season2 4話災厄の子
シンが赤鴉と戦って1年が経った。シン達は榊野学園中学校の学生全員の覚醒に備え、早くに覚醒しているものを集め、主に発生した魔獣討伐などの任務にあたる日々を送っていた。政府直属部隊に正式に所属していないシン達は表向きには部活として位置づけられている。
「シン、明日の任務私たち一緒の編成よね?」
準備体操をしているシンに話しかけたのは、白谷りおだった。りおはシンと同じくりょうたによってスカウトされた人物の一人である。そのスキルは『七つの大罪』シンと同じである。その能力は闇の力を操る能力であり、シンのスキルとは全く性質が異なるものである。
「あぁ、そうだな。よろしく」
シンはりょうの一件から以前までの活気はなくなり、少し落ち着いた様子だった。
「今回の魔獣は何人も人を殺している……こっちも万全な状態で行こう。」
シンがそう言い、りおを通り過ぎその場を後にする。
「……」
────任務当日────
魔獣の侵入を防ぐ結界は日本全土に貼られている訳ではなく三大首都圏などの人口が多い場所に限られている。その為、人口が集中しており、過密や過疎が問題になっている。そして今日は結界外に発生した魔獣の討伐任務にシン、りお、りょうた、こうきの4人が出向いている。
「気をつけろ!報告だとS級相当の魔獣が出ている!」
とりょうたが走りながら警告をする。魔獣にはランクが存在し、そのランクは国が決めている。その度合いはS、A、B、C+、C-の5つに分かれており、評価基準は単純な強さと被害規模だ。報告が上がっている魔獣は名前がつけられており、まだ報告が出ていない魔獣の階級は予想危険度から評価され「〜相当」と呼ばれる。目の前から魔獣の群れが津波のように襲いかかる。
「換装!『アガートラーム』!」
りょうたが剣を手にして群れを切り刻んでいく。
「破壊!」
続けてシンも攻撃を加え目の前の魔獣達を粉々にする。
『フガカァァ』
横から木をなぎ倒しながら魔獣が現れた。その風貌は黒く毛深い大きな野鳥のようだった。
「A級の魔獣だ!」
りょうたが警告を鳴らす。
「この特徴……鵺ね!」
りおが名前を出す。魔獣の名前はその特徴にちなんで付けられる。昔の言い伝えなどに出てくる「妖怪」などが由来になるとされ、一説では昔、実際に妖怪と呼ばれていたものは魔獣だったのでは無いかというものもある。
魔獣は足に電気を走らせ攻撃を試みる。
「スキル持ちか」
シンは攻撃に構える。
「任せて!」
りおは人差し指を魔獣に向け狙いを定める。指先に紫の魔力が集まる。
「闇射!」
魔力の塊は魔獣の頭を貫く。
「……悪いな」
「助け合い精神で行きましょ!」
りおは笑顔でそう言う
「フッ……そうだな」
シンは少し笑顔を見せる。スキルの中には属性があるものもある。りおのユニークスキル『七つの大罪』もその一例である。属性は「闇」。属性が闇のスキルは極めて珍しく、そのどれもが異質なものである。りおのスキルは影などを扱う。
『ゴルシャァァァア』
体長4m弱の巨体を持つ大熊のような魔獣が現れる。
「出たそ!こいつがS級相当だ!」
そう言うと最初にこうきが攻撃を仕掛ける。
「暴風竜の翼撃!」
こうきが風を纏った両腕を薙ぎ払うように振るい攻撃する。すると、足場に九字を切るように線が現れ崩れる。
「!?」
「こうき!下がれ!」
こうきは体制を崩す。
「……ユニークスキル持ちか」
シンが警戒する。S級魔獣とA級魔獣では、かなりの差があり。中にはユニークスキルを持つS級魔獣もいる。体制を崩したこうきに魔獣が頭突きをする。
「……っ!」
こうきが押し飛ばされる。ブロック状に崩れた足場が中を浮きこうきに向かって放たれる。
「……!影保護!」
りおのカバーにより影が追撃を受けるこうきを守る。
「……サンキュー!」
「神槍!」
りょうたが魔獣に斬り掛かる。
「ゴルシャァァア!」
魔獣は空中に飛び上がり攻撃をかわす。魔獣の背後には既にシンが居た。シンは思っきり魔獣を蹴り飛ばし地面に叩きつける。
「今だ!殺れ!」
シンが叫ぶ
「影波動!」
魔獣の目の前で爆発が起こる。倒れた魔獣塵のようになり散っていく。魔獣は魔力が集まって生まれるもの。殆どが自然発生するものだ。
──────────
シン達は魔獣を討伐し本部に戻った。
「おかえり」
出迎えたのは同じ部隊に所属するくるみだった。
「くるみ!帰ってたの!?」
りおがくるみに抱きつく。
「えぇ、こっちも丁度終わってね」
2人は親友という関係であり、その仲の良さは他生徒にも有名であった
「あ、帰ってたんだ」
そこにみさこも合流する。
「おつかれ、はいこれ」
みさこはシンにジュースを渡す。
「……悪ぃな」
この光景がいつもの日常になっていた。
────────
りおは人気の無い道を1人歩いていた。
「くっ…!」
りおは胸を抑え、膝をつく。
(潮時かしらね…)
────────
しばらくの時期は魔獣の大量発生は無く、パトロールの際に一二体出現する程度だった。シンはいつものようにパトロールを終えて帰っている途中の時だった。
「ピロン♪」
シンのスマホの通知音がなる。
(りおからメールだ。珍しいな)
[ちょっと話したい事があるんだけどパトロール終わった?シンのスキルの話なんだけど]
(俺のスキルの話?)
シンは自身のスキルに少し疑問を抱いていたところで断る理由も無かったので、話に乗った。
〜数分後〜
「悪い。待たせたか」
「いやいや早い方でしょ」
りおはいつものテンションでそう言う
「早速なんだけど本題に入っていい?」
「あぁ、俺もそのために来たし」
りおは少し間を置いて話し始める。
「私とあなたのユニークスキルは一緒よね?」
「あぁ……でも属性は違うな」
「そうね。そして能力も違う」
「能力……俺のスキルにこれといって無いけどな。言うならば身体能力を上げたりだろ。みさこと同じようなものだと思ってたんだが」
「それもあるけど…あなたの【七つの大罪】にはちゃんと能力がある。」
「……と言うと?」
「それは『他人のスキルを奪う』ことよ」
「奪う?」
「そう、正確には死者の肉体からスキルを奪い自分のスキルとして魂に書き換えるって感じかしら」
「随分と悪趣味なスキルだな……」
(あの時たいぞうのスキルを使えたのはそういう事か……)
シンは赤鴉との戦いを思い出す。
「で?それとお前のスキルに何が関係あるんだ」
「シン、七つの大罪って知ってる?」
「七つの大罪?確かカトリック教会の……」
「そう……七つの罪に分けられた大罪人達のことを言うんだけどね。それぞれ強欲、憤怒、怠惰、傲慢、色欲、嫉妬、暴食に分けられてるの」
「それがどうしたんだ?」
「まあ最後まで聞いて。今から3000年以上前は神々がこの世界を支配していたの、でも神々に逆らう者がいて、そいつらは魔王って呼ばれたのよ。その中でも、最凶の魔王達が『七つの大罪』。七つの大罪が神々の時代を終わらして、その後世界を支配しようとしたの。でも勇者が現れて一人で討ち滅ぼしたの。滅ぼされた魔王たちの魂はスキルの形となって生き続けたのよ。それがディザスター………これが伝承されている資料の話よ」
「なんて壮大な話だ……ってことは俺のスキルは元々は魔王だったてことか?」
「そう……あなたの【七つの大罪】は『憤怒』よ」
「憤怒の罪……か。フッ……確かに合ってるな」
シンの表情が少し曇る
「そして私が『嫉妬』…」
「……どうしていきなりこんな話をしようと思ったんだ?」
「最期に教えておきたくてね」
「最期ってどういう……」
「魔王がスキルの形になったのはね……器を探すためなの。それも相応しい器をね……それがどうやら私みたい」
「……!」
りおから禍々しい魔力が溢れだしていることにシンは気付く。
「……ごめん…私、もうダメそう…」
「おい…!何か……助かる方法は……」
りおは精一杯の笑顔で首を振る。
「最後のお願い…私じゃなくなったら私に誰も殺させないで……!」
「どうして………」
「ハァ…ハァ…お願…い、みんな…に伝え…て『ありがとう』って…じゃ…あ…また…ね。」
「待っ………!」
その瞬間りおを禍々しい魔力が飲み込む。
(何だこの魔力は!?)
「は…はは…ハハハハ!!3000年ぶりか!ん〜!空気が上手い!空気に味を感じたのは初めてだ!」
「りお…じゃねぇよな」
りおの目は紫に光っていた。シンはその目を強く睨む。
「私は嫉妬の罪レヴィアタン!お前……名は?」
「俺は『憤怒の罪』……シンだ」




