表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/14

その名が世界に届くとき

街の中央広場、冒険者登録所の前。


 そこには、騒然とした人だかりができていた。


 「見たか? あの剣士の女……盗賊3人をあっという間に叩き伏せたらしいぞ」


 「しかも隣にいた黒髪の暗殺者、連続で急所を避けて無力化……あれ、人間か?」


 「で、その2人を拾ったのが……“スカウト”? 何それ、戦えない職業だろ?」


 「いや、なんか見抜くスキルがすごいらしくて……」


 情報が断片的に飛び交っていた。だが、確実に“名”が広がっている。


 ――スカウトという、今まで無価値とされていた職業が、“何か違うらしい”と。



 「カイル、噂になってるよ……」


 リーナが落ち着かない様子で言った。


 「俺は目立ちたいわけじゃない。ただ、拾った才能が“勝手に目立ってる”だけだ」


 「そ、そうなんだけど……私、あんまり注目されるの得意じゃなくて……」


 リーナは頬を赤く染めてそっぽを向いた。

 セラはといえば、例によって無表情。


 「噂になって何か変わる? 別に、私はどうでもいいけど」


 「お前はちょっと無関心すぎる」


 そう言いながら、俺は内心、手応えを感じていた。


 この流れは、間違いなく“来ている”。



 その夜。俺たちは宿の部屋で今後の方針を話し合っていた。


 「このまま街を出て、次の拠点に向かう。次は“王都クレムラ”だ」


 「王都? あそこって、貴族と騎士しか入れないんじゃなかった?」


 「正式なギルド登録を終えて、成果報告を出せば通れる。お前たちの実績なら十分だ」


 「……カイル、もしかして狙ってる?」


 セラがこちらを見た。


 「“上の連中”に、目をつけさせること」


 「その通りだ」


 俺はうなずいた。


 「今までは下層でくすぶってる連中を拾ってきた。でも、上には上で、“扱いきれない才能”が眠ってる。表に出せない爆弾のような奴らがな」


 ゼノがニヤリと笑った。


 「俺みたいな?」


 「……それを言うな」


 苦笑しながらも、否定はしなかった。



 その数日後。


 王都への推薦書が発行された俺たちの前に、1人の人物が現れた。


 漆黒のローブ。身なりは旅人だが、ただの通行人ではない。


 「スカウト……カイル=グレイフ殿ですか?」


 「そうだが、あんたは?」


 「私、リヴァル神聖教国より参りました。高神官グリオスの命により、貴殿に面会を求めております」


 リヴァル教国――“神託の眼”と呼ばれる選別者を重んじる国。

 そこで俺の《識眼》スキルが、何らかの意味を持ったということか。


 「突然の訪問、申し訳ありません。ただ……我々は、貴殿の“見る目”を、ぜひとも教国で試させていただきたい」


 つまり、**スカウトそのものが“スカウトされ始めた”**というわけだ。


 ……思っていたより、早いな。



 夜。宿に戻った俺は1人、窓の外を見ていた。


 街の明かり。人々の声。変わらない日常の中で、確実に“流れ”が変わり始めている。


 「次は……どこに行こうか」


 この世界には、まだ見つかっていない“才能”が、きっと山ほど眠っている。


 それを拾って、磨いて、育てて――


 “世界最強のチーム”を、俺の手で完成させる。


 そしていつか、選ばれなかった俺が、すべてを選ぶ側になるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ