[番外編]終焉の『影』
「影魔法・ハイ&ロー」
松明の光さえ一瞬で消した。辺り一面は真っ暗になる…
「うひょひょひょひょ…自ら光を消すとは…アンデッドが闇の中でも視覚がある事を知らないのですな…」
アンデッドロードは嬉しそうに笑う。
そんな事私も知っている。
アンデッドロードは嬉しそうだった。だが残念な事に私も闇夜で目は見えている。
「ぐちゃぐちゃに犯しなさい。」
アンデッドロードの指示で、アンデッドは一斉に私に飛び掛かってこようとする。
下水の中、人の歩く道、天井にへばりついているモノも含めて数十体はいそうだ…
-まったくうるさいなぁ…
アンデッドロードの声が耳障りだった。私は今機嫌が物凄く悪かったのだ…
だってアルタイルが私の手さえも汚させようとしなかったから…
手を汚す仕事は私に任せるように言ったのに…それでもあの人は一人で解決しようと…
一人で背負い込もうとしていた。
-絶対に許さない…
アンデッドはこちらに向かって来る。だが良いのだろうか?
-ハイ&ローの効果は…
アンデッドは魔力が切れたように次々と動けなくなっていく。動けなくなっていったアンデッドは闇の中へ消えていく。
-闇が覆う場所全てから魔力を奪う。動けば3倍魔力を奪う。
動いた時点で急速に魔力が奪われる。魔力がゼロになれば、闇に呑み込まれる…
「あり得ん…どういうことだ…我が魔力が奪われるだと…」
アンデッドロードは焦っているようだった。
「この空間では私含め、全ての者の魔力が奪われ続ける。動けば更に奪われるの。ゼロの者は退場よ。」
親切にも私は敵に能力を教える。別に教えたところで、対策などは無意味だから。
「クソ、本来は使う予定はなかったが…」
パチン…
指を弾くと、あらゆる場所のアンデッド達は共食いを始める。共食いをして、魔力を高め合いアンデッドは強くなることが出来る。
「ルクスリア様から頂いた空間操作の力で、貴様をボコボコにしてやるぞ!!」
私の真上から強くなった、アンデッド達が降って来た…
だが真上のアンデッドはどこかへ消えた。
「何…何が起きている…一瞬にして闇の中に消えるなど…」
そう言ってアンデッドロードは指をどんどん鳴らす。その度にアンデッドが現れ、消える。
それの繰り返しだった。
「雑魚ばかりでつまらないわね…」
ハァっと私は暇そうに溜息を吐く。
この空間では空間操作を使用して移動した者は無条件に魔力を奪いつくす。
-アルタイルにとっての天敵である能力。
「クソ…」
アンデッドロードも私の闇にかなりの魔力を奪われたようだった。
「我が奥義・ディザスターデッドを召喚する。」
そう言って杖で地面を叩き、魔法陣を出現させる。
ディザスターデッドは災厄級のアンデッドだ…アンデッドの王を守護する最強のアンデッド…
普通の人間であれば200人は殺せる毒の瘴気と、並みの攻撃ではびくともしない耐久力を放つ最強クラスのアンデッドだ。
「うひゃひゃひゃひゃ…泣きわめくが良い。ディザスターデッドを3体も召喚してやる…」
アンデッドロードは自信満々に言うけど…
-レオなら喜んで何日もかけて戦ってくれそうね…あいつ呼べばよかったかしら…
いや…『ハイ&ロー』を唱えた時点で他の人間は呼べない事を分かっている。
この術は影の中の全ての人間が対象になってしまうからだ。
それでふと思い出した。
「ねぇ…最後に質問なんだけど?」
「最後か…ようやく死を覚悟したか。我が恐ろしさの前に屈したか…うひゃひゃひゃひゃ…」
-いや、あんたらの最後なんだけど…
「この下水道はもう人間はいないの?」
「うひゃひゃひゃひゃ、いないに決まっておろう…わしらルクスリア様の部下によって皆殺しにしてやった。そしてアンデッド仲間に加えてやったわ!!」
嬉しそうにアンデッドロードは自慢してくる。
「そうか…良かった。」
私は安心した。ここにはもう人間はいなかったから…いたら…
「強かった貴様もこれから我が仲間…いや我が嫁にしてやろう!!それが相応しい。」
魔法陣が光り輝き、ディザスターデッドが6体も召喚された。
-この数ならアルがいなければ、シリウス王国は余裕で亡ぼせるわね…
-これはレオでも一人は無理ね…いや一人で倒せるのは…
勇者アルタイル、そのライバルのトーラス、スカルは……消滅があれば…?
「貴様をアンデッドにして私好みの嫁にしてやる。だが楯突いたバツにぐちゃぐちゃになるまで犯してやろう。」
さっきから思っていたけど、キッモ。
「人間としての最後の言葉を聞いてやろう。どんな悲鳴を聞かせてくれるかな?」
キモイキモイキモイ…
「たったこれだけで私に勝とうとしていたの?」
てかこの程度の強さで、よくそこまで威勢を保てるわね…
「は?」
「いや、だからそんなゴミが沢山集まっても私を殺せないから…」
「は?はぁ?あまりの恐ろしさで頭がおかしくなったか?うひゃひゃひゃひゃ…」
アンデッドロードは凄く不思議そうな表情(だと思う)をしている。私の気が狂ったのかと思っているのだろう。
「はぁ…これだからバカは嫌いなのよ…」
「貴様ぁぁぁぁ…殺すコロス殺してやるぞおぉ。」
流石にアンデッドロードはこの言葉に怒ったようだ。仮にもアンデッドの王なのだ…プライドがあるのでしょう…
-本当に雑魚だとつまらないわね…
「きっさま…せっかく我が同胞にしてやろうと思ったが…八つ裂きにして、貴様のからだを毎日しゃぶりつくしてやるからなぁ…」
そう言ってアンデッドロードはディザスターデッドを一気に6体とも私に特攻させてきた。
これだけの数のディザスターデッドならば瘴気だけで城壁などの丈夫な壁も一瞬で突破できるだろう。
その場の壁や下水は、ディザスターデッドの瘴気で溶解し蒸発をしていた。
「キモ」
正直気持ち悪すぎて吐き気が物凄くした。別にディザスターデッドの瘴気ではないが…
だって私は闇に守られているから瘴気なんて低レベルな小細工は効かない。
「うひゃひゃひゃひゃひゃ…死ねぇぇぇぇぇ。」
ディザスターデッドは私に飛び掛かって来た。でも消えた。いや消したが正しいか…
「顕現なさいな…終焉の『影』リヴァイアサン」
私は闇魔法『ハイド・ロウ』を解放した。
「ん?リヴァイアサンだと…どこにもいないのではないか?さてはディザスターデッドを道連れにしたな?」
アンデッドロードは姿が見えない為辺りを見渡す。
「うひゃひゃひゃひゃ…死よりもキツイ苦痛を味合わせてやろう。」
ディザスターデッドが消えたが、私が最終手段を使って万策尽きたと勘違いしているような態度だった。
-こいつバカか?ディザスターデッドが道連れ?そんな雑魚どもを道連れなんてありえない。
「ここまで私を追い詰めた褒美に、アンデッドロードとして久々に力を解放してやろう。」
-実力差さえ理解できないなんて…やっぱりアンデッドは脳がないからダメね…
アンデッドロードは他のアンデッドの骨や腐った肉を自らの体に磁石の様にくっつけていき、体を巨大化させていく。
一瞬にして下水道を塞ぐくらいの巨大なアンデッドの姿になった。この瘴気は強くなり、下水道から外に出たら、その近くの人間は一瞬で溶けてしまうくらいの瘴気だろう。
だがハイ&ローを使っている限り、私には効かない。
「ハァ…これだから雑魚は嫌いなの…私にどうやって勝つの?」
私は溜息を吐いた後、親切に雑魚に勝ち目がない事を教えてあげる事にした。
「貴方は今、リヴァイアサンのお腹の中にいるのよ…」
リヴァイアサンはあまりに大きすぎて、私の影から少ししか出られはしない…
「はぁ?何を言って…」
今この下水道全てはリヴァイアサンのお腹の中だ…この場にいるモノ全て闇に溶ける。
「貴方はこれから闇に溶けるの…」
そう私が言うと、アンデッドロードの体は少しずつ闇に溶けていく。
-にしても数秒も闇に溶けないなんて、流石アンデッドの王ね…沢山の魔力を持ってるわ…
アンデッドロードの巨大な体はみるみると小さく、元の大きさに戻っていく。
彼もこの状況の異常さにようやく気が付いたようだった。
アンデッドロードは慌てて懇願を始めた。
「待ってくれ、許してくれ、ワシがたいそうな事を言い過ぎた。なぁ、アンデッドを元の人間に戻すから…」
「うるさいわねぇ…あなたハイ&ローのゲーム知っている?」
「は?ゲーム?」
「勝者総取りよ」
アンデッドロードは雑魚らしく闇に呑み込まれて行った。
いやアンデッドロードだけじゃなく、この下水道にいる全てのモノが…
「ハイ&ロー」は影又は闇の中にいるモノ全てから魔力を奪い、魔力がゼロになった者は闇に喰われる。
だがそれはただの儀式の一環…
と言うより、これは闇のゲーム。
常に魔力の低い者は近くの魔力が高い者に、魔力を吸い取られ続ける。
支配者は任意のタイミングでゲーム参加料を上げる事が出来る。
このゲームから抜ける方法は、私がレイズする際に動いていない最も魔力が低い者が強制離脱となる。
-今回は生きている人間がいる事を考えて常にレイズしていたが、強制離脱はいなかった…
またはリヴァイアサンを顕現出来なければその場でゲーム終了…
生きてる者は全員解放し、支配者は死ぬ。
これは私の影の中で眠っているリヴァイアサンを召喚する儀式魔法。
沢山の者が闇に喰われれば『闇の法典』へと変化し、終焉の『影』が目を覚ます。
リヴァイアサンが顕現した瞬間、その場にある最も魔力の高い者以外の魔力を持つモノ全ては、無差別に闇に消え去り終わる。
リヴァイアサンは世界を呑み込めるほどの大きな闇の影だ。だから私の影からは出すことが出来ない。
-下水道…水すらなくなっちゃったわね…
ひとたび『ハイド・ロウ』を使えば、闇に触れた部分は全て消える。だってこの闇はリヴァイアサンのお腹の中だから…
敵も味方も圧倒的な闇の前では無力…
アルタイル…あなたが優しい事は知っている。
でもあなた一人だけで罪を背負おうとする事は絶対に私が許さない…
あなたは光の下でベガと幸せそうに笑っていれば良いの…
-私ベガは大嫌いだけど…
あなたが光の中から手を差し伸べて、私を闇から救おうとしてくれている事は知っている…
でも私にはもうあなた以外の光なんて必要ないの…
あなたがヴァルゴと言う名前をくれたから…
Invidiaと言う大嫌いだった名前からhideを祓って、Virgoと名付けてくれた事で私は救われたのだから…
あなたは影の事を忘れて、光の中で笑ってくれていれば良いの…
あなたが笑っていてくれる為だったら、私は何だってやるわ。
-例え私が闇の中に消え去ろうとも…
私は貴方の影…決して光と交わる事のない闇
あなた背負おうとする罪は私が背負う…例えあなたがそれを拒もうと…
だからあなたは笑っていて、辛そうな顔をしないで…
これからも幸せでいて…
hide(隠す) + Virgo (乙女) = invidia 『??』
アナグラムです。
i n v i d i a《??》
I n i d e
o r V i g
Iとnはhを分解…
oはIの上に
aは,g又はeをひっくり返して




