デッドエンド
何かが斬られた音がした…だが俺自身ではない…
「え、何で…?」
俺の前にはスカルがいた…俺を庇ってトーラスに斬られていた。
「良かった…間に合って…」
スカルは右手でトーラスに触れる。その瞬間トーラスに『死』が訪れる。
「助けた?なんで?スカル?俺をあのまま殺してくれよ…」
-俺はもう立ち上がれない…疲れたんだよ…
スカルのローブは外れ、白髪で褐色の肌の青年が俺に初めて顔を見せた。
彼はにっこりと笑って
「俺は貴方達に出会うまでは、ずっと生きている事が苦しかった。」
「恩を……えしたか………。…きてほ……。」
スカルは息絶え絶えになりながら、最後の力を振り絞って俺に言った。
「貴方達に会えて幸せでした。俺みたいな不幸な人を生きて救って下さい!!」
そして最後の言葉を言うと、彼は息絶えた…彼は最後に笑っていた…
-あぁ…何で…お前まで…
スカルは『死』の右腕のせいで、俺達の中で最も苦しい生い立ちだったはずだ…
だから俺達が右腕を落とした。
これまで不幸だった分、お前にこそ生きて欲しかった…
-これから今までの分幸せになって欲しかった…
「スカル…ごめん」
カノープス帝国の兵士は急いで俺達の元に駆け寄ってくる。
帝国の皇子が殺されたのだ。予想外の状況だろう…
兵士達は皆俺に対し敵意を向ける。
もはや統制は取れていなかった。皆がバラバラになって俺に向かって来る。
俺を殺すただ一つの目的の為に…
それは誇り高い任務ではなく、憎しみによる行動であった。
しかしだった…
一瞬にしてその場の兵士は皆倒れた。
『絶望』
たったこの2文字…
「あっけない…」
いつの間にかその場に白銀竜アルドラがいた。
物凄いプレッシャーを感じる。
「今から争いを仕掛けた貴様らの国を滅ぼしてやろうと思ったが、その必要もないか…」
アルドラは辺りを見渡し、溜息を吐きながら言う。
「だがワシらに戦争を仕掛けた貴様は殺さねばならんな…」
アルドラは俺を睨みつけ言った。
「まさか空間転移であの子達をここにおびき寄せて殺すとは…予想もせなんだ…」
-違う…それは俺達じゃない…
と言おうかと思ったが、無意味だ…
せめて邪竜達を生かしておけば…と思ったが、生かせばシリウスの人は今より死んでいた…
俺はアルドラの瞳をただじっと見ていた。俺の命でアルドラが怒りを鎮めてくれれば…
せめて生き残った人だけでも生き延びさせたかった…
-アルドラまでが俺の国を…完全な積みだ…この戦いに勝ち目はあったのだろうか?
すべてを失った俺には何も怖くなかった。むしろ清々しかった…
『完敗』
相手は何年もかけてこの国を滅ぼす為の計画を練っていたのだろう…
仲間を失い、強敵をここまで用意され、全く勝ち目が無かったとなるとどうしようもない。
勇者とその仲間を倒す、見事な策だった…
アルドラは俺が無抵抗に殺される覚悟をした事で溜息を吐く。
「つまらん幕引けじゃ…」
アルドラは爪を振りかぶる…が…
右手にアマテラスを持ったインキュバスにその爪は弾かれた…
「貴様は?ん、勇者と同じ…?あぁ時を超えし呪いか…」
アルドラは何か納得したかのように呟く…
「あの時こいつを助けたのは貴様じゃな?」
「さあな…」
「邪魔をしなければ貴様は生かしてやるぞ!!」
「生憎と俺の命はもう残っていないんでね!!それにこの世に未練はない…」
カースドと呼ばれた俺の偽物の口元は血で汚れていた。手も震えている。
-アイツはもう力が残っていないのか?
アルドラはいつの間にか俺の真後ろにいた。爪を振りかぶる。
「セコい…」
カースドは空間移動で一瞬で俺の背後に移動し、それを防ぐ。
「時を操っているワシに追い着いて来るとは何百年ぶりかのぅ…」
アルドラは少し楽しそうな顔をした。
次はいつの間にか俺の横に現れ爪を振りかぶる…
だがカースドはそれをアマテラスで攻撃を弾く。
「セロ・バレット」
弾いた瞬間、アルドラに銃弾を数発撃ち込む。その瞬間、アルドラの動きは急に遅くなる。
「お前も、シリウスの国から引いてくれれば痛い目を見なくて済むぞ!!」
カースドはアルドラに忠告する。
「かっかっか…小僧めが…たいそうな口をききよるわ…」
遅くなった…と思ったアルドラの動きは急に元に戻る。
「おぬしもワシの力が時間操作じゃと知っておろう?ならばワシに時間操作は効かん…」
「だよな…ならばこれはどうかな?」
カースドはアマテラスを右手から左手に構え直す…
ツクヨミを左手から右手に構え直す…
-あのスタイルは…
「これが俺の最後の力だ!!」
そう言ってカースドは消えた。消えたというより、肉眼では見えなくなった…
次の瞬間、アルドラの体に大量の傷が出来る。
「ほほう!ワシですら目で追えんか…素晴らしい力じゃ!!」
アルドラはどんどんとカースドに切り刻まれて行く。
-あれならアルドラに勝てるのか?
アルドラは切り刻まれながら、
「呪われし貴様には敬意を示そう。その体では、既に動く事すら苦しいじゃろう?」
「この場にいる人間ごと、楽に死なせてやる。」
『全消滅』
真っ白い光が辺り一面を覆う…
全てを浄化し消し去る光…
触れたら跡形もなく消滅するであろう光
絶対に避けられない事が分かった。




