season1 8話平和と戦争
各所で戦いが起きている中美月とこうたは、こうきの指示で本部へ向かっていた。
「美月!大丈夫か!?」
「ハァ…ハァ…えぇ……」
美月がその場で息を荒くする。美月が小島によって受けた足や肩の傷は完治してなく、体力消耗が激しかった。
「あまり無理するなよ…?」
こうたが精一杯の気遣いをする。
「とりあえず……状況を把握するために合流しましょ────」
美月がそう言いかけていた時だった。
──開戦──
【閃光開帳】
美月とこうたに無数の斬撃が、襲いかかる。
「美月!」
こうたが美月に合図をする。
「えぇ!水壁!」
「換装:雷檻!」
2人は咄嗟に2つの防壁を貼り攻撃を防ぐ。その防壁にはヒビが入る。
「くっ……!このままじゃ、2人まとめてやられるぞ!」
こうたが攻撃に耐えながら言う。
(まずい……私が万全じゃない今……長期戦はジリ貧になっちゃう……なら……)
「こうた!あれを!」
「……!おう!」
美月が指示するとこうたが察して応答する。2人はお互いの結界を重ね合わせる。
──合技──
【海王蒼ネプチューン】
2人は修行中一度も成功しなかった技を土壇場で成功させる。巨大な水の渦が現れ敵を巻き込む。衝撃で結界が破壊される。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……やったか?」
こうたが渦潮が起きている方を見て言う
「いえ、まだよ!」
美月が警戒し構えを崩さない。だが、美月は今の一撃で仕留めきれなかった事を内心焦っていた。
「断絶!!」
渦潮はモーセの如く真っ二つに割れた。弾ける水飛沫の奥からは────
「嘘っ……でしょ!?」
そこに居たのは1人の女だった。美月はその女を見ると驚愕する。
「らん……なの?」
美月が衝撃のあまり震えていた。美月たちの目の前に現れたのは親戚の「竹島らん」だった
「美月……」
らんは暗い表情をしていた。
(らん?確か美月の親戚…!)
こうたが聞き覚えのある名前に反応する。
「な、なんで……!」
「ごめん……巻き込んで……」
美月にらんは謝る。
「……?何があったの?─────」
すると、らんはこうたに切りかかる。
「!?……どういうつもり!?」
美月はいきなりのらんの行動に戸惑う。こうたは反射的に攻撃を防ぐ。美月は黙って見ている訳にも行かず応戦する。
「らん!辞めて!」
「お願いだから邪魔しないで!」
美月はらんに剣で押し倒される。美月はすぐさま体制を整える。
(強い……!勝つビジョンが見えない……!)
美月が圧倒的な実力の差に汗を流す。
「お願い、諦めて死んで!」
「……ったく!なんなんだ!くっ……!!!」
こうたへの攻撃が加速する。
(さっきより早くなってる………!?このままじゃ…!!)
こうたが押し負けそうな時だった。上空から流れ星のようなものがらんに向かって落ちてくる。
「………!?」
らんが咄嗟に防ぐ。
「竹島らんだな?確か誘拐事件の被害者の一人……だよな?」
こうた達の前に現れた男はジッとらんを睨みつける。
「この誘拐事件は何かある……その鍵を握るのがお前だ」
「三番隊隊長勝田ようすけ……随分と大物が来たわね」
勝田ようすけ、政府直属部隊三番隊隊長。最年少で隊長になった実力者である。
「鱒渕シンについて話してもらおうか」
ようすけが構える。ようすけの両腕には膨大な魔力が流れる。
(あれは………魔力強化……!!)
らんがようすけの技術に驚愕する。自身の魔力の流れを熟知していないと出来ない高等技術、それが魔力強化。身体能力は劇的に上がり、魔力効率もより良くなる。
「流石に貴方を相手にする程私も馬鹿じゃないわ」
「逃がすとでも?」
ようすけとらんが互いに睨み合う。すると、ようすけ達を囲っていた建物から十字の光の柱が次と建つと、強い衝撃と共に大量の化け物が湧き出てくる。
「魔獣だと……!?」
魔獣、世界に蔓延る魔力を活動源として生きる獣の事。その生態は人間のみを喰らうというもの。生きるために食べているわけではなく、人を殺すことを本能的に繰り返している。記録には「3000年前、色欲の罪アスモデウスが創り出した」と記されている。現在は500年前「江戸幕府第四代将軍」によって造られた強力な結界により人の住処に魔獣は近寄れなくなっていた。ようすけが戸惑いを隠せないでいた。
(ここは結界の中だぞ……!?)
「な、なんだこいつら!?」
魔獣の存在を初めて見るこうたと美月は死を覚悟する。
「美月……またいつか会いましょう……」
魔獣の群れを背中にらんがその場を後にしようとする。
「……待って!!!」
美月が追いかけようとする。だが、魔獣が道を塞ぐ。
「うっ……!!」
「逃がすかぁ!!準星!!!」
光線が錯乱し魔獣を一掃するがその場にらんはいなかった。
「くそっ!」
「……なんで」
美月が複雑な気持ちだった。
──────────
「シンは上手くやるといいけど」
ひびきが倒れ、それを背中にその場を後にしようとするくるみがいた。その瞬間ひびきがくるみの背後から斬り掛かる。
「……ッ!!氷盾!」
急な攻撃を咄嗟に防ぐ
「なんでっ!」
「付与幻想……危なかったけどな……」
すると、くるみの後ろに倒れていたひびきの幻影が解ける。
「なら簡単な話…もう一度殺すだけね」
ユニークスキル:【七つの大罪】
自分が生成した物質に生命を与える。もうひとつのユニークスキル【造形】と相性がいい。
くるみの首から頬にかけて黒い紋様が浮き出た。
「造形:氷鎖!」
くるみは鎖を壁に突き刺し蝶のように空中を舞う。
「かまいたち!」
ひびきが放った辻斬りがくるみに斬り掛かる。
「……っ!」
くるみは鎖を自由自在に操り攻撃をよける。
「まだまだ!雷光一閃!」
ひびきが稲妻を体に纏い高速移動をし、くるみに斬りかかる。
「くっ…!氷鎧!」
くるみは一瞬にして全身を氷で覆い、攻撃に備える。くるみが纏った氷はひびきの攻撃を通さなかった。
「……ちっ!!!」
(硬い……!)
「なら……」
すると、ひびきから膨大な魔力が放出される。
「何……!?」
くるみが圧倒される。
「付与超覚醒!!!!!!」
ひびきが勢い良くくるみに攻撃を仕掛ける。
「龍!!!」
氷の龍が現れる。シン直伝のこの技は構築スキルにより龍を模したものを作り攻撃する。シンなどのスキルは模したものを作っているだけなので直ぐに崩壊してしまうが、くるみの『七つの大罪』なら本物の龍を生み出せるのだ。ひびきは鉈を振り下ろす。すると龍が真っ二つになる。
「噓でしょ…!?ただの構築スキルとは訳が違うのにっ……!」
くるみの構築スキル「造形」によって作られたものはは他の構築スキルのものの何十倍の強度を誇る。
(ひびきの身体能力が著しく上がっている……)
お互い攻撃のタイミングを伺ってにらみ合う。少し間かあいて
「造形:玄武!」
くるみの背後に巨大な亀のような魔獣が現れる。その魔獣には巨大な蛇が巻きついている。
「……四神か」
ひびきが警戒する。すると魔獣は大量の水を放出しひびきを押し出す。
「なんちゅう質量だ!?」
ひびきが押し出されている間にくるみはもう一体を顕現させる。
「造形:白虎!!」
─────開幕─────
「……!?」
ひびきが自分の魔力が鈍る感触を覚える。
(これは…開幕……!?あの虎の仕業か……)
開幕、開戦の対抗策として江戸時代後期に考案された技。現代は継承が途絶え、古書に記録として残されている。その効果は相手のスキルを濁す力があり、それは開戦の必中効果をも濁す。ひびきが虎を警戒するが、魔獣は攻撃をしてくる気配がない。
(なんだ……?この違和感……)
「造形:朱雀!!」
上空を世にも美しい鳥の魔獣が舞う。
(次は朱雀か……)
すると、空中に鱗粉のようなものが撒かれる。
(感覚が鈍る……!デバフ系の技か……)
「付呪戻元!!」
ひびきがデバフを取り払う。
(玄武……白虎……朱雀……って事は……)
ひびきに巨大な龍が襲いかかる。
「青龍……!!」
ひびきが攻撃を防ぐ。
「四神全員がお出ましとは……」
再び青龍が襲いかかる。ひびきは反撃の機会を伺う。
「硬ぇ……!!さっきの龍の比じゃねぇ……!」
すると、四神はひびきを囲って4箇所の配置に付く。
(それぞれの司る方角に着いている……なにか来る……!)
─────開戦─────
【色欲の間】
四神が氷の柱となり、ひびきを結界で囲む。
「開戦……だと……!?」
ひびきが動揺する。
「奥の手ってやつ?手間がかかるうえに魔力を多く消費するからあまりこの手は使いたくなかったんだけどね」
奥からくるみが姿を見せる。
「勝負はこれからだろ」
ひびきが斬り掛かろうとする。
「……!?」
ひびきが足が凍っていることに気づく。
(無理に動いたら身体が割れる……!)
「くそっ……!」
ひびきは身動きを封じられた。
「……詰みね。時期に全身が凍る」
くるみが勝ちを確信する。
「最期に一ついい?」
「……」
ひびきはくるみの問いに答えなかった。
「なんであの時助けてくれなかったの?」
「……悪かった」
ひびきの答えは謝罪だった。
「そう……それが答えなのね」
くるみが失望の気持ちを顔に出す。すると結界の一部が割れ、そこから一人の人間が中に入った。
「……!!誰!?」
くるみが奇襲に驚く。
「政府直属部隊三番隊所属……秋本はるこ……って言ったら分かるかな……?」
くるみとひびきがその名を聞いて気づく。
「過去にS級魔獣を10体以上も討伐して実力だけでは隊長レベルと言われている……あの……」
ひびきが解説者のように言う。
「ようすけの連れで来たけど……来てよかった…!!少しは楽しめそう……!」
はるこの笑みは絶えない。
「っと……その前に」
─────休戦─────
くるみの結界が乱れる。休戦、江戸時代後期に考案された「開幕」を改良したもの、世界三本柱が一柱「ダグラス・マッカーサー」が生み出した技である。ひびきの氷が溶ける。
「悪ぃ……助かった」
「さて……君はどんな戦い方をするのかなぁ?」
はるこがワクワクした顔でくるみに問いかける。
(無視かよ……)
「白虎!!」
くるみが呼ぶと建っていた柱が割れそこから白虎が現れる。
「神獣白虎……召喚系のスキルかなぁ」
白虎がはるこに襲いかかる。
「インドラ!!」
白虎に雷が落ちる。
(雷属性のスキルか……!)
くるみが距離を置く。
「吹雪!!!」
はるこがくるみに攻撃を仕掛ける。
「……っ!?玄武!!」
くるみが咄嗟に玄武を盾にし身を守る。玄武は凍りついてしまう。
(今度は氷……!?スキルの内容が見えてこない……)
「……造形:麒麟!!!」
くるみの背後に麒麟が現れ、くるみにバフを与える。
(直接叩く……!)
くるみの拳に鎖を纏わせる。はるこはくるみの拳を片手で止める。
「……くっ!」
(これは魔力強化……!)
「なるほどね、構築スキルか……!」
はるこが言い当てるとニヤリとする。
「……破壊!!!」
くるみの手から禍々しい魔力の砲弾がはるこに向かって放たれる。
「おっと、そろそろ時間だ。」
はるこは砲弾を目の前に腕時計を見る。
「君のスキル……面白かったよ!」
そう言うとはるこの上空に向けて手を上げる。
「なんだ……?」
ひびきが上を見ると雲が渦巻いていた。
「下降噴流!!!」
すると、雲から爆発的に気流が吹き降ろされる。
「……嘘でしょ!?」
くるみが氷で精一杯身を守る。
(やべぇ……!俺も巻き込まれる!!)
「付与結界!!」
ひびきも自身の身を守る。
「アッハハハ!!!」
はるこは両手を広げて高らかに笑っていた。風が収まるとそこには凍りついたくるみがいた。
「じゃあ私は行かなきゃだから!」
そう言うとはるこはその場を後にする。
「規格外だな……」
ひびきが攻撃の規模に圧倒される。その理由は辺り一面が氷の大地に変わり果てていたからである。ひびきは凍りついたくるみの方に足を運ぶ。
「俺があの時味方をできていたら……」
くるみの目の前にひびきが立つ。
「俺にはその覚悟はなかった……」
ひびきは鉈を手に持つ。
「……じゃあな、くるみ」
そう言うとひびきは鉈を振り下ろす。
──パリンッ──
くるみは割れ粉々になる。ひびきはその場を後にした。その表情は暗く、とても怒りが籠っていた。
──────────
ひびきは本部に戻り治療を受けた。
「ひびき!大丈夫?」
ひびきが保険室に戻るとおとがいた。
「あぁ、大丈夫。けど、ちと疲れたな」
ひびきはベットに座り込む
「しばらく休みな…」
「あぁ……そうさせてもらう」
すると、ドアを開く音がした。そこにはこうたと美月がいた。
「大丈夫か?ひびき」
「あぁ、お前らこそ大丈夫か?」
こうたがひびきを見てボロボロの事気付く。だが、こうた達もボロボロの事にひびきは気付く。
「………ハッ……お互いだいじょばないか」
ひびきが少し笑っていう。
「んで、どうしたんだ?」
「シンについて教えて欲しいんだ」
こうたが真剣な顔で言う。
「……わかった───」
これはシンが変わった原因の一つの話。
「たいぞう」についての話だ。