第1話 羽鳥の名の起こり
≪記紀調口伝 — 出雲系神話より≫
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> 天つ神、鏡を置き給いし後、
> 揺らぎは止まらなかった。
>
> 鏡は境界となり、世界を二つに分けた。
> しかし——分けられたものは、呼吸する。
> 呼吸するものは、揺れる。
> 揺れるものは、誰かが読まねばならない。
天つ神は揺らぎを放置しなかった。
境界は「在るだけ」では足りない。
揺らぎを読む者が側にいなければ、
境界は傾き続ける——傾いたまま誰も気づかない。
> そこで天つ神は、一羽の鳥を遣わした。
> 鳥は此岸と彼岸の双方を飛んだ。
> どちらにも着地せず、ただ飛んだ。
> 飛ぶ鳥だけが、境界の全てを見渡せるから。
その鳥の子孫が「羽鳥」の家の始まりだと、出雲の口伝は語る。
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「羽」は——境界を越える力の象徴。
「鳥」は——兆しを告げる存在の象徴。
羽鳥とは、「境界の揺らぎを読み、兆しを知らせる家」の名である。
守る家ではなく、告げる家。
制御する家ではなく、読む家。
——それが最初から、変わらない。
≪——出雲系口伝「羽鳥氏源流考」(羽鳥家文書庫蔵)≫
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> ★ 編者注 — 羽鳥陽子
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> 祖母はいつも言っていた——「鳥は着地するために飛ぶのではない」と。
> 着地した鳥は、もう境界を見渡せない。
> 羽鳥家が「介入しない」を家訓とする理由は、
> この神話の一行に全て込められている。




