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マドレーヌ13歳、晩秋。~文化祭まであと6ヶ月~

「貴女はやっぱり刺繍作品で参加するの?」

「もちろん!もしかしたら上流階級(ハイクラス)の方に見染められるかもしれないもの」


「王都での剣術大会なんて腕が鳴るな!大貴族のお抱え騎士になるチャンスだ」

「頑張れよ。俺は文官志望だからなあ、目に留まるにはどんな発表がいいんだろう?」

「運営委員になれば良いさ!手探りだし大変だろうけど」



 〈王立学院文化祭〉の開催と運営委員の募集が掲示されて数日が経った今も学院はその話題で持ち切りだ。就活・婚活に熱心な学院生やその保護者を中心に、教務課には運営委員への応募や問い合わせなどが殺到しているという。


「マドレーヌ様は参加するの?」


 小休憩中、ミラベルから問われたマドレーヌは幾度も繰り返してきたセリフを口にする。


「わたしは皆様の発表を楽しませていただくつもりです。基礎教養もまだまだだし、発表するほど取り組んでいる分野もありませんから」


 養父からの許可も下り、マドレーヌは既に裏方で働く事が決まっている。加えてクーク夫人と携帯食の開発も行っているので、残念ながら文化祭への時間は充分に取れないだろう。何処か手の足りないところに手伝いとして紛れ込んで、一緒にわいわい準備する楽しさだけ味わわせて貰えないか?くらいは考えているけれど。


「そっかあ。文化祭をするのは花の月だから、いろいろ観て歩くだけでもきっと楽しいよね」


 花の月は春の訪れを寿ぎ、花々を愛でる月。それまで屋内に閉じこもりがちだった人々がこぞって外出したがる時期でもあり、話題性や集客力は充分。さらに夏休み前の時期で文化祭の成果を手土産に就職・婚姻先を探すにも丁度良い。ここに文化祭をぶつけてきたナウル・デライト伯爵はさすがである。


「各地の特産品を使った展覧会も催されるのでしょう?家政の授業はどれも盛況だそうですわ」


 コモリの言う通り、模擬店は安全面から屋台ではなく屋内で、調理済みのものを展示販売することになった。自らのアイデアが商品となって大勢の目に触れるとあって気合十分。食品加工や服飾の授業は大いに賑わっているという。


「けっこう難航してるって話も聞くわ。展覧会に出品したいけど、新しい商品なんて一朝一夕にできるものでもないから」


「まあ…それはご苦労だわね」


「ミラベル様は文化祭に参加なさるの?」


「参加はしたいけど、外国の言葉や文化なんてどう発表すればいいものか…。コモリ様は?」


「わたくしも。文学や観劇ならば自信がありますけれど、発表となると難しいものですわね」


 参加するもしないも自由だけれど、自身の能力を広くアピールする絶好の機会である。けれどミラベルやコモリように、目に見える形で成果を発表しづらい方面に力を入れている学院生たちは落胆の溜息を吐いてばかり。


「外国かぁ……。花の月は外国人の方も多いの?」


「もちろん!陸路でも海路でも行き来できるからね」


 今年の花の月は王都に来たばかりで、右も左もわからなかった。気晴らしにと連れて行ってもらった街でもあまりの賑わいっぷりに人酔いしたほどで、周囲を見る余裕はなかったのだ。


「だったらミラベル様は運営委員になって、外国の方向けに会場案内をお作りになるのはどう?持ち運べる図なんかあれば、王都に不慣れな方も見に来られるかも」


「それ良いね!きっと父も喜ぶわ。ありがとうマドレーヌ様!」


「ねえねえ、でしたらわたくしは?何か良いアイデアはございませんか?」


 コモリの得意とする演劇は、今のところ文化祭の出し物にはない。ショービジネスに将来を懸ける学院生を募集して劇団を立ち上げるのも骨が折れるし、冬休みも挟んでしまうから準備期間内でゼロから作り上げるのは難しい。


「あ。服飾のショーをするでしょう?その会場セッティングや歩き方のご指導はどうです?観劇の知識が豊かなコモリ様なら、ドレスをより美しく見せる方法などご存じではありませんか?」


 ファッションショーは開催できる運びとなった。これもショービジネスのひとつだ。演劇と通じる要素があるのではないだろうか。知らんけど。


「そうね。思えば役者の方々は重い衣装を身につけて軽やかに演じていらっしゃるし、舞台上の灯りだってクリスタルやガラスとシーンによって変えているのでしたわ。わたくし、さっそく観劇に出かけて秘密を探ってきますわ」


「その意気ですコモリ様!未来の名プロデューサーの誕生ですね!」


「まぁ、マドレーヌ様ったら!」


 文化祭まであと6ヶ月。楽しく賑やかな日々が始まった。

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