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死にたがり暗殺者、スカウト対象になる

とある街の裏通り。陽も傾き、空が赤く染まり始めていた。


 「カイル、本当にこんな場所に“才能の原石”がいるの?」


 リーナは周囲を警戒しながら尋ねた。


 「確かに、やばい場所ではある。でも確実に“いる”」


 俺たちが今いるのは、クランディア帝国の外縁に位置するスラム街。治安も最悪で、公式のギルドが手を出せない“闇のエリア”だ。


 ここに、俺がずっと気になっていた人物がいる。


 “殺し屋”として裏社会で噂になっている少女――

 セラ=ノクス。


 殺しに一切の躊躇がなく、感情の欠片も見せない異常者。

 その実態を知る者はほとんどいないが、俺は1度だけ、遠目に彼女を見たことがある。


 そしてそのとき――


 彼女の因子グラフが、はっきりと“光って”いた。



 「いた」


 俺は足を止めた。


 薄暗い路地の先。石の階段に腰掛けて、無表情で空を見上げる少女がいた。


 黒いローブ。小柄な体格。腰には短剣。


 近づくと、彼女は視線をゆっくりこちらに向けた。


 「……なに? 死にたいの?」


 その声音に、リーナが思わず一歩後ろに下がる。


 だが俺は、ただ静かに彼女を見た。


 ──グラフ表示:反応速度:S / 闇属性適性:A+ / 感情抑制因子:異常値 / 自壊因子:不安定


 戦闘に特化しすぎた、異常な構造。

 これはもはや“武器”であって、人間じゃない。


 「違う。お前をスカウトしに来た」


 俺がそう言うと、セラは一瞬だけまばたきをした。


 「……スカウト? 私に? 戦えないくせに?」


 「お前には“使い方”が分かってないだけだ。お前の能力は異常だ。正しく扱えば、世界すら切り裂ける」


 セラはしばらく黙っていた。

 やがて、ぽつりとつぶやく。


 「……面白い。なら試してみる?」


 その言葉と同時に、彼女の因子グラフに“揺らぎ”が走った。


 スカウト対象、確定。



 「待って、カイル! 本当に大丈夫なの? あの子……なんか、ヤバいよ!」


 その後、宿に戻った俺に、リーナが食ってかかるように言った。


 「わかってる。正直、俺もギリギリの判断だった。でも、アイツは――死にたがってる」


 「え……?」


 「自分に価値がないと思ってる。でもそれは、誰も彼女を“正しく扱って”こなかったからだ。あの能力は、殺しにしか使われてこなかった」


 リーナが沈黙する。


 「スカウトってのは、才能を見抜くだけじゃない。拾って、正しい場所に置いてやることまでが仕事だ」


 「……責任、重すぎない?」


 「当たり前だ。戦えない分、俺はそれぐらいやるしかない」



 翌日。セラは何事もなかったかのように宿に現れた。


 「……で、あんたの“使い方”とやら、試してみる。死ねたら儲けモノって感じで」


 リーナは不安そうに彼女を見ていたが、俺は静かにうなずいた。


 ──また一人、“原石”が加わった。


 このチームは、確実に“世界最強”へと近づいている。

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