ヲタッキーズ75 誓いのタッグマッチ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第75話"誓いのタッグマッチ"。スーパーヒロインの総合格闘技で殺人が発生します。
背後に契約金ビジネスの闇、ヒロイン達の過去が浮かび上がる中、全てはタッグマッチが行われるリングへ…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 スーパーヒロインの死
リング上でスーパーヒロイン同士の血闘が続く。
殴り、蹴り、締める…スパーリングのハズだが?
「ヤメて!そこまで!死んでしまうわ!」
「アバターじゃないのょ、リアルだからっ!」
「ブレイク!ブレイクして!」
コーナーに追い込まれ、ボコボコにされたスーパーヒロインが、バッタリと倒れる。
汗に濡れた蛇タトゥの肢体は、荒く息をつきながら、暫くの間ピクピクしていたが…
「大丈夫?しっかりして…きゃー!死んでるわっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルールは?」
「もちろん、アキバホールデム」
「望むトコロね」
春めく朧月夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラと居心地良くて、実は常連達が溜まって困ってルンだが…
今宵は…え?トランプ?トランプ大会か?モニターまで持ち出し、どーやらリモートで参戦中のメンバーもいるようだw
「ねぇ今からポーカーにしない?もう一息でフラッシュ…」
「フラッシュが完成する確率は18%以下だけど」
「私は、確率よりも運を信じる派!」
どーやらポーカーでは無さそうだ。
「ねぇルイナ。いつまで"大ヲタク"をやるの?私、ズッと"大メイド"固定でヤンなっちゃった」
「エラい順に大ヲタク、小ヲタク、平民、小メイド、大メイドだっけ?最貧層が大メイドってどーなの?」
「大ヲタクでいるトータル時間を競うアキバホールデムルールの大会が近いの。みんな、私の練習台になって!」
モニターの音声は、国宝級IQを誇る超天才のルイナだ。
「ノビチ学長に勝って、どーしても大会で優勝したいの!」
「アキバ工科大学のノビチ学長?彼の"大ヲタク"の腕前はプロ級ょ?」
「ルイナ。今週末は、テリィ様が48時間休暇なの。せっかく私達2人きりで…」
ピンポーン!
「あ、ミユリ姉様。Uper eatsだわ。"チームルイナ"のために私、夕食を御用意しました。マチガイダ・サンドウィッチズの裏メニュー"ダカレー"ょ。召し上がれ!」
僕が御帰宅したのは、このタイミングだ。
運良く?両手にカレー弁当を抱えて登場←
「え?テリィたん?地球に帰還した時はUperやってるの?」
「いや。外で出くわしたら渡されちゃって…ってかコレ、ダカレーだょね?幻メニューなのにUperならいつでも食べられマスって奴?」
「あ。ゴメン!テリィたんの分はナイの…予定より御帰宅が早くナイ?」
「ちょうど宇宙発電衛星に"死海4"がドッキングしてたから便乗して降りて来たけど…何コレ?ミユリさん、今宵はイベント?邪魔なら、何処かで時間潰して来るけど?」
「あ、また巨乳メイドカフェに逝っちゃうwダメです。ダカレー、一緒に食べましょ?」
「良かった。実はお腹が空いてたンだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あ、そのメイドさんは入れて。コッチょマリレ!」
「ラギィ警部!遅くなってゴメンなさい!メイド服の時は空を飛ばないようにしてるので…見えちゃうから」
「…あのね。容疑者がマリレの名前を出したのょ」
殺人現場は騒然としてる。流行りのキックプロレスのジム。
キックプロレスとは、スーパーヒロイン同士の総合格闘技。
「容疑者が私の名前を?」
「YES。彼女ょバンナ・アリス。知り合い?」
「あぁ…バンナwえぇ知っています」
マリレは、僕の推しミユリさん率いるヲタッキーズの精鋭。
ラギィは、万世橋の敏腕警部で僕とは新橋時代からの知己。
因みに、マリレはカフェ勤務でメイド服←
「マリレ、流行りのキックプロレスは知ってるわょね?」
「えぇ。キックボクシング+プロレスの融合でしょ?スーパーヒロイン同士がボクシングのグローブをつけて闘う奴ですょね?」
「死んだ"毒蛇スネク"は、挑戦権をかけ"雌豹ピュマ"と闘う予定だった」
「何の挑戦権ですか?」
「リーグチャンピオンへの挑戦権だって」
「で、バンナは何を?」
「スパーリング中に"毒蛇"を死なせた」
「え!でも、リング上の事故は殺人ナンですか?」
「ソレが…薬を盛られた形跡があるのょ」
「げ。薬w何の?」
「コレから解剖して調べる。何しろスーパーヒロインが死ぬと色々手続きが面倒でw」
「しかし…何でバンナが容疑者に?」
「実は、半年前にも池袋で彼女とスパーリング中だった"最凶ロマナ"というスーパーヒロインのレスラーが死んでるの」
「やはり薬で?」
「ソッチも調査中ょ。今、当時の関係者のリストを作ってるトコロ」
「…警部。バンナと話しても良いですか?」
「もちろん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「外してくれる?」
マリレは、バンナに付き添ってた制服警官を下げる。
バンナは赤いセパレートタイプのヒロインコスプレ。
「バンナ。随分久しぶりね」
「ごめんね、マリレ。他に頼れる人がいなくて」
「所轄は、殺人だと思ってるわょ」
いきなり切り込むマリレ。
「え?殺人?何発かパンチしただけ。それだけょ」
「ホント?」
「神田明神も照覧あれ。ホントにソレだけ」
バンナは、すがるような目でマリレを見る。
「池袋でも同じコトがあったんだって?」
「ソッチも私、何もしてナイから。オーディンに誓う」
「スパーリングの前に相手を脅してたンだって?」
「ネタょ」
ソコへラギィ警部がやって来る。
「そろそろ…署まで来てもらうけど」
「逮捕ですか?警部」
「いいえ。お話を聞くだけ…マリレも同席スル?」
「構いませんか?」
「まぁね。でも、パトカーには乗せられナイから追っかけて来て。空、飛べルンでしょ?」
「え。メイド服ナンデスけど…」
ラギィは、聞こえないフリでバンナに告げる。
「貴女、マリレが来るまで何も喋らナイ方が良いわ…なーんて私が言うのもヘンだけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"潜り酒場"の大ヲタク大会は続く。
「レイズ!あぁ!また私、大ヲタクだわ!」
「またミユリの独り勝ち?階級固定で、つまんない」
「ソレ、僕のせいか」
ソコヘ血相を変えたマリレが飛び込んで来る。
「遅くにすみません、ミユリ姉様」
「マリレ?どーしたの?」
「実はルイナに相談があって。今、コチラとオンラインで繋がってると聞いたので」
モニターから超天才の陽気な声が飛ぶ。
「マリレ!どーしたの?一緒に"大ヲタク"やらない?」
「ルイナ、優勝に向けた特訓中ょね?ゴメンね」
「何かトラブル?」
「助けて欲しいの。お友達が面倒なコトに」
「お友達?メイドさん?」
「いいえ。キックプロレスラー」←
瞬間、顔を見合わせる常連達w
「地下ナンだけど、キックプロレスやってるの。で、スパーリング中に彼女がパンチを入れたら…相手が亡くなったw」
「お気の毒に」
「もっと悪いコトに、半年前にも池袋のリングで相手を死なせてる」
「うーん割と面倒なお友達ね」
「しかも、ラギィの話だと、死んだ2人は薬を盛られてた可能性アリ」
「あちゃー。で、私は何をすれば良いの?」
「とりあえず、容疑者の絞り込み」
「OK。直ぐやるわ。リストを頂戴」
「2冊アルの。1冊は今夜ジムにいた全員。もう1冊は、明日池袋から届く。膨大な数だけど重なってる人もいる。観客、セコンド、トレーナー、選手も含めて…1000人位」
その間にもトランプを切るミユリさんを見てルイナは閃く。
「"クリティカル・カウント"で分析してみるわ」
「そうょ!で、そのクリティカル何チャラって美味しいの?」
「接点を探しながら、パターンを見つける手法ょ。アルゴリズムさえ組めればデータの件数は問題ナイわ。容疑者を数人に絞り込めるかもしれない」
「1人まで絞って。お願い」
ソレを聞いた僕は心配になる。
「絞った1人がマリレの友達だったらどーすんの?」
第2章 毒蛇と女豹
ラギィ警部は、取調室で腕組みしたママだ。
主に、正面に座ったマリレが話をしている。
「バンナ。貴女が"毒蛇スネク"を脅してるのを見たって人がいるの。"ぶっ殺す"って」
「脅してないわ」
「じゃ何を話してたの?」
「リング上での段取りとか…」
「で、"ぶっ殺す"と言ったの?」
「言葉のアヤょ」
やっぱり逝ったのかw
「現実になったし、言葉のアヤではスマナイわ…ラギィ警部、起訴なさいますか?」
「うーん」
「では、もう自由ですか?」
「OK。でも、秋葉原からは出ないで。一応、殺人事件の重要参考人だから」
バンナはマリレの耳元で囁く。
「アンタ、警察に大きな貸しがアルみたいね」
「貸し借りはナイ。アルのはヲタクの絆」
「何ソレ?美味しいの?」
「…急いで弁護士を用意して」
「私、捕まるの?」
「とにかく!腕の良い弁護士を雇うの!紹介しよっか?」
「…やっぱり貴女もリアル側の人間なのね」
「こうして寄り添ってマスけど!」
「うん。ソレは進歩だわ。ベルリンにいた頃より、かなりマシになってる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「キックプロレスのペイパービューって、オリンピックの放映料に次ぐビッグビジネスに成長してルンですって!AGLのマリガが昨夜、国営放送のニュースで言ってたわ」
「誰?」
「オールガールリーグのコミッショナー。キックプロレスのイメージアップを狙う業界の広告塔」
「確かに、殺人事件ってビジネスには響くわね」
「加えてAGLは"毒蛇"を失ったコトも戦力的に痛い。まぁ"女豹ピュマ"の方が強いけど」
「"女豹ピュマ"?誰?」
「元チャンピオンよ」
「詳しいのね」
「キックレスラーは、今やスポーツジムに通う全ての女子の憧れの的ょ」
「憧れの股?」
「バカ。私のジム仲間もキックプロレスの試合を楽しみにしてる。お陰でキックエクササイズのコースはスゴい人気、予約も一杯ょ…とりあえず、未だ所轄の仕事でしょ?もうジャドーとの合同捜査になったの?」
ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直轄の秘密組織で、普通の殺人は扱わないw
「マリレ。容疑者が異次元人なので、あくまで捜査協力という立ち位置で噛んで」
「ありがとうございます、警部。池袋のリングで死んだ"最凶ロマナ"は、心臓に欠陥があり事故死とされたそうですが?」
「毛でも生えてたのかしら。とりあえず、保管してある彼女の組織を再検査スルけど…その前にマリレ。ウチの鑑識で話でも聞いて来たら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マリレが地下に降りると白衣女子が待っている。
「マリレさん?ヲタッキーズの…さっき、ラギィ警部から電話があった。何でもお話ししろって」
「…容疑者が昔の隣人だったの」
「昔っていつ?…で、私達鑑識の結論は、殺鼠剤による毒殺ょ」
「殺鼠剤?ネズミの駆除剤?」
「YES。正式名はフルオロ酢酸ナトリウム。酸素処理を阻害し心停止を誘引する…実は、危うく見落とすトコロだったの」
「見落としやすいの?」
「詳しく調べない限りワカラナイ。今回は、アレルギー反応があったんで、もしやと思って調べてみたらビンゴ」
「何処で手に入るの?」
「農業関係や薬品業者向けの店。でも、実は園芸店でも売ってるw主に害虫から作物を守るための農薬の1種」
「被害者は何処から摂取を?」
「口の中の組織から反応が出たわ」
「飲み込んだのね?」
「でも、ジム中のペットボトルを調べたけど何も出なかった」
「OK。毒物は特定出来たけど、手口は不明ってワケね?」
「YES。コレ以上は何もわからないわ。容疑者は、古いお友達なの?」
「もう1人の友達と3人で、陥落寸前の1945年のベルリンからタイムマシンで脱出した」
「え。貴女達"時間ナヂス"なの?」
「YES。国防軍だった私はミユリ姉様に拾われて…その後SSだったバンナとは疎になった」
「もう1人は?」
「アルラは死んだわ」
「気の毒に」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボでデータ解析に勤しむルイナに、ジャドーのマデラ司令官代理が絡む。
ルイナは、ジャドー司令部に併設するラボをベースに活動をしているのだ。
「池袋と秋葉原。2人の被害者に接点はナイわね」
「"毒蛇スネク"はセーラー戦士のアラビアン。"最凶ロマナ"は魔法少女でフィリピーナ。共通点はキックプロレスだけ」
「つまりソレょ!」
「何?」
「共通点はキックプロレスでしょ?2人の経歴を見て。殺人の動機は選手のランキングにアルと思うの」
「何?」
「マリレのお友達は…"毒蛇スネク"が消えてトップに躍り出たわ…はい?」
ルイナのPCにリモートで訪問者だ。
「おや?珍しいわね!ルイナ、ノビチ学長ょ」
「君がルイナか。今度"大ヲタク大会"に参戦スルそーだな」
「そのつもりです」
画面に映る神経質そうな初老の男。ノビチ学長だw
「マデラさえ参戦しなければ、私が優勝に決まっていたモノを」
「そう思うんだったらご勝手に」
「君の実力では恥をかくだけだぞ」
「学長に恥をかかせないよう、頑張ります」
「特訓してるのか?」
「コレは訓練AIです。さらにプロ級に上達するためのAIを開発中です」
「本番が楽しみだ!」
いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ回線切断w
「今の嫌味は何?プレッシャーかけてるの?」
「失礼な人。案外クセのあるチャンピオンかも」
「動揺させようとしてる。無視します」
ルイナも敵意むき出し←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィ警部は、AGLコミッショナーのマリガに事情聴取。
「"ギドラ・ザ・シングルマザー"は、長いことチャンピオンの座に?」
「何しろ"女豹ピュマ"から王座を奪い取ってから1度も負け知らズで」
「"毒蛇スネク"は"最凶ロマナ"とも闘う予定がありましたか?」
「"最凶ロマナ"と良く話す機会があったけど、女子大生リーグ出身の良い子だった。キックプロレスは、見た目ほど残酷じゃない。ハイソでスタイリッシュ。高学歴レスラーも多く、死人が出るなど例外です。"最凶ロマナ"も何か関連が?」
「スパーリングの片割れが同じバンナなので…」
「キックプロレスは今、オリンピック委員会の認可を申請中です。2人の子に関連性がアルと非常に困るわ」
「でも、その可能性を排除出来ません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィ警部からお呼びがかかり、マリレは捜査本部へ。
「マリレ!ココょ!」
「御連絡どうも、ラギィ警部」
「マズいわ。検視でバンナからも殺鼠剤が検出された。ソレで来てもらったの」
「え。警部、何のために?」
「だから、バンナから証拠が出たの。逮捕になるわ」
ラギィは、モニターを指差す。
「コレは、バンナのロッカーとバックの画像。ココからフルオロ酢酸ナトリウムの反応が出た。マリレのお友達が何をしたか、コレで明らかになってしまった。逮捕状を請求せざるを得ないの」
「そ、そんな!」
「で、バンナのクレジットカードを追跡したら居場所がわかった。今ココにいる」
駅近の"ホテル24"だ。
「万世橋のみなさんは?」
「さっき出掛けたばかり。マリレ、飛べば先回り出来るわょ?」
「はい。私が連れて来ます!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ホテルのドアを激しくノック!
「バンナ!マリレょ。開けて!」
薄くドアが開く。バンナだw
「荷物をまとめて!」
「どこへ行くの?高飛び?」
「蔵前橋ょ」
「私、何もしてないわ!」
「貴女のバックやロッカーから毒物の反応が出たの」
「毒物の反応?」
と、ココで警官隊が到着!
「バンナ・アリス!スーパーヒロイン"毒蛇スネク"殺人容疑で逮捕スル!」
足元に転がるM-24型柄付き手榴弾!爆発し瞬時にサイキック抑制蒸気が一帯に立ち込める。
コレでスーパーヒロインはパワーを使えない。警官隊は一斉に対異次元人用の音波銃を抜く。
「逃すな!追え!」
マリレが空を飛べなくなりガスマスクの警官隊がモタつく内にバンナは窓からビルの外壁へ。
咳き込むマリレを尻目に、バンナは空調ダクトを伝い、裏通りに降り一目散に走って逃げる。
「何で逃げるの。バンナのバカ」
ボーゼンと見送るマリレ。地団駄を踏む警官隊。
第3章 脱走と追跡のバンナ
「やれやれマリレ。何があったの?」
「バンナが逃げました」
「ソレは聞いた」
ションボリ捜査本部に戻るマリレ。
ラギィ警部が肩を叩き声をかける。
「何をしくじったのかしら?」
「私のせいです」
「とりあえず、神田リバー水上空港に手配写真を配って、クレジットカードの追跡を強化スルわ。でも、もうカードは使わナイだろーなー」
「ですね。じゃバンナは何処へ?」
「共通の友達に連絡スルとか…スマホの通話記録リモートはウチでヤルわ」
「お願いします。私もルイナに相談してみます」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「無理!だって、ラボが…」
ジャドーNBC部隊の化学防護服を着た兵士が、ラボに薬剤を噴霧している。
ラボを追い出されたルイナが、薬剤噴霧を許したマデラに食ってかかってる。
「司令官代理!確か私にノビチ学長を無視しろっておっしゃいましたょね?」
「ごめーん。まさかノビチがココまでヤルとは…たかがトランプ大会に勝つために」
「ノビチ学長は、NBC兵器の防衛メカニズムの権威です。彼からの通報とあれば、秘密ラボとは言え、こーなるのは必然です!コレでラボはチオ酢酸まみれだわ!」
「あ、チオ酢酸ってバニラの香りだっけ?」
トボけるマデラ司令官代理。
「スカンクの香りですっ!いずれにせょ毒性がアルので、薄れるまでラボには入れナイわ!」
「どのくらいかしら?」
「24時間?私のPCは中だから"大ヲタク"の訓練AIも使えナイわ!」
その傍らでマリレも呆然。
ソコヘヲタッキーズのエアリが入ってくる。
マリレの相棒で主に魔法使い方面の担当だ。
エアリもカフェ勤務でメイド服←
「な、何ゴト?化学戦の訓練?」
「話したくないわ…あ、バンナの資料ファイル?」
「うん。ラギィから預かって来たけど…しかし、この強烈な臭いは何?」
「スカンクょwところで、バンナは秋葉原は長いの?」
「池袋から移って、未だ半年だって。でも、毎日、秋葉原でトレーニングをしてるみたい」
ルイナがフムフムうなずきながら話に加わる。
あ、ルイナも趣味でメイド服を着てて3人共…
「なるほど。それじゃ逆に行動範囲が限定されるわね。変数としては、トレーニングの日程や友人の家…」
「マリレの古い友達で秋葉原の関係者も要チェックね。バンナの交友関係と重なる可能性がアル」
「…私もそう思う」
うなずくマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ねぇマリレ。バンナとはかなり親しいの?」
「ラギィ警部、ナゼですか?」
「ホントにバンナが犯人だと思う?」
「"毒蛇"が消えれば、チャンピオンの芽が出ますからね。警部のプロファイルには合いませんか?」
「うーん犯人は用意周到なタイプだと思うの。既に少なくとも2件の殺人を計画して実行してる」
「バンナは、蔵前橋の重刑務所で2年間を過ごしています。異次元での、そういう経験は人を変えます」
「バンナは、ナゼ蔵前橋に?」
マリレが秋葉原に来たての頃を振り返る。
「ロードショーを見に行ったのです。私とバンナ、そして…アルラの3人で。映画の後、私は帰り2人は執事カフェに遊びに行った。いつも通りバンナが喧嘩を売って、アルラが音波銃で撃たれて死んだ」
「喧嘩はバンナのせいなの?」
「裁判所が、そう判断したと聞きました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜、僕が"潜り酒場"に御帰宅スルと、ジャドーの特殊部隊が警備を固めて、上空には戦闘ヘリが…と逝うコトはw
「おかえりなさいませ、テリィたん!」
「ルイナ?君が御帰宅スルと護衛部隊が一緒に移動スルからタイヘンな騒ぎだょ。ルイナこそ何しに来たの?」
「実はラボを追い出されちゃって。テヘペロ」
特殊部隊は、みんな顔馴染みだが厳重に身体検査をされるw
「説明は調和解析的に長くなるけど…簡単に言えば"大ヲタク"大会で対戦する相手側の教授のせいね」
「研究室の鍵を盗まれたとか?」
「研究室を毒ガスで満たされたの。スカンクを扱う生化学者なので」
「スカンクの臭いまみれになったの?貴女が?」
「私を動揺させようとしてるの」
「うーん攻撃は最大の防御か」
すると、ソレに何かインスパイアされルイナが閃く!
「バンナを見つける方法がわかったわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"潜り酒場"と万世橋の捜査本部をアプリで繋ぐ。
「ラギィ警部。バンナの通話記録にあった50件の電話番号をカバーして、アルゴリズムを描いたわ」
「素晴らしい!…で、ソレで何をスルの?少し教えて欲しいなー」
「OK。通話パターンからバンナを見つけルンです」
「通話パターン?何ソレ?美味しいの?」
「秋葉原の全ての通話を交響曲とスルなら、バンナの通話パターンは主旋律です。楽器が違っても、主旋律なら交響曲の中から浮かび上がって来るの」
「…(ホントかしら?)で、私達は何をすれば?」
「バンナの新しいスマホからの着信を待つワケょ!」
「…(ホント大丈夫なの?)ルイナ、トランプ大会に向けて特訓中ナンだって?ソンなに勝ちたい?」
「だって!優勝者は翌年はシードで決勝テーブルなのょ!真の腐女子の証だわ…あ、バンナから電話よっ!」
モニターに数字が並んで逝く。
「コレが電話番号ね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田旅籠町の安アパートの2F。
「誰の家?」
「バンナの従兄弟らしいわ」
「このアパートからホントに電話したのかしら?」
張り込み中の覆面パトカーの中でラギィとマリレ。
「ルイナのパターン分析に拠れば、ココから電話したらしいわ…でも、どーやら今は留守みたいね」
「バンナは、もう逃げてしまったのでしょうか?」
「…ビンゴ。ホラ、歩いて来るわw」
夕暮れの歩道を有料コンビニ袋を下げて歩く人影w
「徒歩の容疑者を発見」
「全チーム確認した。直ちに容疑者を確保」
「了解。接近スル!」
急発進した覆面パトカーが歩道に乗り上げる!
バンナは回れ右スルがソコへ別のパトカーが…
挟み討ちだw
「バンナ!膝をついて!両手は頭の後ろ!」
「マリレ?私を撃つの?」
「逮捕ょ。異次元人の貴女には、秋葉原デジマ法の名の下に権利がアル…」
たたずむバンナは、膝をつく様子もナイ。
「ベルリンを思い出すわね?マリレ、貴女は何も変わってナイ」
「バンナ。コレが最後の警告ょ。次は…撃つ」
「撃てば?撃ちなさいょマリレ!」
ラギィ警部が前に出る。
「マリレが撃たなければ私が撃つわ。因みに、今まで躊躇ったコト無いから」
目線で拳銃を構えて命じる。
「スーパーヒロイン、跪いて手は頭の後ろに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に連行されたバンナは、そのママ取調室へ。
「"最凶ロマナ"と"毒蛇スネク"2人の殺害に使われた毒物の反応が貴女のロッカーとバックから出たのょ」
「何度も言うけど、ソンなバック見たコトもナイわ」
「貴女のロッカーに入ってたの」
「じゃ私の殺人の動機は何?私に彼女達を殺す理由なんてナイわ」
「ランキングが上がるでしょ?」
「"雪女スノウ"も"狼娘ウルナ"も同じょ。"壮絶リィナ"もね。ウルナには前科だってアルわ」
「今は彼女達は関係ナイの」
「知ってるでしょ?私は、決して敵に背を向けナイ。ベルリンでも、リングでも!」
「昔と同じね。スーパーヒロインらしく認めなさいょ!」
「スーパーヒロインらしくって何?」
「話しても無駄ね」
取調室を飛び出すのは…マリレだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ギャレーでパーコレーターに八つ当たりするマリレw
「何ょ!コーヒーが切れてるじゃナイの?!」
「でも、マリレはコーヒーを飲まナイでしょ?」
「あ、ラギィ警部」
任せた取調べが上手く逝ってない様子で偵察に来たラギィ。
「貴女達、いつもこうなの?」
「ベルリンにいた頃から、バンナはいつも私につっかかる。そんな奴、周りにいます?」
「貴女達全員ね」←
「警部は、ホントにバンナが犯人だと思いますか?」
「わからない。でも昔ね。私、無罪の人を懲役10年の刑にして後悔したコトがアル。迷いがアルなら、納得スルまで調べるベキょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
バンナが捕まって"大ヲタク"の鍛錬に励むルイナ。
「オールイン!」
「コール!」
「エースとジャック!」
戦闘ヘリが舞い、特殊部隊が周囲を固める"潜り酒場"で、テーブルを囲むのは僕とミユリさんと逃げ遅れた常連達だw
「ダメだわ!ギブアップ!」
「あらあらルイナ、確率論だけで勝負しちゃイケナイわ」
「ミユリ姉様?昔、メイドカジノにおられたのょね?」
アキバが長いミユリさんはメイド系は一通り経験してるw
「昔が余計。でね"テル"って知ってる?」
「そっか。確率ではなく人間を相手にすれば勝てるカモ…あのノビチ学長にも"テル"がアルのかしら」
「"テル"は誰にでもアルわ」
心配になって僕は尋ねる。
「僕にも"テル"があるのかな?」
「ええっ?テリィ様は"テル"のデパートです」
「ホント?例えば?」
「お教えしません。うふっ」
「ストーップ!ソコのイチャイチャしてるメイドと御主人様は離れてくださーい。私、どーしてもノビチ学長に勝ちたい!私が"大ヲタク"になるまで、今宵はゲーム続行です!」
"潜り酒場"の全員が一斉に溜め息をつくw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、万世橋のギャレーでは刑事たちが次々と話に加わりメイド服のヲタッキーズも加わって、コレはもう捜査会議だw
「容疑者は、複数いる可能性もアルわ」
「でも、1番怪しいのはバンナですょね?」
「うーん。でも、持ち物から出たフルオロ酢酸ナトリウム、もしかしたら誰かが仕組んだ罠カモしれない」
「…バックからDNA、取れるょな」
「モチロン」
「後はバンナからDNAのサンプルを取れれば…」
ポシェットからボールペンを出すマリレ。
「スゲぇ!サスガはヲタッキーズ!」
「鑑識、DNAをゲットだぜ!」
「謹んでー!」
ポールペンを証拠用ビニール袋に入れ持ち去る鑑識←
「マリレ。友達を逮捕って辛いわね。大丈夫?」
「警部。いきなり昔の亡霊に出くわした気分です。ベルリンを忘れようと、秋葉原で必死に頑張って来たのに」
「出自はついて回る。証拠は消せないし過去も消せないわ」
第4章 裏切りのリング
翌日"AKBアリーナ"では記者会見が行われる。
「オールガールリーグ、AGLコミッショナーのマリガです!私達が自信を持ってお届けスル世紀のカードは"女豹ピュマ"vs"聖女バンナ"!その勝利者が手にスルのは、AGLチャンピオン"ギドラ・ザ・シングルマザー"へのタイトルマッチ挑戦権!」
マリガは、エメラルドグリーンのマニッシュなパンツスーツに細身のタイを合わせガールズパワー満載。
マイクに向かって叫び、自ら大拍手でAGLチャンピオンの"ギドラ・ザ・シングルマザー"を迎える。
アリーナにメイド服で潜入中のマリレ&エアリが囁く。
「死んだ"毒蛇スネク"の代役になったのが、右にいる"女豹ピュマ"ね?蔵前橋の重刑務所に入ってたらしいわ」
「暴行罪で3年間だって」
「やーね」←
一方、記者会見は進行中w
「チャンピオン!恐れている相手はいますか?」
「いないわ。ってか、待ちくたびれたわょ。半年間トレーニングしたし、私はドッチが勝っても相手してヤルわ」
「"女豹ピュマ"は、貴女に勝つと断言してますが?」
シングルマザーの鼻先にレコーダーを突きつけるマスコミw
「"聖女バンナ"に勝てば、でしょ?」
「余計な心配しないで、チャンピオン!」
「お黙り、ピュマ。も1度マットを舐めたいの?」
前チャンピオンと、彼女をマットに沈めた新チャンピオンの口論がヒートアップ、マスコミがどよめく。
2人のスーパーヒロインが、立ち上がり鼻と鼻をぶつけるようにして睨み合うとフラッシュがたかれる。
コミッショナーのマリガが割って入るw
「ギドラ、下がって!ピュマも!」
「ピュマ、前回ギドラに失神KOさせられましたね?」
「何ソレ?アンタをダウンさせるわょ?」
挑発するマスコミにノッてみせるスーパーヒロイン。
全て計算通りだわ!素晴らしい記者会見になったわ!
「アレは2年も前のコト。ソレに私はピュマをマットに沈めてベルトを奪った。このベルトは誰にも渡さないわ」
「(…何かバンナは論外って感じ? by マリレ)」
「では、明日をお楽しみに」
カメラにウィンクして締めくくるコミッショナー。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"潜り酒場"はタワービルの最上階で、夜明け前は東京湾に日の出が光る最強のロケーションだが…僕はソファに沈没←
「ミユリ姉様?」
「ルイナ?未だ、いたの?常連は全員(トランプのヤリ過ぎでヘトヘトになってw)お出掛けしちゃったけど。テリィ様はソファに轟沈」
「実は…メイドカジノでディーラーの御経験もおアリの姉様に、ちょっとお伺いしたいコトがあって」
「トランプのコト?でも"大ヲタク"はカジノではやったコトないわ」
「賭けポーカーです。"癖"って何ですか?」
「"真実の瞬間"に出てしまう仕草のコトね?」
「テリィたんが"テル"のデパートだとか…」
「そうそう。でもね、テリィ様クラスになると、もうドレが"テル"だかワカラナイの。実は、ディーラー泣かせのタイプょ」
「ナルホド。で、ノビチ学長の"テル"を見破るには、どーしたら良いですか?」
「よく観察するしかないわね」
「ノビチ学長を?」
「特に彼が追い詰められた時の仕草を観察しないと」
「ソレが"テル"?」
うなずくミユリさん。
「姉様。アキバ工科大の防犯カメラをハッキングしたいンですけど、常連のスピアちゃんと連絡とれます?」
「ルイナ、そーゆーのダメでしょ」
「了解。戦闘工兵を出します」
特殊部隊だ。盗聴してたのかょ?!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、夜明け前でも捜査本部は眠らない!
「何かわかった?」
「ラギィ警部!バックから採取したDNAをバンナのDNAと比較しましたが、どれも一致しません。どーやらバンナはハメられたようですね」
「うーん彼女は真実を言ってたワケね?バンナがシロなら"最凶ロマナ"と"毒蛇スネク"の2人を殺したのは誰なの?そして、ソイツはなぜバンナをハメたの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「捜査は振り出しに戻りましたねぇ」
「キックプロレスを嫌う誰かの犯行でしょうか?または、反スーパーヒロイン(少なくとも反コスプレイヤーw)とか」
「ジャドーのパツキン姐さんは、キックプロレスのランキングが動機だと言ってましたが」
「オールガールリーグに原因がアルってコト?」
「AGLと競合する他リーグの犯行とか?コミッショナーのマリガへの個人的な怨恨の線も考えられます」
「キックプロレスビジネスの現状について、コミッショナーに話を聞いてみるわ。ついでに、競合リーグに恨まれる理由がアルかも聞いてみる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
AGLのオフィスは地下アイドル通りの雑居ビルの6Fにアル。
まぁオフィスと言ってもドアを開けると即マリガのデスクw
「犯人の動機は、貴女カモしれません」
「どういうコトかしら?」
「殺人ってキックプロレスのイメージを下げますょね?」
ラギィ警部は、マリガを真正面から見据える。
「AGLのビジネス上のライバルは?」
「ランジェリーでやる全ての女子スポーツ。女子のやるボクシング、野球、バスケットボール…全てがライバルょ」
「貴女自身を恨んでいる人物は?」
「いないわ。業界では天使で通ってるし」
「黒天使でしょ?AGLの出資者リストをください」
「何のために?」
「リーグ関係者の誰かが恨まれている可能性がアル」
ココでマリガは、ラギィの後ろに声をかける。
「ヲタッキーズのメイドさん。貴女とウチのバンナは"時間ナヂス"なんだって?」
「Ja。でも、捜査とは関係ナイわ」
「いいえ、アルでしょ。ベルリンを見捨てた者同士の友情は理解するけど、私のビジネスの邪魔をしないで」
「とにかく資料を出してください」
「令状がなければ渡せない」
「じゃ召喚状を取るけど」
「…OK。わかった、出すわょ。ねぇもし…」
「あら?貴女、条件を出せる立場?」
「もし勾留スルだけなら、バンナもお願いしようと思って。良い宣伝にナルから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
蔵前橋重刑務所。異次元人の専用ゲートが開く。
バンナが出て来るが、迎えに来たマリレを無視。
「私は…」
駆け寄るマリレを見もしない。
「ねぇ。御礼もナシなの?」
「え。何ソレ?」
「刑務所から出してあげたのに。迎えに来て損したわ」
向き直ったバンナは、マリレを正面から睨む。
「何?償いのつもり?」
「償い?」
「私はベルリンで感化院に2年間も入ってた」
が、マリレも負けてナイ。
バンナの前に立ち塞がる。
「ソレが何?この際だからハッキリ言っておくわ。当時の貴女は感化院に入れられて当然だった」
「マリレ。アンタのコトは親友だと思ってた。でも、面会にも来てくれなかった。あの夜の真相も知らないクセに」
「真相?いつも通り貴女が喧嘩をふっかけたンでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
塀の外での口論は続く。
「あのね、喧嘩を買ったのはアルラ。そのコト、知ってた?」
「アルラが?ウソょ。彼女は喧嘩などしない」
「推しに絡んだ男を押しのけた。そしたら、ソイツが音波銃で撃った。音波銃だと気づく前にアルラは撃たれたわ」
「…なぜ黙ってたの?」
「国防軍のアンタらと違い、ナヂスは死ぬまでA級戦犯なの。下手に正当防衛を訴えれば20年は食らうと弁護士から言われてた」
そう告げて回れ右。スタスタ歩み去るバンナ。
「バンナ。待って!」
「今さら貴女と話すコトなどナイ」
「…信じるわ」
バンナが立ち止まり、振り返る。
「何を?」
「貴女は、闘いに背を向けない女子。絶対に」
「…あのね、マリレ。キックプロレスの出場権はランキングじゃナイ。むしろランキングは関係ナイ。最終的に対戦相手を決めるのは、コミッショナーょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
消毒の終わったラボ。強烈な臭いの中に立ち竦むルイナ。
「ルイナ!タイヘン…ぎゃ!この臭いは?何ゴト?」
「す、直ぐに慣れるわ。何ゴト?マリレ」
「あのね。ちょっち聞いて欲しいコトが…」
ところが、ルイナは自分のPCから目を離さない。
「見て見て。ホラ、今、ノビチ教授が学長室に入るトコロ。ココょココ。昨日まで学長室のドアがココにあったのクスクス」
「あった?クスクス?」
「ジャドーの戦闘工兵が昨夜の内に同じ色の板でドアを塞いだら…」
「1夜で研究室が消えた?ジャドーの戦闘工兵には左官屋さんもイルの?」
マリレは、ラボの監視カメラを睨みつける。
監視室の全員が、一斉に明後日の方を向く←
「ホラ見て!コレかもしれないわ」
「何が?」
「学長が追い詰められた時に出る"テル"。ホラまた鼻を触ったわ!」
テル?ウィリアム・テルを連想しつつ話題を戻すマリレ。
「ゴメンね、マリレ。一刻を争うの。同じメイド服を着てるヨシミでお願い。分析してもらった件、新しい変数が加わったの」
「新しい変数!大好物ょ!この前の"クリティカル・カウント"の件だっけ?」
「動機となる変数はランキングって前提だったょね?」
「えぇ。だって他に考えられる?」
「キックプロレスに出場するには別の基準もアルの」
「別の基準?」
「ランキングはあくまで目安。実態は、あくまでコミッショナーがマッチメイクするらしいの」
「…そっか。そーなると分析の手法も変えなきゃ。新しい変数を考慮に入れないと」
「結果も変わる?」
「モチロン。ネットワークフロー分析を1からやり直してみるわ。この臭いにも慣れたし」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の捜査本部。
「ラギィ警部!AGL、オールガールリーグですが、調べてみたら結構ヤバい。リーグとして、かなりの借金を抱えてるコトがわかりました!」
「え。儲かってたンじゃナイの?」
「事業拡張の積極さが、このコロナで全部裏目に出ました。経営の多角化がリーグの命取りに」
「調子に乗って手を広げ過ぎた?」
「YES。企業としての成長限界を超えてる。持ち株を借金の担保にスル自転車操業です」
「返せないとコミッショナーは全てを失うわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに、ルイナがラボからリモートで割り込んで来る。
「みなさん、タイヘンょ!過去3年間にキックプロレスを闘った選手約100人の理想戦績をデータ化したの!」
「理想戦績?何ソレ?美味しいの?」
「技術と成績をもとに、各レスラーのランクを予測、実際のランクと比較してみた。ソレでわかったコトは、目的地は同じでも進め方が2つアルってコト」
瞬時に全員が遠い目だw慌ててルイナが例え話を出す←
「例えば、ある人は途中で信号待ちしながら進むけど、ある人は青信号のみを選んで最短時間で目的地に着く」
「天皇陛下の公用車みたいね。で、実際の戦績に不審な点がアルの?」
「YES。数学が全てを支配スル世界なら、全ては評価通りの勝敗になるハズ」
「ソレで実際は?」
「この2年間、ズッと青信号ばかり渡って来たレスラーがいたの。とても偶然ではアリ得ないコトょ」
「キックプロレスでイカサマが?」
「そうじゃナイの。リングの上ではガチンコ勝負だったけど"ギドラ・ザ・シングルマザー"が勝つよう、全体がスケジューリングされてたってコト」
「げ。理由は?」
「"ギドラ・ザ・シングルマザー"のチャンピオン防衛戦のペイパービュー放映契約金に注目してみた。挑戦者が"女豹ピュマ"の時に過去最高額になると出た。でも"女豹"が挑戦権を得ないと…放送局が契約スラしない可能性がアル」
「"毒蛇スネク"は?」
「彼女には"女豹ピュマ"を倒す実力があった」
「…だから、消されたの?ソレじゃ"毒蛇スネク"に代わって"女豹ピュマ"と闘う新たな対戦相手も、彼女に勝てそうなら命を狙われるってコト?」
「"毒蛇スネク"の次は、先日、コミッショナーが発表してるわ!」
「誰?まさか…」
「"聖女バンナ"ょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後に、鑑識がリアルで駆け込んで来るw
「警部!殺鼠剤からシリコンポリマーが検出されたので、製造元の手がかりになるカモと思って…」
「え。何?」
「あらゆる資料に目を通し10社に問い合わせたけどラチがあかず、容器の会社も調べましたが…」
「容器?何の話をしているの?」
「だって、何の容器から出たのか気になるじゃナイですか。容器の保護に使うシリコンなので…」
「違うわ。そのシリコンは容器の保護用じゃナイ。マウスピースょ!証拠にあったわ。キックプロレスは、総合格闘技なのでレスラーはマウスピースを使うの」
「あのダウンして息も絶え絶えの時に、マットにポトリと吐き出すマウスピース?あのシーン、萌える…」
「その萌え萌えなマウスピースに誰かが毒を仕込んだ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
満員の"アキバ地下アリーナ"。ゴング10分前。
「ペットボトルは全て調べたわ。異常ナシょ」
「コミッショナーが私を殺す?ペイパービューの契約のために?で、勝敗は?」
「当然、貴女の負けを望んでる」
「そっか。そーょね?ナヂスは全人類公認の敵役だモノ…考えてみれば単純な図式だったわ」
「あと2分ょ。どーする?」
"聖女バンナ"は寂しげに微笑む。
「やってやるわ。シングルマッチなら決して負けない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ladies & gentlemen!今宵のメインイベント、AGL元チャンピオン"女豹ピュマ"vs"聖女バンナ"です」
両者リングイン。ピュマは花柄、バンナは真っ赤なセパレートタイプのスーパーヒロインコスプレ。手にはグローブw
「先ずは青コーナー、ピュマ205ポンド。オールガールリーグ元チャンピオン。対する赤コーナー、バンナは元SSのタイムナヂス…さて、ココでAGLコミッショナーのマリガから御挨拶があります!」
「全世界のスーパーヒロイン格闘技ヲタクのみなさん!今宵の試合をさらに熱狂的なモノにするため、私マリガも、コミッショナーとしてひと肌、いいえ、徹底的に脱ぐ覚悟をして来ました!」
「え。何だ?聞いてナイぞ?」
全観客が驚く中、リング中央に進み出たマリガはエメラルドグリーンのパンツスーツを脱ぎ捨てる…下は黒レオタードw
「AGLチャンピオン"ギドラ・ザ・シングルマザー"への挑戦権を賭けた今宵の試合、タッグマッチに変更します!青コーナー"女豹ピュマ"のタッグパートナーは私、リングに舞い降りた漆黒の翼"黒天使マリガ"!」
「スゲェ!ヒロイン殺しで有名な黒天使の降臨だ!」
「マジ興奮!2人がかりで"聖女"をやっちゃえ!」
タッグマッチ?聞いてナイわ。シングルマッチなら負けないけど、このママだと2人がかりでリングで殺されちゃうわ…
その時、大歓声!
急に心細くなったバンナが振り向くと…純白のヘソ出しセパレートのスーパーヒロイン!ムーンライトセレナーダーだ!
「スーパーヒロインプロレスファンのみなさん!赤コーナー"聖女バンナ"のタッグパートナーは私、ムーンライトセレナーダーが務めます!よろしくて?」
もう地下アリーナが天空に浮き上がるホドの大狂乱だっ!
ゴング。パンチにキックを繰り出す"聖女"が"女豹"を追い込むが対スーパーヒロイン用の凶器、音叉攻撃!
「ギャー!」
"聖女"ダウン、タッチした"黒天使"にパイルドライバーをキメられ"聖女"はマットに大の字。ピクつくw
「助けて、ムーンライトセレナーダー!」
ムーンライトセレナーダーがインして"黒天使"をマットに叩きつけマウントとりパンチ連打から腕十字固め!
「ギブアップ…」
「未だょ」
「え?」
ムーンライトセレナーダーが"聖女"を呼び寄せて"黒天使"にツープラトンでロメロ・スペシャルをキメる!
「"黒天使"、ギブ?」
「私、負けましたわ(回文w)…」
「勝者"聖女バンナ"!」
バンナが高々と手を上げる!
観客は総立ちになり大熱狂w
「私、勝ったわ!」
「そうね。そして、何より死ななかった」
「AGLコミッショナー、マリガまたの名を"黒天使マリガ"、証拠の毒入りマウスピースを押収した。お前をスーパーヒロイン"最凶ロマナ"および"毒蛇スネク"殺害の容疑で逮捕スル。手を後ろに…って、もう失禁…もしてるけど、失神してるじゃないの?」
リングに上がったラギィ警部が"聖女タッグ"に責めるような口調で言う。観客は逮捕者が出て、さらに興奮しているw
「ラギィ警部。私を逮捕した時、本気だったの?」
「まさか。貴女はマリレ(ヲタク)のお友達ナンでしょ?違うの?」
「あぁ!マリレ!」
メイド服でリングインして来たマリレを抱きしめるバンナ。
「カッコよかったわ、聖女さん。アルラのコト…」
「過ぎた話ょ水に流すわ…ねぇ私達、今も戦友かしら?」
「あのね。ソレ、アキバじゃヲタ友って言うのょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"第21回大ヲタク大会"も佳境だ。
「まだルイナが勝ってます」
「でも、ノビチ学長も追い上げてるな」
「次のゲームが勝負ですね」
"潜り酒場"でミユリさんとモニターを見詰める。
「未だキングが出てない。学長が持ってるな」
「あ、学長がベット!」
「ルイナ、レイズしろ」
その時、ルイナが学長に尋ねる。
「キングのペア、持ってマスょね?」
鼻を擦る学長。ニヤリと笑うルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ。"第21回大ヲタク大会"優勝おめでと!」
「ミユリ姉様こそ。しかし、姉様がポーカーのディーラーどころかリングにまで上がってたとはw」
「テリィ様が社長をなさってた会社でコスプレプロレスをねwスーパーパワーに目覚める前の黒歴史」←
「え。テリィたんがプロレスビジネスを?」
「うん。私、やむなく社長夫人レスラーとして…」
「え。というコトは姉様はテリィたんの夫人?結婚を?」
「だから、ネタだってば。アメリカのショープロレスとかで良くアルでしょ?」
そして、もう1度。念を押すようにミユリさんは逝う。
「テリィ様と結婚なんて、ネタょネタ」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"総合格闘技"をテーマに、ショープロレスの世界に身を落とした元ナヂス、リングで謀殺されたレスラー達、リーグのチャンピオン、倒された前チャンピオン、全てを支配するコミッショナー、トランプ大会の優勝を狙う大学長、事件を追う超天才や敏腕警部などが登場しました。
さらに、超天才のトランプ大会をサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第6波まんぼうの明けた秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。