勇者の死ぬ日
俺の金髪は怒りで天を突くかのように逆立っていた。まるで漫画で主人公が覚醒した時に神が逆立つように…
「え?アル?え?2人?」
ベガはこの状況に頭が混乱していた。理解が追い付いていないのか絶句している。
まぁ当然だろう。しぐさや先程の他愛無い話していた内容といい、偽物の俺は本当に俺になりきっているのだから…
俺の偽物はパンツ一丁のままベッドから吹き飛ばされ、地べたにうずくまっていたが起き上がる。
その間にヴァルゴがベッドに向かい、下着姿のベガに服を着せる。
「クソ…」
俺の偽物は何かを悟ったようだった。そして窓を割っての外に逃げようとする。
-残念でしたぁ…外には…
俺は計画通り!!と下卑た笑みを浮かべていた。
窓の外に飛び出したと思った瞬間、吹き飛ばされる形で部屋の中に戻ってくる。
「俺様、参上。今のは惨状。」
レオは家から飛び出した偽物のお腹に強烈なパンチによる一撃を加えていた。クリティカルヒットだった。
「ぐぅぅぅぅ…」
俺の偽物は地面に倒れて苦しそうにしている。
「とりあえず真の姿を見せて貰いましょうか?影魔法・ジキル&ハイド」
ヴァルゴは相手の正体を見破る魔法を唱える。
すると偽物の俺の皮膚の色は赤色に変色し始め、頭から2本の角が生えて来た。
-悪魔の類だったか…
両肩から翼が生えて来る。だが左翼はボロボロの状態だった。
「おいおい、マジかよ…」
その場にいる者はその姿をみて、淫魔インキュバスだと気付く。
インキュバスは相手の力をドレインで奪い、自分の力にすることが出来る厄介な魔物だ。
つまり浮気されている間、ベガの力は奪われていたのだ。
「はぁぁぁぁ…痛てぇぇ。」
そう言いながらもインキュバスの怪我は回復している。
-クソ…ベガの回復魔法を取り込んでいたか…
しかしボロボロの左の翼だけは回復しなかった。
魔物であるならば…と、俺は右手に『乖離剣アマテラス』を鞘から出す。胸のホルダーから左手に『無限銃ツクヨミ』を出して相手に銃口を向ける。久しぶりの本気の戦闘モードに入った。
-コロスコロスコロスコロス、何百回でもコロス。
「へっ、久しぶりに見たぜ、勇者様の本気の姿を…」
レオは俺の姿を見てそう言う。本人もやる気なのか、かぎ爪を装備して戦闘態勢に入る。
ヴァルゴは短刀を持ち、魔力を奪われているであろうベガの護衛に入る。
「セロ・バレット」
俺がツクヨミによる弾丸を相手に放つ。俺の左手には時間を操る力がある為、銃を媒介にして時間を遅らせたり、進めたりすることが出来る。
セロ・バレットは相手を遅くする能力がある為、一番最初に使う。
デバフを最初に使うのは戦闘のセオリーだからだ…
しかし物凄い速さの相手にかわされた。速い、と言うより消えた?
-行動を読まれていたのか?
俺でさえ目に見えない一瞬のことだった。
インキュバスはいつの間にか右手に『アマテラス』、左手に『ツクヨミ』を持ち、俺と同じように構えている。
「あの2つの構え方といい、姿形はアルと全く同じものね…」
ヴァルゴは構える姿が俺と姿形がまったく同じ事に気付く。俺も全く同じ姿だと気付く。
-姿形は同じでも、扱う力や熟練度は違う…
俺はそう思いたかった。だが相手の方が素早さは上の様だ。
-つまり相手の行動を予測し先回りしなければ…
レオはインキュバスの動きを見て厄介だと判断したようだ。
-ベガ達を人質にされる前に…
「獣心解放」
レオは咆哮と共に上半身をライオンの姿に変化させる。そして一気にインキュバスに攻撃を仕掛けた。
レオは自らに宿る獣の力を解放して、爆発的な力や回復力を得る事が出来る格闘家だ。
「ディエス・バレット」
「セロ・バレット」
インキュバスは左手に持つツクヨミらしき銃で2発レオを撃つ。
するとレオは再び人の姿に戻り、速度が遅くなった。
ディエス・バレットは時間を巻き戻し相手の強化を無効化する技…
-何でだよ…まったく俺の技や力と同じだ。
「空間を裂け、アマテラス」
偽物は右手のアマテラスで空間を数回切り裂く。
俺の右手には空間を操る力を宿している。だからアマテラスを媒介にして直線状に空間を自在に操る事が出来る。
すると周りの空間は斬り取られたように、透明な壁の様に別の空間にレオの行動は止められる。
別の空間による牢獄がレオを閉じ込めた。
「まぎれもなく俺と同じ力…」
俺がつい呟いてしまう。信じられなった。
魔王を超え得る力を、たかがインキュバスごときが持っている。
俺はレオが何も出来ず無力化された事を見て、魔王と戦う時並みの警戒態勢に入った。
-俺と同じ力をどこまで使えるか分からないが、油断出来ないな…
俺の、いや俺達の動揺した様子を見てインキュバスの口元はニヤリとした。
まるで計画通り、しっかりと相手を驚かす事が出来たと言わんばかりだ…
インキュバスは半笑いになりながら口を開く。
「今日は俺が勇者アルタイルを倒す日…つまり勇者の命日だ!!」
インキュバスは高笑いをしながらそう言った。
キメ顔のインキュバスがパンツしか履いてない事を突っ込んではいけない…
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