マドレーヌ13歳、秋。~手紙~
机に向かい、目を閉じると、アルバムを捲るようにあの日の光景がありありと思い浮かんでくる。
庭園を彩る花々。ご婦人達のドレスの色。カップの絵柄。振る舞われたお菓子。それぞれの手元にある刺繍のモチーフ。
「そうね」
ギモーヴ夫人には、淡いピンク色に白い小花の押し花を添えて。
クーク夫人には、パステルブルーのシンプルなものを。
そのほか、刺繍サロンのご婦人方それぞれにドレスと同じ色の便箋を選んでいく。既に数回は手紙のやり取りをしているけれど、便箋を選ぶこの瞬間はいつも楽しい。
そのほか、モニカにミラベルに、指折り数えて頬が緩む。
これまでは訓練がてら田舎の家族としかやり取りしていなかった手紙が、王立学院に入学したことで送りあう相手が増えた。皆とても良い人ばかりで、思い描いていた貴族のドロドロ感など微塵もない。――まぁ、未成年だし泡沫貴族の養女だし、というのはあるのだろうけれど。
手紙を一通り書き終えたら、届いたばかりの手紙を開ける。薬草を漉き込んだ手作りの紙に田舎の父の文字が踊る、簡素だけれど思いの丈が籠もった手紙だ。
家族の近況に薬草園のこと、は3割くらいで大部分を占めるのは惚気じみた母との日常と「帰っておいで」のバリエーション。よくもまあ手を変え品を変え、思いつくものだと関心する。
「あ。そうだ」
父への手紙に、図書館の精霊と会ったことを書き記そう。ニスコスが好きで、薬草茶が好きで、物腰が柔らかい、父に良く似た人だと。きっと仲良くなれるのではないか、と。
さっそく便箋を選んで書き上げよう。マドレーヌは微笑みながらペンを走らせた。




