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やりたい放題シンデレラ~ヒーローは変態ばかり~  作者: お米うまい
最終章 終わりの為の物語

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第46話 馬鹿正直は庇えない

「助けたくてもね、事情を話してくれない事には見逃して保留する訳にもいかないのよ」


 アデラレーゼだってリルムの言葉に頷いて全て終わりにしたかった。


 確かに人を殺したのは悪い事だ。それは取り返しの付かない事で、本当はどう頑張ったって償えるようなものじゃない。だけど、だからって殺さないといけないのは仕方ない時だけだとアデラレーゼは思っている。


 野放しにすれば他の人間を害するような危険人物の時だけ、無実の人間を犠牲にするような相手なら、嫌だけれど仕方ない。それがアデラレーゼの考えだ。


 自分の為だけに身勝手に殺したのか。それとも何か理由があったのか。


 何も解らないのに本当は殺したくなんてないのだ。


「私には女王として守らないといけないものがあるの」


 だけど、アデラレーゼには女王として果たさなければならない責任があった。


 自分の私利私欲、出世の為に人を殺したかもしれない人間を放置して国民が安心して暮らせる訳がない。それがムテキンのような力の持ち主なら尚更だ。


「それは解ってる。だから無実にしてほしいって言いたい訳じゃないんだ。何か解かるまででいいんだ。暫く牢に入れとくとか出来ないかな?」


 リルムもアデラレーゼの事情を考えず、無闇に我侭を言いたいだけではなかった。


 メアリーにムテキンの事を調べるように頼んだし、頼んだだけで諦めず、自分自身でも調べ続けている。


 結局、自分では何も掴めなかったがメアリーなら何かを掴んできてくれるかもしれない。その可能性が残っている間は、報告を待ちたかった。


「……それは考えたわ。でもね、彼を繋ぎ止めておけるような牢屋も手錠もないのよ……」


 ムテキンと言えば国の人間なら誰でも知っている生きた伝説だ。その実力は、舞踏会の日に魔法使いとの戦いの余波で城の一部を消し飛ばしている辺り普通じゃない。


「大丈夫、ちゃんと言ったら大人しくしてくれるよ」


 それでも牢屋に入れれば、ムテキン自身は大人しくしていてくれるだろうし、犯罪者を野放しにしている訳ではないから、最低限の体裁自体は保てるだろう。


「……ムテキンは立場のある人間よ? 拘留した時点で誰もが容疑者ではなく犯罪者だと思ってしまうわ。繋ぎ止められない犯罪者に、国民が怯えられずに居ると思う?」


 だが、それでも事情を知らない人間の不安が拭えるかと考えれば無理だ。


 その気になれば城そのものを吹き飛ばせるような力の持ち主が、犯罪者としてすぐ近くに居るのだ。役に立つかどうかも解らない牢屋に繋がれているからって、それでどうして安心出来るというのか?


「ずっと寝ないで見張りだってするか――」


 急に言葉を止め、床へ倒れ込もうとしたリルムをムテキンが抱き止めました。


 リルムの後ろに居たムテキンが、彼女を気絶させたのです。


「私のせいで二人が争う必要なんてありません」


 そして、ゆっくりとリルムを床へと下ろして、アデラレーゼの前へと進み出ました。


「……もう一度聞くわ。証拠も何もないのよ。今からでも無かった事にすれば調べようもないし、仮に本当に殺してしまったのだとしても、話次第では命まで取らずに済ませる事だって出来る筈だわ」


 懇願するかのように、アデラレーゼはムテキンへと問い掛けます。


「……深い理由はありません。私は貴女の御父上を殺しました。御父上には何の非も無かったにも関わらず、です。その罪は、償わなければなりません」


 それでもムテキンの意志は変わりませんでした。


 それどころか、まるで剣でも捧げる時のように跪いて首を垂れます。


「……そう、解ったわ」


 首を切り落として下さいと言わんばかりのムテキンの行動に、諦めたように呟くと、アデラレーゼは剣を握り締めます。


 けれど、本当は今でもムテキンを助けたかった。


 リルムの事もそうなのですが、そもそも蘇ったお父様がムテキンへ悪意を向けていたような記憶がアデラレーゼには一切無いからだ。最強の兵士だと紹介していた時の声は、むしろどこか誇らしく感じる事はあっても恨みなんて微塵も感じなかった。


 意味も無く裏切り行為をするような危険人物なら、お父様が何も言わず放置するとはアデラレーゼには思えない。必ず、そこには何か意味があった筈だと今でも思っている。


「それでも、引けない理由があるのよね?」


 ですが王子との舞踏会の時、侮辱罪で殺される事になろうとも伝えたい事があると覚悟した事があるアデラレーゼには解ってしまったのです。


 何を言っても、ムテキンが意見を変える事はないという事を。


 おそらく命を懸けるに足る理由や信念の元に動いているのだろうから。


「……私が死んだら、リルム様に再び剣を握るように言って貰えませんか? 貴女の無くした力は、戻っていると言って貰えれば伝わると思います」


 死すら覚悟している筈のムテキンが、最後の言葉になる可能性があるのに呟いたのは、死んでも伝えたい主張でも何でもなく、リルムの事でした。


 そして、おそらくムテキンが頑なに死のうとする理由。


「……好きな相手を犠牲にしてまで、何かしたいと思うような妹じゃないわよ?」


 事情を知らないアデラレーゼでしたが、それでも何となく気持ちだけは理解出来た。


 ムテキンはリルムの為に、命を捨てようとしているんだと。


 そして、リルムはそんな事を望むような妹でない事も。


「それはお互い様です。あんな状態の私でも好きになってくれた相手の人生を犠牲にしてまで、生きていたいとは思いませんよ」


 アデラレーゼの言葉に、ムテキンは笑って答えた。


 泉の精の契約に縛られ、リルムへの罪悪感から笑う事すら出来なかった男が十年以上の月日を経て見せた笑顔は、久しぶりに笑ったとは思えないほど眩しいものだった。

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