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247  作者: Nora_
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08

「暇なときに家にいくからよろしく」

「茜音ちゃんに言っておくよ」


 本人は「夏休みになったら沙美ちゃんとお出かけするんだ!」と盛り上がっていたけどなにも全てをあの子と終えるわけではないから大丈夫だろう。

 だから期待をしていい、普段よりは一緒にいられる時間を稼げることだろう。


「違うよ、堀と遊ぶためにいくんだ」

「え、突然どうしたの?」

「いや、その反応こそおかしくね? 友達なら夏休みに遊ぶだろ」

「はは、それならあんまり期待をしないで待っておくよ、たまには家で過ごす日も作ってね」

「絶対にいくわ」


 意地を張ったところで疲れるだけだからやめた方がいい。

 既に帰れる状態だったから彼は部活にいって僕は涼しい教室に少し残っていくことにした。

 数日の登校日を考えなければかなりの時間を自由に使える、既に約束をしている日以外だけでもそういうことになる。


「わっ」

「うん、足音で誰かが来ていたのかはわかっていたから驚かないよ」


 とかなんとか言いつつ知っている子でよかったと思っている自分がいる。


「可愛くない。それより良二先輩は部活? そっか、私の部活はないから翔君と帰ろうと思ってね」

「それなら帰ろうか」


 こんなことは珍しいから残ることは選べなかった。

 歩いている最中、色々なことに意識を向けて彼女は楽しそうにしている。


「沙美ちゃんとどこにいこうかな~」

「プールとかどう? 女の子だけで心配なら大室君に守ってもらえばいいよ」


 他人との距離ができる海でもいい。

 どこを選ぶとしてもちゃんと水分補給をすることとふざけないことが大事だ。

 小さなきっかけ一つで後に悪影響を与えるどころか死んでしまうことすらありえるから慎重に行動した方がいい。


「そうだね、じゃあ翔君もある程度はふらふらしてもいいけどそのときは付き合ってね」

「え、あれ僕も?」


 そうなってくると女の子二人だけでも問題ない場所にいってアイスとかパフェとかそういう甘くて美味しい物を食べて盛り上がってくれた方がいい気がする。


「当たり前じゃん、寧ろ必要ないと思っていたことが驚きだよ。別にそこまで極端にやるつもりはないけど良二先輩が参加したら沙美ちゃん一人じゃ可哀想でしょ」

「いやいや、沙美の主な相手は茜音ちゃんなんだから――なに?」

「沙美、ね」

「この前頼まれたんだよ、だからそれぐらいのことでにやにやするのはやめてよ。あと沙美を呼び出そうとしているんだから茜音ちゃんがちゃんと相手をしないと駄目だよ」


 依然として本人を目の前にすると解散するまでに一回名前で呼べればいいぐらいのレベルだ。

 それでも本人がいないところでなら余裕だ、だからそんな顔はしないでほしい。


「守るけど、翔君が参加するのは決定ね」

「だったら茜音ちゃんが沙美にそのことを言っておいてよ、で、反応が微妙なら参加しない、それでいいよね?」

「うん、やっておくから安心して」


 さて、これで言いたいことも言い終えただろうからそれぞれ別れて、


「僕の腕を掴んでどうしたの?」


 一旦家に帰ってから外へ、は今日のところはしないつもりだから掴んでいてもメリットはなにもない。

 風が入ってくる自分の部屋でのんびりごろごろする予定だ。


「リビングにいて」

「それはいいけど」


 結局畳とフローリングの違いはあっても床に寝転ぶことには変わらないからどこでもよかった。

 彼女はソファに寝転んでスマホをぽちぽち弄り始める、じっと見ていても気持ちが悪い存在になるだけだから今日も窓の外に意識を向けておくことにした。


「翔君さ、本当は私じゃなくて沙美ちゃんが家族になった方が嬉しかったよね」

「え、そんなこと考えたことないけど」


 部活があるとはいってもこれから楽しい夏休みというところなのに急にどうしたのか。


「違うか、お母さんとは仲良く楽しそうにお喋りしているから私だけがいらない感じか」


 昔にもこうして急に変わる子がいたことを思い出した。

 直前まで楽しそうにしていたのに一転してマイナス思考をする、それを直接ぶつけてくるものだからすぐに対応をできずに考える羽目になる。

 でも、僕の脳では限界があるわけで、いまでもそうなのだから小さい頃に対応をできなくてもなにもおかしくはないと開き直っていた。


「いやいや、大室君という優先したい相手がいなければ普通に相手をさせてもらっているけどね」


 そうでもなければいまのこれはなんなのかと聞きたいところだ。


「ぶっぶー翔君は不合格です。はあ~せめて夏休みが終わるまでにそのどっちも取ろうとするところは直さないとね~」


 いいよな、少しガチな感じのトーンで喋っておけばそれっぽい雰囲気が出るのだから。


「つまり嵌められたってことか……」

「そうだよ、沙美ちゃんが不安になっちゃうからやめてあげてね?」


 僕が不安になってしまうから彼女も彼女で試すようなことはやめてもらいたかった。




「敢えて真夏に暑いところにいくのが面白いよな、しかも服を脱いで熱心に太陽の熱を浴びているんだぜ?」

「うん、暑いね」


 彼がどうしてもと意地を張ったそれがいまに繋がっている。

 まあ、あれだけ必死に誘ったのにどちらからも今日は無理だと断られれば大人しく帰ったりはできないのかもしれない。


「しかも女子組がいないのになにをしているんだろうな」

「マイナスに考えるのはやめよう」

「ま、今度プールにいく約束をしているから海を見られたのはいいか」

「入る?」

「だな、少しぐらいは水に触れて癒されないとな」


 ここに来るまでにそれなりに熱を溜めていたからそこまで冷たくない水でも効果があった。


「意外だったのは堀が頼んでも市毛が全く受け付けなかったことだよな」

「いまはそういう気分じゃなかったんだよ」


 茜音ちゃんの方は大好きなお菓子も食べずに真面目な顔で課題をやっていたから邪魔をされたくなかったのかもしれない。


「とかなんとか言って、実は気になっているんじゃないか?」

「ん-元々二人きりでいく約束をしているから特には」


 八月になる前にいきたいということだったから七月最終日にいけばいい。

 この近くにお店もあるから遊び終えた後はそこでなにか食べて帰るのもいいかもしれない。

 夏らしくかき氷でも食べれば夏っぽい雰囲気が出るのではないだろうか。


「うわ惚気かよー」

「はは、僕はどうしたらいいの?」

「茜音はそういうのなにも言ってきていないんだよな、最悪の場合は俺の相手も頼む」

「うん、言ってくれれば大丈夫だよ」


 あの日だけではなくて継続して夜に会っていたから正直に言うと彼がいてくれた方がいいかな。

 夏らしく楽しめればいいのに二人きりで会うとすぐにそっち方向に傾いてしまう。

 あの子が積極的なのもあるし僕もなんだかんだで最近は流されかけているから難しくなる。

 それでも流石に誰かがいてくれればみんなで楽しくの精神に切り替えられるからありがたいのだ。


「日陰に戻ってきたけど落ち着くな」

「うん」

「俺的には川より海の方がいいかもしれな――いて、おいつねるのはなしだぞ」

「虫だね」

「うわあ!?」


 ああ、虫が本当に苦手な子っているよね。

 こちらの背後に回って抱き着いてきたから羽虫にどこかにいってもらうのも苦労した。


「はぁ……はぁ……心臓に悪い、蚊ですら嫌いで潰せないのにあんなの無理ゲーだろ」

「カナブンやカブトムシが飛んできたよりはいいでしょ?」

「いや大して差がないぞ」


 ある意味女の子達二人組よりもヒロイン属性を持っているのかもしれなかった。

 運動部に所属していて筋肉だってそれなりにあるのに可愛いかもしれない。


「よーしよし――あ」

「なんだ? うわ……」

「こういう時間差攻撃ってよりダメージを受けるよね」


 必死に誘った人間ではないからなんとかなっているだけだ。


「ああ」

「私は見ちゃったんだよ、まさか二人でこそこそと海辺までいったうえに抱きしめ合うなんて思わなかったんだよ!?」

「くっついただけだろ」

「少し怖くも見える男の子が弱そうな男の子に守ってもらうのっていいよねー」


 弱そうなは事実だから言い訳はできない、だけど怖くも見えるというところにはやっと仲間が見つけられて嬉しい感情しか出てこなかった。


「おい堀、自由に言われているぞ」

「気にしなくていいんじゃないかな、それより沙美はいない――あ、いたんだね」


 逆側から来たのはと考えたところで「はい、これも茜音さんの作戦です」と答えを教えてくれた。

 わざわざ別行動をして驚かせようとするところが面白い、だけど彼的に不安になるだろうからやめてあげてほしい。


「それならちょっとあっちにいこう」

「はい」


 自動販売機があったことを思い出して飲み物を買うことにする。

 ついでという形にすれば受け取ってもらえるだろうと考えてみんなの分も買わせてもらう。

 まあ、買うなら買うでなにが飲みたいか聞けよという話ではあるけど。


「冷たくて美味しいです」

「だね」


 あの二人に渡すのはもう少し後でいいか……。


「大室先輩、なにか言っていませんでした?」

「僕が頼んでも沙美が受け入れなかったところが意外だったって言っていたよ」


 そうではない気分のときだってあるから普通のことだけどね。

 無理なのに受け入れようとしたりしなくてよかった、彼女は合わせすぎてしまうところがあるから自分に正直になるべきだ。

 そういう点では正直な茜音ちゃんと一緒にいられているのは間違いなくいいことだと言える。


「すみません、茜音さんにどうしても受け入れないでほしいと言われていまして」

「いや謝る必要はないよ、だけど元からこうするつもりだったの?」

「いえ、最初は二人でお出かけしていたんですが途中から物足りなくなったそうで、翔先輩がどこにいっているのかを教えてくれていたのでそれを茜音さんにいったら『私達もいこう!』とすぐに変わりました」

「うーん、それだと沙美的に微妙じゃない?」

「でも、結果的にみんなで過ごすことができていますからね」


 こういう生き方が合っているということならあまり言うべきことではないけど……。

 

「沙美、夏休みが終わるまでにわがままというか正直なところを吐けるようになろう」

「それならお泊まりがしたいです」


 聞けば出してくれるなら聞きまくればいいか。

 わかった気になって行動するのは危険だからこれは自分を守るためでもある。


「部活があるからそっちに泊まろうか?」

「お願いします。ただそれでも翔先輩のお家にもお泊まりしたいです、茜音さんともいられますからね」

「あ、はは、わかったよ」


 夏休みの内の数日ぐらいは予定を空けておいてもらえば大丈夫か。

 大室君も茜音ちゃんも部活があってずっと泊まったり遊びにいったりは無理だから結局なにもないまま終わるなんてこともない。

 あとはやっぱり同性同士というのが大きいか。


「そういうのはなしでお願いします、ただお友達になったからですよ」

「え、わかったとしか言っていないけど?」

「翔先輩……」

「ちょ、なんでそんなに怖い顔で近づいてくるの? も、もう戻ろうかっ」

「ふふ、そうですね、それも渡さなければなりませんからね」


 戻ってもいちゃいちゃはしていないでさっきまでの僕らみたいに会話をしていただけだったから飲み物を渡すのも苦労はしなかった。

 それでも沙美には茜音ちゃんの横に座らせて僕は大室君を盾にする、までは大袈裟でも間にいてもらうことで少しでも安心できるようにする。


「そういえば祭りってどうするんだ?」

「みんなでいくのも楽しいでしょうけど私は翔先輩と二人きりでいくつもりです」

「茜音は――待て、攻撃するな」

「全部言わせようとするからでしょ」


 仲いいなあ。


「なあ堀、茜音は自分から『流石に急すぎて怖いから遠ざけてほしい』とか言っていたくせにこれだから困るよな」

「実際は困りつつもヒットして――」

「翔君、そのまま続けたら怒るよ?」

「よし、満足したから帰ろうか」


 僕らは自然と二人きりの時間が多いから邪魔をしないようにしないといけない。

 それに距離があるから色々と二人で話をしてくれればよかった。

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