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第2話 初めての訪問者

3話目まで投稿します!



優は気配を感じたその瞬間から、心の中で警戒のスイッチが入った。スライムゴーレムも、その異変に気づいたようだ。優は静かに息を呑みながら、少しずつ足を進め、森の中から現れた人物たちに目を向けた。


近づいてくる人影は、数人の冒険者のようだった。やがてその姿がはっきりと見え、優は少し驚いた。


「まさか、冒険者が?」


その冒険者たちの中で最も目立つのは、真紅の鎧を身にまとった女性だ。長い金髪が風に揺れ、鋭い眼差しを持っている。背中には大きな剣を担ぎ、腕にはいくつかの魔法の護符がぶら下がっている。彼女の名はリリア・アシュフォード。勇敢で有名な剣士で、以前からその名を聞いたことがある。


リリアの隣には、少し小柄な男性冒険者がいた。彼の名前はオスカー・ハートフォード、リリアの仲間であり、弓の使い手だ。彼は背中に大きな弓を背負い、冷静で穏やかな表情をしている。


最後に、もう一人の人物がいた。若い女性で、白いローブをまとい、杖を持っている。彼女の名前はエリス・フェアフィールド。魔法使いで、優れた治癒の魔法を使うことができるという。


「ダンジョンを発見したぞ、リリア。これがその場所か?」


オスカーが静かに言った。彼の視線は優のダンジョンに向けられている。


「そうだ。だが、少し様子が変だな…」


リリアが周囲を見渡しながら答える。彼女は警戒心を強く持っており、冒険者としての直感が働いているのだろう。


優はしばらくその会話を耳にしていたが、どうするべきか決められなかった。彼らが友好的であるのか、それとも敵対的な存在なのか、まだ分からない。ダンジョンマスターとして、最初に接触するべきか、それとも隠れて様子を見ているべきか。


その時、スライムゴーレムが優の隣に歩み寄り、静かに言った。


「主、心配はいりません。彼らは強い力を持っていますが、今のところ敵意は感じません。」


優は少し安心し、深呼吸をした後、意を決してその冒険者たちの方へ向かう。


「こんにちは!」


優の声が、冒険者たちの耳に届く。リリアたちが一斉に振り向き、驚いた表情を見せた。優は少し不安そうに手を挙げ、ダンジョンの主であることを告げる。


「私はこのダンジョンの管理者、天野優です。」


リリアはその言葉を聞くと、少し驚きながらも、すぐに冷静な表情を作った。彼女の剣の鞘に手をかけつつ、問いかける。


「ダンジョンマスターか…お前がこのダンジョンを管理しているのか?」


「はい、そうです。私は異世界から転生してきたばかりで、まだよく分かっていないことが多いのですが…」


優は少し緊張しながら、相手の反応を待つ。だが、リリアは予想に反して冷静に答えた。


「そうか、転生者か…。あまり珍しくはないな。」


「転生者…?」


優は少し困惑しながら尋ねた。リリアは頷き、続けた。


「異世界に転生してきた者たちは、時折こうしてダンジョンマスターとしての役割を与えられることがある。お前が初めてではないが、なぜここにダンジョンが存在しているのかは謎だ。」


「それに、農業ダンジョンというのも初めて聞いた。」


オスカーが言った。彼は弓を手にしていながらも、リリアと同様に優に対して警戒の色を見せることなく、冷静に観察している。


エリスはその会話に耳を傾けながらも、どこか遠くの方に視線を向けていた。彼女はその視線を戻し、優に向かって柔らかな声で言った。


「でも、ここは確かに変わったダンジョンですね。植物がたくさん生えていて、普通のダンジョンとは全然違う。」


「農業が主体のダンジョンだからね。まだ作物を育て始めたばかりだけど。」


優は少し恥ずかしそうに答えると、エリスが目を輝かせて続けた。


「それは素晴らしいわ! 私、魔法の勉強が得意だから、ここで作物を育てる手助けができるかもしれない。」


優はその言葉に少しだけ驚き、エリスに向かって微笑んだ。


「本当に? それなら助かるかもしれない。」


その後、リリアたちはダンジョンの見学を始め、優は少しずつ自分のダンジョンを彼らに紹介していった。


最初のうちは、少し警戒されていたが、次第にリリアたちもその温かい雰囲気に心を開いていく。やがて、彼らはダンジョンの仕組みや作物、さらにはスライムゴーレムとの関係を理解し、興味を持ち始める。


「ここ、もっと発展すればすごく面白い場所になるわね。」


リリアが言った。


「うん、私もそう思う。」


優は心の中でほっと一息つきながら、彼らとともにダンジョンの未来を考えていった。


「これからもよろしく頼むよ、リリアさん、オスカーさん、エリスさん。」


その言葉に、リリアたちはそれぞれ頷いた。


「もちろん。私たちも手伝うわ。」


「気をつけて、何が起きるか分からないからな。」


「よろしくね、ダンジョンマスター。」


優はこれからの新しい冒険がどう展開していくのか、少しワクワクしながら、彼らとの交流を深めていくことを決意した。



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