神竜アルドラ
俺はその後再びシリウス城でアルドラについて調べ、どう彼らを止めるか対策を練った。
ヴァルゴは俺が探す文献を夜通しで探す協力をしてくれた。
カースドは何も言わず俺たちの前から姿を消した。ただ悲しそうな顔をして…
翌日、俺は簡易的な結界を作りペテルギウス山脈を訪れる。
-以前は魔物の大群を相手にしたな…
今回はスカルを連れて来ていない。無駄な体力の消費を抑える為に邪竜とアルドラのみを探す。
1時間くらい探し歩いていたところ、急にプレッシャーを感じる。
「ギャィァァァァァァ」
咆哮が轟いたと同時に邪竜の一匹がこちらに物凄い速さで近付いて来た。
俺はアマテラスを右手に構える。
竜の姿が垣間見えた。緑色の瞳をしている。
-こいつは…確かグリーンアイズと呼ばれた竜だったか?
前回も偵察に来て…俺達が攻撃した竜。
あっと言う間に俺の目の前に来た。
邪竜グリーンアイズは翼を羽ばたかせ俺の目の前に降り立とうとしている。
-こいつを倒せばアルドラは来る…
グリーンアイズは地面に降り立つ。だが敵意は感じない。
俺も敵意は見せない。襲われたらやり返すつもりではいたが…
俺とグリーンアイズは互いに見合った。
-こいつはクイーンの呪いで邪竜になった…だが恐らくは優しい竜のはずなんだ…
優しい竜だが、シリウスに転移されれば多くの人は邪竜の『死』によって殺される。
それを防ぐには…
「グリーンアイズだったか?アルドラに会いたいんだ…」
アルドラが人に敵意を見せないうちならば何とかなる可能性は高い。
昨日ヴァルゴに言われなければ、今日俺はアルドラと戦いに訪れただろう。
でも俺は生きなければならない。だから出来るかぎり話合いで決着を付けたかった。
グリーンアイズは困ったような表情を見せたが…
「儂を呼んだか?勇者よ…」
急にとてつもない絶望を感じると共に、アルドラはグリーンアイズの後ろに現れた。
-本当に心臓に悪い現れ方だ…
俺はアルドラに威圧されながらも、勇気を出して口を開いた。
「お前に話があって来たんだ。」
「話とは?」
アルドラが話すだけで、地面に押さえつけられるようなプレッシャーを感じる。
「俺達人間と同盟を結んで欲しい。」
「メリットが儂らにないぞ…」
呆れた顔でアルドラは言う。
「ペテルギウス山脈をアルドラ達に譲渡する。」
「お主らが領土と名乗っているだけで、元は我らが土地ぞ…」
そうだった…シリウス国の領土だからつい当然のように言ってしまった…
「………」
他の理由を探す…その前にアルドラが俺に聞く。
「何故儂らと同盟を組む必要がある?貴様らであれば、儂らの力なぞいらんじゃろ?」
「お前達と争いたくないからだ…」
アルドラは怪訝そうな表情を見せた。
俺は未来でアルドラ達にシリウスが滅ぼされかけるのを間近で見た。
邪竜3体だけでも国の半分の人間は余裕で殺せる。
かと言って、それを防ぐ為に邪竜を殺せばアルドラが全てを滅ぼす…
だから争いたくはない…
「それはまるで貴様ら人間が、儂らに戦いをふっかけそうな言い方じゃな…」
アルドラは俺に敵意を向け始める。
「じゃあ仮にその邪竜が、シリウス国の人間を殺したらどうする?」
「ありえん。ここに来なければ死なん。」
アルドラは一蹴する。
「空間転移で無理やりシリウス王国に移動させられたら?」
これは実際にあった事…そして放置すればこのまま起こりうる事…
アルドラは少し悩む…
それを見て俺は口を開く。
「その竜が呪われた事は知っている。でも知らない人間には邪竜として見えてしまう。そうなれば…」
「何故この子達が呪われたと知っている?呪いをかけた者を知っているのか?」
アルドラは真剣な眼差しになる。それと同時に呪いをかけたモノと関わりがあると思われれば殺しに来るだろう。
「グリーンアイズ。パープルアイズ。クリアアイズ。この3体の平和を望む竜に呪いをかけたのは、サキュバスクイーンだ。」
「そしてクイーンはその竜を使ってシリウス王国を滅ぼそうとしている。」
俺は真剣な眼差しでアルドラの眼を見て言った。
信じられないかもしれないが、信じて欲しかった。
アルドラは何も言わずに俺の瞳を少しの間見つめた。
「ふぅむ。お主からは時の何かに関わった感じはするのぅ…お主の話を信じてやっても良い。」
その言葉に俺はホッとした。
その油断した瞬間アルドラは右腕を振り上げ、鋭い爪を俺に振りかぶった。
「空間を裂け、アマテラス。」
俺はアルドラの不意打ちを味わっている。こうなる可能性も考えていた。
俺はアマテラスとツクヨミを構える。
「不意打ちとは卑怯だな…」
俺の一言にアルドラは笑った。
「フォッフォッフォ…いやすまんの…貴様が儂らと同盟を組むに値するか、試したくての。」
笑った後、アルドラは真剣な目付きになり俺に言う。
「ならば汝の力を示してみよ。貴様が竜と対等な存在であると、我に示すが良い。」
同盟を提案したのは、俺達シリウスの人と竜がお互い平等である為だ。
本来の主従契約などとは異なる。
つまり俺がアルドラに力を示せば人と竜は対等に暮らせる。
だが俺が力をしめせなければ、アルドラ達竜に俺達人間は対等な関係を構築出来なくなる。
俺は少し笑った。
「どうした?怖ければ止めても良いぞ。」
アルドラは笑った俺を心配する。
「いや…俺達人間の命運が、再び俺に任されたと思うと…」
「魔王と戦った時を思い出して、つい…」
その言葉にアルドラも笑う。
「人間と戦うのは久し振りじゃ…お主のように楽しげな顔をする人間なぞ、初めて見たわ。」
-俺が楽しげ?いや…なんでそう見えるんだろう…
俺はきっとアルドラと話せて、彼に対等に扱われて少し嬉しかったのかもしれない。
俺は右手のアマテラスと左手のツクヨミを入れ替える。
-デネブ…久し振りに使うよ…この力を…
「グリーンアイズをここから少し、遠ざけてはくれないか?」
アルドラはその言葉に不思議そうな顔をした。
「それは何故じゃ?」
「俺が今から使う力は、制御しきれないかもしれないからさ」
俺は左手にアマテラス、右手にツクヨミを構える。
速すぎて周りを巻き込んで傷つけてしまう力…
デネブを失ってから使わなくなった、普段の皆を守る力ではない…
超攻撃特化の姿『剣鬼』
俺はアマテラスを構える。
「行くぞ、アルドラ!!」
アルドラはニヤリと笑い俺を迎えうつ。
「来い。勇者よ!!」




