青色と観覧車
「観覧車に乗るので四人組を作ってください」
修学旅行生で賑やかなテーマパーク内で随伴の教師から号令がかかる。
周囲を見渡すと、すでに多くの生徒はグループで固まっており、俺みたいな一人者は嫌に目立つ。
だが、大抵同じ境遇の奴がいるものだ。
集団から少し離れて余り者を見つけるとするか。
「私この観覧車乗ってみたかったんだよね」
「かわいい形してるよね」
「さすが円形フェチは見るところが違うね」
どんなフェチだよ。
思わず突っ込みを入れそうになるも、既の所で堪えた自分が誇らしい。
自画自賛をしていると、後ろの方で女子が一人でスマホを触っているのを発見。
小柄ながら人を寄せ付けない独特の空気を放っている。
「っよ。俺と一緒に乗らないか?」
「誰?ナンパですか。お断りします」
「まだグループ決まってないんだろ?いいのか、男教師と密室の中に二人っきりで乗ることになっても」
「うぇ……。それは嫌かも」
何を想像したのか、舌を出して苦い顔をする。
他にも似たような奴を探してみたが、どうやら俺ら以外は既にグループが出来上がっていたらしい。
ゴンドラ待ちの最後尾に会話もなく並んでいると俺たちの番がやってきた。
「おめでとうございます」
係員が気色悪い笑みを浮かべて俺と隣の少女を見やる。
「ハート模様のゴンドラとか。うちの趣味じゃないんだけど」
どうやら、俺たちは"当たり"を引いてしまったらしい。
さすがに二人で乗るのはと思い後ろにいた教師を誘ってみたところ、丁寧に断られた。
「はぁ、ついてないな」
横長の椅子に靴を脱いで体育座りでスマホをいじる少女。
対面の俺にとって、非常に目のやり場に困る。
「俺、白井匠。君は?」
「七野由衣」
返事が返ってきてほっとした。
あまりに無防備な姿に存在を忘れられたのかと錯覚したよ。
「うちの友達が風邪で休んだだけだから」
「何も言ってないぞ」
しばらく沈黙が流れる。
ゆっくりと回るゴンドラの窓からは遠くの海が水平線まで見える。
「綺麗な青色だな。興奮してきた」
「はぁ!?きもっ!」
突然の大声で慌てて振り向くと、足を下ろしてスカートを両手で押さえていた。
どうやら、スマホに夢中で俺が窓の外を見ていることに気が付いていなかったようだ。
七野も自分の勘違いに気づいたようで、顔を赤くさせながら俯いた。
ゴンドラが下りて、扉から出てきた赤面した彼女と俺を見た係員はやはり気色悪い笑みを浮かべて言った。
「またのご利用お待ちしております」




