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狂った天才にして、神の失敗作

その男は、街の中央広場で突然演説を始めた。


 「……愚かな人間たちよ! 世界はすでに終わっている! お前たちの存在そのものがバグであり、エラーであり、祝福の対象にすらならないことを、気づけ!」


 広場の人々がざわめく中、男は真顔でそんなことを叫んでいた。


 「……誰だあれ?」


 リーナが怪訝そうに言った。


 「ゼノ=バルファス。元は帝国の研究機関で“超適性者”として育てられた男。けど、スキルとの適合率が異常すぎて、人間扱いされなくなった」


 「つまり……?」


 「要するに、天才すぎて捨てられた奴だ」



 《識眼》を起動する。視界に浮かぶグラフは、見たことのない形だった。


 ――思考異常因子:最大値

 ――スキル適性:変動型(確認不能)

 ――成長因子:未定義

 ――制御難度:極大


 数値が暴れている。今の彼を測れる指標が存在しない。


 だが確かに、そこに“可能性”はある。俺にしか見えない色で、激しく燃えている。


 「これは……面白いな」



 翌日。俺はゼノに声をかけた。


 「スカウトだ。俺と来い」


 「は? 急に何を言い出すかと思えば……なに? スカウト? 俺を? ほほう、ついに世界は俺の正しさに気づき始めたか!」


 「いいから黙って聞け」


 俺は言葉を遮った。


 「お前の適性は、スキルでも魔法でも測れない。たぶん、お前自身にも制御できない。けど、その“不完全さ”が重要だ」


 「おお、なるほど! 君、なかなかに狂ってるな!」


 「お前ほどじゃない。だが、お前を扱えるのは俺だけだ。……ついてこい、ゼノ」


 ゼノはしばらく黙って俺を見つめ、それから不敵に笑った。


 「いいだろう。運命の道化を演じるのも、嫌いじゃない」


 視界にグラフが浮かぶ。


 ――制御因子:変動 → 安定化兆候

 ――自壊因子:低下

 ――認知同調:発生


 ……やはり、こいつは“拾える”。



 その夜。リーナとセラはゼノを遠巻きに見ていた。


 「カイル、あれ……絶対やばいって」


 「うん、正直、敵に回したら最悪だと思う」


 俺はふたりに言った。


 「でも、あいつは“自分の正しさ”を証明したいだけだ。だからこそ、方向を間違えなければ、最強の兵器になる」


 「……本当に制御できるの?」


 「できる。“見る目”があるからな」


 ゼノは焚き火を見ながら、ぶつぶつと何かを唱えていた。


 「世界が、また一つ塗り替えられる……ふふ、面白くなってきた……」


 その笑みは狂気の中に、ほんのわずか――人間らしい期待を含んでいた。



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