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何を言っているか分からないと思うが『俺の婚約者』が『俺』に寝取られた  作者: 社畜マー
『俺の婚約者』が『俺』に寝取られた。
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漆黒の処刑人

 俺がヴァルゴ、キュアリスの2人を失ってからの事は何一つ覚えていない…


 ただひたすらに淫魔や魔物達を斬って斬って斬って斬って斬って殺して殺して殺して殺して


 抜け殻の様になった俺はただひたすらに魔物達を倒していった。


 クイーンは用意周到にアンデッドの王、アンデッド•ロードまでご用意してくれていた。街の人は死してなお、アンデッドにされ、もてあそばれていた。


 あまりに悲惨な状況で、俺の心は空っぽになっていった。


俺は今何と戦っているのかすら分からなかった…


-クイーンは倒したはずなのに、それでも魔物は退かない…


 太陽が落ちて、月が昇って夜になる。

月が沈んで、太陽が昇って夜が明けて…

日が昇って、日が沈んで夜が来る…


ただ生き残った人を探して助けて魔物を殺す。


無事な人は安全な場所に移す…


 何も考える事無く作業の様に、ただ淡々とこなしていた。


「アルタイル…」

 そこには人の姿を保っていないレオの姿があった…


完全に獣の姿になったあと限界が来たのか、体は既に何の獣かすら分からない…異形の姿だった…


パッと見ると街を襲うバケモノ…


恐らく街の人によって攻撃されたのであろう…ナイフも沢山刺さっていた。


 それでも彼は街の人を守る為に、ボロボロになるまで戦っていたようだ。戦い疲れたように地面に座り込んでいた。


 彼自身が限界になるまで戦い続けたのだろう…それくらい敵は強く、多かった…


「俺は先に逝くぜ、じゃあな!!」

 レオの魔力は完全に枯渇し、彼はそのまま石になった。


-せめて人の姿で死なせてやりたかった…


「……うぅ」


俺は泣いて良いのかも分からなかった…最後に謝るべきだったのか?


俺がヴァルゴ達の一件の後、すぐ戻れば…


この事態を防げなかった自分を責めた。



 皆良い奴だった。素晴らしい人間達で、英雄と呼ぶのに相応しい仲間だった…


それに比べ俺はなんなんだろう?


 何も考えることなくただ魔物を殺し、生きている人を助ける作業…


その姿は勇者じゃなく死人のようだった…



 俺は街の魔物を全て倒すと、城の庭に眠っているベガに会いに行こうとする。最後に会いたかった…


 自分が守れなかった街を眺めながら城を目指す…


崩れ去った王都の街中…転がる人間や魔物達の死体…


ただひたすらの地獄の様な光景…俺にとっても生き地獄だった…



 プロキオン王達は今なお街の中で、生きている人がいないか声を枯らしながら叫んでいた。


-本当に貴方は立派な王様だよ…



 俺は自らの無力さを噛み締め、自らを呪いながら、城へと一歩一歩足を動かして進んでいく。


 もはやシリウス城が俺の処刑台…最後の場所かの様に…



 シリウスの城の庭では、インキュバスとなっていた俺の偽物が泣きながらベガを抱えていた。


「あ…」


 インキュバスは俺を見て何も言わなかった。言えなかった。


 俺も何も言えなかったし、言わなかった。


俺の偽物はこうなる事を知っていて必死に戦っていたのだ。


誰も彼の味方になる事なく…


ただ独りで全てを守る為…


-俺が彼の意図に気付いていれば街は助かっただろうか?



 インキュバスと化した俺はこの結末を一度見ているのだろう…


そしてそれを防ぐ為この場に来てくれたんだ…



「すまない…すまない…」

 インキュバスのアルタイルは俺にただひたすら謝った…


彼を怒れるはずがない…むしろ俺には彼を怒る権利はない…


-だって全て俺が無力だったのが悪いから…


 俺はどうして彼が謝るのかが分からなかった…


-だって謝るのは俺の方だろ?


 俺の目には涙が溢れていた。とめどなく、手で拭っても止められない程…


「ごめんなさい…ベガ…ヴァルゴ、キュアリス、レオ、街のみんな…」


大人げなく泣きながらみんなに謝る…


もう彼らは戻ってこない…


「ベガ…」


 インキュバスの腕からベガを引き取りベガの顔を眺めていた。


-本当にベガは綺麗だ…


俺はしばらくの間、ベガの眠ってる姿を眺めていた…


-俺のすべき事…それは今から…





「シリウス国壊滅の首謀者アルタイルよ!!貴様を大罪を犯した事で、今からここで処刑する!!」


 今城にたどり着いたのか…城門の前に漆黒の制服を来た茶髪の人影が現れる。


 隣国のカノープス帝国の皇子・トーラス…


 いつも笑顔で爽やかな皇子の顔は怒りに震えていた。憎悪を向けられている事がはっきりと分かった。


むしろこの状況を見て何も感じない人間はいない。


民想いの『漆黒の剣聖』であり、皇子であれば尚更この状況に激昂するだろう。


勇者で誰よりも強い俺が国を守れなかった事に…


-トーラスとは民を守り幸せに導くと誓いあったな…なつかしい…



「貴様の汚い手で、誇り高きシリウスの皇女ベガに触れるな!!」


 俺がベガに触れている事に怒っているようだった。駆け足でこちらに駆け寄ってくる。



「クソ…皇女ベガに助けを求められた時に、もっと急いで来ていれば…」


-ベガがこいつに助け?恐らくベガの偽物が連絡したのだろうか…?俺が国を破滅に導くとでも言ったのだろうか?…


 俺はベガを花壇の花が咲き乱れる所にゆっくりと起き、最後に彼女にキスをした。


-俺には最後にやるべき事がある…


「さよなら…ごめんなベガ…」


-ベガには幸せになって欲しかったのに…どうしてこうなった?


 俺はアマテラスとツクヨミを地面に置き、ゆっくりと手ぶらでトーラス目掛けて歩いていく。


-俺にとっては理想の処刑人だ…かつての戦友よ…


俺の罪が冤罪だろうと…街の人を守れなかった罪を負う


それがせめてもの償いだ…


俺はトーラス達、帝国の人間と共に魔王に挑んだ事を思い出しながら、前に進む。


-トーラス…お前もこの状況辛いのにごめんな?


でも口には出せない。彼の皇子としての矜持に傷をつけてしまうから…


 俺の姿を見て、トーラスは後ろの衛兵に待機命令を出す。


 斬れ味の良さそうな剣を両手で握り構えて、ゆっくりとお互い近付いていく。


 俺は地面に膝をつき、首を差し出す。


「何か言い残す事は?」


 トーラスが最後に聞く…


「ベガ…愛していた…」


 最後の言葉はベガへの一言だった。俺にはもう彼女を愛する権利さえないだろうから…


-ベガ…本当にごめん


俺は最後にベガを想い涙した。


 トーラスが剣を頭の上に振りかぶる。


 それを素早く振り下ろす。


「さよならだ…戦友…勇者アルタイルよ」


シュッ


風の吹くように静かに、鮮やかな紅の血飛沫が飛び散った。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


17日の更新は19時21時、23時を予定しております。


もし少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、


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