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鏡淵の調律 外伝 羽鳥家始源記  作者: ちとせ鶫


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第1話 羽鳥の名の起こり

≪記紀調口伝 — 出雲系神話より≫


     * * *


> 天つ神、鏡を置き給いし後、

> 揺らぎは止まらなかった。

>

> 鏡は境界となり、世界を二つに分けた。

> しかし——分けられたものは、呼吸する。

> 呼吸するものは、揺れる。

> 揺れるものは、誰かが読まねばならない。


天つ神は揺らぎを放置しなかった。

境界は「在るだけ」では足りない。

揺らぎを読む者が側にいなければ、

境界は傾き続ける——傾いたまま誰も気づかない。


> そこで天つ神は、一羽の鳥を遣わした。

> 鳥は此岸と彼岸の双方を飛んだ。

> どちらにも着地せず、ただ飛んだ。

> 飛ぶ鳥だけが、境界の全てを見渡せるから。


その鳥の子孫が「羽鳥」の家の始まりだと、出雲の口伝は語る。


     * * *


はね」は——境界を越える力の象徴。

とり」は——兆しを告げる存在の象徴。


羽鳥とは、「境界の揺らぎを読み、兆しを知らせる家」の名である。

守る家ではなく、告げる家。

制御する家ではなく、読む家。


——それが最初から、変わらない。


≪——出雲系口伝「羽鳥氏源流考」(羽鳥家文書庫蔵)≫


     * * *


> ★ 編者注 — 羽鳥陽子

>

> 祖母はいつも言っていた——「鳥は着地するために飛ぶのではない」と。

> 着地した鳥は、もう境界を見渡せない。

> 羽鳥家が「介入しない」を家訓とする理由は、

> この神話の一行に全て込められている。

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