season【ZERO】2話後戻り
──ダメだ、眠れない。
たいぞうは昨日の夜はほとんど寝られなかった。理由は明白、みさことデートをした日以来、ずっと彼女のことを考えているからである。今もこうして目を瞑っただけですぐに彼女の姿を思い浮かべてしまう。
――これは重症かもな。
自分でも思うほどだ。2人きりでデートをしたんだ意識しない方がおかしいとたいぞうは思うことにした。
――みさこは今何をしているのかな? そんなことを考えているうちにいつの間にか学校は終わっていた。
────
次の日の放課後、教室にはたいぞうとりょうしかいなかった。みさこは委員会、シンは部活に行った。
「ねぇ、たいぞう」
「ん?」
「たいぞうはさ、好きな人がいるってどう?」
「え? どういう意味?」
「楽しいのかな……いや、少しつらいのかなぁ?」
「いや、そんな大層なものではないけど……なんで?」
りょうの問いにたいぞうは首をかしげる。
「……いや、たいぞうがあまりにも幸せそうだから」
「そうかなぁ~」
「うん。だからさ、みさことうまくいくといいね」
「ああ、ありがとよ」
りょうの言葉にたいぞうはそう返した。正直、まだ自信はないけれど頑張ろうとたいぞうは思った。
ー翌日ー
たいぞうはシンと帰っていた。すると突然シンが立ち止まった。
「なぁ、たいぞう。ちょっと話したいことがあるんだ」
「どうしたんだ?」
シンは深刻そうな表情をしていた。だから、何かあったのだろうと察しがついた。
「実は俺、みさこのことが好きなんだ」
「えっ!?」
「なーんてな笑冗談だよ冗談!」
「な、なんだー………まあ、安心しろよ。みさこは渡さないから」
「はいはい、わかったわかった。じゃあ、また明日な」
「おう、またな」
シンと別れた後、たいぞうはすぐにみさこの元へと向かった。
────
「みさこ!」
「あっ、たいぞう!」
みさこが嬉しそうに手を振る。
「あのさ、話があるんだけど……」
「話?」
みさこが首を傾ける。
「うん、大事な話」
みさこは少し戸惑った様子だったが、やがて真剣な眼差しを向けてきた。
「うん、いいよ」
たいぞうたちは誰もいない場所へと移動した。そこは校舎裏だ。告白するには最高の場所と言っていいだろう
「それで話っていうのは何……?」
「みさこ、俺……みさこのことが好きなんだ!」
(言った。ついに言ってしまった。もう後には戻れない。)
「え、本当に?」
「うん…」
「嬉しい……」
そう言うとみさこは満面の笑みを浮かべた。
「私も好き…」
その言葉を聞いてたいぞうの胸が熱くなった。思わず涙が出そうになる。
「ねぇ、キスしてもいい?」
「うん」
返事を聞いた瞬間、みさこがたいぞうに飛びついてきてそのまま唇を重ねた。
────
それから数日経ったある日の朝のこと。たいぞうとみさこが廊下を歩いていると、向こうからシンがやってきた。
「おっす」
シンがいつものように挨拶をする。
「おぉ、おはよう」
挨拶を交わすとシンはたいぞうたちの方を見てニヤッとした。
「二人ともなんか前より仲良くなったんじゃないか? もしかして付き合ってたりして……」
「そ、そんなんじゃないって! ただ仲良しになっただけ」
慌てて否定するみさこだが、頬が赤く染まっている。
「へぇ〜、ただの友達ね〜」
シンが意地悪な笑みを浮かべる。
「うるさいなー、もう! 早く教室行こうよ、たいぞう!」
「お、おう…!」
こうして今日もみさこと過ごすたいぞうの一日が始まるのであった。
―――シンside―――
(ありゃ完全に付き合ってんなぁ)
とシンがニヤニヤしながら下校路を歩いていたら向かいからスーツ姿の男シンのほうを見て歩いてくる。
(あ?なんだぁ?あいつ。)
「君、鱒渕シン君で合ってるかな?」
「そうだけど。」
「ちょっと着いてきてくれるかな?」
「わりぃが俺は見返りもねぇ頼みは受けねー主義でな」
「まあまあそう言わずにさ」
(怪しい……が、少し探るか…)
「わーったよ。行くから」
―――数分後
「ここか」
連れて来られたのは廃墟のような建物だった。
「ここは何だ?」
「今から君には信じ難い事実を知ってもらうことになる。」
「は?何言ってんだお前」
「とりあえず入ってくれ」
「へいへい」
中に入るとそこには信じられない光景が広がっていた。
「おいおい……どういうことだよ…こりゃ」
「見ての通りだよ」
目の前には廃墟の外見からは想像出来ないぐらいとてつもなく広い空間が広がっていた。
「なんだよこれ、おい」
すると男は淡々と喋り始めた。
「これは君の潜在能力を引き出して能力者を育成する施設だ。」
「はぁ?ふざけてんのか?」
「君は選ばれたんだ」
「選ばれ……?意味わかんねーよ!!」
「まあそういう反応になるだろうね。だが、いずれわかる時が来る。」
「どういうことだよ……」
「申し訳ないが、もう遅い時間だから今日のところは帰ってくれ」
「はぁ……そうだ、あんた名前は?」
「りょうた……佐藤りょうただ。よろしくな」
シンはりょうたと名乗る男とは連絡先を交換し釈然としない気持ちのまま家に帰った。
次の日、学校に行くとクラスメイト達がざわついている。
「なあ、聞いたかよ。昨日のニュース」
「ああ、知ってるぜ。なんでも、また出たらしいな。」
「そうそう。これで3人目だろ?」
「ああ。怖い世の中だよなぁ。」
「ホントにな。」
会話の内容はどうやら連続殺人犯の話のようだ。
「おい、たいぞう。お前はどう思う?」
シンがたいぞうに問いかける。
「えっ、あー。どうなんだろな」
たいぞうが気の抜けた反応をする。
「なんだそりゃ。しっかりしろよな」
「わりぃ、わりぃ」
「ったく、相変わらずマイペースな奴だよなお前は」
「まあな」
たいぞうが何故か誇らしげに言う。
「褒めてねえよ!まあ、気を付けよ」
「だな」
たいぞうとシンはいつもこんな感じで話している。
―――たいぞうside―――
放課後、たいぞうは一人で帰っていた。すると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。
「あれ?たいぞう?」
たいぞうが振り返るとそこに居たのはみさこだった。
「みさこ!?どうしてここに……」
「いや、たまたま通りかかっただけだよ」
「そっか。じゃあ一緒に帰るか」
「うん!」
みさことは途中まで一緒の方向なので二人は並んで歩いた。少し間を置きみさこが話し始める。
「そういえばさ、今日学校で変な噂を聞いたんだけど……」
「どんな?」
「最近、この辺りで殺人事件が起こってるんだって」
「あーそういえばシンがそんなような事を……物騒だよな」
「ほんとそうだよね。気をつけないとね」
いつもの何気ない会話をしていた時だった。俺は後ろをずっと歩いてる男に気がついた。
「だ、誰ですか!まさか…連続殺人犯……!」
たいぞうが勇敢にもみさこの前に立つ
「!! 済まない!怖がらせてしまったかな。僕はこういうものでね」
男がみさことたいぞうに名刺を渡す。
「……もしかして、佐藤りょうたってあの政府直属部隊の一番隊隊長の…!?」
みさこが名前を見て驚く。
「あの最年少で隊長になったってやつか!」
たいぞうもピンときたように言う。
「そうそう知っててくれたか!シン君は全然知らなかったのに……」
りょうたが嬉しそうに言う。
「まぁシンは抜けてるところがあるから……でもなんでそんな凄い人がシンや俺らの所に?」
たいぞうが聞くとりょうたが直ぐに答える。
「才能があるからさ。ここの学校は特別でねその才能がある人がよくいるんだ。」
たいぞうとみさこは訳も分からずにいた。
「ど、どういう事ですか?」
たいぞうが動揺しながら言う。
「………悪いけど岡野くん君は席を外してくれないかい?今日用があるのは矢部さん、貴方なんだ」
「………」
みさこの表情が少し暗くなる。
「矢部さん、僕らのところに来てくれないかい?最高の環境を約束しよう。勿論報酬もはずむよ」
「行きません。才能だか何だか知りませんけど私は彼氏といるほうが幸せです!」
みさこがきっぱりと断る。
「そうか……それは残念だ。無理強いはしないさ。僕の出身校はね君らと同じなんだ校長先生に話したらいつでも会えるからまた気が向いたらね。……それと、岡野くんさっきはすまなかった。君をのけ者扱いしてしまって」
「い、いえ全然!!」
「では、僕はこれで。……あ、そうだ。連続殺人犯【赤鴉】にはくれぐれも気を付けてね」
りょうたが念を入れて忠告すると、その場を後にした。
「良かったのか?みさこの夢って政府直属部隊に入ることじゃなかったのか?」
「いいのっ!私は今を楽しみたいから!さっ、帰ろ!」
「おう!」




