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異世界昔話 お爺さんとお婆さんとおっさんと

作者: のんびり歩く

昔々ある所に、お爺さんとお婆さんとオッサンが居ました。


お爺さんは毎日山に柴刈りに、お婆さんは毎日川へ洗濯に、オッサンは毎日お家でお昼寝をしておりました。


そんなある日の事です。


山で芝刈をしていたお爺さんの耳に、ゴーゴーと大きな唸り声が聞こえて来たのです。

お爺さんは何の音なのか気になって、唸り声のする方へと歩いて行きました。

お爺さんが一歩歩けば、唸り声は少し大きくなり、二歩歩けば、唸り声は更に大きくなっていきます。

そうして、お爺さんはズンズン山の中へと入って行き、とうとう唸り声を発する者を見つけました。


そこに居たのは、フカフカの落ち葉の上にむしろを敷き、その上に転がっている大きく丸い物体でした。


お爺さんは、それを見た瞬間持ってい斧を強く握り締め、振りかぶると思いっきり振り下ろします。

振り下ろされた斧は、クルクルと回転しなが弧を描いき、大きく丸い物体の直ぐそばに立つ木にゴッと短くも大きな音を立てて刺さりました。


するとどうでしょう、大きく丸い物体は勢いよく起き上がると、肉で潰されている小さな目をお爺さんに向け、その後で木に刺さっている斧を見ました。


「お前えええぇぇぇぇこんな所で、何しとんぢゃぁぁ、働かんかああああぁぁぁ。」


お爺さんの剣幕に、大きく丸い物体は滝の様な汗を流すと、全力で走り出しました。

それを見たお爺さん、木に刺さった斧を引っこ抜き、大きく丸い物体を追いかけます。


「甘やかしとったら、いつまでも働きもせんとごろごろごろごろごろごろおおおおおぉぉぉぉぉ。もう我慢出来んぞ、婆さんがなんと言おうと、お前の性根を叩き直しちゃるううううぅぅぅぅ。」


追いかけるお爺さん、逃げる大きく丸い物体。


息を切らしながら追いかけるお爺さん。

ボヨンボヨンと聞こえそうなほど、肉を揺らしながらも軽快に走る大きく丸い物体。


「まっ・・・待てぇ・・・何で・・おっお前・・・そっんなに早いんじゃぁ・・・」


大きく丸い物体は、お爺さんの言葉に返事をしようとしたのか、お爺さんの事が心配になったのか、走りながらお爺さんの方へ振り返りました。


するとどうでしょう、お爺さんの視界から大きく丸い物体が急に消えてしまいました。

まるで神隠しにでも合ったかの様に、突然消えてしまいました。


お爺さんは、慌てて大きく丸い物体が立っていた辺りに駆け寄ります。

そこに大きく丸い物体はありません。ただ崖とその下を流れる濁流があるだけ。

お爺さんは、糸の切れた人形の様にその場にへたり込み、眼下の川を覗き込みます。

眼下の川にも大きく丸い物体の姿はありません。


大きく丸い物体の姿はどこにもありません。


お爺さんは、その事に涙を流すと大きな嘆きの声を上げました。







その頃川で洗濯をしていたお婆さん。

山の上の方から大きく、悲しげな声が聞こえた気がして、洗濯の手を止め顔を上げました。


するとどうでしょう。


川の上流から、赤々と色付いた大きな実が、どんぶらこ どんぶらこ と、流れて来たではありませんか。


「まあ美味しそうな大きな実だ事、これはお爺さんとあの子に是非食べさせてあげたいわ。」


そうしてお婆さんは、着ていた服が濡れるのも厭わずにバシャバシャと川の中へと入って行き、深く腰を落とすと、両手を前に突き出し


「ヨシ、コイ。」


と気合を入れました。

すると赤々と色付いた大きな実は、まるでお婆さんの気合に吸い込まれる様にお婆さんに向かって、どんぶらこ・・・どんぶらこ・・・・どんぶらどんぶら・・・バシャバシャバシャゴゴゴゴゴゴゴゴォォォ

と勢いを増して流れて来たではありませんか。


お婆さんは更に腰を落とし、気合を入れると、赤々と色付いた大きな実を受け止めました。

その瞬間、お婆さんの手は赤々と色付いた大きな実の中へとめり込んみました。


「あら、腐っている実だったのかしら。」


そう言いながらも、お婆さんは赤々と色付いた大きな実を掴んだまま離しません。

いや、離せません。

川の流れで押された赤々と色付いた大きな実は重く、お婆さんがここで手を離したならば、赤々と色付いた大きな実の大きさに巻き込まれ、お婆さんの一緒に流されてしまうでしょう。


お婆さんは仕方がなく更に気合を入れると、赤々と色付いた大きな実に巻きついていた布を掴み、思いっきり投げ飛ばしました。

赤々と色付いた大きな実は、空中に舞い上がると、赤い汁を撒き散らしながら河原へと落ちて行きました。


肩で息をするお婆さん。

赤い汁を垂らしている赤々と色付いた大きな実。


その時です。


赤々と色付いた大きな実が突然動き出したのです。


驚いたお婆さんは思わず声を上げます。


「これが噂に聞く、桃太郎かしらああぁぁぁ。」


混乱しているお婆さんに、赤々と色付いた大きな実は口を開きます。


「そんな夢の詰まった果物じゃねぇよ、あんたの腹から産まれた現実的な奴だよ。」





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