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マドレーヌ13歳、秋。~還ってきたアイツ〜

「おまっ」


「どこだッ」


「あれ?」


 マドレーヌは逃げていた。

 教室の隅、柱の陰、調度品と壁の間。忍者のように身を隠しながら逃げていた。


 およそ1ヶ月前、マドレーヌに難癖をつけてきた琥珀色の瞳の男。頑なに名を聞かずに過ごして来た彼奴(あいつ)の停学が解けたらしい。物陰からそっと様子を窺うと、名も知らぬ彼が狐に摘まれたようなキョトン顔で立ち尽くし、去っていくのが確認できた。あとは自分の預かり知らぬところで問題を起こして欲しいと願うマドレーヌである。



 ――わたしはつくづく、ヒロインって柄じゃないわぁ――



 王国の仕組みを紐解き、玉の輿はすっかり諦めたマドレーヌである。華やかな都会に来て、ちょっとばかり浮かれた頭と妙な知識によって分不相応な夢を抱いたけれど、思えば智謀策謀の渦巻くお貴族様の世界を上手く渡れる性格(たち)ではない。

 それでも「エエ感じに物語が進んでくれるんかな?」と思ったが、無駄に絡まれたり目をつけられたり、碌なことがない。だったら思う存分、短い青春を謳歌するのだ!悩むだけ損!


「正統派ヒロインちゃんだったら。あんなのにも優しく声掛けて改心?させるんでしょうけど」


 ――貴方には貴方の良いところがある。

 ――わかってあげない家族は酷いね。

 ――貴方の頑張りを知ってるよ。


 そんな爪の甘皮より薄っぺらい言葉で慰めたところで、結局は彼自身が自分自身と折り合いをつけなきゃどうしようもない。彼が優秀な異母兄達に劣等感を抱きまくりなことは一目瞭然で、反抗期というか、親が正しく甘えさせなかった反動がここに来て噴出したのか、とも思う。


「まぁ、たくさん悩めよ少年。それが青春だ」


 そして今日もマドレーヌは図書館へと向かう。

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