友達の結婚を祝いたいけど祝えない時ってあるよね
ヴァルゴとレオの2人は俺が何を言っているのか分からなかった。
それくらいの呆けた顔だった。
だが酔いが回り今の俺は一人でも話を続けられそうだった。むしろもはや言ってしまった以上最後まで言わざるを得ない。
「一緒に寝るだけだから」
と言って女性と一緒にベッドに行き最後までする男性と同じように、男には最後まで行動する責任があるのだ…(酔っ払い中により意味不明)
ベガと会った日のことや魔王を倒す旅の事を思い出しながら俺は勝手に語る。
「最初におかしいと思ったきっかけは、ベガが夜の誘いを断るようになったことだ…」
ベガは俺が今住んでいるシリウス王国の姫だった。『呪い』にかかっていたが俺達が助けた事で俺達の仲間になった。
長い綺麗な黒髪と緑色の瞳に透明な肌は人形の様であった。まさに理想のお姫様と呼ばれるにふさわしい美しさだった。
「夜ベッドで眠っている時だ。ベガの口から
『お昼したでしょ。さっきの激しかったから、もう夜は無理だよぉ』
とまったく身に覚えのない事を言われて浮気されていると確信に変わった。」
俺はクロスしていた指をほどき、右手にグラスを持ちお酒を口に含みながら旅の事を思い出す。
魔王を倒す旅の途中から俺と回復術師のベガは恋人の関係になった。
ベガは最初は光魔法を使って前線で戦っていた。いつからか回復役に転身し後方支援を行う役になった。
旅の途中で俺は何回もベガから回復魔法でサポートされた。
宿で泊まった夜には俺達はベッドでむさぼり合っていた。
俺達にとって魔王を倒す旅は愛をはぐくむ旅であった。
たまにベガは性欲強すぎないか?って思ったりしていたが。
俺が魔王を倒してから、平和になった世界でベガにプロポーズをした。
「俺は昼間、ギルドの仕事に行くフリをしてベガを見張っていたんだ…」
「そしたら忘れ物を取りに家に戻ったフリをして、ベガをむさぼる俺の姿をした人間がいたんだ…」
ヴァルゴとレオの二人は勝手に話を進めるなとでも言いたげな表情をしていた。
レオは俺のウィスキーの氷をつついて遊んでいるし、ヴァルゴは長い髪をクルクルと回して遊んでいて、なんかあまり聞く気が無いようなそぶりだ。
もう少し詳しく話すべきだっただろうか?
だがこれ以上2人のテンションを下げて、協力してもらえない状況になるのが一番まずかった…
「だから俺の姿をした奴が俺だと名乗った時の為に、お前達がそいつを偽物だと言って欲しい。俺を助けてくれ!!」
俺は意を決して、2人に助けを求めた。
俺のフリをした人間がいる以上たちが悪いため、2人に助けて欲しかった。
「あたり前だろ!!友よ」
「最初からそう言いなさいよ!!話が長いのよ。ふん…」
2人は急に真剣な表情になる。俺が助けを求めるのを待っていたかの様だ。
「ありがとう、ヴァルゴ、レオ…お前達は俺の最高の親友だ!!」
俺は今にも泣きそうだった。心強い仲間に改めて感謝した。
一方でヴァルゴは親友と俺が言った事で、少し悲し気な表情を浮かべていた。
「じゃあ元気出せよ。今日は俺のおごりだ!!ガッハッハ」
レオはそう言って3人前の大ジョッキのビールを頼んだ。
「ちょッと…私ビールは苦いから飲めないんだけど…」
「俺達が飲むんだよ。なぁアル?」
そう言ってレオと俺はグラスを宙に上げた。そしてそれを一気に飲み干す。
バーのお酒が無くなるのではないかと言うくらい俺達はお酒を浴びるように飲んだ。
とは言っても、飲んだのは殆どレオだったが…
「見へほよぉ。ぜっふぁいに後悔ふぁふぇふぇやりゅうぅぅぅ。」
俺はお酒を飲み過ぎてその後の記憶はない。家に帰れたかどうかすら覚えていない。
それでも相変わらずレオだけはお酒を飲んでいた。
「じゃあ私は帰るわ。」
ヴァルゴはそう言って財布からお金を出して、カウンターの上に置いた。
「私達を救ってくれたアルを絶対に幸せにするわよ…私、ベガは嫌いだけど…」
いつからか男受けするぶりっ子な態度でパーティの男に思わせぶりの行動をするようになり、ヴァルゴはベガが嫌いだった。
ベガはアルの前では良い人間を演じるのに、それ以外の人間の前だと急にワガママになる性格が悪い人間だった。
「それには俺も同意見だ。がっはっは。」
レオは自分達は大けがをしても自分はベガに回復してもらえなかった。
だがアルはかすり傷でもベガに回復された不平等な待遇を思い出した。
-なんつーか俺はベガは好きじゃなかったな…絶対に性格悪かった。
2人ともベガの事がつくづくアルにふさわしくない人間だと思っていた。
二人ともベガの事は嫌いだった。だがそれ以上にアルが大好きだった。
だからベガがどれだけ不幸になっても良いが、アルだけは幸せでいて欲しかった。
彼が悩む姿は見たくなかった。何故なら2人にとってアルは太陽のような存在だったからだ。
ヴァルゴがバーから去ったあとレオは口を開いた。
「マスター、ウィスキーのロック2つ!!」
「そこのお方はもう飲めませんよ?」
バーのマスターは俺が酩酊状態で意識が消えかけなのを確認して、これ以上飲ませないように止めようとする。
「これは俺達の親友の分だよ…もういないけどな…」
レオはそれまでの明るい雰囲気から一転して、寂しそうな顔をしてマスターに言う…
マスターはそれを確認して、悟ったようにウィスキーのロック2つをテーブルに流す。
「これは私のおごりですよ」
マスターはその店で一番高いウイスキーをレオとその親友におごる。
かつて皆でここに来ていた事を思い出していた…
レオは2つのウィスキーを悲し気に見つめ、そのうち一つを右手で取って上に掲げた。
「友よ…お前もアルが幸せでいて欲しいよな?」
そう言ってレオはウイスキーをグィっと飲み干した。
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