その名が世界に届くとき
街の中央広場、冒険者登録所の前。
そこには、騒然とした人だかりができていた。
「見たか? あの剣士の女……盗賊3人をあっという間に叩き伏せたらしいぞ」
「しかも隣にいた黒髪の暗殺者、連続で急所を避けて無力化……あれ、人間か?」
「で、その2人を拾ったのが……“スカウト”? 何それ、戦えない職業だろ?」
「いや、なんか見抜くスキルがすごいらしくて……」
情報が断片的に飛び交っていた。だが、確実に“名”が広がっている。
――スカウトという、今まで無価値とされていた職業が、“何か違うらしい”と。
◇
「カイル、噂になってるよ……」
リーナが落ち着かない様子で言った。
「俺は目立ちたいわけじゃない。ただ、拾った才能が“勝手に目立ってる”だけだ」
「そ、そうなんだけど……私、あんまり注目されるの得意じゃなくて……」
リーナは頬を赤く染めてそっぽを向いた。
セラはといえば、例によって無表情。
「噂になって何か変わる? 別に、私はどうでもいいけど」
「お前はちょっと無関心すぎる」
そう言いながら、俺は内心、手応えを感じていた。
この流れは、間違いなく“来ている”。
◇
その夜。俺たちは宿の部屋で今後の方針を話し合っていた。
「このまま街を出て、次の拠点に向かう。次は“王都クレムラ”だ」
「王都? あそこって、貴族と騎士しか入れないんじゃなかった?」
「正式なギルド登録を終えて、成果報告を出せば通れる。お前たちの実績なら十分だ」
「……カイル、もしかして狙ってる?」
セラがこちらを見た。
「“上の連中”に、目をつけさせること」
「その通りだ」
俺はうなずいた。
「今までは下層でくすぶってる連中を拾ってきた。でも、上には上で、“扱いきれない才能”が眠ってる。表に出せない爆弾のような奴らがな」
ゼノがニヤリと笑った。
「俺みたいな?」
「……それを言うな」
苦笑しながらも、否定はしなかった。
◇
その数日後。
王都への推薦書が発行された俺たちの前に、1人の人物が現れた。
漆黒のローブ。身なりは旅人だが、ただの通行人ではない。
「スカウト……カイル=グレイフ殿ですか?」
「そうだが、あんたは?」
「私、リヴァル神聖教国より参りました。高神官グリオスの命により、貴殿に面会を求めております」
リヴァル教国――“神託の眼”と呼ばれる選別者を重んじる国。
そこで俺の《識眼》スキルが、何らかの意味を持ったということか。
「突然の訪問、申し訳ありません。ただ……我々は、貴殿の“見る目”を、ぜひとも教国で試させていただきたい」
つまり、**スカウトそのものが“スカウトされ始めた”**というわけだ。
……思っていたより、早いな。
◇
夜。宿に戻った俺は1人、窓の外を見ていた。
街の明かり。人々の声。変わらない日常の中で、確実に“流れ”が変わり始めている。
「次は……どこに行こうか」
この世界には、まだ見つかっていない“才能”が、きっと山ほど眠っている。
それを拾って、磨いて、育てて――
“世界最強のチーム”を、俺の手で完成させる。
そしていつか、選ばれなかった俺が、すべてを選ぶ側になるために。




