様が預かっている鋏を見た。



「よかったです。それでは、そろそろいただいても?」


「君は、自分の婚約がなくなったんだぞ!」


「ですから、お受けすると申し上げました」


「泣くなり、怒るなり、何かあるだろう!」



 私は、彼の顔を見た。


 花ではなく、顔を。


 セドリック様は、ようやく私が自分を見たと思ったのか、少し胸を張った。



「君も、僕のことを愛していたなら――」


「泣きましたよ」



 彼が口を閉じた。



「私が初めて咲かせた薔薇を、勝手に切って持っていかれた日。返してほしいと言ったら、花くらいで騒ぐなと叱られたでしょう」


「そんな昔の」


「三か月前です」



 メリル様が、胸の飾りに触れた。


 今日は造花だった。



「……あれ、あなたがお育てになったものだったの?」


「はい」


「お店で、わたくしのために選んだと」



 セドリック様の唇が動いた。


 頭の上の花を思い出したらしく、何も言わなかった。


 私は続けた。



「花を取られたことも悲しかったです。でも、一緒に悲しんでほしかった方に笑われたのが、一番つらかった」



 温室の奥で、噴水が小さく跳ねていた。



「今日は泣きません。もう、あなたに分かっていただこうとは思わないので」



 口にしてみると、ひどく簡単だった。


 あんなに、言いたいことがあったのに。


 セドリック様は、私の顔をしばらく見ていた。


 それから、花をむしろうと腕を上げた。



「待ってください!」



 私とアーヴィン様の声が重なった。


 セドリック様が、びくりとする。



「花に罪はございません!」


「君も頭を傷める。そのまま庭師に任せなさい」



 アーヴィン様が呼んだ庭師は、不思議なところに生えた花にも動じなかった。


 園芸に長く携わると、何かが違ってくるのかもしれない。


 本人の了承を得て調べると、根は頭皮ではなく、髪の間に絡まっているだけだった。


 濡らしてほぐせば、痛みもなく外せるという。



「採ったものはどうなさいます?」


「捨てろ、そんなもの!」


「いただきます!」



 私は即答した。


 アーヴィン様は口元を押さえた。


 笑うのを我慢している顔だった。



 両家の父親が呼ばれ、婚約について話し合うことになった。


 セドリック様のお父上は、息子の頭を見て目を閉じた。


 私の父は、私が両腕で抱える花を見て目を閉じた。


 困り方は少し違うようだった。


 公爵家の応接室へ向かう途中、メリル様が私を振り返った。



「コレット様。あの、薔薇のことは……存じませんでした」


「はい」


「この人との結婚は、少し考え直します」



 セドリック様が何か言いかけ、メリル様に黙らされた。


 どちらが先に頭を下げるかまで見届ける気にはなれず、私は温室に残った。



「お父上から、ここで待つようにと」



 戻ってきたアーヴィン様が言った。



「花の世話をしていて構わないそうだ」


「ありがとうございます。雪絹花は暑さに弱いので、急いで涼しいところへ運びたかったのです」


「分かっている。北側に部屋を借りよう」



 彼は私の腕から植木鉢を一つ受け取った。


 百合の花びらに上着の釦が触れそうになると、鉢を持つ角度を変えてくれた。


 そういう人だった。


 私が大事にしているものを、本人以上に大事そうに扱う。


 アーヴィン様とは、去年、この温室で知り合った。


 珍しい青薔薇のお披露目に招かれたのに、私が鉢の隅の小さな草ばかり眺めていたのが、最初だった。


 庭師が捨てようとしたので、私が止めた。


 夜になると甘い香りを出す、月蜜草の芽だったからだ。


 公爵は一緒にしゃがみ込み、こんな小さいのに、と面白がってくれた。


 以来、温室に知らない植物が入ると呼んでくださる。


 私が花の話を長々としても、一度も話を変えようとしなかった。


 もっとも、貴族の挨拶を忘れるほど話し込んで、父に叱られたことはある。



「今日は、その髪飾りをつけてくれたんだね」



 彼が私の耳のあたりを指した。


 白い小花を模した、真珠の髪飾り。


 先月、母上である公爵夫人の茶会でいただいたものだ。



「はい。お母様にも、お礼を申し上げたかったのですが」


「母は今日は領地にいる」


「そうでしたか。この花は形が正確で、とても好きです。花びらの裏まで作ってありますし」


「細工師に、実物を渡したので」



 私は彼を見た。



「アーヴィン様が?」


「……母に、頼まれて」



 ぽん、と音がした。


 彼の黒髪の上に、小さな薄桃色の花が咲いていた。


 五枚の花びらが、耳のほうへ垂れている。


 私は鉢を置いた。



「アーヴィン様」


「うん」


「いまの、恋の嘘に含まれたようですが」



 彼はゆっくり、自分の頭に触れた。


 そして初めて、公爵らしい落ち着いた顔が崩れた。



「……いまのは、聞かなかったことにしてほしい」


「私がそうしても、花が聞き流してくれなかったようです」


「実に手厳しいね」



 私は背伸びをした。


 指先で花びらをそっと持ち上げる。


 公爵は息を止めた。



「ベルベットみたい。裏側は、少し銀色なのですね」


「コレット嬢」


「蜜腺もあるでしょうか。少しお顔を下げていただけると」


「君は、いまの話の続きを聞く気はない?」



 私は指を止めた。


 彼の顔が、思っていたより近くにあった。



「……お聞きしてもよろしいのですか」


「母に頼まれたわけではない。君に贈りたくて、私が作らせた」


「ですが、ほかの皆様にも」


「ほかの方々には、母が選んだ扇を。君の箱だけ、私が母に頼んで入れてもらった」



 頭の花は増えなかった。


 胸の奥が、妙に落ち着かなくなった。


 私は彼から少し離れ、必要もないのに鉢の位置を直した。



「なぜ、そのようなことを」


「君には婚約者がいたから。私から直接では、受け取ってもらえないだろう」



 私は髪飾りに触れた。


 これをつけると、いつもより自分が綺麗に見えた。


 鏡の前で何度も首を傾け、結局、今日も選んだ。


 それを選んでくれたのは、この人だった。



「とても、気に入っています」


「うん」


「ですから、返したくありません」



 アーヴィン様が笑った。


 いつもの余裕のある笑い方ではなく、心底ほっとしたように。



「よかった。細工師のところへ六回通った甲斐があった」


「六回も?」


「君に贈るものだから、花びらの枚数を間違えられない」



 変なところで真面目だ。


 そう思って笑ったら、彼もつられて笑った。


 目を合わせていられなくなったのは、私のほうだった。



 温室では、まだ園遊会が続いていた。


 離れた部屋にも楽団の音が届く。


 アーヴィン様の母の話を聞くつもりだったのに、なぜか彼の頭の花を採ることになった。


 私が鉢を抱えると、彼は少し身構えた。



「痛くしないでほしい」


「お花をですか?」


「できれば私も」



 私は笑って、彼の髪から根をほぐした。


 園遊会で他人の頭をいじるのは、初めてだ。


 黒髪は見た目より柔らかかった。


 同じところを長く触っていたら、アーヴィン様が私の手を取った。



「もう、外れている」


「……はい」



 花を見ていたことにしたかった。


 けれど、それを口に出したら、私にも何か咲くかもしれない。


 妖精は、私だけを特別扱いするとは言っていなかった。



「今日は、楽しいことばかりだ」



 アーヴィン様が呟いた。


 私は少しだけ唇を尖らせた。



「私は婚約を破棄されたのですけれど」


「君を傷つけたことは、腹立たしいと思っている」


「はい」


「ただ、あの男と結婚しないと聞いて、ほっとしたのも本当だ」



 彼は、私を見た。



「君が私の贈り物を返さないと言ってくれたことは、もっと嬉しかった」



 私は返事を探した。


 見つからないまま、彼の頭へ顔を向ける。


 何も咲いていない。


 そのことが、さっき採った珍しい花より気になった。



「お嬢様」



 父の従僕が、戸口から声をかけた。


 話し合いは終わり、両家の合意で婚約を解消することになったという。


 父は私の意思を改めて確かめ、同意した。


 帰りの馬車を回すので、支度が済んだら玄関へ来てほしいとのことだった。



「花は箱に入れて運ばせよう。栽培に必要なものも、庭師に聞いておく」



 アーヴィン様が立ち上がった。


 私は鉢を見た。


 金冠百合が二輪。


 雪絹花が一輪。


 まだ名前も分からない、薄桃色の花が一輪。


 今朝までの私なら、頬ずりしたいほど嬉しい収穫だった。


 急いで帰り、図鑑を開き、夜を明かしただろう。


 なのに、足が動かなかった。



「日が沈みますね」



 窓の向こうの空が、杏色になっていた。



「そうだね」


「妖精の魔法も、もうすぐ終わります」


「少々、ほっとする」



 私は彼を見上げた。



「これからは、嘘をついても花が咲きません」


「そうだね」


「髪飾りのように、また、お母様に頼まれたことにできます」



 アーヴィン様が黙った。


 私は、髪飾りの真珠を指先で撫でる。


 せっかく、自分で言おうと思ったのに。


 やはり、花の話よりずっと難しい。



「私、花を見に来てくださいと招かれたら、また、来ます」


「もちろん。いつでも」


「そうではなくて」



 胸が、うるさかった。


 窓の外では、日がゆっくり低くなっている。


 私は思い切って顔を上げた。



「あなたに会いに来ても、いいですか」



 アーヴィン様が息を呑んだ。


 それから、私の前へ膝をついた。


 公爵が。


 さっきまで私に、鋏をしまいなさいと注意していた人が。



「先を越された」


「何のことでしょう」


「君に、花のついでではなく、私に会いに来てほしいと思っていた」



 私は両手を握った。



「明日、お父上を訪ねて、正式に求婚する許しをいただこうとしていたんだ。今日、婚約を解消したばかりの君に、急いで返事を求めたくなかったから」


「明日になったら、魔法が」


「だから、今、言う」



 彼は私の手を、両手で包んだ。



「君が好きです。コレット。花の話をする君も、私の話を聞こうとして、途中で窓の外の蝶を追ってしまう君も」


「……お気づきでしたか」


「毎回、分かる」



 私は少し笑い、少し泣きたくなった。


 彼は、私の手を持ったまま続けた。



「悲しいときは、一人で温室へ閉じこもらないでほしい。嬉しいことがあった日は、真っ先に私に教えてほしい。君と、そんなふうに暮らしたい」



 その人の頭には、一輪も咲かなかった。


 夕日がまだ、黒い髪を照らしている。


 今日はずっと、珍しい花が咲くたびに喜んでいた。


 なのに今だけは、何も起こらないことが、たまらなく嬉しかった。



「日が沈んでからも、おっしゃってくださいますか」


「何度でも」


「花が咲かなくなっても?」


「君の顔を見れば、受け取ってもらえたか分かると思う」



 私は頷いた。


 涙を拭こうとしたら、ハンカチが土で汚れていた。


 アーヴィン様が自分のものを渡してくれる。


 それから、ああ、と小さく笑った。



「やはり、羨ましいな」


「何がですか」


「君の金冠百合を見る顔だ。私の前でも、あれくらい嬉しそうにしてほしい」


「しています」


「もう少し」



 私は彼の手を、引き寄せた。



「私だって、どなたからでも花をいただけば、あんなふうになるわけではございません」



 ぽん。


 耳元で音がした。


 私の髪から、薄桃色の花が一輪垂れてきた。


 二人で、それを見た。


 しばらく、何も言えなかった。



「……セドリック殿からでも、喜んでいたね」


「そこは、忘れてください」


「君は、本当に花が好きなんだな」


「はい。でも」



 私は膝をついた彼の肩に手を置いた。


 今度は、間違いなく本当のことを言った。



「お花には、こうしてほしいと思いません」



 身をかがめて、私から彼の頬に口づけた。


 アーヴィン様は、花が百輪咲くよりおかしな顔になった。


 その顔を、私はもう少し見ていたかったのだけれど。


 次の口づけは頬ではなかったので、目を閉じることになった。



 日が沈むと、魔法は消えた。


 残った花は普通の植物として育ち、金冠百合は翌年、私の温室で新しい蕾をつけた。


 セドリック様が、その花を見たいと申し込んできたことがある。


 ついでに私とも話したいと、手紙に書いてあった。


 私は季節の開園日だけをお伝えした。


 花なら、ほかのお客様と一緒に見ていただけばよい。


 私の婚礼には、お呼びしなかった。


 メリル様との縁談もなくなったと聞いたが、詳しい話は知らない。


 いま忙しいのは、別の人のことである。



「あの魔法が、まだ残っていたらな」



 結婚して最初の朝、夫がそう言った。


 私は枕から顔を上げた。



「朝から、どうなさったのですか」


「『君を愛していない』と言えば、花を贈れたのに」


「枕が花粉だらけになるので、おやめください」



 アーヴィン様は笑った。


 それから、小さな花束を枕元へ置いてくれた。


 私が育てたものではない。


 私のために、この人が選んだ花だ。



「改めて。綺麗だよ、コレット」



 私は花束を受け取って、水に挿すための器を探した。


 いつもなら、すぐに立ち上がるところだった。


 けれど、今日はまだ隣にいたかったので、花は少しだけ枕元に戻した。



「今日は、そちらが先でいいの?」



 夫が、嬉しそうに尋ねる。


 私はその首に腕を回した。



「あなたが先です」



 もう、花は咲かなかった。


 魔法が残っていたって、きっと同じだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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セドリックはあわよくばよりを戻したかったんかな? なんで婚約破棄するバカはどいつもこいつもそうなんだろね
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