1秒間の流星群
「ドス・バレット」
俺は右手のツクヨミで数発弾丸を放つ。だがアルドラには命中しない。
そもそもドス・バレットは射程距離は短い…ほんの数メートルの弾丸だ。
「当たっておらんぞ…」
アルドラは弾丸が全く当たっていない事にがっかりしているようだった。
「この弾丸の恐ろしさが、そのうち分かるさ。」
俺が口を開いた瞬間アルドラは消えていた。空間移動を行ったようだった。
俺は後ろに現れたアルドラに左手のアマテラスで防御する為に振り返る。アルドラの爪と俺のアマテラスは衝突する。
-力はややアルドラの方が上か…アルドラはまだ手加減しているんだろうが…
「ほう…これに反応するか…久しぶりじゃのう。」
-そりゃ前にやられたからな…
アルドラは少し楽しそうに俺に攻撃を仕掛けようとする。
「ヌベーノ・バレット」
俺は自らに弾丸を当てて、アルドラから距離を取る。
「ふむ…空間操作の能力か…確かに強い力じゃ…」
アルドラは冷静に俺の分析をする。
アルドラは再び俺の横に瞬間移動する。と思いきや、彼は分身して俺の両側と背後から現れる。
「どれが本物の儂かな?」
-速過ぎるゆえの残像か?
「ヌベーノ・バレット、ドス・バレット」
ヌベーノバレットを使い、俺は瞬時にアルドラから離れるが、彼は直ぐに俺の背後と両方向から爪を振りかぶり攻撃を仕掛ける。
そして次々と爪を左右に振りかざし、絶え間なく攻撃を仕掛けて来る。こちらが逃げる隙を作らないかのように…
俺も上下左右と素早く移動し、爪をかわす。
「ほっほっほ…これも避けるか…だが体力は持つかな?」
アルドラの攻撃は速く、一秒たりとも油断が出来なかった。時折、ヌベーノバレットで空間移動をしなければ避けられない程、縦横無尽で隙が無かった。
だが俺は受けられる攻撃はアマテラスで受けて、出来る限り攻撃をかわす。攻撃をこちらから仕掛けられない分、少し劣勢だった。
俺の体に少しずつ生傷が増えていく。
「ドス・バレット…ヌベーノ・バレット」
俺は攻撃をかわしつつもチャンスをうかがっていた。
-右から、前に跳んでドス・バレット
-後ろ、ヌベーノでかわす
-ドス・バレット…次は両側から…
ツクヨミで弾丸を放ちながらも、アルドラが小さな隙を見せる瞬間を狙う。だが一向に隙を見せる気配は無かった。
「隙を見せると思っているようなら大間違いじゃ…。これで攻撃が出来ないようであれば、やはり人間は弱いの…」
アルドラは最初は楽しそうだったが、急につまらない顔をして口から炎のブレスを吐く。
-爪の攻撃ばかりで油断した…
「く…あぁぁぁ…」
俺は攻撃を受けてしまった。体中が焼き尽くされるような熱さだった。
「やはり人間が竜と共に歩むなどはあり得ぬな…」
アルドラは少しがっかりとしたようだった。炎を吐き終わり溜息を吐く。
俺は炎に焼かれその場に倒れた。
アルドラはそれを見て、少し残念そうな顔をした。
「まだまだ楽しめると思ったのに、これでしまいか…」
だがその言葉に呼応するかのようにどこかから声が響く。
「それはどうかな?」
アルドラは声のする方向を振り返る。しかし姿は見えないのかキョロキョロと辺りを見回す。
「ここだ。」
俺は左手のアマテラスをアルドラの右翼目掛けて斬りかかった。
翼の方に攻め込む俺の気配を察したアルドラはそれを爪でガードしようとするが…
「遅い。」
俺はアルドラの右の翼を斬り落とすことに成功する。
不意打ちではあるが、透明だった俺の姿がその場に現れた。
アルドラは透明から姿を現わした俺の姿を見て驚く。
「ん…貴様…あそこで燃えているのは、分身か…」
アルドラは攻撃を受けた事にたいそう驚いたようだった。
「あぁ。人が竜に勝つために俺は考えていた。」
力や能力で劣る俺達がどうやって最強の竜に勝つのか…
「俺達人間の強みは力でなく『知恵』だ。」
俺は最初からシエント・バレットで分身体を作っていた。本物の俺はヴァルゴのハイドラで姿を消していた。ペテルギウス山脈に来た時から…
本物の俺は透明になり、ひたすら分身体に着いて来ていた。
分身体はひたすらヌベーノバレットで攻撃を避けつつ、俺がアルドラの実力を確認する時間を稼ぎ続けた。
それと同時に分身体は、この場にはドス・バレットを沢山撃ち込んでくれた。分身体は大きな役目を果たしてくれた。
「さて次はこちらから行くぞ。」
俺は先程のドス・バレットが打ち込まれた空間目掛けて進む。勿論左手に持つアマテラスを使って、時間を圧縮し加速をしながら。
ドス・バレットは長時間、ドス・バレットによって作った空間同士を移動する為の穴を開ける弾丸だ。アマテラスで空間を斬るより、移動距離は短いものの、短時間に何発も撃つことが出来て保持時間も長い。
-俺はこの空間を通りさえすれば、アルドラの攻撃をかわしながら攻撃をすることが可能になった。
更に長い時間、敵の攪乱に使う事が出来る為使い勝手が良い。相手を惑わす為の罠を張るのに非常に役に立つ。
俺はドス・バレットで出来た空間で移動しながら加速を続ける。アルドラも俺が現れたり消えたりするのを目で負えないようだった。
-俺の左手に持つアマテラスによる時間圧縮による加速は、距離が長く時間が経てば経つほど大きくなる。
つまりドス・バレットで相手を惑わしながら様々な空間を飛び続け、長い距離を加速し続けた俺は既に光の速さを超えている。
この速さになれば、俺の視界はふやけて見える。光の方が遅いからだ。
更に自分でも速さを調節することが出来なくなる。だから速すぎて動きが調節しづらい為、近くのモノを傷つけてしまう。
ドスバレットを使う事で、速さをコントロールできず、他への衝突を何とか減らすことが出来る。
「ここか…」
アルドラはあてずっぽでがむしゃらに爪を振りかぶり攻撃を続ける。
「いいのか…そんな隙を作って」
俺は左手のアマテラスでアルドラを何回も斬りつける。
「効かぬは…そんな攻撃」
アルドラは俺の攻撃を受けてもダメージは少ない。だが想定内だ。
俺は次々とアルドラの隙を突き、攻撃を繰り返す。
「効かぬと言っておろう。」
アルドラの苛立ちはどんどんと増えていく。俺に攻撃は当たらず、ひたすら俺に攻撃され続けるのだ。
1秒の間に何回も、様々な箇所をアマテラスによって斬りつけられる。
アルドラは炎のブレスを吐く。しかしアルドラの攻撃は既に全く当たらなくなっていた。
-炎のブレスですら止まって見えるな…
もはや俺にとっては時が止まっているのに等しい状態だった。
アルドラの爪での攻撃はもはやスローモーションで攻撃とは呼べないものだった。
今の俺は歩いているだけで、アルドラの渾身の攻撃すらかわせる様になった。
「遅い。いや、自分が遅くなっているのに気付かないのか?」
俺がひたすらアマテラスでアルドラを斬りつけた意味。
彼自身の時間を拡散し遅くするためだ。自らはひたすら速く加速し続け、相手はひたすら遅くなり続ける。
これが俺の攻撃特化『剣鬼』。
「お…そ…く…だ…と?」
既に両者を流れる時間は圧倒的な大差になっている。
-もはやアルドラが自らを速くしようが、俺には追い付けない。
「アルドラ…お前に敬意を表して俺の奥義を見せてやる。」
-とは言っても、もう聞こえないか…
「オクターバ・バレット」
黒い大きな球体がアルドラの近くに出現する。黒い球体は、ドス・バレットで作った沢山の空間を吸い込んでいく。
ドスバレットで出来た空間はオクターババレットにより出来た空間と合わさって、一つに収束する。
複数の空間のゆがみを一つに。重力の乱れすらも一つに…
空間の収束は重力を乱し、その重力の乱れは光や全てのモノを呑み込み始める。
疑似的な重力崩壊…ブラックホールが出来上がる。
そこにアルドラはなすすべなく吸い込まれる。
そこに向かって俺はアマテラスを構えて突っ込む。
「超新星爆発」
オクターバ・バレットにより作られた一つの空間にはアルドラしかいない。そこに俺がドス・バレットで出来た沢山の空間を通り続け、上下左右の空間から縦横無尽にひたすらアルドラに攻撃し続ける。
アマテラスの刀身によって反射した光が流星の様に流れ、その流星はアルドラを貫く。
無数の空間を流星は通り続け、一つまた一つと流星は増えていく。
増え続ける1本の流星は、まるで流星群の様に無数に増えていく。
暗い宇宙を駆け巡る流星群の様に、1秒間に何十、何百もどんどんと白い星が流れ続ける。
流星の光は一秒の間に収束し続け、やがて大きな一つの光になる。
その光は1秒が終わる時に収束した結果、爆発したように見え大きな光を放つ。
俺には長く感じ、他の者にはあっという間に終わる1秒は終わる。
宇宙で星が爆発し終わる様に…大きな光の爆発により全て終わった。
「アルドラ…俺の勝ちだ。」
ノヴァの起こった空間から俺は出る。俺はボロボロになったアルドラを背にしていた。
アルドラはその場に倒れる。
アルドラの時間を遅くしたのだ…だからアルドラが倒れる間の1秒も、アルドラにとっては何年、何十年と長く感じるだろう。
「うぅぅぅぅ…」
何かをしゃべろうかとアルドラは唸っていた。
邪竜達は遠くからアルドラを心配して、駆け寄って来る。
俺はツクヨミを左手に持ち替えてアルドラに対して数発打ち込む。
それを見たのか、邪竜達は怒りに身を震わせ俺に向かって襲いかかって来る。
「止めろ、我が子達よ…」
アルドラはいつの間にか邪竜を俺から遠ざけていた。
俺はアルドラの時間を元に戻していたのだ。それと同時にアルドラも自ら時を圧縮し自らを加速させているようだった。
だがそれにしてはアルドラの時間の戻りは速すぎた。
「完敗じゃ…今の時間に戻って来るのに何百年もかかったぞよ…はぁ…」
アルドラは凄く疲れた顔をしながらも、満足げな顔をしているようだった。
「負けたわ…油断はしたが完敗じゃった…悔しいのぉ…」
アルドラは笑う。
「勇者よ…貴様の名は?」
「俺の名前はアルタイル。魔王スペルビアを倒した勇者だ。」
俺は初めてアルドラに自己紹介をする。
「勇者アルタイルよ…貴様に敬意を示し人間との同盟を認める。いずれは人間と竜族、お互い寄り添って生きてゆこうぞ!!」
アルドラはボロボロだが大きな右手を俺に向かって差し出した。
俺はアルドラの右爪に右手を当てる。
「アルドラ…これからもよろしくな。」
俺はアルドラに向かって微笑む。
お互い笑い合う。アルドラ達竜族と俺達人間はこれから共存していける。
「しかしてアルタイルよ…貴様に負けて、儂はとても悔しい…」
アルドラは笑いながらも凄く悔しそうな顔をしていた。
「だから最後の勝負に、儂を挑戦者として我が奥義を受けてはくれぬか?」




