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スカウトという異物が揺らす権力

カスタの村から戻った翌朝。

 教国本部から、正式な召喚命令が届いた。


 名指しで呼ばれたのは、俺とミリア、そして“新たな保護対象”となったエル。


 書状は丁寧な言葉で綴られていたが、内容は明白だった。


 > 「未確認魔力源である少女の適性と存在価値について、教国聖職評議にて検証を行いたい。カイル=グレイフ殿の同行を許可する」


 「“検証”って言い方、気に入らないな」


 リーナがぼそりと呟く。


 「エルを“人”じゃなくて“物”として扱ってる言い方だよね」


 「それがあいつらの常識だ。“神に与えられていない力”は、例外として処理される」


 「例外……ね」


 俺は紙を握りつぶす。


 「俺が例外を拾って、例外のまま最強にする。それが気に入らないだけだ」



 教国中枢、聖職評議の会議室。

 高神官グリオスを含む7名が出席し、俺たちは“参考人”として招かれていた。


 「カイル=グレイフ殿。あなたの識眼は、これまでにも数多くの例外を“拾って”こられたとか」


 「そうですね。拾い、使い方を考え、結果として覚醒させてきました」


 「まるで……神の選別に介入しているような言い方だ」


 「それを“神の怠慢の補填”と呼ぶなら、俺はそうしているだけです」


 一瞬、室内の空気が固まった。


 ミリアがわずかに息を飲み、リーナが不安そうに俺を見た。


 だが、俺は言葉を止めない。


 「識眼は、神の代行ではありません。“人の中にある未来”を、ただ視ているだけです。あなた方が拾わなかった才能を、俺が拾っただけ」


 「……それが結果として、神託制度を揺るがしているとしたら?」


 「制度は破られるためにある。“人”が上に立つ世界を選びたいなら、制度よりも実力を見せればいい」


 評議の一人が机を叩いた。


 「貴殿の思想は危険だ! 他者の秩序を破壊してでも、自らの正しさを押し通すのか!」


 「そうだ。だから“スカウト”は危険なんです。力ある異物です」


 俺は静かに言った。


 「だが、俺は間違っていない」



 会議後、ミリアは小さく言った。


 「すごい、ね。堂々としてて……怖くなかった?」


 「怖いさ。でも、“見えてるもの”を信じないで、何のためにこの目を持ってるんだ」


 「……うん」


 エルは終始無言だったが、その手は俺の服の裾をしっかりと握っていた。



 その晩、ギルドから別の書状が届いた。


 差出人:王都貴族会議議長エルム・クレイン。

 内容は簡潔だった。


 > 「“スカウト職の影響力拡大”に関する意見交換の場を設けたい。近日中に王都へお越しいただきたい」


 セラが呟く。


 「今度は王都……権力者側が動き始めた」


 ゼノは笑う。


 「いやぁ、火種が各地に転がってきたな。君、そろそろ“暗殺対象”に名前載っててもおかしくないんじゃない?」


 「その可能性も考えてる」


 俺は静かに立ち上がった。


 「教国の制度は、もう限界が見えてる。王都も動く。そろそろ、“世界の歪み”と向き合う時期だ」



 翌朝、俺はエルに言った。


 「教国には、もうお前の居場所はない。だが、俺たちとなら進める。まだ“眠ってる”なら、起きるまで待つ」


 エルは、はにかんだような表情で頷いた。


 「……ありがとう、スカウトのおにいちゃん」


 その言葉に、俺は少しだけ笑った。

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