season1 3話告白
「俺が悪いよな……」
こうたがスマホを片手にポツリと呟く
「今日何かあったんでしょ?聞かせなさいよ」
スマホの先からは女声が聞こえる。
「わかった。実は……」
こうたは電話で話していた友達の美月みつきに遊園地に行った日のことから、今日の事まで全て話した。すると美月が一言。
「あんた馬鹿なの!?」
美月は大きな声で罵倒する
「うるさいなぁ」
こうたは悩んでいたことを「馬鹿」という言葉にまとめられ眉間にシワをよせる。
「なら明日、くーちゃんに謝りに行きましょ。じゃあもう遅いし寝ましょう」
「……そうだな」
こうたが不服そうに返答する。
「おやすみ〜」
─────ピッ
こうして2人は電話を切りお互い眠りについた。
次の日、学校に行くと、真っ先にこうたはくるみを探した。すると、くるみから話しかける。
「お、おはよう」
くるみが気まずそうに挨拶する。
「あぁ、えっと……あの……」
こうたが挙動不審な返事をくりかえす。
「昨日はごめん!あんなことして……」
くるみが覚悟を決めると頭を下げ謝罪をする。
「いや……俺の方こそ……」
こうたはくるみの勢いに圧倒される
「本当にごめん!」
くるみは何度も頭を下げる。
「……こっちこそごめん!」
こうたもしっかりとした謝罪をする。こうしてくるみとこうたの問題は解決した。その光景を見て「一安心」と言わんばかりな顔をしている美月の姿があった。安堵したこうたはゆうりの顔を思い浮かべ、
(俺はまだ自分の気持ちを伝えられてないけどいつか伝える。)
と、心に誓った。
あれから1週間が経ち夏休みも残りわずかとなった。こうたは宿題は殆ど終わらせ、残るは自由研究のみ。そこで、ある研究をすることにした。
「親父、母ちゃん。相談があるんだけど……」
思春期なのかこうたは少し気まずそうに言う。
「なんだ?」
「なーに?」
「自由研究で、DNAについて調べようと思うんだ。だから、その、図書館とかで資料探すの手伝ってくれないか?」
「ああ、いいぞ」
「もちろん手伝うわよ」
両親は快く承諾した。
「……ありがと」
それから3人は、図書館に行って、本を読んだり、ネットで検索したりして、色々調べた。しかし、DNAについてのものはなかなか見つからなかった。
「う〜ん、見つからないね」
母が熱心に本を探しながら言う。
「どこにあるんだろうな」
「まだ時間はあるし、ゆっくり探していけば良いんじゃないか?」
父がこうたに提案をする。
「それもそうだな」
それから数時間かけてようやく見つけた。
「やった!見つかった!」
こうたが本を上に持ち上げて言う。
「よかったな」
「これで安心ね」
それから車で家に帰る途中、こうたはゆうりを見つけた。隣には知らない男がいた。
「あいつ誰だ?まさか彼氏!?」
こうたが慌てふためく様に言う。
「そんなわけ無いだろ」
父がそれを否定する。
すると男はゆうりの手を握った。そして2人は歩いていった。
「えっ、嘘だよな?」
こうたが頭を抱える。
「おい、こうた行くぞ」
父が車を再び発進させようとする。
「……」
こうたが不安そうな顔を隠し通せないでいる。父は少し強引に車を発進させる。
そして家に帰ってからもこうたはずっと考えていた。
「やっぱりおかしいよな……」
食卓を交わしていた時だった。こうたは再び話題をあげる。
「何がだ?」
父は分かりきっている事を聞く。
「ゆうりは前に好きな人はいないって言ってた筈なのに男といるし…」
こうたは少し早口気味で言う。
「そうか。ならもう一度聞いてみたらどうだ?」
父が米を口に運びながら提案する。
「そうするか。よしっ!決めた!」
こうたが決心する。
そして翌日、こうたは学校でゆうりに話しかけた。
「なぁ、ゆうり」
「何?」
「ちょっと話いいか……?」
こうたが真剣な顔で言う。
「……?うんいいよ」
ゆうりはこうたの表情を見て疑問を抱くがこうたの頼みに答えた。こうたはゆうりを屋上に案内した
「それで話って何?」
「ゆうり…!」
覚悟を決めたこうたは勢い余って名前を叫ぶ。
「な、何?」
ゆうりはこうたの行動に困惑を隠せない
「お、俺と付き合ってください!ずっとゆうりの事が好きでした!」
こうたは顔を真っ赤にして、頭を下げて手を差し伸べる。
「……その……付き合えない。ごめん」
ゆうりはとても残念そうな顔で伝える。
「…そっ…か。理由を聞いてもいいか?」
こうたは心のどこかにあった予想が的中して表情が暗くなる。
「それは、他に好きな人がいるからだよ」
その理由は至極真っ当な理由だった。
「そう……なんだ」
「じゃあ、またね」
「うん……」
その時、こうたは気づかなかった。ゆうりの目から涙が出ていることに。
「すぅ〜」
(なんとか言えた。フラれたけどちゃんと言えて良かった。美月に報告しないと。)
こうたは直ぐさま美月に電話をかけた。
「美月!今すぐ来て!」
「どうしたの?」
美月は急な電話に戸惑う
「いいから早く!」
「わ、分かった」
そして美月は屋上に来た。
「それで、どうしたの?」
「振られたよ」
こうたは気持ちが整ったような顔で言う。
「……!どうして?」
美月はその言葉で全てを察した。
「好きな人がいるからだって…」
「そっか……ねぇこうた…」
美月が何かを決心した。
「ん?」
「だったらさ…私と付き合わない?」
「俺なんかで…いいのか?」
こうたが突然の告白で衝撃を受ける
「こうたとなら…上手くやってけそうだからさ」
「俺今すげぇ嬉しい!」
こうたは歓喜な声をあげる
「これからよろしくね」
「あぁ!」
こうして、こうたと美月の恋は実ったのだった。
〜2022年(1年後)〜
「おーい!こっちこっち!」
こうたが手を振る。目線の向こうには美月がいた。