嫌な予感
「俺が全てを失う前に…だと?」
-何か目的があるのは明らかだが…もしかして良い奴なのか?
「いや『良い奴』ではない…お前の敵だ!!」
心を読まれているのか真っ先に否定される。
「敵ならば、何故あの窮地に助けてくれたんだ?」
謎の男は溜息を吐いた。
「全てはベガを救う為だ!断じてお前の為ではない…」
ベガを救う?ベガは俺の偽物に寝取られている以外は全く
「ならば俺ではなく本物のベガを助けに行けば良いだろう?」
俺は謎の男に質問する。
「それが出来ていたら…」
男は唇を悔しそうに噛み締める。
「それが出来ていたら、俺は何も出来なかった己自身を呪ってはいないさ…」
それは本当に悔しそうで悲し気な声だった…
この人は全てを失ってしまった人間だから、俺が大切な物を失わないように助けようとしたのだと分かった。
「ここから先は誰一人欠けてもうまくいかなくなる。ましてや勇者であるお前が死ねば、シリウス王国は滅びてしまう。」
どうしてシリウスが滅びるのか、言っている事が分からなかった。
今日もシリウス王国は平和だった。魔王や邪悪な魔物は倒したのだ。
急に何か異変が起こる等考えられない。
「終わりなんて思ってもない程、あっけなく訪れる。」
男は溜息を吐きながら、悲しそうに言う。
「シリウス王国が終わる時が着々と近付いている。」
-国が…確かにベガが偽物ならば内から国を崩せる。だがそんなすぐに出来るのだろうか?
「ならお前が俺を手伝ってくれよ!!そうすれば全てが解決できるだろ?」
「俺にはやらねばならない事がある…それに俺には時間がもう残っていない…」
俺を手伝うように提案したが駄目だった。シリウスの国が亡びるのに、それ以上のやるべきこととはなんだろうか?
「お前は残りの限られた時間の中で、今お前にしか出来ない事をするべきだ…」
ここから男の声が途切れ途切れになっていく。まるで男が分身体かのように…
「もし…ルド…が……に……てく……いた…らば…」
「きっと俺は…り…………や仲……ちを失…ず……ん……だ…うな…」
悲し気な声は次第に聞こえなくなり、急に静かになった。
何分、何十分と長い時間が経つ…
「えーっと、あの…すみません。目隠し外して良いですか?」
返事がない…まるで俺が屍になるのを待つかのようだ…
だが返事は無かった。
「外すぞ!!良いな。後悔するなよ!!」
俺は念押しで確認する。もしドッキリでダメとか言われたら申し訳ないし…
俺が目隠しを外すと真っ暗な空間にいた…
-どこかの部屋なのか?
まぁアマテラスで空間を切り裂けば簡単に解決出来るけどね!!
空間を裂いて暗闇を出る。場所が分からないからとりあえず暗闇から出られれば良い…
数メートル先をイメージして空間を切り裂いて移動すると、そこは以前王様達と飲んだキャバクラの目の前だった。
時間は夕方で、客引きをしている人間が多数いるにぎやかなシリウスの街中にいた。
-ん?シリウス王国まで連れて来てくれてたなんて、やっぱり親切な人間だったな…
ペテルギウス山脈から予期せぬ帰宅だった…
男の言う残された時間が少ない為、まるで俺を気付かって送ってくれたかのように…
俺はとりあえずプロキオン王に今回の件の報告に向かおうとする。
はぐれてしまった仲間も心配だが、まずベガが偽物かもしれないと報告を行うのが先だと思った。
にぎやかな街を通ってお城に向かう。いつものように城の前に向かうと、衛兵たちの姿は無かった。
-何故だろうか?やけに城の中が静かだな?
夕方ならばキッチンとかに人はいる筈なんだけれどな…
見回りの兵士、メイド、執事などあらゆる人間が城の中にはいなかった。
-嫌な予感がする。
背中に冷や汗をかいていた…凄く、凄く嫌な予感があった。
-プロキオン王の姿を早く探さなければ…どこにいる?
城中のあらゆる場所を探し、最後にたどり着いた場所…
城の最上階に存在している豪華な謁見の間…
俺はおそるおそる扉を開いた。
嫌な予感で心臓の鼓動が速くなっていた。
謁見の間の中を見た瞬間、俺は絶望した。
今まさにサキュバスの鋭い爪によって体を貫かれたプロキオン王の姿があった。
「アマテラス…」
俺は一瞬でサキュバスに近付いてサキュバスを退治する。何でもない、ただの魔物だった…
-何故結界の張られた城の中に、サキュバスがいる?
-いや結界が張られていたのが、何者かによって中から解除されたんだ…
プロキオン王をサキュバスから離し、王が大丈夫か確認する為に近寄る。
「勇者様…我が国の救世主…我が国をお願いし……」
プロキオン王は息が絶え絶えになり呟く。
「セプティマ・バレット」
セプティマ・バレットは時間を戻し状態回復をする弾丸だ…
ディエスバレットが相手を+から-に弱体化させるのに対し、セプティマバレットは-から+にする能力を持つ。
俺はツクヨミの弾丸で王様を元通りに回復させようと時間を戻そうとする。
だが王様の傷はなかなか回復しない…
-先程のサキュバスは『呪い』をかけたのか?
『呪い』…それはこの世のモノをこの世のモノでは無くしてしまう力…
この世界の理の外に追い出してしまう力だ…
「安心して下さい………」
王は最後に呟いた。そして息を引き取った。
こうして俺の腕の中で王が死んだ…
どう行動していれば王が救えただろうか…
-邪竜の討伐に行った時点で、俺達は選択を誤ったのだろうか?
無害な竜を討伐しに行き、王を殺した有害な魔物の侵略を防げなかった…
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
俺は王を腕に抱えて叫んだ…
俺の無力感を嘆いた。言葉に出来なかった。ただただ魔物が憎かった…
まるで獣の咆哮のような叫びが城中をこだまする。
無力さに嘆く俺の肩を後ろから誰かがつついた。
「うるさいよ…静かにしてやってくれんか?」
プロキオン王がそこにはいた。悲しそうな顔をして…
俺は横たわっている王と後ろのプロキオン王を何回も見返した。
どちらが本物か分からなかった…
「プロキオン王…何故ここに…」
俺は動揺していた。状況の理解が出来ていなかった。
「それよりも君が腕に抱えるセバスチャンを降ろしてやってくれないか?休ませてやりたい…」
俺は腕に抱える人間を降ろす。
王は目に涙を浮かべながら話しかける。
「長い間ご苦労様、セバスチャン。私は若き日からお前と過ごした日々を忘れはしない…」
床に横たわる王の姿が、王に寄り添っていた執事の姿に変わっていく。
「セバスチャン…お前にしばらくの有給休暇を与える!!私がそちらに行ったら、またしっかりと働いて貰うぞ!!」
プロキオン王は涙をこらえながら、セバスチャンの傍に付き添っていた。
「勇者アルタイルよ!この状況は理解しているな?」
「はい王様。」
「この国……いや城の中に内通者がいるという事に…」
「はい。俺自身もそう思いたくなかったですが…」
そうだ…振り返れば少しおかしな点はあった。先程言われるまで気にしないようにしていたが…
「そうじゃな…ワシも違うと思いたかった…」
「俺もそうだと信じたくはなかった…」
-ベガが偽物だと…
俺達の意見は恐らく一致している。
『ベガが敵の内通者である可能性が高い。そして彼女は偽物かもしれない…』
恐らくベガの父であるプロキオン王が一番否定したかっただろう。
ずっと自分の娘が偽物だという事に…
その偽物は俺達が国から離れている事を良いことに、ついに王にまで牙をむいたのだ。
これは放置しては置けない有事であった。
「勇者アルタイルよ…シリウス王プロキオンの名において命ずる。」
「内通者として可能性が高いベガの正体を暴け。魔物ならば討伐せよ!!」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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