「弾劾」
掲載日:2026/05/19
その日、議場の空気は最初から決まっていた。
反対票の多くは、権力で縛られているはずだった。
弾劾決議。
世界中の報道陣が見守る中、投票が始まる。
票は、静かに積み上がっていく。
数人は、驚かなかった。
逆らえば終わる。
名前が呼ばれたとき、
ほんの一拍だけ沈黙があった。
YES.
小さな声だった。
議場の空気が揺れた。
誰かが息を呑んだ。
誰かは、もう結果を知っていた顔をしていた。
三分の二。
必要とされていた線を越えた瞬間、
賛成者たちの名前が国家
反逆者リストへ自動登録された。
端末が震え、
警護権限の停止が通知される。
家族との連絡も遮断。
次の名前が呼ばれるまで、議場は凍っていた。
被告席の男だけが、ゆっくり拍手していた。




