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247  作者: Nora_
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01

 これでよし、と。

 欲しい物が色々と多くてお小遣いもそれなりに貰えていたから手を伸ばしてきたのにまとめてみると案外荷物は少なかった。

 家族が増える、だけど家の方は急に大きくなったりはしないから部屋を譲るためにこんなことをしているわけだ。


かける、終わったか?」

「うん、もう大丈夫だよ」

「よし、じゃあ荷物を運び入れるか」


 小学生の頃に急に離婚したかと思えば高校二年になった途端に再婚するなんてね。

 しかも県外からとかではなくて意外と身近な人とくっついたものだから驚いている、こちらは全く知ってはいないけども。

 まあ、それはいいのだ。

 問題なのは同い年の娘さんがいたということ、更に言えば同じ学校だということも……。

 野郎しかいない父はともかくよく若い娘さんがいるお母さんになる人が受け入れたなと言いたくなる、それと娘さん本人も含めてそういうことになる。


「なに――」

「ばあっ」

「うわ!?」


 相手を驚かせて「はは、翔君は最初からそうだけど反応が面白いね」と笑っているのは尚子なおこさん、うん、逆にこの人は最初から距離感がバグりすぎだ。


「それよりごめんね? 部屋を譲ってもらうことになっちゃって」

「そこは気にしないでください」

「難しいかもしれないけど敬語はやめてもらいたいな、これからは家族なんだからさ」

「わかった。だけど気にしなくて大丈夫だよ、元々寝るぐらいでしか使っていなかったからね」


 もっと有効活用してくれる存在が現れて部屋だって喜んでいることだろう。


「え、いつもリビングとかにいたの?」

「ううん、そもそもほとんど家にいなかったんだ」

「え、不良少年だったり……?」


 素直に帰ることもせずに歩いたり留まったりしていたから父にすら呆れられていたぐらいだった。

 あとすぐに首を振って否定した、別に父が嫌いだからとか家が嫌いだからとかではないからだ。

 僕がそうやってマイペースに生きるのが好きというだけの話でしかない。


「それより茜音あかねちゃんはいないの?」

「あー……あのお家から離れたくないって聞かなくてね、いまもアパートの外壁にくっついたままなんだ」


 ま、マジか。

 ま、まあでも移動しなくていい僕と違ってすぐに受け入れられないのも仕方がないことだろう。


「もしかしたら言うことを聞いてこっちに来てくれるかもしれないしそう距離もないから翔君がいってあげてくれないかな?」

「わかった、だけど無理そうだったらそのまま散歩でもしてくるからよろしくね」

「うん」


 なんて、僕が来たって煽られているようにしか感じないだろうから無理だろうけどね。

 てくてくてくてくしてニ十分ぐらいかかったけど件のアパートには着いた。

 だけど流石に高校生にもなってくっついたままでいるわけがなくて――いやいた……。


「茜音ちゃん」

「なにをしにきたの」

「尚子さんに頼まれてね」

「帰って、私はここから離れないから」

「わかった、それじゃあ僕はこれで帰るよ」


 これでいい、元々連れ帰るつもりなんかない。


「さて、どこにいこうかな」


 少量とはいえお金だって持ってきているから食べ物を買うのもありだ。

 でも、今日の夜は豪勢な物になるか外食になる可能性が高いから食べ物を買うのはやめて近くにあったゲームセンターで遊ぶことにした。


「ちょっと」

「うん?」

「ちょっとっ」

「聞こえているよ、どうしたの?」


 付いてきていたのはわかっていたけどあんまりこういう場所にはいさせたくないということですぐに退店して向き合う。


「よかったの?」

「うん、今度一人のときでいいよ。それより茜音ちゃんは離れてよかったの?」


 あと一時間ぐらいくっついておけば迎えに来てもらえる可能性もあった。

 体力管理をしなければならないからときには甘えることも大事だ、あとはなるべく尚子さんや父と話し合うことが必要だと思う。

 抱えたままではすぐに駄目になってしまうからそうなる前に全て吐いておくのだ。


「すぐに冷静になってどうにもならないことがわかったから追ったの」

「そっか」

「それより帰る前にゲームセンターで遊びたい」

「それならちょっとだけ遊んで帰ろうか」


 で、いざ実際に機械達を目の前にすると遊びたい気持ちが出てこなかったから危険な人間が近づいてこないように彼女を見ておくことにした。

 後ろからではなくて横から見ているから顔が見えるのはいいけどぶすっとつまらなさそうな顔ですぐには解決しなさそうなことがわかる。


「翔君、満足できたから帰ろう」

「翔でいいよ」

「翔君でいいよ」


 こうして一緒に帰れることはいいことだと言えるもののなんか尚子さんににやにやされそうで少し微妙だった。

 でも、距離を作るわけにもいかないから緩くお喋りをしながら歩いていたらあっという間に着いてしまって、そして想像通りの反応をされたという流れになっている。

 まあ、父に同じことをされるよりはまだマシだからこれぐらいで済んだことを感謝するしかなかった。




「茜音ちゃんしゃきっとしないと危ないよ?」

「んー……」


 尚子さんから聞いていたけどまさかここまで朝に弱いとは。

 ちなみにこうして連れ出すまでに相当格闘してきているからこれからも続くことを考えると、うん。

 だけど義理とはいえ妹になったわけだから放っておくことなんかできない、これからも尚子さんに協力をしてもらいつつ頑張るしかない。


「あれ、都築つづきさんだ」

「んー……? あ、おはよう。だけど私はもう都築じゃなくて堀だよ」


 おお、友達パワーはすごいね。

 いままでは開いているのか開いていないのかわからない状態だったのにいまはすっかり――待って、どうしてこんなに目がバキバキなのか……。

 彼女は普通にしておくことが難しいときがあるのかもしれないとこの短期間で何度も知る。


「あ、そういえば親御さんが再婚したって話だっけ」

「うん、それでこの人も家族になったの」

「え、セクハラとかされていない?」

「うん」

「それならいいけど……困ったら言ってね、私にできることならするから」


 うん、女の子なら警戒しておくぐらいが正解か。

 それにこれも彼女のことを心配してのことだからまあ悪くない、引っ越すことになったけど転校だの転入だのをしなくて済んだおかげだ。


「翔君、私は部活動に所属しているから遅くなるけどよろしくね」

「うん、それは最初のときに直接教えてくれたわかっているよ」


 いまはもう尚子さんがいるからご飯もそちらに任せておけばいいし僕はいつものように外でゆっくり過ごしてから帰るだけだ――ではなく、抑え込んでいるだけかもしれないとしても出会ったばかりの僕らがここまで上手くやれているのはいいことだった、親同士はよくても子ども同士の仲が悪かったら気になるだろうからだ。

 あとは適度な距離感でいるだけで解決する。


「今日は川だな」


 学校に近いところに一級河川があるから座ってのんびり眺められる時間が好きだった。

 春夏秋冬、どの季節でも飽きない、だから油断していると高校生の部活組よりも遅くなって呆れられることも多い。

 それでも二十二時とかまでいるわけではないから補導されたことは一度もなかった。


「ただいま」

「おかえり、相変わらず帰ってくるのが遅いな」

「僕は僕だからね」


 早く家にいてもいなくてもお風呂なんかは最後に入るようにしてあるから迷惑もかからない。


「あ、翔君いま帰ってきたの?」


 時間的には完全下校時刻から三十分ぐらいが経過したところだから彼女もあまり変わらなかった。


「うん、部活お疲れ様」

「ありがとう」

「とにかく翔は飯を食べろ」


 母親がまたできたとはいっても全て任せるのも違うから尚子さんと話し合う必要があるか。

 ご飯作りに関しては僕もそれなりにできるから交代交代でやっていけば会話する機会も増えてもっと仲良くできるのもいい。


「お父さん私は?」

「お、おう、いやよくすぐにお父さんとか言えるな」


 我慢してくれているだけというか彼女と尚子さんが特殊なだけかもしれない。


「え、だってもうお父さんでしょ?」

「じゃ、じゃあ茜音もリビングに来てくれ、みんなでゆっくりしよう」

「わかった。いこう翔君」

「うん」


 作ってくれたご飯を食べさせてもらいつつ話し合った結果、お互いにできるときにするという決まりになった。

 尚子さん――母は専業主婦というわけではないからこれからは一旦帰ってご飯を作ってからどこかに向かって歩き始めるぐらいがいいのかもしれない。

 ただそうなると僕が作ることになって母の手料理が食べたい父や彼女が困るかもしれないからこれも適度にやることが大事だった。

 出しゃばったところで悪いアピールにしかならないし……彼女に対する朝の格闘といい難しいことも増えたと思う。


「はあ~」


 川を眺めていたときといいこのなにも気にしなくていいお風呂の時間が最高だ、お風呂に入るタイミングを最後にしてあるのも楽しめるようにしてあるからだった。


「翔、ちょっといいか」

「うん、どうしたの?」


 言いたいことがあってもタイミングが悪かったら翌日にするぐらいの父が珍しいことをする。

 あの二人には聞かれたくないことなのだろうか?


「尚子はともかく茜音は滅茶苦茶我慢しているだけかもしれないからよく見ておいてやってくれ」

「うん、任せてよ」


 あ、今更だけど朝一緒に登校しているのは僕が心配をして監視的なことをしたかったからではない、気になるだろうからとずらしていこうとしたのにあの子が止めてきたのだ。

 止めてきたとはいっても「一人だとまた寝てしまうかもしれないから」と言っていただけで一緒にいきたいとは言われていないけども。


「それだけだな、あんまり長くならないようにしろよ」

「もう少ししたら出るよ、おやすみ父さん」

「おう」


 慣れたらなくなるのか、それとも続くのか。

 どちらにしても我慢をすることなく出していってくれるのが一番だった。




「翔君」


 学校で近づいてきたのはこれが初めてだ。

 友達は連れてきていないから気まずさはないけど喜んでいいことなのかはわからない。


「いいの?」

「え、どうして?」

「いや、それよりどうしたの?」


 学校でなら本当のところを吐いてくれるとかなら歓迎だけどね。

 だけど全く無理をしていなくてただただ彼女が強いだけならずっとこのままだ。

 もちろん、強くて問題が起きていないのであればそれが一番だからその場合は喜べる。


「放課後は部活があったり翔君がそもそもお家に帰ってこないから学校で話しておこうと思って、だってそうじゃないと私達だけ仲を深められないでしょ?」

「あー確かに」

「だけどここだと気になるから近くの空き教室に入ろう」


 窓が開いていて生温かい風がすぐに僕らを迎えた。

 彼女は椅子に座ると横に座るように誘ってきたから大人しく従う。


「今更だけど昨日のことはごめんね? お友達も心配してくれるのはありがたいけどいきなりセクハラとかなんとかはないよね」

「いや、急に異性の人間が家にいるとなれば心配になると思うよ」

「んーそういうものかな」

「うん、警戒しておくぐらいでいいんだよ」


 うん、彼女がこんな感じならあの子が心配になる気持ちもよくわかる、大事だからこそだ。


「それはそうと茜音ちゃんは無理をしていない? それとも昔から切り替えるのが上手だったりするのかな?」


 無理をしていないかと聞いたところでここで素直に無理をしているなんて吐く人間ばかりではない。

 だからこれはあくまで形的にやっている感が出ればいいというか、頼まれてしまったから聞いているだけにすぎない。


「うん、お母さんからは『茜音ちゃんは切り替えが早いね』とよく言われてきたよ?」

「そっか」


 いきなり距離感を見誤って内にまで遠慮なく踏み込もうとするよりはいいかもしれないもののこれは自覚できている中で一番微妙な点だった。

 社会人になるまでには直したいところだけど高校二年生現在までこのままのわけだから自信がない。

 人といることよりもぼうっとしていることの方が好きだからこんなことになっているのにそれをやめようとしないのだからそもそも直したいというそれも口だけというか……。


「それなら一応聞いておくけど、翔君が遅くまで帰らないようにしているのは私達が現れたからじゃないんだよね?」

「うん、外にいることが好きなんだ、昨日は川を見ていたけど対象はその日その日で変わるかな」

「アパートに張り付いていたから嫌がられているとかじゃなくてよかったよ」

「僕は離れることになる人の気持ちがわからないからね、だけどそれが馬鹿にされるようなことじゃないのは確かだよ」


 変な目線で語ってしまった。

 一人気まずくなって違うところを見ていると「なにか見える?」と聞かれたから馬鹿正直に雲が見えると答えたら笑われてしまって恥ずかしくなったアホもいる。


「私、翔君みたいな子、好きだな」

「えっ?」

「はは、昔も翔君みたいな子がいたんだけどどこかにいっちゃってね」

「あ、あーそういうことか」


 だけど残念、僕ではその子みたいにはなれない。


「またいつか会えるといいね」

「うん」


 おっと、なんだろうこの顔は。


「さ、そろそろ戻らないとね」 

「またいってもいい?」

「茜音ちゃんがいいならいつでも大歓迎だよ。あ、基本的に教室にはいないからその点でもやりやすいんじゃないかな?」


 学校で主に好きな場所は渡り廊下だ。

 積極的に人が来る場所でもないし窓が多くて外を見やすいのがいい。

 春夏秋冬いつでも関係ないように天候もどれであっても楽しめるから別にそこでなくてもという話ではあるけどね。


「はは、私は教室にいても遠慮なく突撃するけどね、話すときはこうして出るけど」

「誤解されないようにしないといけないか」

「え、流石に周りに年上の人ばかりがいたら緊張するからだよ?」

「はは、突撃できるぐらいなのに面白いね」

「それとこれとは別だよ」


 僕は後輩の教室に妹がいるからと突撃はできないからすごいと思った。

 中学生のときは強制的になんらかの部活動に所属しなければならなかったうえに後輩だったときに限って先輩の教室にいかなければならなかったことが多かったから参った、だからそれに比べればマシとはいえそもそもするべきことではないから僕からいくことはないだろう。


「翔君」

「うん?」

「これから学校でもよろしくお願いします」

「うん、よろしくね」


 ただ別れてから大丈夫なのだろうかと不安になってきてしまった。

 だってこちらは全く年上らしくもないただ年中ぼうっとしているだけの人間だ。

 彼女の方が上手く察して離れてくれればいいけどもしこのまま来続けるようなら……。

 なにが大歓迎だよ、話せるようになったからと調子に乗るからこういうことになる。

 いやまあ、一人でいるのが寂しいくせに逆張り的なことをするよりはいいけどさあ。


「今日はどこで食べようかな」

「それならおすすめの場所があるよ、外だけど付いてきて」

「わかった」


 彼女はまだ入学してからほとんど時間が経過していないのに色々と見て回ったのだろうか? 僕だって端から端まで見たというわけではないからいい場所だったらいいな。


「じゃーん」

「なにもないね?」


 ベンチもないから段差に座って食べるしかない。

 なにか目で追える物があってほしいかな。


「そう、だからいいんだよ、二人きりでこそこそしたいときなんかにはおすすめだよ」

「茜音ちゃんが男の子とここでこそこそしているところが容易に想像できるよ」

「え、うん、だっていま正にそうだよね?」

「いやそうじゃなくてこう、気になる男の子とさ」


 僕は義理とはいえ兄だから対象外だ。


「あ、好きとは言ったけど翔君のことがもう好きでいるとかじゃないからね?」

「わ、わかっているよ、僕が言いたいのは好きな男の子もすぐにできてここで過ごしそうだなってことだ」


 そしてもちろんそれはいいことだ。

 だからどんどんそういう子を見つけて仲を深めてくれればそれでよかった。

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