マドレーヌ13歳、晩秋。~ヒドインちゃんが現れた~
「あたし…すごく怖かった……!」
少女は肩を震わせ、耐えきれないとばかりに寄り添う男に凭れかかる。胸元にひしとしがみつき、こちらを睨みつけるその目には大粒の涙が浮かんで…はいない。
惜しい!あと少し頑張って!
マドレーヌは心の中で声援を送った。
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「アイデアの盗用?ですか…」
数日前の放課後。
相談役として教務課を訪れたマドレーヌに弱り顔の女性職員が2人分のお茶を持ってやって来た。
「私たち全員が証人だからコメルシーさんの無実は確定しているんだけど。一応、耳に入れておこうと思ってね」
曰く。泣きながら教師の元に乗り込んできた少女が言うには、ナントカというアイデアは元々その少女が持っていたもので、それをマドレーヌが相談役という肩書きを振り翳して少女から奪い取った、らしい。冤罪は百も承知だけれど訴えがあった以上は名目上だけでも調査が必要ということで、相談会場である教務課の職員全員の連名で相談時の応対や相談に来た学院生の名簿などを提出したのだとか。
「何かは来ると思ってましたけど、そういう方向ですかぁ」
「そうなの。ある意味じゃあ想定外だけど」
相談役を務めるにあたり、学院側と幾つかルールを取り決めていた。その一つが名簿と相談内容の確認書類の作成だ。後になって言った言わない、利益誘導された、失敗したのはマドレーヌの所為だ、だのと難癖をつけられないようにという予防線だったのだが、まさかアイデアの盗用疑惑で使うことになるとは。
「当人がやる気なら、その子も相談役にしたらいいんじゃないですか?」
なし崩し的に相談役をしているが、本来は省エネ気質のマドレーヌだ。やりたい人間に任せたい思いは強い。
「ちょっと能力がないかな~」
実際に対応した教師によれば、少女は授業中も心ここに在らず、ぼぅっと空を見ているようなタイプらしい。盗用されたという“ナントカ”も、その教師が聞き取りそびれたのではなく、具体的に話を聞こうにもあやふやで要領を得ず、まさにナントカとしか言いようのない、詰まるところ言いがかりだとすぐに知れるものだったとか。
言葉は悪いが鈍くさく、学院でも特段親しい人もいない、大人しい性格だと思っていたので、今回の行動には酷く驚いた、と言うのが教師の弁。
「あら、まあ。それはそれは」
「ねえ?」
ぱちぱちと瞬きしあい微笑みあい。どうやら同じ結論に至ったらしいマドレーヌと職員は同時にカップを傾けた。




