[番外編]獅子の矜持
レオ視点で本編が進みます。
ご了承お願いします。
俺はアルタイルの依頼を受けて魔王城に来ていた。
かつての魔王スペルビアが支配していた、魔物達の根城。
「ったく、こんなカスしかいない場所に何の用事があって仕向けたんだ?」
魔王の城は平和になってからも魔物が沢山住んでいた。
王の命令だから来たけれど、雑魚の魔物しかいない。こんなの一般の兵士にやらせればよいだろうに?
俺は雑魚を狩りながら魔王との戦いを思い出していた。
城は俺達の戦いで半壊…いや、魔王自身が壊していたな…
玉座の間にたどり着いた。魔王が座っていた椅子…
-は?誰かいるんだが?
ピエロの格好をした人間が玉座に座っていた。
「あれれぇぇぇ…何で勇者の腰ぎんちゃくがここにいるんデスカァ?」
ピエロは玉座から立ち、おちょくっているように俺を挑発する。
「散歩だよ。見て分かれ。魔王のフンが。」
別に雑魚を相手するつもりはない。逃げるなら追わない。
「金魚のフンとでも言いたいのか?クソが」
ボソッとピエロは呟いた。
「せっかくの散歩デスからァ、花くらい持たせてあげますかァ。」
そう言ってピエロは指をパチンと鳴らした。
その瞬間、数百はいる魔物の群れがこの場に出現する。
「さぁ駆けっこデス。貴方がこの魔物を狩りつくさねば、誰かの大切なモノが一つ消えますヨォ。」
ピエロが何を言っているか分からないが、魔物の群れは玉座の間から地下を目指して走りだした。
-地下……?地下牢くらいしか…まさか…
俺はなぜ王の命令でここに来させられたか分からなかった。だが地下牢にシリウスの国の人間が拉致されていたとしたら…
「ビースト・アウト」
俺はライオンの姿に変身し、普段よりも強さと素早さを上げる。
一瞬にして先頭の魔物の群れを10体程、八つ裂きにした。
それからも次々と魔物を狩っていく。あまりに歯ごたえがない。
10分と掛からないうちに魔物は残り数体にまで減った。
「うむむぅ…つまらないですネェ…」
パチンッ
ピエロが指を鳴らすと同時に魔物達の顔は変化する。
「こりゃぁ…悪趣味すぎるだろ…」
魔物達の顔はベガの弟デネブの顔に変化した。俺達が見捨てざるを得なかった戦友の…
黒いツンツンした顔に、ギロリとした目力…あのプロキオン王を思わせるかの様な威厳ある若者…
「殴れねぇよ…」
俺は殴れなかった。俺達の為に死んだ友の顔を…
「アレレェ、急に手が止まりましたネェ。では作戦変更デス。」
パチンッ
ピエロが指を鳴らすと、デネブの顔をした魔物の群れは俺目掛けてやってくる。
「クソ…」
魔物の攻撃は俺を傷つける。でも俺の傷は直ぐ回復する。ビーストアウトの能力は攻撃された分の魔力を自動で補充する。
それで俺自身は相手の魔力を無効化出来ないから、力比べと実力比べを俺自身選び相手と戦う事が出来る。
-魔物を殴れないなら、ピエロを殴れば良いじゃないか?俺って天才だ。
目標変更、俺はピエロを殴ってボコす事にした。
「ヒェ」
パチンッ
その指を鳴らすと同時に、ピエロの顔もデネブの顔に変化した。
「ウケケケケ。タノシイデスネェ。」
殴れねぇ…終わった…
俺は殴れる相手がいなくなったから、相手の気が済むまで殴られる事にした。
ボコボコボコボコ
俺はどんどん殴られるが、すぐに傷は回復する。俺の体質だ。
俺の体の組織を破壊するレベルの攻撃でない限りは、攻撃して来た相手の魔力を奪ってすぐに回復する体質だからだ。
俺は相手に攻撃された瞬間、魔力を奪う事が出来る。魔力回路を繋げられるからだ。
それを応用して魔力回路を閉じて、相手の魔力を無力化することが出来る。
何十分も俺は抵抗することなくデネブの顔をした魔物から殴られ続けた。
「はぁ…アルタイルから頼まれて来てみれば、君は何をやっているんだ?」
その瞬間、謁見の間の空気中に無数の刃物が浮かんでいた。
黒い制服を着た人間は上にかざしていた右手をそのまま下に降ろした。
その動きに連動したかのように、刃物は空中から魔物目掛けて降って来る。
「イギャァッァァァァ…」
一瞬にしてピエロを含む、全ての魔物が串刺しとなりその場の生存者は俺だけになった。
「君はあの数の魔物達と、どうして戯れて遊んでいたんだ?」
黒い制服を着て茶髪の好青年トーラスはこちらに近付いて来て聞いた。
「いや…あいつは殴れねぇよ…俺達の為に死んだんだから…」
トーラスは俺の言葉を聞くと、魔物の顔を見てデネブの事だと理解したようだ。
「君の矜持は褒めるに値する。だが君がいなくなれば、アルタイル達は悲しむだろう?」
「だが僕が来るまで反撃せずに持ちこたえるとは、大儀であった。ぜひ我が国に傭兵として来て欲しいものだ。」
「俺はアルタイルの隣で死にてぇんだ。だからお前とは無理だ。」
「知っているさ。君たちの絆は…だから僕たちは君達に負けたんだ…」
「絆を知って、僕たちカノープスの人間は強くなった。」
トーラスは真剣な眼差しで俺に向かって言った。
「僕たちがこれからもっと強くなったら、もう一度君達に挑ませてくれ。」
「おう。」
俺はアルタイルのいない所で勝手に決闘の約束をした。まぁあいつなら受けてくれるだろう。
「で、魔王城に大切な人間が待っていると聞いたんだが…」
トーラスは俺に今回の任務について聞いた。
「はぁ?俺はただ魔王城に行けとしか言われていない…」
トーラスも俺もアルタイルに頼まれた事を詳しくは聞いていないようだ。
そこまでして任務の内容を隠す人間がいるのか?
よっぽど誰かにバレたらマズイ内容の任務じゃないと、納得出来ねぇぞ!!
だがふとさっき魔物が地下に向かおうとしたのを思い出した。
「もしかしたら地下にいるのかもしれねぇ…」
俺達は地下に向かった。
「なぁトーラスが泣くくらい落ち込む時って、どんな時だ?」
トーラスは口元に手を当てて考える。
「大切な人がいなくなった時かな?確かに職業柄、色々な物をどんどん失うが…それでも大切な人を失った時の悲しみは、耐えられない…」
トーラスは何かを思い返すかの様にいう。
皇子として背負うものが多い彼でも、やはり大切な人が無くなれば涙をするのだろう…
「どうしたんだ?急に?」
「いや…この前…」
-アルが…
と言おうとしたが、止めた。
あいつが泣いたなら、これ以上泣かない為に俺はもっと強くなれば良い。
いつか笑って死ねる様にお互いが日々を過ごせるだけの力をつけなければ…
「いや、なんでもねぇ。」
俺はそう言って地下の監獄までたどり着いた。
「おいおい、マジかよ…」
俺はその地下牢にいる人間を見て驚いた。
「あぁ、あり得ない状況だ…」
トーラスもその人間を見て驚いていた。
何故ならそこには両手両足を固定されたベガがいたのだ…
「じゃぁシリウス王国にいるベガは一体?」
俺は嫌な予感がしていた。だがこの場にいる状況は全てアルタイルが作り出したものだ。
「あいつ…何を考えてやがる…」
アルタイルがこの状況を知っているならば、何故あいつはここに直接来ないんだ?
-それ以上に、大変な事がシリウス王国に起きているって事なのか?
「トーラス、緊急事態だ…お前の国の人間を借りられるか?」
「あぁ、君の国に貸しを作る為だ。喜んで。」
アルタイル…
お前が考えている事は分からねぇ…
それでもこれからも隣で戦わせてくれ。
「俺達の戦いはこれからだ!!」




