勇者の人生相談 ~折れた聖剣~
この前の事件から1週間が経った。
俺はバーにこの前インキュバスを倒した仲間2人と飲みに来ていた。
「人生相談があるんだ…」
日の丸酒の熱燗を飲み干して俺は口を開いた。酔わなければ言えなかったことだ。カウンターのテーブルに両肘をつき、両指をクロスさせて重大そうな悩みな雰囲気をかもし出す。
俺は酔いも回ってか、深紅の瞳から少し涙がこぼれそうだった。本当に辛い相談なのだ。
「は?また?」
両隣の2人は酔って楽しそうにしていたが、急に俺に落とされた爆弾によって真顔になった。
「はっ、魔王スペルビアを倒した勇者アルタイル様の悩み事とか解決出来る気がしねーな!!ガッハッハ。」
俺の右隣に座るレオは大ジョッキのビールを飲み干し豪快に笑う。
スゥゥーっと俺のそばに近付き、ヴァルゴは左の耳元で囁く。
「で、悩みって何なの?」
普通の人間だったら動揺してしまう、ヴァルゴの妖艶な囁き…
だが俺はこれに動揺する事は無かった。むしろこの悩み関連だと言っても良いだろう。
「実はな…」
レオとヴァルゴの二人はゴクリと生唾を呑み込む。
「俺の聖剣が折れてしまったんだ…」
2人は動揺して明らかに顔が青ざめていた…
「あの剣の為に戦争が何回も起きてるのよ。売れば国が買える程の国宝よ…そんな聖剣を折るなんて……」
ヴァルゴは重大過ぎて、言葉さえ詰まっていたようだった。
「聖剣ってあの………持つだけで何回も戦争に参加できる…」
レオでさえ顔が真っ青になるほどの重要な事だ。レオのは少し違うけど…
二人とも言葉を失っている…
二人は顔を見合わせて言葉を合わせる。
「とりあえずアマテラスの所有権を持つ妖精の国へ土下座しに行くぞ。最悪、俺達人間と妖精で戦争が起きるかもしれん。」
二人とも顔を見合わせて慌てている。
『乖離剣アマテラス』
…妖精の国の国宝だったモノを、魔王を倒す可能性がある神器という事で譲り受けたものだ。
妖精の国が戦争を仕掛けられない様にする為に俺が現在預かっている。
俺が死ぬと同時に妖精の国に返還する約束になっている。
俺は2人の様子を見て、少し言い間違えたかもしれない事を悔やんだ。
「あの…そうじゃな」
だが言う前に、俺の言葉は遮られた。
「私家族に影魔法掛けないと…どうしましょう、妖精王ミルザムを怒らせたらヤバいわよ…」
「へっへっへ。妖精たちとの戦争か…心苦しいが、俺の死に場所になりそうだぜ。」
ヴァルゴは慌て、レオは逆に覚悟を決めたようにビールをグイっと飲む。
「まぁとりあえずはアルタイルの首を差し出すのは絶対。」
2人は声をそろえて俺の首を差し出す話になる。いつの間にかとんでもない事態に発展していた。
-勘違いでドンドン話がヤバい方向になっている…
「そうじゃない…二人とも落ち着け!!」
俺は大きな声で二人を鎮める。
「俺の聖剣が折れたって言うよりは、たたなくなったんだ…」
「まるで意味が分からんぞ…」
二人とも???と全く理解できない表情をする。
俺はこれ以上は言いたくなかった。しかし理解してもらえない以上言うしかない…
酒の力を借りてはいるが、更に勇気を出さなければならなかった。
「その……えっと……俺のち〇ち〇が勃たなくなってしまったんだ…」
俺は少し恥ずかしくて顔を赤らめて言った。
レオは唖然としたように呟いた。
「いや、お前のちん〇は聖剣と言うより、ショートダガーだぞ!!」
ウンウンとうなづくようにヴァルゴも同意している。
その言葉に俺はこの前以上の心の傷を負った…
レオにとっては聖剣じゃなくても、俺にとっては聖剣だ。むしろレオが体含めて全てが大きすぎるんだよ…
「ベガとあんな事やこんな事をしようとしても、気分は乗っているのに下が勃たないんだよ…」
ベガは美しく魅力的なのに、どうしてもインキュバスに寝取られた時の生々しい光景が頭に浮かんで最後までできなくなっていたのだ…
俺は以前のトラウマで深刻な状態が続く事に悩んでいた。
「ヴァルゴとあんな事をするって考えてもか?」
レオは恐ろしい発言をする。その瞬間、ヴァルゴの目がギラリと光る。
-ヴァルゴとあんな事か…
想像してみたがヴァルゴは仲間というか戦友としての認識が強すぎる…
女性として物凄く綺麗だけど、どうしても彼女とすることを考えられない。
「ヴァルゴは綺麗だけど…俺じゃ役不足かな?」
彼女とすることを考えても勃たなかった。それを彼女に悟られないように誤魔化した。
ヴァルゴは少し残念そうな表情をした…
レオはそんな俺を心配したのか…それとも酔っぱらってか…
「ならいっちょ行ってみるか、豪華絢爛な夜の店に…」
ビールの大ジョッキを片手にギラギラした目でレオは言った。
レオの提案にヴァルゴは呆れて溜息を吐いた。
こうして俺はレオに連れられて(半ば強制的に)夜のお店に行くことになった。
俺は浮気はしない。だがベガにこれ以上がっかりして欲しくない…
-愛が故に、夜の店に出向くんだ…愛が故に…
これは絶対浮気ではない。そう思わなければ、罪悪感でどうにかなりそうだった。
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